これからは、動画の時代。
各所で言われ尽くされた言葉だが、具体的に動画の時代とはなんだろうか?
その鍵を握るのが、スマートフォンなのは間違いない。
そして、動画メディアとして一時代を築いているのが、YouTube。
視聴環境が、テレビからスマートフォンへと移り変わる中で、YouTubeを中心として動いていくのは当面のところ変わらなそうだ。
では、YouTuberとしてのアプローチではなく、YouTube広告の「最適解」を創れる企業があれば、動画広告のガリバー的存在になるのではないか?
2019年6月に発足した 「株式会社6秒企画」 は、短尺に特化した動画広告代理店だ。サイバーエージェントの連結子会社として、動画広告クリエイティブの企画・ディレクション・制作まで行っている。
今回は、6秒企画社のキーマンである 代表の二宮功太 氏と、モーションデザイナーの白戸裕也 氏にその壮大な試みと内情をインタビューした。
——どういう経緯で、6秒企画はスタートしたのですか?
二宮 功太(以下、二宮):私自身は、2004年に新卒でサイバーエージェントに入って、マーケティングやクリエイティブの部署に在籍していました。最近だと、インターネット事業本部の中でも、ブランドクリエイティブ部門というナショナルクライアントさんへのプランニングをやる部隊の局長兼クリエイティブディレクターでした。
白戸 裕也(以下、白戸):私はもともと、ポストプロダクションでオフラインやオンライン編集の仕事をしていました。2016年11月にサイバーエージェントに入社、AbemaTVで番組宣伝映像やオープニング映像、 イベント用映像などを制作していました。2019年9月から6秒企画に参加し、モーションデザイナー・エディターとして短尺動画の制作をしています。
二宮:今年の6月に「短尺の動画市場が伸びてくるので、広告の動画を内製で企画制作ができるようなチームを作りたい」 という話があがり創業に至りました。
株式会社6秒企画 代表取締役 二宮 功太 氏
二宮:いわゆる広告代理事業の、クリエイティブチームと思って頂ければ分かりやすいかもしれません。主に動画広告の企画制作を手がけています。YouTubeだったりFacebookやTwitter、TikTok・Instagramなどに、広告動画を配信して、ターゲットに届けています。
テレビCMは15秒が基本ですよね。この15秒は、テレビであってこそのスピード。
インターネットって、そもそも視聴態度が違うんですよね。縦へと動く親指をどう止めるか。例えば、Instagramのストーリーズだと1.7秒くらいで次のコンテンツへ行ってしまう。スマホの中での15秒って、すごく長い。 短尺でシンプルにひとつのことをどんどん見せる手法の「短尺動画」が増えています。
もちろん、ただ短くすればそれでいいわけではありません。見させるためのフックが最初にないと、短尺でも見てもらえなかったり。 作り方とか表現の方法みたいなところから、変えていかなきゃいけないんですよね。そこに専門特化した会社がほぼ無かったので、我々はそこをチャンスと捉えて6秒企画を設立しました。
——広告の出し先は色々あると思いますが、どこが一番メインですか?
二宮:主戦場になると思っているのが、YouTubeです。その中でも 「バンパー広告」。見たい動画の前に流れる広告枠の、TrueView広告というものがありますよね。スキップができる広告なので、スキップされる可能性が高いんです。そこで登場してきたのが 「バンパー広告」、スキップできない6秒広告です。
みんなが広告をスキップすればするほど、Googleにはバンパー広告の在庫が増える。在庫が増えると、この在庫をリーチさせようとするので、広告主的にはバンパー広告の方がリーチ効率が高いぞとなるわけです。ただ、企業のほとんどは6秒のクリエイティブ素材って、持っていないんですよね。だからTVCM用の15秒・30秒の素材を無理やり6秒に再編集して使用していることが多いんです。
——バンパー広告の作り方には、どのような特徴がありますか?
株式会社6秒企画 モーションデザイナー 白戸 裕也 氏
白戸 :まず、動画のド頭でいかに心を掴むかが大切です。受け手は瞬間的に動画を見る・見ないの判断をするので、一瞬でグッと引き込まれるような魅力的な画面構成を心掛けています。次に、短い尺の中でいかに整理して情報を伝えるかを考えます。文字や図形のレイアウト・サイズひとつで、情報の伝わりやすさが大きく変わってきます。また、視聴するデバイスによってもデザインの見え方は変わってくるので、パソコンだけはなく、スマートフォンでのプレビューも欠かせないのも特徴ですね。
二宮:Googleが調べたデータだと、現状国内では、テレビ用素材をリサイズして6秒動画を作っているものが約6割、ウェブオリジナルだと約4割です。僕らはウェブで流すクリエイティブは、ウェブオリジナルであるべきだという立場で、この現状を逆転させに行こうとしています。
——短尺ならではの動画制作とは?
