2019.12.06 (最終更新日: 2019.12.11)

カラーグレーディングにおけるノードツリーの正しい組み方とは?【DaVinci Resolve質問箱】

「DaVinci Resolveのカラーページで、どうやってノードツリーを組めばいいのかわかりません。どうするのが正解なんですか?」と聞かれることがあります。今回の記事ではこのノードに関する疑問にお答えします。

この質問には短い答えと長い答えがあります。短い答えは、「正解はありません」です。ほんとにないんです。カラーグレーディングは工程ではなく結果が大事なので——まあ、そんなことを言えばなんだってそうですが——、結果さえ良ければノードツリーはどう作ってもかまいません。細かなルールがあるわけでもありません。どう組み立てても自由です。

しかしそう答えてしまうとあまりに寂しいので、いちおう「答えらしきもの」を提示してみたいと思います。

下の図は、DaVinci Resolve 15のカラーコレクションガイドブックからの抜粋です。これがノードツリーの定石の一つです。この図を参考に一つひとつ見ていきましょう。ここではそれぞれのノードが意味を持っていて、入口から出口まで秩序正しく接続されています。

ノーマライズ

最初のノードでは、ノーマライズをします。ノーマライズとは、映像を適正な明るさ、色に持っていく作業のことを指します。カラーホイールのセクションやカーブのセクションで、なるべく「正しい」明るさと色のコントラストを作っていきます。カラーコレクションは日本語では色補正という意味ですが、このノーマライズという項目でやることもまさにそれです。具体的に例を挙げると、

・明暗のコントラストを広げる
・薄い色を濃くする
・ホワイトバランスを整える
・色かぶりを取り除く
・黒潰れや白飛びを防ぐ

といった項目が、このノーマライズの段階で扱う対象です。この段階がうまくいけば、映像がノーマルなルックになります。元の素材がLogなら、この段階で明るさのコントラストが広がり、色がついて、いわゆる「眠い」状態から、はっきりとした状態になります。

ちなみにAIカラコレで近道をするのもありです。AIカラコレを適用してから、手動で調整してもいいでしょう。

マッチング

一つの映像のみを扱うのであれば、前段のノーマライズだけでカラーコレクションの作業は完了します。しかし映像作品では複数のカメラからの映像を扱うこともありますし、同じ型番のカメラであっても、カメラの設定や照明の当たり具合によって、結果として違った見た目のクリップが出来上がることがあります。この場合には、最終的な映像が一つの統一した作品として成立するように、マッチングという作業が必要になります。このマッチングがうまくいかないと、いくら一つひとつのセクションのルックは良くても、統一性が取れずに作品全体として違和感のある出来栄えになってしまうことがあります。辻褄が合わなくなるわけですね。

ここでは複数のカットを見比べながら、同じような見た目に持っていく作業が必要になります。DaVinci Resolveでは、ギャラリースチルによる比較が一番よく使われているようです。

もちろん映画やドラマなどの長い映像作品で、様々な異なる場面がある場合には、すべてのカットを厳密に揃える必要はないでしょう。一般的にはシーンごとに揃えることが多いようです。

ここまでのカラーコレクションの作業は、カラーマネージメントの機能を使えばもっと楽になります。ノーマライズも一発で変換できますし、異なるカメラが混ざっていても、個別に入力カラースペースを変えれば正確なマッチングを実現することができます。

セカンダリー

これまでの作業はプライマリーと呼ばれます。プライマリーとは、画面全体の色や明るさを変えることを意味しています。カラーコレクションと厳密には同じではないですが、意味するところが重なる領域の多い言葉ではあります。求めているものがカラーグレーディングではなく、カラーコレクション(色補正)であれば、ここで作業は完了です。もうこれから新しくノードを付け加える必要はありません。

それに対して、これからやる作業はセカンダリーと呼ばれます。セカンダリーとは、画面の特定の部分だけの色や明るさを変えることを指します。人の顔のみを抜き出して明るくしたり、空の色をシアン方向に傾けたりといったことです。

そもそもカラーコレクションとカラーグレーディングはどう違うの?
・カラーコレクション
映像作品において、映像の色彩や明るさを補正する作業のことを指します。デジタルシネマカメラにおいてRAWやLogで収録されたデータは、カラーコレクションを通して映像を確認可能なイメージに変換する必要があります。これはネガフィルムに現像して、ポジフィルムにプリントする必要があるのと同じです。カラコレです。
・カラーグレーディング
映像制作のデジタル化にともない、デジタル撮影した映像を意図的にフィルム調の色合いや、演出的に調整変更するなどの単なる「補正(コレクション)」の範疇を超える処理が一般的に行なわれるようになりました。そうした多様な色調調整を総称してカラーグレーディング(color grading)と表現します。

