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2017.01.28(最終更新日: 2017.06.02 ) 1190 views

SAG-AFTRA(労働組合)を学んでアメリカで撮影しよう!「製作編」

ロサンゼルスと日本を拠点に映像制作を承っております。映画、TVCM、ミュージックビデオからVR動画ま...

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アメリカの映像制作現場には、独自のルールがあります。
ここでは、その一つである「労働組合」について説明したいと思います。

日本にまだ無いシステムなので、海外ロケをするプロデューサーは、しっかり把握して、コーディネーターに完全に頼らなければいけない状態からの脱却を目指しましょう!

以下が今回の目次です。
長くなりますが、これさえ抑えておけば短編製作の労働組合に関する情報は押さえていると思います。

今回の目次
・アメリカの労働組合「SAG-AFTRA」とは
・申し込み申請について「契約の種類は様々」
・労働規定に関する書類について「アマチュアタレントに必要な書類」
・健康保険と年金のカバー制度
・セキュリティ費(保証金)について
・契約のオンサポート「SAGIndie」
・プロジェクトライセンス「SAG Cast Clearance」
・労働者災害補償保険と賠償責任保険

それでは、一つづつ説明していきたいと思います。

アメリカの労働組合「SAG-AFTRA」とは

労働組合の存在

アメリカの映像制作現場には、それぞれの分野に決まった労働組合があります。
アメリカで映画を撮りたい、もしくは日本の企業CMやミュージックビデオをアメリカで撮影したい場合、役者やモデルの多くは労働組合に入っていることが多いです。
組合の名前をSAG-AFTRA(サグ アフトラ)と言います。サイトはコチラのリンクからご覧ください。(英語です)

引用:SAG-AFTRA

SAG-AFTRAに所属している方々は様々で役者からモデル、歌手にスタントマンまで多岐に渡り、多くのパフォーマーの労働状況を守るために存在しています。
事務所(エージェント)や専属マネージャーとは違い、プロジェクトが役者に違法な労働条件を強いていないことを認めさせ、していた場合に製作側を罰することが出来るように考えられた組織です。
そのため、SAG-AFTRAに所属しているパフォーマー(役者も含め)を起用して撮影したい場合、撮影に前もってSAGとの契約をプロジェクト毎で行う必要があります。

起用したタレントに、あらかじめ合意した金額を支払わないプロデューサーはブラックリストに載り、将来のプロジェクトでSAG BOND(サグ ボンド)というセキュリティの前払いを支払うことを強要されるので、正しくルールに則ってタレントとの仕事に取り組んでください。

聞いていると何やら難しそうですが、1-2回やってみると簡単です。
製作内容にも寄りますが、短編と長編映画(2億5000万円以下)は撮影(もしくはリハーサル初日)から少なくとも1か月前もってSAG-AFTRAに製作の申告を申し入れます。
CMやミュージックビデオの場合は、手続きにかかる時間が短くなる場合が多いので1か月以内でも大丈夫な場合がありますが、早いことに越したことはありません。

申し込み申請について「契約の種類は様々」

申し込み申請の際に気をつけること

1) タレントに支払う最低賃金がアプリケーション(申請)の種類によって変化すること
2) 必要な書類を集めるために時間がかかること
3) 予期していないところで、お金がかなりかかること

優しいSAG-AFTRAの職員

SAG-AFTRAの職員は基本的にどんなプロジェクトに対してもとても丁寧に対応してくれます。
長編だろうが、短編だろうが、CMだろうが気持ち良いくらいに平等に接してくれるので安心です。
アプリケーションを申請後、SAG-AFTRA側のプロジェクトの担当者が決まります。
SAGレップと呼ばれる彼らに分からないことは何でも聞いてみましょう。

対応スピードが遅いっ!

エンタメ業界と言っても、SAG-AFTRAは労働組合です。
そのために手続きに時間がとてもかかることがあります。
出来る限り早くアプリケーションを始めましょう。
僕は1か月前に申請して、と言われた場合は2か月前に申請するように心がけています。

短編映画やWebシリーズ番組の製作は「ニューメディア契約」

劇場公開を伴わない短編映画やWebシリーズ番組の製作はこの「New Media Agreement」(ニューメディア合意)というカテゴリに属します。
YouTubeなどの発達によって、TVや劇場を視野に入れない新しいメディアの誕生、ということで2009年に生まれました。
CMやミュージックビデオにはまた違うアプリケーションがあるので、気をつけてください。
ちなみに契約の署名者になる個人または法人のことをSignatory(シグナトリ)と呼び、署名者になることをBecoming Signatory(シグナトリになる)と言います。

