映像で世界の表現をリードする。VFXスタジオが考える、日本人クリエイターのこれからのキャリア形成とは

Alt.vfxはオーストラリア・ブリスベンに本社を置く、グローバルなVFXスタジオです。創立した2011年から数多くのアワードを受賞し、世界にその技術を認められてきました。当初6名だったメンバーも現在では70名を超え、同社ではさらなる飛躍のためにNukeアーティストを募集しています。

Nukeはノードベースで、編集や合成、エフェクトなど画づくりをフィニッシングすることができるコンポジットソフトウェアです。

ノードベースで作業を行えるなど、実写合成に最適化されているため競合ツールよりも3DCGの素材合成に優れており、ハリウッド映画をはじめとする世界中のハイエンドなVFX制作現場で利用されているグローバルスタンダードになっています。

今回は、Alt.vfxの共同創立者であり数多くの映画やCMを手がけてきた高田 健氏に、Nukeアーティスト募集の経緯や仕事のやりがいについて詳しくお伺いします。

▲Alt.vfx 高田 健氏

Alt.vfx共同代表取締役、エグゼクティブ・プロデューサー。日本生まれ、オーストラリア育ち。日本でIT企業や広告代理店を経て渡豪。業界を代表するポストプロダクションでプロデューサーとして活躍。2011年に独立し、Alt.vfxを設立。トップクラスの技術とクリエイティブの力で世界で評価されるスタジオへと成長。ブリスベン本社をはじめ、シドニー、メルボルン、ロサンゼルス、東京に拠点がある

大きなスタジオにも負けない強固なパイプラインが強み。

――まずはAlt.vfxがオファーされるお仕事の内容やチームの体制についてお聞かせください。

高田氏:キャラクターや動物のファーなど、フォトリアルなシミュレーションを得意としています。

それ以外だと、コンセプトデザインやキャラクターづくり、企画のはじめから参画する仕事の依頼が多いですね。

10年前は鹿をそのままつくってくれ、実在する動物をCGでつくってくれという話が多かったのですが、現在ではクリーチャーなど、もっとクリエイターとして楽しめる案件が増えてきています。

Altグループのメンバーは現在70人程度で、そのうちプロデューサーが15人ぐらいです。

残りはアーティストになるのですが、私たちの会社はゼネラリストがいなくて、それぞれの分野のスペシャリストが集まっています。

コンセプトからはじまり、モデリングやテクスチャ、TD、アニメーター、ライティング、レンダリング、エフェクターと各担当が在籍しています。

そして彼らをまとめるプロデューサーやコンポジターがいて、チームをマネージメントしてるVFXアドバイザーがいます。

このように、Altはチーム編成がはっきりしていて、特にコンポジター部門がフィニッシャーとして重要な役割を担っています。

TOOHEY’S EXTRA DRY / NOCTURNAL MIGRATION

ーーNukeのコンポジッターはオーストリア国籍、外国籍の方がそれぞれいらっしゃると思いますが、彼らとやり取りをする際に気を付けていることはありますか?

高田氏:コンポジッターはフルタイムのメンバーが8名です。プラスで常にフリーランスのアーティストが稼働していて、国際色豊かなチームです。色々なスタジオで仕事をしてきた人たちが集まっているので、仕事にノウハウが凝縮されています。

シニアメンバーも在籍していますが、やはり新しい血が流れることによって刺激もされるし、シナジーも生まれる。他のスタジオではこういうやり方をしてたよ、こういう方法もあるよと、上下関係なくコミュニケーションがとれています。

彼らのワークスタイルを考え、会社設立当初からパイプラインはしっかりしようと決めていました。インフラは最新のものを揃えようと思い、当時高価だったサーバーに投資して、Nukeも3Dも全部そこでデータとして集約することにしました。

ワークフローもきっちり決めていて、フォルダー分けをし、誰が来週来てもすぐ即戦力になるようなパイプラインをつくっていました。当初はブリスベンを拠点に6人ではじめた会社なので、強くなるためには賢く、速く、効率良くしていかないと成長できないと思ったんです。▲元々教会だった建物をリノベーションした天井抜けの高いオフィス

世界に通用する日本のコンテンツづくりには、パートナーが必要。

ーーまだまだ日本ではNukeアーティストの数が少ない中、今回募集しようと思われたのは、どういう想いからですか?

