2019.04.16 (最終更新日: 2019.10.26)

DaVinci Resolve 16の新機能ベスト16

4月8日、DaVinci Resolve 16のパブリックベータ1が発表されました。DaVinci Resolve 16はメジャーアップデートで、100種類を超える様々な新機能が追加されています。アップデートはいつもどおり無償です(なぜ無償なのかはこの記事をご参照ください)。

毎度のことながら、4月のメジャーアップデートには数えきれないほどの新機能、機能改善、不具合修正などが含まれていて、その全容を知るのはなかなか大変です。アップデートと同時にリリースされた新機能ガイドは86ページの分量がありますし、主要な新機能だけまとめた解説動画も25分あります。

そこでこの記事では日本語で手っ取り早くDaVinci Resolve 16の新機能について知りたいという要望に応えるため、「新機能ベスト16」と題して、DaVinci Resolve 16の新機能を16個厳選して紹介します。16個にまとめきれなかったその他の新機能も、記事の下に紹介しているので時間のある方はそちらもご参照ください。

※6月11日、日本語の紹介動画がアップロードされました。こちらもどうぞ。

全般

1. Cutページ

DaVinci Resolve 16がリリースされる前、ウェブサイトのトップページで「編集の革命が始まる」と煽っていたのはこのページのことです。Cutページについてはまた機会を改めて詳しく紹介したいと考えていますが、端的に言えば、このページはスピード重視の編集を求められる際に真価を発揮するように設計されています。時間の限られている状況でいかにクオリティの高い編集をできるか、編集という作業からどれだけ無駄を省けるか、こういったポイントを突き詰めていった結果、Cutページが誕生することになりました。

一点誤解のないようにしておきたいのは、Cutページはエディットページの単なる簡易版というわけではないことです。ビギナー用編集ソフトということではない。もちろんCutページを編集初心者の方のための入門編として扱うこともできますが、それよりはむしろエディットページを触ったことのある方、他の編集システムで編集をしたことのある方に是非試していただきたいページです。使った上で「編集の革命が始まる」というのが誇大広告になっていないかどうか判断してもらえると嬉しいです。

Cutページの特徴を一言でまとめるなら、「ノンリニア編集の高機能にリニア編集のスピードを融合したページ」と表現できるかもしれません。昭和末期から平成初期がリニア(テープ)編集の時代、平成中期から後期がノンリニア編集の時代だとするなら、令和に突入する今、その両方のいいとこ取りをしようじゃないかということですね。温故知新というか。

このCutページについてはまだまだ書き足りないので、詳しい紹介はまた別の機会に譲ります。

※その後、カットページについての記事を書きました。よろしければご覧ください。

2. DaVinci Neural Engine

DaVinci Resolveに本格的にAI、ディープラーニングのテクノロジーが搭載されました。これまでもResolveFXのフェイス修正などの機能にAI技術は使用されていましたが、DaVinci Resolve 16からはそのAI技術がパワーアップし、より数多くのツールに活用されるようになりました。このDaVinci ResolveオリジナルのAIテクノロジーは、DaVinci Sensei、じゃなかった、DaVinci Neural Engineと呼ばれています。

DaVinci Neural Engineが使用されているツールを列挙します。この中のいくつかはこれからのベスト16のリストの中で後述します。

  • 自動カラコレ
  • 自動ショットマッチ
  • 顔認識によるクリップ整理
  • フレーム補間(Speed Warp)
  • 音声伸縮(Elastic Wave)
  • 超解像技術(Super Scaling)
  • 自動オブジェクト除去(ResolveFX Object Removal)
  • スタイル変換(ResolveFX Stylize)

3. 必要のないページを無効にする

DaVinci Resolveはいまやファイル管理、編集、合成、カラー、音声、エンコーダーなどといった6つくらいのツールを組み合わせた類を見ない巨大なソフトウェアに進化しています。DaVinci Resolve 16には7つのページが搭載されていますが、すべてのツールを使うという方は逆に珍しいかもしれません。

そこでこのバージョンから、任意のページを消したり、下のページ選択セクションを見えなくしたりすることができるようになりました。ページを無効にするには、プルダウンメニューの「ワークスペース」から「Show Page」で任意のページのチェックを外してください。「Show Page Navigation」から下のページ選択セクションを完全に消してしまうこともできます。

エディットページ

4. タイムライン別のフレームレートが設定可能に

長年にわたりDaVinci Resolveには他の編集ソフトウェアに存在しない一つの癖がありました。それは一度プロジェクトのタイムラインフレームレートを決めたら、それをプロジェクトの途中で変更できないというものです。59.94fpsの書き出しをしないといけないのに、プロジェクトを24fpsで作ってしまったら、もうおしまいです。どうすることもできません。この仕様には涙を呑んだ人も多いはずです。

