2020.11.20 (最終更新日: 2020.11.20)

音声編集やFairlightに関するよくある9つの根本的な疑問【DaVinci Resolve質問箱】

DaVinci ResolveにはFairlightというページがあり、そこにはフルスペックの音声編集機能が用意されています。Fairlightは非常にパワフルで便利なツールで、簡単なサウンドミキシングから本格的なサウンドデザインまで、音に関することならほとんど何でもできてしまうのですが、「あまりに専門的すぎてよくわからない」とか、「ちょっと怖くて手出しができない」と言われてしまうことが多いのも事実です。しかしせっかくDaVinci Resolveを使っているのに、Fairlightをまったく触らずにいるのはもったいない話です。そこで今回はFairlightを使うとき、音声編集をするときによく聞かれる質問を紹介します。

オーディオメーターはどう見ればいい?

Fairlightページでタイムラインを再生させるときに一番目立った動きをするのがオーディオメーターです。大きな音ならメーターが上にあがって、小さな音ならメーターが下にさがります。これはみんな知っていることですね。しかし意外にわからないのが、オーディオメーターのどこのdB(デシベルと読みます)を基準に音を調整すればいいかという点です。

Fairlightガイドブックから抜粋したこの表をご覧ください。

まとめるとこういう目標値となります。

  • 人の声 → 平均-12dB
  • サウンドエフェクト → -10dBから-30dB
  • 音楽 → -20dBから-30dB

もちろんこれはあくまで目安にすぎませんが、この数値を頭に入れておけば音量をメーターで調整するときに便利です。はじめて動画を作る人は往々にしてBGMが大きすぎるというミスを犯してしまいがちですが、目標値が-20dBから-30dBだとわかっていれば大きな事故を未然に防ぐことができます。

インタビュー映像の人の声は、ずっと一定の音量でも構いませんが、映画やドラマのダイアログは一定だと飽きてしまいます。どなり声、わめき声、うなり声、ささやき声、猫撫で声などといった様々な人の声のバリエーションを、適切なdBのレベルで表現しなくてはなりません。そのときにそれぞれの声にどのくらいのdBを使えばいいか、この資料を参考にしてください。

こうして見てみると、意外に大声から小声までのレンジってそんなに広いわけではないんですね。でかい人も声の小さい人もdBの世界では大差ない。誰かのことを「あの人声がでかいなあ」と言ったり、「声が小さすぎる」と言ったりするとき、我々の耳はずいぶん微かで細かい声量の差異を聞き分けているみたいです。

オーディオトラックの正しい順番は?

映像の編集ではビデオトラックを10個以上使うことはまずありませんが、音声の編集ではわりとしょっちゅうあります。音声を編集するときには、たくさんのオーディオトラックを上下に並べて、人の声、サウンドエフェクト、音楽といった様々な要素を混ぜ合わせていきます。そこで問題になるのが、どの順番でトラックを並べればいいかという問題です。これはまあ究極的には個人の自由ですね。しかしとりあえず御作法というか、定石というか、昔から多くの人が採用しているトラックを並べ方がありますので紹介させてください。

一般的には、上からこういう順番です。

  1. ダイアログ(人の声)
  2. サウンドエフェクト(効果音、環境音)
  3. 音楽(BGM)

全部並べるとこんな感じです。

エフェクトの適用はクリップごと? トラックごと?

EQ、コンプレッサー、FairlightFXなどのエフェクトはクリップにもトラックにもかけられますが、一般的にはこういう音声のエフェクトはクリップごとではなくトラックごとに適用することが多いです。映像編集ではエフェクトはクリップごとに載せていくのが当たり前ですが、音声編集ではクリップごとだけではなくトラックごとにもエフェクトを載せます。だからこそトラックが多くなりがちなわけですね。トラックを増やしてトラックごとにエフェクトを調整することで、時間も削減できますし、一度に多くのクリップを調整することもできます。

EQの使い方は?

