2019.06.19 (最終更新日: 2019.07.22)

【VGT】『あなたの愛で決まる』インタビュー撮影の準備から編集まで。

インタビューをめぐるインタビュー

はじめに
先日開催された「VGT2019」の中で、反響の大きかったセッションのダイジェストをご紹介致します。「不二家ミルキー」のTVCMや、数々のサプライズ演出ムービーで知られる、大石健弘さんをスピーカーにお迎えして、ドキュメンタリー監督の岸田浩和さんが、インタビュー撮影の極意についてお聞きしました。

登壇者

ゲスト : 大石 健弘
2007年 横浜国立大学 教育人間科学部卒業後、葵プロモーション(現 AOI Pro.)入社。
制作部を経て、現在はフリーのディレクターとして活動中。 代表作に「不二家ミルキーみんなの笑顔篇」「マクドナルド 募金してくれて、ありがとう」「バンホーテンココア 理想の母親」等 ライフワークとしてもサプライズ映像をYouTubeで多数公開し、その多くがテレビなどで紹介されている。株式会社Happilm代表。AOI Pro.ビデオグラファーチームアドバイザー。

ファシリテーター : 岸田 浩和
ドキュメンタリー監督、映像記者、株式会社ドキュメンタリー4代表。VICE JAPANやYahoo!ニュース特集などニュースメディア向けのドキュメンタリー取材や、企業向けのプロモーション映像制作を行う。シネマカメラを用いた撮影とナレーションを用いない編集が特徴。近作の「SAKURADA Zen Chef」は、2016年のニューヨーク・フード映画祭で最優秀短編賞と観客賞を受賞した。

インタビューをする時に意識していることは?

僕から「こんな風に言ってください」とお願いすることはほぼなくて、ドキュメンタリーばかりやっているからか言わされているのってすぐ自分で分かるんですよね。
それがすごく気持ち悪いので、
なるべく本人の言葉で言ってもらえる努力はしてますね。

具体的に作品をお見せしときたいなと思ったので、去年撮った「WHILL」という新しい電動車椅子のインタビュー中心のドキュメンタリー作品をご覧ください。

良いインタビューとは?

何が良いインタビューなんだろうと考えた時に、

リアルで人の心を動かすもの。表面的ではなく、正直であるもの。

心の中で本当に思っていることがリアルなものであって、正直なものが人の心を動かす、それが良いインタビューなんじゃないかなという定義をしてみました。

動画のインタビューって雑誌のインタビューと違って、撮った声しか素材として使えないですよね。
雑誌のインタビューの場合、聞いた雰囲気でわかったことや
暗黙の了解の話を補足することもできるし言い換えもできたりと自由だと思うんですが

動画の場合、撮ったものしか材料にならないということで

答えは収録した「声」にしか存在しない

というのがすごく大きな特徴なんじゃないかなと思っています。

じゃあそんな大事な声のために何ができるのかと考えた時に
工程が3つあるんですが「準備」「撮影」「編集」のそれぞれに
努力できること・意識できること
があると思います。

いいインタビューをするためには? 準備編

Q:準備の段階で大切なことは?

まず一番大事なのは正しいテーマですね。
そしてそれを元にした興味と自分の意見を持つこと。
同意でもいいですし、疑いでも大丈夫です。なにより意見を持つことが大切。

Q:誰に対する共感なのか?

例えばWHILLだったら、「何でWHILLを選んだんだろうか」とか
「何でWHILLに乗ってこの撮影に出演することに快諾してくれたんだろう」といったことまで、

一つ一つ自分に問いかけて自分なりに解釈し相手のことを知ろうとすること

が第一歩だと思います。逆に共感できない部分も中にはあるかもしれないし、
共感できないからこそ聞いてみる、みたいな手段もとれると思うのでまずはテーマを自分なりに理解してみることが大切です。

Q:どうやってストーリーをつくっているのか?

僕は広告を作ることが多いので、広告としての最終的なメッセージだったりとか着地点が何かしらあって、

着地点へどういう風にインタビューの素材を繋げていくのか、自分なりにまずストーリーを作ります。その後、

そのストーリーを成立させる言葉を引き出すためには、どんな質問があるといいのか

逆算して導き出します。

インタビュー相手について何も知らなかったときは、クライアントさんに聞いてみたり、その人自身や似た境遇の人の資料を探してみたりして、それらを元に、一回自分で想定して具体的な言葉に落としこむ感じですね。

Q:質問する時に意識していることは?