ここまでにノーマライズとマッチングが終わりました。今度は特定の部分だけを調整する段階に入ります。上の図では、クオリファイアーとウィンドウが書いてあります。どちらもセカンダリーでよく使われるツールです。それとカーブのセクションにある、「色相 vs 彩度」や「色相 vs 色相」なども特定の箇所を抜き出すのでセカンダリーツールの一つです。

クオリファイアーは特定の色を抽出するためのツールです。キーイングをした箇所のみを、カラーホイールやカーブで調整します。なぜいきなりクオリファイアーを使わずに、ノーマライズをしてからクオリファイアーをするかというと、その理由の一つはカラーコレクションが終わったニュートラルなルックの方が、色を抽出しやすいからです。

ウィンドウは別の言葉でいえばマスクやシェイプです。DaVinci Resolveではパワーウィンドウ(Power Window)といいます。円や四角やポリゴンを使って特定の部分を抜き出します。動画なのでトラッキングが必要ですが、DaVinci Resolveには正確で高速なトラッカーがついているので心配は要りません。

この段階からは、カラーコレクションだけではなくカラーグレーディングの要素が入ってきます。顔のスキントーンだけを抽出して滑らかにしたり、空だけを選んでそこの彩度や色相を変化させたりします。ここまでのカラーコレクションではある程度の正解がありましたが、ここからのカラーグレーディングでは厳密な意味での正解はありません。

ただしこの段階ではカラーコレクションの要素もまだ含まれています。たとえば違和感のある箇所を補正するためにクオリファイアを使う場合には、これはセカンダリーでありながらカラーコレクションでもあります。あまりこの辺りの用語にこだわる必要はありませんが、一応念のため。

セカンダリーを使う際には、通常の横につないでいくシリアルノードではなく、パラレルノードを使うことをお勧めします。このパラレルノードを使えば、ノーマライズとマッチングが終わって、カラーコレクションされた一番ニュートラルなルックを出発点にすることができるからです。シリアルノードでつないでも大きな問題があるわけではありませんが、ノードをつないでクオリファイアーやパワーウィンドウを使っているうちに、最初のカラーコレクションが終わったルックと違うものになってしまって、クオリファイアーしようとしてもきれいに色が抽出できないことが考えられます。

シリアルノードとパラレルノード
・シリアルノードの作り方
ノードを右クリックして、「ノードを追加」から「シリアルノードを追加」を選びます。デフォルトのショートカットはOption + Aです。選ばれているノードの右にパラレルノードが作成されます。

・パラレルノードの作り方
ノードを右クリックして、「ノードを追加」から「パラレルノードを追加」を選びます。デフォルトのショートカットはOption + Pです。選ばれているノードの下にパラレルノードが作成されます。パラレルノードでは、上下のノードが同じ比率で配合されて出力されます。だからたとえば4つのパラレルノードを上下に並列に作成したら、それぞれのノードが25%ずつ均等に混じり合います。

あくまで一つの例ですが、たとえばこんな感じのノードツリーや

こんな感じのノードツリーが考えられます。

クリエイティブグレード

これは最後のノードです。ここでセカンダリーからもう一度プライマリーに戻って、全体の調整をします。ただしこのプライマリーは、最初のプライマリーとはちょっと違います。いや、大きな違いがあります。ここではカラーコレクションではなくカラーグレーディングを目的としているからです。最後に演出的な効果を追加し、自分の求めている映像的な個性を与えます。ここが勝負の分かれ目です。

カラーコレクションをサイエンス、カラーグレーディングをアートと表現することも可能かもしれません。カラーコレクションが数式を正しく解くことを目指す工程だとしたら、カラーグレーディングはゼロから何かを生み出す作業だからです。DaVinci Resolveのカラーページの最大の利点は、カラーコレクションとカラーグレーディングという、この2つの相反するともいえる要素が同じページに共存しているという点にあります。そのうえレイヤーベースではなくノードベースなので、カラーコレクションからカラーグレーディングまでの流れが、理路整然と、しかも融通無碍に、一つのノードから次のノードへ、そしてさらに次のノードへとつながっていきます。

おわりに

以上が、長い答えです。前にも述べたとおり、これはあくまで一例にすぎません。上のやり方と違うから間違いというわけではありませんし、上の通りにやっても結果がひどかったらこのやり方はその人にとって間違いということになります。LUTで一発で自分の求めている色が出て、最高の映像ができることだってあるでしょう。カラーグレーディングの面白いところは、正解がないところなので、ここで正解を提示することはしませんし、提示しようとするのも危険だと思います。しかし多くの方から「ノードの組み方がわからない」、「ノードと言われてもどうしたらいいのか見当がつかない」ということをたびたび言われることもたしかです。もしそうした方々にとって、この記事が一つの参考となるのであればそれに勝る喜びはありません。

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