Fairlightではトラックごと、クリップごとにイコライザー(EQ)が用意されています。EQは簡単に言ってしまうと音の高さに応じた音量の調整です。横軸が周波数で、右に行くほど音が高くなります。縦軸は音量で、上に行くほど音が大きくなります。

DaVinci Resolveのカラーページを使ったことがある方は、色相 vs 彩度カーブを連想されるかもしれません。たしかにこの二つはよく似ています。色相 vs 彩度カーブが特定の色相だけ抜き出してそこを濃くしたり薄くしたりできるツールであるのに対して、EQは特定の音域だけを抜き出してそこを強めたり弱めたりすることができるわけです。

なんといっても一番EQが使われるのは人の声ですが、このグラフを見ただけではどこをいじればいいのかわかりません。そこでFairlightガイドブックの助けを借りることにしましょう。

ガイドブックでは、具体的に次のような3ステップが紹介されています。

  1. 85Hz未満の低域周波数を全て除去。
  2. 250Hz前後の中域周波数を調整。ここで声のふくよかさが決まります。ただしあまり動かしすぎると音がこもったり濁ったりします。できるだけ広めにとって、下に1、2dB動かしましょう
  3. 3000Hzから5000Hzのあたりを広めに上げて高周波数を調整します。声の存在感が強くなり、言葉の聞き取りやすさが向上します。

結果はこういう感じになります。

邪魔になる周波数が見つかったら、そこだけ下げておく。これも大事なポイントです。

コンプレッサーの使い方は?

コンプレッサーは、EQと同じくらい頻繁に使用されるツールです。EQが周波数に応じて音量を上げ下げするツールであるとするなら、コンプレッサーは大きな音を下げるためのツールです。ダイナミックレンジを狭くするためのツールです。クリップごとに自分でマニュアルで細かく調整してもいいですが、コンプレッサーをトラックに適用すればあっという間に音量のばらつきを抑えて、大きすぎる音を適正な音量にできます。音声編集というと、音響さんがハードウェアフェーダーに両手を置いて、タイムラインを再生させながら、音が大きくなるタイミングでフェーダーを下ろす光景がイメージされますが、簡単にいうとコンプレッサーがやっていることはこれに近いです。

たとえば人の声を収録しているトラックの音量を再生したとき、最高レベルが-12dB、最低レベルが-25dBだったとします。オーディオレベルの目安としては、叫び声が-10dBくらい、囁き声が-20dBくらいだとされています。だからこのトラックのダイナミックレンジは広すぎます。そこでコンプレッサーを使って音量の幅を狭くして、聞き取りやすくします。

コンプレッサーは、ミキサーではEQの下、ダイナミクスの項目にあります。

見慣れないパラメーターがあるかもしれません。ここでコンプレッサーの5つのパラメーターの意味をまとめておきます。

しきい値 → コンプレッサーが効きはじめる音量。
レシオ → 圧縮率。
アタック → 音声レベルがしきい値を上回ってから何ms(ミリ秒 = 1/1000秒)でコンプレッサーがかかりはじめるか
ホールド → 最低何msコンプレッサーがかかり続けるか
リリース → 音声レベルがしきい値を下回ってから何msでコンプレッサーが停止するか

デフォルトでは、しきい値が-15dB、レシオが2.0:1となっています。これが意味しているのは、-15dBより大きい音は、1/2の大きさに圧縮されるということです。たとえば-9dBの音があったとすると、-15dBを6dB上回っているので、-15dB + 6dB x 1/2 = -12dBという計算になります。つまり-9dBだった音が-12dBになるわけです。

一般的には、しきい値は-10dBから-20dBの間に設定されることが多いようです。レシオの数値は2:1から3:1の間で設定することをお勧めします。ここを10:1などにすると、圧縮がかかりすぎて人工的な音声になってしまう恐れがあります。2:1から3:1の間であれば、ごく自然なやり方で音声に圧縮が加えられます。

コンプレッサーを適用した結果、音声レベルが全体的に小さくなりすぎたら、また全体の音声レベルを上げておきましょう。ダイナミクスのダイアログの右上、メイクアップのフェーダーを上げると、全体の音声レベルが上がります。メイクアップによる音声レベルのゲインアップは、コンプレッサー適用後に適用されるので、ダイナミックレンジがまた広がることはありません。音声レベルが比較的均等な状態から、全体のレベルが底上げされます。

音声編集の順番は?

