はじめに
普段、何気なく目にしている字幕。
見やすさにはちょっとしたルールがあるのをご存じでしょうか?
翻訳字幕(外国語の音声や文字を日本語化したもの)に限らず、日本語のインタビューの書き起こしなども、ちょっとした工夫でぐっと見やすくなります。
そこで複数回に分けて、「映画っぽい字幕のつけ方」のポイントをご紹介していきたいと思います。
~◆~ ぜひ、以下の記事も合わせてご覧ください。~◆~
映画っぽい字幕のつけ方2 ~表示位置、フォント~
映画っぽい字幕のつけ方3 ~区切り方、1枚の長さ、字幕間~
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その字幕、最後まで読めますか?
1つめのポイントは字幕の表示時間に対する文字数です。
翻訳字幕では、
日本語の場合「1秒4文字」
英語の場合「1秒12キャラクター」(アルファベット12個)
が基本です。
例えば、3秒表示する日本語字幕であれば、Maxで12文字となり、これが無理なく読める文字数と言われています。
とはいえ、実際には「1秒4文字」以上で字幕が作られていることも多々あります。
・ カタカナ(ひらがなや漢字よりスッと目に入る)が多い
・「いらっしゃいませ」など、ひと塊として認識できる決まったフレーズ
・作品の世界観より、情報を伝えることを重視している(説明動画など)
といった場合などです。
「1秒4文字」はあくまで目安として、初見でも読み切れるかどうかが判断基準になると思います。
ちなみに、日本語の発話を日本語で書き起こして表示する場合、音情報と文字情報が同じなので「1秒4文字」よりも多く読むことができます。
聴覚障害の方が映像作品を楽しめるようにするための、いわゆるバリアフリー字幕(日本語の作品につけられた日本語の字幕)では、1秒当たりの目安文字数は5~7文字です。
映画の字幕にはアレがない
2つめのポイントとして、翻訳字幕(バリアフリー字幕も)では句読点を使用しません。
理由としては、本のような文章とは異なり、字幕はそもそも口語なので句読点が不要、など諸説ありますが、
「。」 → 全角スペース
「、」 → 半角スペース
で代用します。
ただ、字幕翻訳をしている経験上、全角スペースの使用頻度は高くありません。
というのも、1枚の字幕の中で複数の文が存在するのはレイアウト的に美しくないからです。
例えば…
悪くないのですが、何だか字幕が左右に分かれているように見えます。
こうした場合は改行するか、字幕を2枚に分ける方が(個人的感覚かもしれませんが)目に入りやすいと思います。
※1行に2文あるのがNGというわけでは決してありません。
一方、半角スペースは、ひらがなや漢字が連続する際の読みにくさを解消するために使われることもあります。
以下に2つの例を挙げますが、どちらも半角スぺースのある文章の方が読みやすいですね。
太郎にいつもからかわれた
↓
太郎にいつも からかわれた
最近流行りなんでしょ?
↓
最近 流行りなんでしょ?
文字が画面を埋め尽くす?
3つめのポイントは、字幕1枚についての文字の量です。
コンテンツやアウトプット先によって多少の違いはありますが、
日本語字幕の場合、横字幕「13~16文字×2行」 縦字幕「11~13文字×2行」
英語字幕の場合、「40キャラクター×2行」
が一般的です。
字幕が3行や4行になっていたり、画面の左端から右端までめいっぱいにあったりすると、見ている人は視線を上下左右に動かさなければならず、負担になってしまいます。
特にネット配信の作品では、スマートフォンで見ることを意識してか、1行の最大文字数は少ない傾向にあるようです。
ちなみに、半角の文字・記号・スペースは0.5字として字幅にカウントします。
最後に
見ている方が映像に集中でき、かつ違和感なく作品を理解できる「透明な字幕」が字幕の理想と言われています。
今回は3つに絞ってお話ししましたが、すぐに取り入れられるポイントはマニアックな内容も含めてほかにも色々あります。
この続きは、また別の記事でご紹介したいと思います。
伊納華@Hana_Ino
英日・日英翻訳家 東京、アメリカLAで翻訳を学び、映像の字幕や文書の翻訳を手掛けるほか、海外ロケのお手伝い、訪日外国人のアテンドやプロジェクトマネジメントなどをしています。 https://www.inahofilm.com/translation...
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