個人でのHDRグレーディングをするためのアイデア
HDRでのグレーディングは普段の映像制作のグレーディングに似ていますが、セッティングの変更やプレビュー用のモニターが必要になります。今回は出来るだけ低予算でHDRのセットアップが出来る方法を考えてみました。
HDRのグレーディングに必要なツール
結論として、HDRのグレーディングのソフトウェアはDaVinci Resolve Studioを使います。HDRのディスプレイにはSmallHDから販売されているP3Xプロダクションモニターを使います。そしてP3Xにビデオアウトを送るためにBlackmagicなどから販売されているDecklinkを使います。
HDRのグレーディングソフト:DaVinci Resolve
HDRグレーディングはDaVinci Resolve Studioでしかやったことはありませんが、Assimilate Scratchなどでも同様に作業が可能です。具体的なHDRグレーディングの設定はこちらの記事でご紹介しています。
DaVinci Resolve Studio内部でのHDRのグレーディングの設定の仕方について
ちなみにFinal Cut Pro XもRec.2020に対応しているのでHDR環境での編集・色編集が可能ですが、Adobe Premire Proは2019年6月の段階ではHDRでの書き出しに対応しているものはJPEG2000やOpen EXRなどの連番イメージファイルで、タイムライン自体は全てRec.709での処理になるので、HDRのグレーディングには向いていません。つまりHDRでグレーディングした映像を音声と一本化して納品データを書き出そうと思った際に、Premire Pro CCは使えないということです。そういった経緯もあるので、DaVinci Resolve Studio、もしくはFinal Cut Pro Xで編集・グレーディング・整音された音声ミックスとの一本化・書き出しまでをまとめて進めることをお勧めします。個人的にDaVinci Resolveを使っているので、記事はDaVinci Resolveで進めます。
Image by Blackmagic Design
HDRのグレーディングモニター: SmallHD P3X
パソコンのモニターでHDRはグレーディング出来るでしょうか?2019年の秋に販売予定のAppleモニターがあれば外部モニターがなくてもHDR環境での作業が出来るようになりそうです。プリセットのリファレンスモードがHDRビデオ (P3-ST 2084), デジタルシネマ (P3-DCI) and 写真 (P3-D65)の3つが搭載される予定みたいです。ただしコストが70万円ほどするらしいので、P3Xの方が俄然安いし、SDIケーブル対応なのでディスプレイモニターとしてもプロダクションモニターとしても使えるのが便利かなと思います。
モニターでもっとも安く購入出来るものはHDR TVですが、HDRコンテンツの制作に適したモニターはさらにコントラスト比が高いモニターの方が理想的です。映像業界の中でもっとも良いモニターはSONYやFlandersから販売されているポストプロダクション用のモニターですが、数百万円するので普通は手が届きません。P3Xは撮影現場で利用するために作られたプロダクション用のモニターです。日中、野外でのコマーシャル撮影などになるとモニタリング用のモニターもかなりの輝度が無いと眩しくて見えません。そのために輝度の高いモニターをSmallHDが提案していますが、モニターを1000nitにまで明るく出来るようになったことで、HDRにも対応出来るようになりました。
Image by SmallHD
P3Xはポスプロでの利用も考慮されて、HDRに対応している色域範囲(従来のRec.709よりも広い)P3を100%カバー しています。つまりP3環境でHDRのグレーディングをすれば、P3の範囲内では色味を正確に表現出来るということです。HDR TVよりもコントラストが高いために、シャドウやハイライトの編集作業をより正確に行うことが出来ます。ただSONYのBVM-X300 HDRモニターなどに比べるとコントラスト比はぐっと狭いです。P3Xでプレビューする際のEOTFをPQカーブに対応したグレーディングを行うために、MysteryBoxから販売されているモニター用のLUTを購入します。P3X専用にデザインされたディスプレイLUTで安価で非常に有効です。
現在SmallHDサイト上にはP3Xの新モデルでTeradek Boltの機能がすでに搭載された1703 P3X Bolt Sidekickが出ていますが、B&H Storeのような店舗でP3Xが購入出来ます。日本でもおそらくあるかと。
Image by MysteryBox :ディスプレイLUTと組み合わせることでBVM-X300に近づけることが可能になります。
モニター用のIOデバイス: Blackmagic Decklink
またP3XはHDMIとSDIのどちらの出入力も可能です。ビデオ信号を送るためにBlackmagicなどから出ているI/Oデバイスを使います。この際に出来れば12G SDIに対応しているI/Oデバイスが理想的です。以前のDecklinkを使う場合はデュアルリンクで2本のSDIケーブルを使うことでも対応出来ます。GPUなどのHDMIアウトを使って2つのモニターを並べることとは違い、PCのUI画面としてではなくビデオ信号のディスプレイとしてモニターを使うためにはI/Oデバイスを使ってビデオの信号を送る必要があります。HDMIのIOデバイスでビデオ信号を送る際にはメタデータを加えるコンバータが必要になるかと思います。SDIはそのままIOデバイスからP3Xに直接映像を入力出来ます。
Image by Blackmagic Design
HDRのモニターを使ってグレーディングするために必要なものは上記の3つ(それとディスプレイLUT、SDIケーブル)になります。
HIROKI KAMADA|鎌田 啓生@kohfilms
ブランドショートフィルム事業 https://drive.google.com/file/d/1-32dwC7Ota4OeLPAwSijlkJVP-LQ4y5z/view?usp=drive_link 企業の海外展開に特化した映像制作を手がけております...
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