これもユーザーやプロジェクトによって厳密には異なってくるので一概には言えませんが、とりあえずざっくりと普通のワークフローを紹介するとこんな具合です。

  1. アセンブリ・トリム編集
    適切な素材を、適切な場所において、適切な長さにまとめる作業です。エディットページでのカット編集の作業に近いです。ここで対象となるのは映像ではなく音声ですが、これはFairlightページに行かなくても、エディットページでもできます。

  1. スポッティング
    音声編集が必要なところにマーカーを置いていく作業です。「ここは効果音が必要だな」とか、「ここは音が汚いからEQでなんとかしよう」とか、「ここは音が大きすぎるから部分的に音量を下げたほうがいいかな」とか、全体的に見て修正が必要だと考えた場所をマーキングしていきます。これもエディットページでできちゃいますね。

マーカーの一覧も、マーカーを置いた場所も、マーカーに含まれるコメントも、「インデックス」の「マーカー」でチェックできます。

  1. ダイアログ編集
    インタビューやダイアログなど、人の声を編集する段階に入ります。よく使われるのは、EQ、コンプレッサーなどでしょうか。De-Esser、Noise ReductionといったFairlightFXも活躍します。必要であればここでナレーション収録やアフレコも入ってきます。

  2. サウンドエフェクト
    効果音を入れていきます。衝撃音、環境音、自然音など。サウンドトラック、つまりBGMもここで追加されます。よく使う音声素材は、サウンドライブラリに入れておくことをお勧めします。

  1. ミキシング
    ここまでですでにクリップ単位での編集は終わっていて、適正な音量や音質になっているはずです。効果音もサウンドトラックも適切な場所に入っているはずです。しかしまだトラックの間のバランスが取れていません。人の声のトラックの音量が小さすぎたり、BGMがうるさすぎたりするかもしれません。ミキサーを使ってトラックごとの音量や音質を調整していきましょう。

ここまでいけばほとんどおしまいですが、最後にラウドネスをチェックしておく必要があるかもしれません。ラウドネスについてはこちらの記事をどうぞ。

Fairlightにはどんなツールがある?

ツールの配置はこちらの画像をご覧ください。

この動画ではより詳しくFairlightの主要ツールを説明しています。

Fairlightで音声やナレーションを収録するにはどうすればいいい?

意外と簡単です。こんな手順を踏んでください。

  1. マシンにオーディオデバイスを接続します。オーディオインターフェースを介してマイクを接続してもいいですし、マイクを直接マシンに接続してもいいです。

  2. DaVinci Resolveを立ち上げて、音声収録用のトラックを作ります。

  3. Fairlightページの右下のミキサーで、音声収録用のトラックを探し、「入力なし」の箇所をクリックして、「入力」というボタンを押します。

  1. パッチの画面が出てくるので、そこで左のAudio Inputの項目(外部マイク)と右側の音声収録用のトラックを接続します。Audio Inputのセクションには、OSで見えている音声入力が認識されます。右下の「パッチ」ボタンでリンクができます。

  1. トラックの左側のヘッダーでRのボタンを押します。

  2. 収録したい場所にプレイヘッドを持っていって、そこでタイムライン上部の録画ボタンを押します。そうすると収録が開始されます。

うまく収録できない場合には、ファイルの保存先が正しく指定されているかご確認ください。プロジェクト設定のキャプチャー・再生のタブで変更できます。ここのパスに音声収録の新しいファイルが保存されることになります。

ADRのタブを使う方法もあります。上に紹介した動画の5:10あたりから簡単に説明しているので興味のある方はどうぞ。

FairlightFXはどれをどう使えばいい?

DaVinci Resolveに標準搭載されている映像のエフェクトはResolveFXですが、音声のエフェクトはFairlightFXと呼ばれています。これも20個くらいあります。それぞれの機能の細かい紹介はこちらの記事をご覧ください。

追記

こちらの動画はATEM Miniの音声調整について語っていますが、じつはDaVinci ResolveのFairlightページにも当てはまることばかりが紹介されています。お時間があればご覧ください。

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