New Media Agreementはオンラインからでも申請出来るので、手続きが大変簡単です。
タレントに払う金額ですが、州の最低賃金以上であればタレントと製作側の合意のみで金額を決められます。
Differredという支払い方法も可能で、プロジェクトが完成した後で配給が決まり利益が出た時にタレントに支払う、という契約です。

CMは「コマーシャル契約」

CMはコマーシャルアグリーメント(Commercial Agreement)があります。
CMは営利目的のための映像になるので、SAGタレント一人当たりのギャラが600ドル近くかかります。
予算を立てる時には、タレントのギャラを確認した上でクライアントに相談しましょう。
細かい内容については、今度書きます。

注意が必要!「ミュージックビデオ契約」

ミュージックビデオ(Music Video Agreement)は少し特殊で、ミュージックビデオのカテゴリに入りますが、製作会社が契約の署名者になることが出来ません。
レーベルが関わっている場合はレーベルが、歌手もしくはバンドがインディーズの場合はミュージシャン自身が契約を交わす必要があります。
これはあまり知られていませんが、SAG-AFTRAに電話すると、とても丁寧に教えてくれます。
ミュージックビデオの制作費が2000万円以下(ほぼ全てのMV)の場合、署名者はOPO(One Production Only)と呼ばれる契約をSAGと交します。
かかる費用は以下の通り。

タレントの日当:
タレントとの合意のもとで、州・国の最低賃金を満たす額以上の金額(交渉可能)

ユーズフィー(Use Fee):
スタントを雇う際に発生するAdjustment(アジャスメント)の様に、日当に追加で支払うお金です。
MVがミュージシャン自身のPR、至っては利益に直結することから、タレントのパフォーマンスが使われた(ユーズド)目的に即して支払われる金額です。
これは撮影の日数に関わらず、タレント一人当たりの175ドルです。

健康保険と年金のカバー制度「Health & Retirement Fund」 :
これはタレントの健康保険と年金をプロダクションがカバーするということです。
(日当+ユーズフィー)x 12.5%が、H&Rのコストです。
つまりミュージックビデオには思っている以上に予算がかかるということです。

労働規定に関する書類について「アマチュアタレントに必要な書類」

Taft-Hartley(タフト ハートリー)とは、国が定めた労働規定に関する書類です。
SAG-AFTRA契約がされた予算2500万円以上の長編映画の製作において、アマチュアのタレントがSAGのタレントと共演するために必要な書類です。
主演・準主演・助演として参加する際にはPrincipal Performer Taft-Hartley Reportが、エキストラとして参加する場合にはBackground Taft-Hartley Reportが適用されます。
署名者(制作会社)が撮影終了後15日の間にSAG-AFTRAに対して、提出しなくてはいけません。
これが適用されると何が起こるか?以下、シナリオが二つあります。

<アマチュアがTaft-Hartleyを受け取ったことの有るタレントである場合>
以前にPrincipal Taft-Hartley Reportを受け取ったことがある場合、タレントは今回のプロジェクトに参加するためにSAG-AFTRAのメンバーに確実にならなければなりません。

(注1)Background Taft-Hartley Reportを受け取った場合は、3枚受け取って初めて、Principal Performer Taft-Hartley Reportと同じ効果が適用されます。

アマチュアがPrincipal Taft-Hartley Reportを受け取ったことの無いタレントである場合
Principal Taft-Hartley Reportを受け取ったことが無い場合、SAG-AFTRA eligible(エリジブル)と言って、労働組合に入ることが認められます。

タレントは労働組合に入ることで、高額な費用を組合に毎年払う必要があるため、Taft-Hartleyが適用されるプロジェクトを引き受けるかどうか、自分の状況を見極める必要があります。
そのために製作会社はタレントにプロジェクトがSAGプロジェクトかどうかを、前もって伝える必要があるのです。
その他、タレントに必要な情報はコチラのPDFが参考になるかと思います。

健康保険と年金のカバー制度「P&H」

P&Hとは、Pension & Health Plan(年金&健康保険プラン)のことで、Screen Actors Guild Pension & Health Plan)と言う団体が提案している組合の年金機構です。
ちなみにAFTRA H&R - AFTRA Health & Retirement Fundという団体もあり、SAG-AFTRAに連絡するとP&HかH&Rのどちらかが話の中で登場します。

理由はSAGとAFTRAがバラバラの労働組合で、最近これらの労働組合が1つになった、という歴史的な経緯があります。
違う健康保険・年金制度の団体をSAGとAFTRAが持っていたために、二つが混在している様な状態が続いているのです。

これは来年2017年の1月に解消される様に、話が進んでいるので、それ以降は名前は一つに定着するものと思われます。
いずれにせよ、健康保険金&年金をプロダクションが支払うのは、業界のどの労働組合でも同じです。

