はじめに
2月中旬、ブラックマジックデザインの新宿オフィスにて、「DaVinci Resolveで快適カラーグレーディング〜自作ワークステーション講座」という無償セミナーが開催されました。多数の応募をいただき、すぐに満席となったため、「興味はあるけれども聞き逃してしまった!」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回はVook noteの中で可能な限り正確に講座の内容を再現してみようと思います。
まずは注意書き。検証は全てDaVinci Resolve 12.5.4で実施しています。バージョンアップなどで挙動が変わる可能性がありますので、 スペックは参考としてください。
【追記】この記事を掲載したあと、7月に動画がアップロードされ、翌年2月にマウスコンピューター様から推奨マシンがリリースされました。ご興味のある方は他の記事もどうぞ。
DaVinci Resolveで快適カラーグレーディング〜自作ワークステーション講座 〜(番外編)
DaVinci Resolve 14 推奨マシンがリリースされました
あなたは大丈夫? 〜DaVinci Resolveのマシン環境をめぐるよくある勘違い12選〜
プロのビデオグラファーを目指す学校、はじまる。入学生募集中。
PR:Vook School
なぜワークステーションか?
DaVinci Resolveを日々使われている方々、もしくはDaVinci Resolveをこれから本格的に運用していこうとされている方々にとって、ワークステーションをどう選択するかという悩みは大きなものではないでしょうか。「どのマシンを選択すればいいか」ということから始まり、「Mac Proでは力不足を感じる」、「どんなスペックにしたらいいのか分からない」、「予算内で最高のワークステーションを手に入れたい」などといったことまで、DaVinci Resolveのマシン選びをめぐる悩みは尽きません。
そこでここでは自作ワークステーションでDaVinci Resolve環境を構築するためのパーツ選びのコツについてご紹介します。メーカーPCやBTO/CTOパソコンを選ぶ際の指標となれば幸いです。
最強のMac Pro 2013の実力は?
まず選択肢として挙げられるのは、Mac Pro 2013、いわゆるゴミ箱Mac Proです。ここで仮に、予算がふんだんにあると想定してみて、最強のMac Proはどのようなものか考えてみましょう。
下の図では、Mac Proで選択することのできるCPUやGPUの中で最高のものが記載されています。
しかしGPUとして、AMD FirePro D700が貧弱である点など、無視できない弱点が存在します。図に記載されていない問題もあります。例えば拡張性がないこと。熱の問題があり性能が落ちることがあること。2013年のモデルなのでCPUやThunderboltなどのスペックが古くなってしまっていること。これらの点は、DaVinci Resolveを快適に使う上で、大きな障害となって立ちはだかります。
そしてここも大きなポイントなのですが、100万円を出してMac Proを購入したとしても、DaVinci Resolveをストレスなく使えるのは、ProRes 422 HQのフッテージであれば4K30pまでなのです。例えばProRes 422 HQの4K60pを取り扱うのにMac Proは最適なマシンとは言えないでしょう。URSA Mini 4.6Kで撮影した4.6K RAWの素材も、快適に編集したりグレーディングしたりすることは難しいでしょう。
自作ワークステーションなら?
それでは同じく100万円を使って自作してみるとどうでしょうか? その一例が下図の構成です。CPUもGPUも、現時点で手に入る中でお求めやすくて高機能なものを使っています。しかもThunderbolt 2のカードも増設しているので、Mac Proと同じようにThunderbolt接続のストレージやI/Oデバイスも接続することができます。
次に、Mac Proと同じ程度の快適さを自作で実現するためにはどのようなワークステーションを組めばいいのでしょうか? その答えは下の図をご覧ください。驚くべきことに、1/5の値段で、Mac Proとほぼ同じパワーを備えたワークステーションを作ることができます。80万円という金額が浮けば、URSA Mini 4.6KやURSA Mini Pro 4.6Kだって導入することができます。
自作ワークステーションのメリットとは?