どういう順番で質問をしていくべきかを相手の気持ちに立って想定することで、
正直な意見を引き出したり、相手の心に入っていくきっかけをつくることができます。

全く使う想定のない質問を最初にして、
徐々に深掘りしながら本人の心に入っていくといったインタビューをすることも多いです。

Q:50mmレンズを使うことへのこだわりとは?

撮影する場所や、レンズ、撮影は手持ちかFIXかなど様々な構成要素があります。
その中でも、レンズの焦点距離とコミュニケーションの距離感ってすごく関係していると思います。
例えば撮影でなくとも相手との距離が近い状態だと話しづらいってありますよね。

それがレンズにも宿っていると思っていて、「35mm/50mm/85mmどのレンズで撮影するか」の使い分けの定義を自分なりに持った方が良いと思います。

僕が一番好きなレンズは50mmで、35mm以下だと撮りづらいなと思うときが多いんです。
インタビューをワイドで、かつFIXで撮ったりすると説明的で「解説してます」みたいな印象を与えてシーンの熱量が冷めてしまうこともあるので。

その人のコミュニケーションのとり方がレンズに反映されていると思います。

そして作品の内容によってコミュニケーションも使い分けるべきです。

Q:インタビューをする時に一番大切なことは?

思い通りにいかない撮影もたくさんあります。そんな時に、何が大事なのか?
を明確にしておくとブレにくいです。
とにかく自然体で話して欲しいとか、インタビューをするタイミングが大事とか。(例えばWHILLの場合なら初めて乗った直後など)
それなのに、例えば撮影の場所とか機材の豪華さにこだわりすぎて、
インタビューそのものがおざなりになるのは良くないです。

岸田さんと一緒にやったインタビュー撮影でも、その方が住んでる近くのよく行く公園に来てもらってインタビューをしましたよね。

周りから見るとロケハンを適当にやっているように見えたかもしれないんですけど、
自然体で話してもらうことが大事だったので、

相手がリラックスして話しやすい環境という視点でロケーションを決めました。

いいインタビューをするためには? 撮影編

Q:インタビューを自分で行うことの意味

撮影において大事なことはインタビューは自分で行うということですね。
ときどき聞くんですが、インタビューは自分じゃなくて担当者が行いましたってことありませんか?

最初にも言いましたが、正しい理解をしないと良いインタビューは撮れません
自分自身でストーリーや質問リストを作ったり、理解・共感をした上で質問することが
インタビュー撮影の第1条件だと思うので、絶対他人に譲っちゃいけないと思っています。

Q:具体的に話を掘り下げるコツは?

一つの内容を具体的に深掘りする
例えば「りんごが好き」という事だけでも、「何でリンゴが好きなんですか?どういうところがりんごの良さなんですか?」とかどんどん聞けると思うんです。

「リンゴが好きです」っていう言葉が欲しいとしても、
仮にそれだけしか欲しくないと思ってても

その周りにある情報を一緒に聞くことで

「リンゴが好きです」じゃなくて「りんごを毎日食べることが大好きなんです」
って言うかもしれないし、僕らも知らないような
「実は昔りんごが食べれなくて」みたいな話も引き出せるかもしれないです。

そういった想定できなかった言葉にこそリアリティは潜んでいるので
聞きたいことの周辺を具体的にどんどんど深掘りしていくことが必要です。
そのためには自分の興味がないと聞けないので、やはり予めの準備が大事になってくるんですね。

三つ目は言葉遣い。

答えてくれた言葉に主語がないとか、代名詞を多用してしまうこととかってよくありますよね。

Q:事前インタビューをすると引き出したい話を端折られることがありますね

普通の会話ではよくやってしまいますが、インタビュー撮影の場では材料不足になる可能性があるので注意しないといけません。

続いては場のセッティング。

相手の視界に誰も立たせないとか、スタッフにも必ずしゃがんでもらうとか、
その人を見ないでほしいとかをお願いして場づくりをしています。
特に一般の方にインタビューするときは

どれだけ恥ずかしさや緊張感を持たずに話せるか

というような意識が大事だと思っていて、
誰かの視線を感じていたら正直な想いって言いづらいですよね。

スタジオで撮影するときは、相手と自分以外は黒幕を垂らして完全シャットアウトすることもあります。そこまで意識して場をセッティングすることが大切です。

Q:映し鏡とは?