DaVinci Resolve 16からはタイムラインごとにフレームレートを変更することができるようになりました。新規タイムラインを作成した際に、ダイアログの左下に出てくる「Use Custom Settings」を押すと、プロジェクト設定をタイムライン単位で変更できるダイアログが出てきます。「Format」の項目でタイムラインフレームレートを変更できるほか、ビデオモニタリング設定なども自由に変更できます。たとえば同じプロジェクトの中で1080p.23.98、1080i59.94、2160p59.94のタイムラインを別々に作成して、それらを同時に作り上げていくことができるわけですね。

5. 調整クリップ

他のソフトウェアで言うところの調整レイヤーのような機能です。「エフェクトライブラリ」→「ツールボックス」→「エフェクト」と進み、調整クリップを選択してください。調整クリップにはあらゆるエフェクトが適用できます。エディットページのインスペクタの項目も、ResolveFXのエフェクトも、カラーページのカラーグレーディングも、ちゃんと動作します。長さも伸縮できます。

タイムラインの中での調整クリップの位置も重要です。調整クリップの下のビデオトラックにあるクリップは調整クリップの影響を受けますが、その上のビデオトラックにあるクリップは影響を受けません。たとえば動画素材にはカラコレを調整クリップで適用したいけど、その上のタイトルにはカラコレは適用したくないというシチュエーションでは、V1トラックに動画素材、V2トラックに調整クリップ、V3トラックにタイトルという風にクリップを配置しましょう。下の図では、V2の調整クリップでResolveFXのビネットエフェクトを適用しているため、V1の映像にビネット効果がもたらされていますが、V2よりも上のレイヤーにあるV3のFusionテキストは影響を受けていません。

6. 顔認識によるクリップ整理(有償版のみ)

これはDaVinci Neural Engineをフル活用した機能です。メディアプールにある素材を顔の違いに基づいて整理してくれます。たとえばドキュメンタリー番組やインタビュー動画を作る際、出演者によってフォルダを分けることができます。

使い方はシンプルです。まずメディアプールで対象となるクリップを複数選択します。そして右クリックして「Analyze Clips for People」を選びます。AIが分析を開始します。分析が終わったら、「People」というダイアログが表示されます。すでに顔の違いに基づいてソースクリップがフォルダ分けされているので、自分でそれぞれのフォルダに名前をつけます。写っている人の名前をつけるといいでしょう。

最後に、「環境設定」の「ユーザー」、「編集」のタブで、「Automatic Smart Bins for People Metadata」にチェックを入れます。メディアプールのスマートビンに、「People」というフォルダができていて、その中に人物の名前ごとの複数のフォルダが含まれています。

Fusionページ

7. Fusionの劇的なパフォーマンス向上

DaVinci Resolve 16ではFusionの新機能は含まれていませんが、その代わりにパフォーマンスの改善が含まれています。これまでDaVinci ResolveのFusionページに対して、「機能は十分なのだが、挙動が遅い、パフォーマンスが悪い」という不満の声が一部から聞かれていましたが、今回のバージョンアップによってその問題が格段に改善されました。

3Dツール、マスクツール、カラーツールをはじめ、Planar Tracker、Camera Tracker、Vector Motion Blur、Dissolve、TimeSpeed、TimeStretchなどのツールがGPUアクセラレーションの恩恵を受けて処理速度の面で向上しています。Planar TrackerCamera Trackerについては、精度も向上しています。

DaVinci Resolve 16のリリースに合わせて、Fusion Studio 16もリリースされていたのにお気づきでしょうか? Fusion Studio 16はFusion Studio 9からのアップデートで、DaVinci ResolveのFusionページを1つのアプリケーションとして取り出したような感じだとお考えください。エディットもカラーも興味はない、必要なのはFusionだけだ、という方はDaVinci ResolveのFusionページではなくFusion Studio 16をお使いください。

カラーページ

8. 各種カーブの背景に波形を表示

YRGBカーブやVsカーブの背景に波形が表示されるようになりました。どこの箇所にデータが多いのか、一目瞭然でわかります。

たとえばHue Vs. Satカーブで波形を表示した状態で作業をすれば、具体的にどこのポイントを調整すれば色を濃くしたり薄くしたりすることができるか理解できます。

デフォルトではこの波形はソースの波形を示していて、カーブをいじっても変更されることはありませんが、カーブのセクションの右上のメニューから「Histograms」→「Output」と選択すると、カーブ適用後の波形を表示させることができます。

9. スコープの飛躍的な進化

お待たせしました、一部のユーザーから強く望まれていた色域スコープが追加されました。しかしスコープに関する変更点はそれだけではありません。主なスコープの変更点は次の通りです。

  • GPUアクセラレーション
  • ガマット(色域)スコープ
  • ローパスフィルター
  • YRGB、YCbCrモード
  • 波形のクオリティをLow、Medium、Highから選択
  • 色つきのベクトルスコープ