二宮:基本的にはクライアントから「予算と配信期間」の2点を決めてもらえれば、だいたい何本作るべきかが決まります。サイバーエージェントには、GoogleやFacebookのプラットフォームのアルゴリズムを研究するチームがあります。アルゴリズムをベースにして考えると、配信期間と配信予算が決まると、何本程度制作が必要だっていうのが計算できちゃう。なので、そこから逆算でどんな企画がいいか、企画を考えていきます。
同じ製品紹介の動画でも、プラットフォームごとに合わせて作らなければいけないので、動画は基本的に複数本、制作しています。
白戸:「短尺ならでは」と言えるのが、様々なプラットフォームに応じて常に最適化している点です。同じ素材を使いつつも、一般的なフルHDだけではなく、縦やスクエアなど、完パケのサイズが多岐にわたります。そこで、プラットフォームに合わせてデザインを調整して、タイトルやグラフィックが最も効果的に見えるよう調整しています。
また、タイプ数やバージョンが多くなると管理が煩雑になりがちです。なので、以下の3つを徹底して効率化を図っています。
①素材を正しく管理する
②様々な画角を考慮する
③識別しやすい名前を付ける
①「素材を正しく管理する」は言わずもがなですよね。案件をひとりで担当することもあれば、複数人が携わることもあります。分かりやすい素材管理は、みんなを幸せにします。私流ではありますが、フォルダやビンの構成のデータはこんな感じです。
<Vook編集部 注釈>
他の方へもすぐに引き継げるファイル構成で、すごく綺麗という印象です。
一人で複数プロジェクトを回しているとどこに何があるのか、自分自身でも混乱しがちですが、ここまで素材ファイル(Footageの部分)を細分化してくれていると、自他問わず素材を探しやすいです。
煩雑になってしまう場合、Clip、Render、Soundで3つにファイルをわけてその中に、適当にファイルを保存しがちですが、白戸さんはClip、Render、Soundを細分化したファイル構成にしている点がポイントだと感じました。
白戸:参考までに、実際のフォルダ構造をまとめた、テンプレートを公開しますね。 皆さんが使いやすいよう、どんどんアレンジして頂ければと思います。
ダウンロードはこちら
②「様々な画角を考慮する」も大切です。画角違いに対応できるように、After Effects のコンポジションの組み方を工夫したり、Premiere Pro と After Effects を上手く組み合わせて制作しています。
③「識別しやすい名前を付ける」で大切なのが、「タイプの識別」「バージョニング」 だと思います。例えば、このように書き出すファイル名はこのように命名しています。
白戸さんのファイル名の命名規則
191112ProjectNameTypeNameSQv01
(日付)(プロジェクト名)(タイプ名)(画角)(バージョン)
画角は、下記のようなルールにしています。
HRZ : 横
VRT : 縦
SQ : スクエア
——デザインする過程で意識されていることがありましたら教えて下さい。
白戸:デザインツールは何でも良いと思いますが 映像制作メインの私は Adobe After Effects でデザインを考えることが多いですね。 色調整やレンズ収差など、いわゆる実写的な加工だったり、パーティクルなどのシミュレーションが素早くできます。一方で、グラフィック的な要素が多い場合は Adobe Illustrator、 Adobe Photoshop でデザインを考えるときもあります。
最も気を付けているのが、「安易に動かしやすいデザインにしない」という点です。モーションデザインと言えども、一番大事なのは静止画でのデザインです。動かしやすさばかりを考えて、中途半端なデザインになってしまっては元も子もないと思います。しっかりとデザインを固めてからキーフレームを打ち始めるよう、意識しています。
デザインからオフライン編集、オンライン編集に至るまで、Adobe製品ならシームレス・ボーダレスに作業ができ、クリエイティブに集中できます。例えば、Premiere Pro で「Lumetriカラー」エフェクトを適用したクリップをコピーして、After Effects でペーストすると、クリップの使用尺やエフェクトはそのまま反映されます。この便利さが気に入っています。
あと重要なのが「縦書きツール」の存在です。日本で暮らしている以上、テロップなどで縦書きが必要なシーンは多々あります。他社製ソフトは、そもそも縦書きに対応していなかったり、「文字詰め」がやりづらかったりなど、デザインツールとして一歩足りない感があります。しかし、Adobe製品では縦書きは当たり前にできるので、安心感がありますよね(笑)
さらに、Adobeはユーザー数も多く、Facebookのユーザーグループも活発です。困ったときに投稿すると、解決方法を知っている方が教えてくれて、いつも助かっています。
Adobe製品を一言で表すなら、「マルチデザインツール」かなと思います。静止画から、モーション、サウンドに至るまで、あらゆるものをデザインするための強い味方です。これから、ますますクリエイティブな場面で欠かせない存在になっていくと思います。
二宮:新しい考え方をもって、新たなワークフローをチームで築いていくのが大切です。作り方を変えるから、作るものが変わってくる。
クリエイティブと広告配信のこのジャンルには、手応えはもちろんあります。
6秒企画は、まだ出来て間もない会社です。理想的な短尺動画のクリエイティブを探り、よりよい制作方法を日々見つけていきます。
<Vook編集部>
今回は、短尺の専門特化した「6秒企画」のお二人にインタビューさせて頂きました。
「企画からディレクション・撮影・編集・配信まで」と特化しているからこそ、一気通貫の運用ができる魅力的な事業だと思いました。
短尺の6秒ならではの制作意図やTipsは、新しい時代の到来を感じました。
PC周辺機器おすすめ機材10選!映像制作をもっと楽しく
映像編集に特化したプロフェッショナルメディア『Cutters Point』では、プロの映像クリエイターの仕事術、編集のTipsや作品の裏側などを、毎回インタビュー形式でお届けしています。 今回特...
プロのビデオグラファーを目指す学校、はじまる。入学生募集中。
PR:Vook School
Vook編集部@Vook_editor
「映像クリエイターを無敵にする。」をビジョンとするVookの公式アカウント。映像制作のナレッジやTips、さまざまなクリエイターへのインタビューなどを発信しています。
コメントする