やっぱり、インタビューってコミュニケーションなんです。

自分のコミュニケーションの仕方が、相手にも乗り移って返ってくる
と思ってインタビューをした方がいいです。自分の感情をコントロールすることで
良いインタビューができると思います。

とはいえ、準備に縛られないこと。

これはドキュメンタリーならではかと思います。

どれだけ準備して想定しても、実際に聞いてみると「そういう想いがあったんだ!」
ということがよくあると思います。それがリアルですよね。
なので映像をよりリアルにするために、軌道修正しながら更に良い方向に持って行く
そのためにはやはり正しい理解と共感が必要なんです。

いいインタビューをするためには? 編集編

Q:編集前にやっておくことは?

編集に入る前にまず大事なのが、書き起こしです。
書き起こしをもとに言葉を抽出して、言葉だけでストーリーを成立させることを一番最初にしています。
[787:vook_note]

次に、ストーリーを成立させた上で自分はどう感じたのか。

例えばWHILLでいうと、
「WHILLに乗る事でおきた心や行動の変化」ということがいくつか聞けたとします。
でも映像で使うために取捨選択しなければならない。

そこで、自分はどのポイントが一番の変化だと感じたのか、自分の意見を反映させる必要があると思っています。
編集は選択の連続です。主観がなければ成立しません。

Q:紙面上に書き起こすことのメリットとは?

この言葉を先に並べるか、後にするか、という判断を意図を持ってパズルしていきます。

昔はいきなりデータを取り込んで編集を始めて、なんとなく良いと思った部分を上のレイヤーに並べるというやり方をしていた時があったんですけど、書き起こしによって俯瞰してストーリーを観れるので言葉のパズルがしやすくなりました。

Q:編集するときに意識していることは?

紙面上で言葉を並べても、温度感は伝わってこないので
編集時には、言葉で伝えるべきか映像で見せるべきか取捨選択しなきゃいけない。
例えば「その製品に愛着があります」と伝えたい際に
言葉ではなくて、その製品を持つ手元のアップで見せた方が伝わるかもしれないとか。

何を映像で見せて、何を言葉で伝えるかを自覚しながら繋いでいくことが大切です。

Q:クレショフ効果とは?

僕が一番尊敬する映画監督のヒッチコックがよく言っていたんですが、
同じカットでもカットの順番によって持つ意味が変わるので
映像と言葉の順番を連動させて編集することが大切です。

最後に客観視して映像を見る。

映像制作ってやっているうちに、主観的になりがちですよね。
僕ら制作者は全部分かっている前提で編集した映像を見ているので、ある程度編集した段階で、
何も知らない身近な人に見せて、フレッシュな意見に耳を傾けてみることも大切です。

まとめ

結局一番大事なのって最初に言った興味・共感だと思うんですね。

そのためには作品に対して「愛」を持つ。
最初は愛が持てなくても、
テーマや製品の背景を調べてみたり実際に使ってみたり、寄り添う努力をするのが大事だと思っています。

僕は結構感情移入してしまって、インタビュー中に涙目で喋ってたり、
編集しながら泣くなんてこともざらにありますからね。

実際にインタビューをすると相手や製品に感情移入していくと思います。
インサート映像が欲しい場合など、なんとなく撮影するのではなくて、
感情移入した思いにストレートに寄り添ってみて、どんなインサートを撮るべきか?この瞬間があるといいなみたいな発見を引き起こして、撮影に反映させるべきだと思います。

「自分の意志・思い・共感・感情」が言葉やカメラに宿って、それが映像作品の完成に繋がる

ってことを自覚した上で映像を作って欲しいなと思います。

「なんとなく」で撮影をしていたら、かっこいいだけ・画質や色が綺麗なだけとか、表面的ですぐに消費されて終わる映像になってしまいますからね。残る映像を撮っていきましょう!

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