高田氏:日本での制作におけるスタンダードがグローバル化し始めてきており、そのグローバルスピードに対応できる人材を日本から発掘・育成することでより高いレベルのアーティストを増やしたいという思いです。

近年、AltはNetflix(グローバル)の作品をお手伝いしてきていますが、今後Netflix Japanのお手伝いできることも楽しみにしています。Netflixでの制作はグローバル基準となっており、Netflix Japanも例外ではございません。日本の制作がグローバルスタンダードに触れるとても良い機会だと考えております。そういったチャンスが今後日本に増える中、そのチャンスを物にできるアーティストを増やすこと、弊社が今まで培ってきたNetflix(グローバル)とその他長編制作のノウハウを共有することによって、これからもより日本の映像業界に貢献できることを願っています。
色々な方々と協力しながらこの業界を盛り上げ、グローバルスタンダードに成長するためにいろいろな試行錯誤が必要な時期だと思い、Nukeアーティストを募集しています。

また、このままだと日本のコンテンツが世界から完全に置いていかれるという危機感も持っています。例えば、近年急成長しているインドにも抜かれてしまっているので、このままではインドの下請けになる可能性もあります。時代が変化する中で、日本の良質なコンテンツを日本でつくる必要性を感じています。

協業パートナーも含め、この業界を盛り上げていこうという意識の高い人たちが今集まりつつあると思います。一緒にムーブメントを起こす仲間がまだまだ必要です。

スキルがあれば世界で活躍できる仕事。

ーー日本ではNukeアーティストはまだ少ないと思いますが、ディープコンポジットの有用性が理解され、マシンパワーも進化していることで、徐々にニーズも高まっていると思います。Alt.vfxには彼らがチャレンジできる環境がありそうですね。

高田氏:そうですね。Nukeをやっている人たちは、本当にフィルムやコンポジットが好きで、それを職として続けたいという人が多いと思います。AVIDやAfter Effects、premiereなどに触れながら最終的フレームにいきたいなど、通り道として考えることもできるかもしれませんが、Nukeの場合はAfter Effectsをすでに使っていて、よりクオリティの高いフィルムの仕事がしたいとか、ハイエンドのビジュアルに携わりたくてジョインする人が結構います。

グローバルな視点で考えると、この仕事はすごく魅力的だと思います。世界各国でスタジオが動いていて、経験やセンスがあれば、世界のどこでも仕事が見つかるので。もちろん英語のコミュニケーション能力は必要ですが、それよりも個人のスキルや経験が優先されます。

頑張れば、経験を積めば、それなりの待遇を受けることができるので、結構リミットレスというか、次はカナダやアメリカに行きたいなら実現することは十分可能なので、とても可能性のある職種だと思いますね。

ーーNukeアーティストという仕事の魅力はなんでしょうか?

高田氏:私はずっとCMも手がけているんですが、CMは映画と違って、1クール程度ですぐに放送されなくなって、忘れられてしまうんです。

一方で、映画であれば長く人の記憶に残る作品をつくることができます。だから多くのアーティストは、恐らく映画の仕事もしたいはずです。

今後は、Nukeアーティストがそういった作品に携わるチャンスがすごく増える。しかも日本で活躍できます。ある程度経験を積んだら世界で活躍することもできます。

Alt.vfxはすでに11年事業が続いていて、規模は小さいけれどグローバルスタンダードな制作会社だと思っています。Nukeアーティストとして働ける機会、ポジションを用意し召集をかけたら、どういう展開になるのか、自分でも楽しみです。今後は学生ぐらいの若い世代がアーティストとしてのスキルや自信を獲得できる環境をつくっていきたいですね。

PEPSI STRONG / MOMOTARO EPISODE 4

世界に認められる作品に関われることが最大の魅力

ーーAlt.vfxの仕事環境、労働環境について詳しく教えてください。納品間際のクランチタイムには、オーバータイムが発生すると思います。納品後にゆっくり休める時間はあるのでしょうか?