10. AIによる自動カラコレ、自動ショットマッチ

DaVinci Neural Engineのおかげで、自動カラコレ機能と自動ショットマッチ機能が優秀になりました。自動カラコレ機能は、カラーホイールのセクションの左下の「A」のマークを押すと使用できます。これまではこの機能がやれることといえば波形を広げる程度で、そのカラコレの腕前は決して褒められたものではなかったですが、今回のアップデートでより違和感のない素直なカラコレが実現できるようになりました。ぜひご自分の素材で試してみてください、きっと驚くと思います。場合によっては、人工知能に任せた方が、自分の天然知能を使っていじるより優れた結果になることもあります。

ResolveFX

11. Object Removal(有償版のみ)

この新しいResolveFXもDaVinci Neural Engineを活用しています。今回のアップデートの中でいちばん驚異的な機能と言えるかもしれません。映像の中に存在する人物やオブジェクトを削除して、その削除されたスペースにあるべき背景を作り出すという、数年前には考えられないようなとんでもないことを実現してくれます。こいつはすごいですよ。

Object Removal 使用前

Object Removal 使用後

動画はこちらからご覧ください

ノードの組み方にはルールがあります。最初のノードでは除去するオブジェクトをパワーウィンドウで囲み、それをトラッキングします。次のノードではResolveFXのセクションからObject Removalを選択して適用しますが、最初のノードとは緑の線(ビデオ出力)だけではなく青い点線(アルファ出力)も接続します。Object Removalの項目で「Scene Analysis」を選択すると、DaVinci Neural Engineが勝手にオブジェクトの除去と背景の生成を担当してくれます。

一点注意事項があります。Object Removalは、オブジェクトが動いているか、もしくはカメラが動いているときにうまく動作します。カメラが固定で、オブジェクトが動かない動画では、Object Removalはうまく動作しません。なぜなら背景を作り出そうにも、そのための素材が見つからないからです。

Fairlight

12. 音声伸縮(Elastic Wave)

音声をピッチを変えずに伸縮できます。映像素材と音声が若干マッチしていないときなどに、音声を縮めたり伸ばしたりすることができます。

Fairlightページで音声素材を右クリックすると、Elastic Waveという項目が出てきます。それを押すと、そのクリップがElastic Waveモードになります。あとはCommand(Ctrl)ボタンを押してクリップの途中にポイントを打って、左右にポイントを操作するだけで、音声を伸び縮みさせることができます。

13. ラウドネスツールの拡張

ラウドネス関連のツールが拡張されました。日本に馴染みのあるTR-B32のほか、BS.1770-4などの合計6つの規格が追加されています。

音声のノーマライズも、ピークに基づいたものではなく、ラウドネスに基づいた方式で使用できるようになりました。

ラウドネスで測定した結果をグラフで表示することもできます。このグラフをアクティブにするには、今回追加されたメインバスをオーディオトラックとして表示する機能を使う必要があります。まずタイムライン上のオートメーションをオンにします。次に「インデックス」の「トラックリスト」でMain 1の左側の目のマークを有効にします。そうするとタイムラインの下にメインバスのトラックが表示されます。あとはそのトラックを上下に広げて、「Loudness History」を有効にすれば、ラウドネスの分析結果をグラフで常時表示させることができます。

14. イマーシブ3Dオーディオ、ハイレゾオーディオに対応(有償版のみ)

Dolby Atomosなどのサラウンドオーディオの規格に対応を開始しました。

Fairlightのプルダウンメニューから「Immersive」と選択すると、B-Chain Control、Spaceview Scopeという2種類のサラウンド関連のツールを使用することができます。Spaceview Scopeでは、サラウンド音声を視覚的にわかりやすくモニタリングできます。

ハイレゾオーディオ(96kHz、192kHz)への対応については、残念ながらDaVinci Resolve 16 Beta 1には間に合いませんでした。とはいえDaVinci Resolve 16でのハイレゾオーディオへの対応は確定しており、今後のどこかのベータバージョンで機能として追加される予定ですのでもう少々お待ちください。

デリバーページ

15. YouTube、Vimeoへの直接アップロード

DaVinci Resolveから、YouTubeやVimeoに直接クリップをアップロードすることができるようになりました。使用するには、「環境設定」の「システム」タブ、「Internet Accounts」から任意のサービスにログインしてください。デリバーページでの書き出し時には、限定公開にするか一般公開にするかなどといった項目も設定できます。

16. 編集のない箇所は再レンダリングなしにクリップを書き出し可能に

あまり目立たないけど大きな意味を持つ機能です。他のソフトウェアでスマートレンダリングと呼ばれている機能と同じように、再レンダリングの必要のない箇所はレンダリングせずに書き出すことで、デリバーページでの最終ファイル出力にかかる時間を削減することができます。

