2020.09.15 (最終更新日: 2020.09.15)

私的ドキュメンタリーのインタビュー(前編)

はじめに

最近ドキュメンタリーを作ったり観たりする機会が多いのですが、インタビューがとにかく手強い!ということで自分の感じていることをシェアしたいと思います。似たような悩みを持っている制作者の方々がいれば嬉しい限りです。いろんな議論の余地がありそうですね。

インタビュー=ドキュメンタリーの支柱

ドキュメンタリー制作におけるインタビューの大切さは今更説明するまでもないですが、本人の口から言葉を引き出しストーリーを紡ぐことには代えがたい魅力があります。そこにはテキストとは違う、嘘偽りのない(テキストが嘘をついているという意味ではなく、自由度において違いがある、ということですね)感情の流れがそこにはあると思います。発言内容に加えて、いわゆる「エモさ」がきちんと感じられるか、とでも言いましょうか。

引き出すか、待つか

インタビュアー(ディレクター)の質にもよりますが、大きく二つのスタイルに分かれるかと思います。「コメントを誘導するタイプ」、「コメントの発露を待つタイプ」です。大抵のプロジェクトの場合、主に時間制約の強い案件ではほぼ「誘導型」が占めると思います。触れて欲しいキーワードやトピックを仕込んだり、インタビュー中の質問からファシリテートしていくスタイル。スクリプトを最初から用意するケースもあるでしょう(それの良し悪しは別にして)。作り手がアウトプットを制御できる反面、注意しなければ致命的な落とし穴があったりします。それは、「感情が乗らない」ということです。

なぜ「乗らない」のか

人間は複雑なものです。訓練された俳優ならいざ知らず、一般の方は人から与えられた言葉に自分の感情を乗せる訓練を受けていません。これが、インタビューで言葉を誘導したときに「感情が乗らない」ことの正体です。場合によっては「乗らない」ことが問題にならないケースもあります。例えば、コーポレート動画でPR担当が話す場合、必要な情報が一定の自然さで言葉になっていれば良いので、まず問題ありません。さらに言えば、PRの方は繰り返し同じ質問に答えることで、本人の中に落とし込まれた回答にある程度の感情を乗せるスキルもあります。ハードルは比較的低いと言えるでしょう。問題は、「ドキュメンタリー」を作る場合です。

感情を乗せるために

ドキュメンタリー制作におけるインタビューは取材対象者の感情を「乗せる」ことが求められます。そしてこれが、本当に難しい。例えば、意図したコメントを引き出せたとしても感情が乗っていなければ言葉が上滑りしているだけで視聴者は感情移入できない…。感情でしか、感情を動かすことができないということですね。ではどうするのか。以下、ポイントになる要素を抜き出してみました。

  • 慣れ
  • 忍耐
  • 解放

一つずつ、詳しくみていきましょう。

慣れの力

インタビューされる状況は非日常です。まず、この非日常に慣れてもらう必要があります。人によっては緊張してうまく言葉が出ない可能性がある。逆に場慣れしていれば、相手の用意している答えしか出てこないかもしれない。だからこそ、「最初の15分は捨てる」覚悟が必要です。まず特殊な状況に慣れてもらい、緊張をほぐし、かつ相手が仕込んでいる答えを使い果たすこと。そしてようやくスタート地点に立つことができるでしょう。一方で、緊張感があることは普段よりも一段上のギアで話す準備ができている証拠なので、非常にいいサインです。

耐え忍ぶ

我慢強くあること。一見関係のない発言が続いていても、インタビュアーに話す、という行為はいわばものを書くことに近く、本人の思考に繰り返しフィードバックしていきます。それをいかに、邪魔せずに促進するか。本人が「そうだ、自分はこういうことを考えていたのだ!」という発見があること。普段の日常会話でもよくあることですよね。これは、会話の聞き手が傾聴モードに入っていなければできないことです。そして単に一緒になって盛り上がらずに、聞き手としてのクールな態度は崩さないこと。この傾聴し、耐えることはインタビュアーにとって一番消耗が激しい時間帯になりそうです。

そして解放へ

最後に、インタビューを終了しても諦めない、ということ。終了と同時に緩む瞬間、人の本質が立ち上がる時があります。ここで軽いクールダウンをしつつも、もしかしたら、一番聴きたかったことをぶつけてみるのも手です。もちろん、カメラはずっと回っています。取材終了時はある種のボーナスステージと考えてみるのもいいかもしれません。

以上、いかがでしたでしょうか。答えありきのインタビューではなく、未開の森に分け入るつもりで臨む心構えも、ドキュメンタリーのインタビューには必要です。そこにはきっと新しい発見があるはず。一番必要なのは、実は勇気なのかもしれません。

ざっくりとした大まかな流れを抜き出しただけなので、インタビュー中の細かいテクニック等は後編で触れていきたいと思います。少しでも現場での参考になれば幸いです!

追記

参考ドキュメンタリー

ご覧になった方も多いかもしれません。圧巻のドキュメンタリーです。ファッションに興味のない自分も、この映画のストーリーテリングには釘付けになりました。インタビューの丁々発止のさまが実にエキサイティングです。Amazonプライムで観れるので、ぜひチェックしてみてくださいね。

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