高田氏:クリエイティブな仕事をするんだったら、クリエイティブな環境をつくろうということで、オフィスは広いスタジオのようなちょっと変わったつくりになっています。

ビジネスパートナーと会社立ち上げの際に話していたのは、朝起きて「よし、今日も会社に行こう」と思えるような環境にしたいということでした。

当時はコンクリートのビルで編集室がいくつか並んでいるだけのつまらないオフィスが多かったので、それは絶対やめようと誓っていました。

労働時間に関しては、勤務時間は9時から18時までで、もっとやりたい人は家で作業しています。

クランチタイムで徹夜はさすがにありませんが、本来納品後に2、3日休みたいところで、すぐに次の仕事にとりかからなければならない場合があります。

でも、あまり忙しいと社員のモチベーションも下がってしまう。HR領域に関しては、今後もっと強化していく予定です。

ーーコロナが2年以上続いていて、オーストラリアでも一時期はロックダウンがありましたね。スタジオに出向くことが難しくなる中、どのように対応されていましたか?

高田氏:冒頭のパイプラインの話は、実はリモートワークも含んでいます。数年前から社内リモートのようなかたちで、少ないスペースの中で分量の多い作業をするという意識がありました。メンバーのワークライフバランスも考え、リモートワークができるターミナルに設備投資して、家からでも作業できる環境を整えてきました。

コロナの影響で、ロサンゼルスやニューヨーク、ロンドンなどのメジャースタジオが止まってしまった時期がありましたが、それでも皆コンテンツは作り続けなければなりません。

じゃあどこに相談するかというと、遠いオーストラリアやニュージーランドなど、今まで依頼があまりこなかった国です。

今まで、ライセンスとか、セキュリティとかの問題で、小さいスタジオは除外されていました。

それがリフトされて、少し私たちの業界の中でも自由化が進んだと思います。規制が緩和されたことによって、私たちみたいな規模のスタジオにもチャンスができましたし、相手とコミュニケーションをとって仕事を協業する機会が増えたと感じています。

ーーありがとうございました。最後に、Alt.vfxで働く上で、どのようなやりがいがあるか教えてください。

高田氏:アワードを受賞するような作品に携わることができる点です。

この間のオスカーもそうですが、評価される作品に関わることができることは、みんな誇りに思っています。

中には入社して間もないアーティストが、いきなりある映画に携わってクレジットをもらうことがありました。本人も涙を流すぐらい喜んでいて、興奮しながら家族に報告したそうです。

こうした大舞台での経験をもっと多くの人たちにしてほしい。この経験を自分たちだけでなく、より多くの日本人に経験してほしいですね。これは経営者としての自分のミッションだと思っています。今回の募集は私ももちろん選考に入らせていただくので、ぜひ多くの方々とお会いしたいですね。▲11年前に会社を設立した当時の創立メンバーの写真

取材後記

VFXの領域では世界に認められる日本のコンテンツが多く見られるものの、まだまだ日本発のアーティストは多くありません。

今回のNukeコンポジターアーティストの募集は、世界で認められる作品に携わる機会があり、グローバルなキャリア形成も視野に入れることができる、クリエイターにとってまたとないチャンスです。

今回の取材を通して、「VFXの最前線で経験を積みたい」「発展途上の業界でトップランナーを目指したい」という方には最適なポジションではないかと感じました。

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