たとえば1時間のProResファイルを書き出した後で、1箇所の間違いが見つかったとします。これまではたとえ1箇所の間違いを修正しただけだとしても、1時間のクリップを再度レンダリングし直さないといけませんでした。しかしこのバージョンからは、コーデックの仕様がそれを許す限り、そのような状況で再レンダリングが必要なくなります。

該当の設定項目は「Bypass re-encode when possible」です。デリバーページの「レンダー設定」→「ビデオ」タブ→「詳細設定」の一番下にあります。

ベスト16には入らなかったけど誰かにとってはきっと嬉しい新機能42

全般
☆ Frame.ioとの統合

☆ Quick Export(「ファイル」プルダウンメニューから)

☆ 自由なセーフエリアの設定が可能に

☆ DaVinci Resolveのバージョンアップデートがあるかどうかチェック

☆ DaVinci Resolve StudioのUSBドングルでFusion Studioを起動可能

☆ Resolve Color ManagementでNikon N-Logをサポート

エディットページ
☆ AIを使用した最高品質のリタイム処理、Speed Warp(有償版のみ)
比較動画はこちらからご覧ください。

☆ カラーページのスタビライズ機能がエディットページのインスペクタに登場
比較動画はこちらからご覧ください。

☆ OpenFX、ResolveFXをキーフレームカーブエディターで操作可能に

☆ 音声波形の表示方法を変更可能に

☆ 複合クリップを作成時にアルファチャンネルを保持
お待たせしました。これまではアルファチャンネルつきのクリップを複合クリップにした際、アルファが消滅していましたが、このバージョンからは、複合化する元のクリップが何個あろうとも、必ずアルファがちゃんと保持されるようになりました。

Fusionページ
☆ Fusionのキャッシュの安定性の向上

☆ FusionのCompositionが名前の変更に対応

☆ FusionページのビューワーとWacomタブレットの互換性が向上

カラーページ
☆ カラーの属性ごとのペースト

☆ ギャラリーにおけるスチルのソート

☆ ギャラリーにおけるスチルの命名

☆ ギャラリーでカーソルをスクラブした際にどのような挙動になるか指定可能に

☆ 分割スクリーンモードにギャラリー関連のオプションを2つ追加

☆ RGBのうち単一のチャンネルを表示

☆ タイムラインクリップ同士をスチル比較する際にギャラリーのタイムラインフォルダと連動
クリップサムネイルを右クリックして、「タイムラインクリップをワイプ」と選択します。その後、ギャラリーのタイムラインフォルダでクリップを選ぶとそのクリップがワイプで比較されます。

☆ ミニタイムラインでIn点、Out点を打ってループ再生させると、その2点の間をループ再生
クリップをまたいだ場合もちゃんとループ再生されます。

ResolveFX
☆ ResolveFX Chromatic Aberration(有償版のみ)
色収差補正です。

☆ ResolveFX Chromatic Adaptation
厳密な色温度変換です。

☆ ResolveFX Pencil Sketch(有償版のみ)

☆ ResolveFX Analog Damage(有償版のみ)

☆ ResolveFX Stylize(有償版のみ)
さまざまなスタイルのある映像を作り出す機能。DaVinci Neural Engineを使用しています。

☆ ResolveFXがカラーページのキーフレームエディターに対応

Fairlightページ
☆ 新たなオートメーションメニュー

☆ オートメーションプレビュー

☆ メインバス、サブバス、Auxバスのトラック表示

☆ Pro ToolsからのAAFファイルに完全対応

☆ B-Chain Control(有償版のみ)

☆ FairlightFX Frequency Analyzer

☆ FairlightFX Limiter

☆ FairlightFX Phase Meter

☆ FairlightFX Dialog Processor

☆ FairlightFX Foley Sampler

デリバーページ
☆ H.264、H.265のレンダリングがさらに高速に

☆ H.265で書き出しをする際、8bitか10bitか選択可能
いささかわかりにくいんですが、「メイン」が8bit、「メイン10」が10bitです。

☆ Grass Valleyコーデックの書き出しの際にQuant Scale、Maximum Frame Sizeの設定が可能に

☆ Panasonic SHV 8Kコーデックに対応(有償版のみ)

Panasonic AVC 8Kの項目を出すには、プロジェクト設定で以下のように59.94fps、ドロップフレームタイムコードの設定に変更してください。

25クリップする
クリップしておくと
あとからいつでも
見返したりできます。

    コメント

    • Tatsuya Matsubara
      DaVinci Resolve 16で、AAFをデリバーページから書き出す際、フェーダー箇所が反映されないのは改善できるのでしょうか?また、エディットページでステレオの音声トラックが片方チャンネルのみ表示されてしまうというのも、同じく改善されるのでしょうか??