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動画クリエーターが選ぶべきCPUは?【Intel vs AMD 2019夏の陣】

2019.09.27 (最終更新日: 2020.12.21)

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上記画像はこちらよりお借りしました

編集用PCは、撮影機材と並んで極めて重要

クリエーターにとってPCの性能は、作業性・生産性に直結する問題です。
まず大前提として、Premiere ProCC(その他の動画編集ソフトでも)での編集においてはCPUパワーが重要です。動画ファイルの殆どは、形式は色々あれど圧縮されています。編集ソフトのタイムラインでプレビューする場合には、その圧縮を解く(デコードする)必要があります。それには主にCPUが使用されます。
一番重視するべきなのは編集時のプレビュー性能、つまり実際どれだけコマ落ちせずに快適に編集できるか?だと考えます。コマ落ちが多いと編集時にストレスがあるだけでなく、書き出し後ファイルの再生時と感覚がずれてしまいますので、確認にいちいちエンコードしなくてはならなくなります。動画ファイルを中間コーデックに変換したり、プロキシ作成という手もありますが、変換にはかなりの時間がかかってしまいます。つまり、無駄な時間を減らして快適性を求めるなら、CPUパワーが必要ということです。カラー補正・グレーディングやトランジションやテロップなどでは、GPU支援が大きくかかわってきますので、GPU性能も重要になってきます。

CPU比較でエンコード時間の比較記事はよく目にしますが、実際の編集中に肝となるプレビュー性能を検証した記事は、ほとんど見かけません。本記事は、Sony・Panasonic・FujiFilmの一眼動画ファイルを使用し、Adobe Premiere Pro CCでの編集中のパフォーマンスに重点をおいて検証します。

筆者:PC自作と一眼動画( こんな動画 例1, 例2 )を趣味としています。編集用PC構成に悩む人が多いため、以前VooKにクリエーター用のPC構成についての記事を投稿させて頂きました。有難くも好評であったとのことで、今回Vook様より依頼があり、2019年夏時点での検証記事を作成させて頂く事となりました。

最近のCPU事情について

かれこれ10年以上にわたって高性能CPUといえばINTELの寡占状態でしたが、2017年初めにAMDがRyzenという高性能CPUを発売し、急にINTELを脅かす存在に戻りました。それに対抗してIntelも多コア化して対抗し、結果的にユーザーにメリットがもたらされています。そして2019年夏に発売された新型RYZENでは、より多コア化しつつ周波数あたりの性能も上げてきました。
さて、メインストリームのフラグシップCPUで同価格帯のRyzen9 3900X(12コア24スレッド)とCore i9 9900K(8コア16スレッド)では、実際のAdobe Premiereでのパフォーマンスにおいて、どちらに軍配が上がるのでしょうか。AMDはついにIntelの牙城を崩すことができるのか?

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PC構成(PC構成の詳細は後述あり)

9900Kで2つの設定を測定した理由

3900Xの定格は105Wですが、冷却性能が足りている場合は、142Wを超えない範囲で自動でクロックを上げる設定がなされています。
一方9900Kは、マザーボードのメーカーやBIOSのバージョンによって、設定に差が出ます。完成したPCの出荷時の設定では、全コア4.7GHz(130~150W程度)で動作するものが多いと思いますが、一部は定格の95W(全コア4.2GHz程度)に制限されているものもあります。その為、2つの設定で測定しております。

検証結果(検証条件の注釈は後述あり)

各々コマ落ちせずに再生できたパーセンテージと、書き出しにかかった時間(単位:秒)をグラフにしました。
いずれも60秒のタイムライン
Transitions 4秒毎のカット間全てにトランジション(暗転・ディゾルブ・フィルムディゾルブ)
Lumetri Color Lutに加えて、色温度、ハイライト、シャドー、黒レベル、白レベル、トーンカーブ、色相vs彩度、ビネット
Balance 4秒毎のトリミング+各ファイルのグレーディング(Lut+各種パラメーター)、トランジション4ヶ所、テロップ4ヶ所
Heavy Trimmings 1秒のトリミングを行ったクリップを60個連続再生
Picture in Picture 4秒のトリミングを行ったクリップに全てにPicture in Picture

①α7Ⅲ 4K30P 8bit 4:2:0 H.264 XAVCs 100Mbps


このクラスのCPUにとって、4K30Pは余裕です。両者何の問題もありません。

②GH5 4K60P 8bit 4:2:0 H.264 MP4 150Mbps


9900Kは両者とも安定しています。
3900Xは性能を考えればコマ落ちしないことが期待されましたが、不意なコマ落ちが散見されます。編集のパフォーマンスには影響しない程度ですが、気にかかる結果です。