SAG P&H (AFTRA H&R)は、タレントに支払う総額の17.3%と決まっています。
プロジェクトがSAG-AFTRAになった時点で必ず支払わなければならないので、予算に正しく組み込みましょう。

ちなみにSAG-AFTRAに所属しているタレントを使いたいけれど、P&Hや他のコストを支払うだけの予算が無い場合、タレントが直接労働組合と交渉する、という手段もあります。

セキュリティ費(保証金)「SAG BOND」

SAG BONDはセキュリティ費のことで、タレントに支払う金額をSAGが保証するためのシステムです。
SAG BONDは長編製作の場合、必ず支払う必要があります。
New Media Agreementでも、製作費が$50,000を超えるものはSAG BONDの支払いが必要になります。

SAG BONDはセキュリティとしてSAG-AFTRAが製作側から預かるだけの存在なので、役者への支払いはまた別です。
製作側がPayRoll(ペイロール)会社を通じて、それぞれのタレントへ支払います。
作品が完成した後、SAG-AFTRAからSAG BONDは全額返金されます。
このSAG BONDは長編の製作の時に、必ず予算に入れて置かなければ後で大変なことになります。
なぜなら物凄い金額のSAG BONDになる可能性があるからです。

SAG BOND計算方法は、

撮影が2週間以下の場合
[SAG-AFTRAに所属しているタレント全員への支払いのトータル+P&H] x 100% = SAG BOND

撮影が2週間以上の場合
[SAG-AFTRAに所属しているタレント全員への支払いのトータル+P&H] x 40% = SAG BOND

のどちらかになります。

契約のオンサポート「SAGIndie」

SAGIndieとは、クリエーターである「あなた」のプロジェクトが、SAG-AFTRAと正しく契約を交わすことが出来るようガイドをしてくれるウェブサイトです。
サイトを見れば様々な契約に必要な情報が載っているだけで無く、実際にイベントなども催されてSAG-AFTRAの職員と、手続きについて質疑応答が出来るように取り計らってくれる素晴らしい団体です。
アメリカのロサンゼルス、もしくはニューヨークにいる方は彼らのセミナーに1度参加されると良いかと思います。イベントセミナーは無料、時間も夕方の6時から1、2時間なので、仕事の後からでも参加することが出来るようになっています。

SAGIndie公式サイトはコチラから

引用:SAGIndie

写真は実際のイベント風景と、セミナーに行くともらえる冊子です。

プロジェクトライセンス「SAG Cast Clearance」

プロジェクトのオーディションが終わり、キャストが固まってきたところで早目に確認しておきたいことがあります。
それはタレントがあなたのプロジェクトに参加する資格を持っているかを確認することです。

(1) SAG-AFTRAに所属しているが、メンバー会費を払っていない
(2) Principal Taft-Hartley Reportが受理されたばかり
(3) SAG-AFTRAとの契約準備中

など様々な理由で、もしもキャスティングが固まったとしても、労働組合からゴーサインが出ない時があります。

そのためにSAG Cast Clearanceと言って、SAGにタレントのステータスを確認してもらうための申し入れをします。
大抵数日以内で返ってくるので、キャストが固まったらすぐにSAG Cast Clearanceを送り確認してもらいましょう。

労働者災害補償保険と賠償責任保険

長々と書きましたが、最後にSAG-AFTRAのルールの中でも厳しいものが一つあります。
それは製作会社もしくは個人が、労働者災害補償保険(WORKER's COMPENSATION)と賠償責任保険(LIABILITY INSURANCE)を持っていることを義務付けたことです。

学生映画のプロジェクトにもSAG-AFTRAは厳重に取り締まります。
つまり、タレントの安全を考えてのことなんですが、こればっかりは毎回準備するのがコスト的にも本当に大変です。

全てのプロジェクトでは無くて、例えば映画学校とSAGとの間で提携して、保険を学校が提供する様な形で学生が映画を撮れるシステムを整えないと、学生にとって大変な困難になってしまいます。
逆に映画学校が保険などを正しく提供することで、今やオンラインカレッジが盛んに行なわれているアメリカ社会の中で、学校に行く価値に対してのレバレッジをかけられるんでは無いでしょうか?

まとめ

以上、SAG-AFTRAについての様々な情報をまとめました。
実際にSAG-AFTRAのタレントを使って作品作りをされる方は、予算や他の様々なことで問題に直面するでしょうが、この記事が問題解決の糸口にでもなれば良いなと思っています。

長編のSAG-AFTRAについての手続きは、いずれ書こうと思いますのでお待ちください。

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