もちろん自作にはデメリットもあります。Mac Proならシステムを一括で手に入れられるのに対し、自作ワークステーションだと原則として自己責任でマシンを組み立てなくてはいけません。保守やサポートもそこまで期待できないかもしれません。しかしその反面、自作ワークステーションにはそれらを補って余りあるメリットがあります。
自分の用途に最適化できる
ProRes、RAW、H.264など、コーデックに従って必要十分なスペックを自由に選択することもできますし、グレーディング専用機として内蔵ストレージを最小にすることもできます。
必要に応じて強化できる
もしエンコード速度を上げたければ、CPUだけ交換することも可能です。より高解像度の編集のため、GPUを追加することも可能です。Mac Proでは、購入後にマシンのスペックを調整するのは簡単ではありません。
パーツの選び方
それではより詳しく、自作ワークステーションを組み立てるための、各パーツの選び方を見ていきましょう。
CPU
CPUはワークステーションの頭脳です。DaVinci Resolveにおいては、動画クリップのデコードとエンコードを担っています。
Xeon E5 series 2000番台は、最大22コアの超高性能なラインナップで、マルチCPUに対応。サーバーグレードの高い信頼性を誇ります。予算にとらわれず最高性能を求めるのなら、このラインナップのCPUを推奨します。
Core i7 6950X/6900K/6850K/6800Kは、最大10コアのハイエンドコンシューマー向けCPUです。LGA2011-3ソケットを採用しており、CPU交換でXeonにアップグレード可能です。コストパフォーマンスを追求するならこれです。
Core i7 7700Kは、4コアの一般向け最上位モデル。最新技術でコアあたりの性能はトップであり、GPUを内蔵しています。とにかく安く仕上げたい方におすすめです。
GPU
GPUは、グラフィックを担う第2の頭脳です。DaVinci Resolveは GPUベースのソフトウェアのため、前述のデコードやエンコードを除く、ほぼすべての画像処理を担当しています。
NVIDIA Quadro P6000は、現行モデル内で最速です。OpenGL対応でCG/CAD用途にも最適です。約70万円で手に入ります。究極の性能を求める方に推奨します。
NVIDIA TITAN Xは、ゲーマー向け最上位モデルです。Quadro P6000に肉薄する演算性能を誇ります。ほぼ20万円と、この性能にしては安価なGPUですが、流通量が小さく、手に入れるのは難しいかもしれません。最高の性能をお求めの方に。
NVIDIA GeForce GTX1080 8GBは、Geforce シリーズのハイエンドモデルです。2枚でTITAN Xを超える性能を発揮します。6万円から10万円くらいで比較的容易に入手できます。コストパフォーマンス重視の方はぜひどうぞ。
NVIDIA GeForce GTX1070 8GBは、GeForceシリーズの2番手に位置します。演算能力はMacProの最上位GPUとほぼ同等です。4万円から6万円で販売されているので、とにかく安く仕上げたい方はこれをお勧めします。
メモリ
メモリは、データ処理を行うための作業スペースです。DaVinci Resolveにおいては、24GB以上の搭載がオススメです。具体的には、DDR4 SDRAMの中で、1枚の16GB以上のモジュールを最低2枚用意すれば万全です。
ストレージ
ストレージは、すべてのデータを保存する場所です。DaVinci Resolveにおいては、使用するコーデックのビットレート以上の転送レートのストレージが必要です。
マザーボード
マザーボードは、すべてのパーツを司る縁の下の力持ちです。CPUソケットはCPUと合わせることが必要です。チップセットはできるだけ最新のものを選ぶに越したことはありません。
Xeon E5 seriesを使うなら、Supermicro X10DRD-iNTがおすすめです。Intel C612 Chipset、デュアルプロセッサ、最大搭載メモリ1TB、NVMe対応M.2スロットx2に対応しています。純正Thunderbolt2カードのオプションもあります。
Core i7 6950X/6900K/6850K/6800Kを使うなら、Gigabyte GA-X99P-SLIがおすすめです。Intel X99 Chipset、最大搭載メモリ128GB、NVMe対応M.2スロットx1のマザーボードで、Thunderbolt 3を搭載している点も大きな見逃せないポイントです。
Core i7 7700Kを使うなら、Gigabyte GA-Z270X-UD5がおすすめです。Intel Z270 Chipset、最大搭載メモリ64GB、NVMe、対応M.2スロットx1。Thunderbolt 3も搭載されています。
後編はこちらからどうぞ。
コメントする