③GH5 4K30P 10bit 4:2:2 H.264 MP4 150Mbps


Heavy TrimmingsとP in Pで、3900Xで極めて大きなコマ落ちが発生し、破綻しています。CPU使用率は100%に達しておらず、うまくコアを活用できていない印象です。9900K(95W制限)は余裕がなくほぼ常にCPU使用率全コア100%の状態で、更にコマ落ちが出始めました。9900K(auto)は安定の100%です

④X-T3 4K60P 10bit 4:2:0 H.265


9900K(95W制限)は余裕がなく負荷が高まるにつれコマ落ちし、P in Pで破綻。9900K(auto)ではCPU使用率100%に張り付きながらもよく粘り、コマ落ち無し100%を維持します。しかし、流石にP in Pで破綻
一方3900Xはより負荷が低いはずの4K30P 10bitで破綻したHeavy Trimmingsは100%でこなし、P in Pはさすがに破綻しました。

⑤エンコード速度 

かかった秒数なのでグラフが短い方が高速です。

ここでは、3900Xが下馬評通りの性能で9900Kを圧倒します。前世代のRYZENはAVX2への対応の問題でH.265で性能が悪かったのですが、今世代では克服し、エンコードでとても良好な成績です。

ちなみに、PremiereではINTEL製CPUの内蔵GPU機能であるQSVを使用すると、4K30P8bitのH.264エンコードが130秒→74秒、4K30P8bitのH.265エンコードが205秒→101秒と約2倍速になりますが、設定には知識が必要でトラブルが起こることもあります(後述)。

結果について考察・総評

プレビュー性能はIntel 9900Kが安定した強さを発揮

Sony 4K30P8bitのファイルとFujiFilm 4K60P10bitのファイルでは、3900Xは性能に見合ったパフォーマンスを見せました。しかし、Panasonicの4K60P8bitと4K30P10bitファイルでは、コマ落ちが非常に目立つ結果となりました。
実は海外の大規模検証サイトでも、H.264とH.265圧縮において、3900XなどAMD製CPUで9900Kに比較してパフォーマンスが悪いことが報告されています。今回もそれを裏付ける結果となりました。Premiereの最適化不足が原因の可能性があり、もしかしたら今後改善される可能性もあるのかもしれませんが、そうなる保証はありません。
ちなみに海外サイトによると、ProResやREDファイルでは3900XなどAMD製CPUでも編集時に安定したパフォーマンスが出るようです。

エンコード速度は3900Xが強い

これは3900Xに軍配が上がります。第3世代RYZENで性能を大きく伸ばし、同じ値段の9900Kにこれだけの差を付けたことは素晴らしいことです。Intel製内蔵GPUの機能であるQSVを使うと3900X以上の爆速になりますが、後述する問題点もあります。

総評

エンコード速度は3900X、編集時のパフォーマンスは9900Kに軍配があがります。しかし多くのクリエーターにとって、圧倒的に時間を使うのはエンコードよりも編集作業でしょう。
先にも述べたように、もしProResやREDファイルを多く扱う場合は3900Xの方がパフォーマンスが上ですので、こちらを選ぶべきです。しかし、この記事を読んでくださっている多くの方は、H.264, H.265ファイルの編集が多いのではないでしょうか。その為、現状では多くの人にとって、9900Kの方が安定したパフォーマンスを期待できる選ぶべきCPUといえると思います。
よりハイエンドのCore Xシリーズもありますが、CPUもマザーボードも値段が一気に跳ね上がります。コスパも考えると9900Kがベターかなと思います。
今まで王者であり続けたことでどのソフトでも安定したパフォーマンスが期待できるIntel、一方性能は高いがソフト側の最適化などの要因で性能が発揮できないこともあるAMD今後もより一層の切磋琢磨が期待されます

よくある疑問 高クロックが良いの?多コアが良いの?

After Effectsはシングルスレッド処理がほとんどらしく、高クロックが望ましいです。LightroomやPhotoshopは処理によって、シングル・マルチスレッド処理が混在します。Premiereは一部シングルですが多くはマルチスレッドに対応しており、今回の検証でも9900Kの8コア16スレッドすべて使用率100%になることが多々みられており、きちんと全コアを使えています。
9900Kは高クロックでなおかつコアも多いので、その点でもクリエーターにとってバランスの良い一押しのCPUと言えるでしょう。

