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DaVinci ResolveならMacBook Proで8K60pがリアルタイム再生できる(4K60pはもちろんのこと)という話

年度が変わり、桜が満開になり、花粉症がひどくなってきたら、DaVinci Resolveのメジャーアップデートがリリースされる季節です。バージョンアップのニュースまではまだ時間があるので、それを待つ間、MacBook Proで8K60pがサクサク動いたという話でお楽しみください。いささかニッチですが、たぶん2、3人くらいは喜んでいただける方がいると期待しながら書きます。

検証条件

用意した素材の解像度は7680x4320p59.94(8K60p)、コーデックはProRes 422 HQです。MacBook Pro 2018のスペックは、16GBメモリ、2.2GHz Intel Core i7 6コア、Radeon Pro 555X 4GBで、価格はだいたい25万円程度。DaVinci Resolve 15.3で、内蔵SSDに入れた8K素材がどのくらい動くか試してみました。Blackmagic eGPUは使用していません。


※6コアのCPUというのがわりと重要です。4コアだとわずかに足りない可能性が高いからです。

検証結果

なんと──私も驚いたのですが──、8K60pがリアルタイムでMacBook Proで動きました。フレームレートインジケーターは「59.94」で緑色を表示しました。カーブをいじったり、カラーホイールを動かしたりしても、パフォーマンスが落ちることはありませんでした。8K60pが走るので、当然4K60pもサクサク動きました。エディットページで4K60pを6レイヤーくらい重ねても問題ありませんでした。

設定

最適化メディアもレンダーキャッシュも使っていません。プロキシモードもオフです。ただタイムライン解像度は8Kではなく、4K60p(2160p59.94)を使用しました。8Kにするとさすがにリアルタイムでは走らなくなるからです。しかし現段階で8K素材を編集、グレーディングする際に8K60pでモニタリングする環境を作るのは一握りのお金持ちのみに許された特権なので、タイムライン解像度を8K60pにしてリアルタイムで再生できたとしても、あまり現実的には実益はないと思います。ということでまあ勘弁してください。素材は8K60pなので、4K60pのタイムラインに展開するだけでもかなりの負担がマシンにかかります。

モニタリング環境も用意しました。タイムライン解像度を2160p59.94(4K60p)、モニタリング解像度を2160p59.94に設定して、UltraStudio 4K Extremeをつないでみました。そしてSmartView 4Kに2160p59.94を12G-SDIで送ってみました。するとこの場合にも8K素材をリアルタイムで再生することができました。MacBook Proのプレビュー画面も、SmartView 4Kのモニタアウト画面もヌルヌル再生されていました。本来はプレビュー画面とモニタアウト画面の両方で映像を再生するのはかなり負担がかかるはずなんですが。

考察

なぜ25万円のMacBook Proで8K60pを扱えるのでしょうか? 秘密はApple Metal 2にあります。Metal 2はGPUの演算方式の一つであり、最近のMac mini、iMac、iMac Pro、MacBook Pro、そしてもちろんBlackmagic eGPUでサポートされています。NVIDIA CUDAのApple版だと考えればわかりやすいかもしれません。MacBook Proで8K60pが難なく扱えるのは、DaVinci ResolveのMetal 2への最適化が非常に望ましい形で進んでいるためです。

Metal 2はApple社によってここ数年精力的に開発されてきましたが、DaVinci Resolveはその進化をそのまま取り入れることでパフォーマンスの面で大きな恩恵を受けることができています。Apple社のハードウェアに入っているAMDのGPUは、NVIDIAのGPUに比べてスペックが劣るとされていて、それは多くの面で真実なのですが、このMetal 2を考慮に入れるとそう簡単に断言できなくなってきます。GPUが引き出すことのできるパフォーマンスの水準は、GPUのハードウェアとしてのスペックだけではなく、GPUの演算方式と無縁ではないからです。スペックが低くても演算方式が優秀ならパフォーマンスは大きく改善されます。じっさい、うちで試した限りでは、macOSにおけるAMD GPUのパフォーマンスは、Windowsにおける同程度のスペックのNVIDIA GPUのパフォーマンスを上回る傾向があります。

DaVinci Resolveは世の中でMetal 2を最も有効に活用した編集ソフトウェアと言えるかもしれません。その証拠といってはなんですが、昨月発表された新型のiMacの宣伝写真にも、DaVinci Resolveが使われています。2013年にMac Pro(ゴミ箱)がリリースされて以来、編集システムとしてのMacの貧弱さが嘆かれることがありましたが、少なくともDaVinci Resolveに限っていえば、Macが最近はだんだん盛り返してきています。これは心強い。

新しく発表されたiMacも、20万円を切る値段ながら、DaVinci Resolveに最適なマシンに仕上がっています。まだうちでは試したことはありませんが、スペックだけから判断するなら、下のスクリーンショットのスペックのiMacで8K60p、4K60pが動作すると推測できます。少なくとも全部のせのMac Pro 2013よりもはるかに優れたパフォーマンスが期待できます。

結論

別の編集ソフト(匿名希望)も試してみました。同じMacBook Proの環境で、8K60pが動作するか検証してみましたが、こちらでは8K60pはリアルタイムで再生できませんでした。おそらくDaVinci ResolveほどMetal 2への最適化が進んでいないのだと見受けられます。

Macを使っていて、サクサク編集したい、最高のパフォーマンスを引き出したいということなら、DaVinci Resolveを使えばまず間違いない──少なくとも現時点では、そういう結論になりそうです。

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