コスパと性能 おすすめのPC構成

  • CPU:Core i9 9900K
  • CPUクーラー:最低でも12cmファンのサイドフロー型クーラー 冷却性能が低いと自動でクロックが上がりきらずにパフォーマンスが下がります。
  • GPU:4K8bitまでならRTX2060、4K10bitも扱うならRTX2070以上 RTX2080ti > 2080super > 2080 > 2070super > 2070 > 2060super > 2060
  • メモリー:DDR4 2666Mhz 32GB or 64GB(16GB×2 or 4) 4K10bitファイルを扱う場合は、64GBを推奨します(32GBではメモリー不足によるコマ落ちが発生することがあります)。
  • OSドライブ:SATA SSD 240GB~512GB(NVMeでなくSATAで十分です。通常のPC操作ではランダム性能のほうが重要であり、SATAとNVMeでの体感上の差は無いといっても過言ではありません。)
  • 保存用データドライブ:必要な容量のHDDを
  • 編集用ドライブ:H.264やH.265ファイルならSATA SSDで十分です。RAWや低圧縮のProResファイルの場合は、NVMe SSDが望まれます。
  • 電源:650Wブロンズで十分です。

その他:注釈や検証条件や細かい知識について

PC構成の注釈

前述の通りCPUとマザーボード以外は全く同じ構成を用意していただき、フラットな状態で比較をしました。強いて言えば、今回の構成は若干RYZENに有利な構成です。CPUの内部構造的に、RYZENはメモリクロックが高いほうがCPU性能が高くなる設計だからです(ただしメモリクロック3733MHzを超えると逆に性能が落ちる)。Intelはメモリクロックでほとんど性能は変わりません。今回のメモリー構成(2rank×4枚)では、AMD公式には2666MHzまでの対応ですが、3200MHzで安定して動作しましたので両機とも3200MHz設定としました。
GPUはボトルネックにならないようにGTX2070superとし、また検証中もGPU使用状況を監視し、GPU由来でのコマ落ちが無いことは確認しています。ストレージもボトルネックとならないように、常時読み出し3000MB/sを超えるNVMe SSD(当方所有)で、性能低下の無いように温度管理もしっかり行いました。

リアルタイムプレビュー検証条件

※ 4KはUHDとCinema4Kがありますが、今回の検証においては4K=UHD。
※ 一般に29.97Pのことを30P、59.94Pのことを60Pと呼んでいるため、そのように表記。
※ シーケンス設定は30P動画ファイルは29.97P、60P動画ファイルは59.94Pとして、プレビュー画面は「フル解像度」。
※ シーケンス設定では、最大ビット数、最高のレンダリング品質、リニアカラーで合成にチェック。

Premiereでは、9900KなどのIntel製の内蔵GPUを搭載したCPUでは、デコードを内蔵GPUに任せることで編集時のCPU負担が軽くなります。今回も検証時にためしました。しかし設定が簡単ではありませんし、トラブルがあった際の対処も自作できる人以外には困難なことがあります(BIOSを立ち上げて内蔵GPUを有効にする→モニターケーブルを内蔵出力につなぎかえる→内蔵GPUのドライバーをインストールする→編集ソフトでハードウェアデコードの設定をする。場合によっては起動できなくなりCMOSクリアーが必要になることもある)。また効果も限定的です。Sonyの8bitファイルには有効ですが、もともと9900Kクラスはハードウェアデコードに頼らなくても余裕。Panaの10bitファイルには、ほぼ効果なし。Fujiの4K60P10bitファイルではバグでまともに再生できませんでした。そのためノートPCなど、そもそも4K8bitでも辛い場合には非常に有効ですが、今回のようにある程度以上のCPUでは特に必要の無い設定かと思います。

エンコード速度の検証条件

書き出し検証(Balanceのタイムラインを、書き出すのに要した時間)
4K30PのH.264 MP4 150Mbps
4K60PのH.265 MP4 60Mbps 品質:中
ともに、最大深度に合わせてレンダリングと最高のレンダリング品質にチェック。

Premiereは基本CPUエンコードですが、標準でIntel製CPU内蔵のQSVを使用しての書き出しにも対応しています(ただし前述の内蔵GPU有効化の設定が必要)。上記結果でも示しましたように、その効果は絶大です。また社外製プラグインを導入することでnVidia Cudaでのエンコードにも対応できます。しかしエンコード品質は、CPU > IntelQSV > nVidia Cudaといわれており、使用にあたっては品質に問題が無いかは要チェックです。

最後に

検証時のSonyのα7Ⅲの動画ファイルは、尊敬するクリエーターであり友人であるmedium videos氏よりご提供いただきました。この場を借りてお礼申し上げます。
また今回の検証に当たって、Vook様よりPCを貸し出し頂いて検証を行いました。

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Tomohiro_Ota

Tomohiro Ota@Tomohiro_Ota

Panasonic S1H、ステディーカム(アナログスタビライザー)とArm & Vest、スライダーなどを駆使して趣味で映像制作を行っております。 https://www.youtube.com/user/tomoawawawa

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