2020.02.13 (最終更新日: 2020.02.21)

ラウドネスをめぐる8つの疑問【DaVinci Resolve質問箱】

DaVinci ResolveのFairlightページには、ラウドネスメーターがあります。この記事ではラウドネスの意味や使い方について説明します。音声編集を始めた方の多くが出くわす最初の関門の一つがラウドネスですが、大丈夫です、そんなにややこしい話ではありません。

そもそも何をするもの?

ラウドネスメーターは、ものすごく簡単に言ってしまうと、タイムライン全体の音量が適正かどうか判定するためのツールです。一般的には、全ての音声の配置や調整が終わり、ミキシングが済んだあと、最終段階で使用されます。番組全体の合計の音量が適正なものであるかどうか、番組全体で大きな音から小さな音までどのくらいの幅があるか、そういったことを検査します。

どうしてこんなラウドネスという規格が成立したかという話をします。その昔、もう今ではあまりご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、世の中にはテレビというものがありました。そしてそこでは音声に関するルールがありました。それは番組全体の中でいちばん大きい音が一定の基準を超えてはいけないということです。番組の最大音量が適正かどうかを計測し、そこが問題なければ番組として成立していました。いちばん大きい音が耳を聾するほどうるさくないという保証ができれば、視聴者は安心してコンテンツを楽しめるからです。しかしこのルールには弱点がありました。いちばん大きい音量レベルを超過しないという点を守りさえすれば、あとはいくらでも、どれほど長い間でも、番組の中で音量を大きくできたのです。その結果、最初から最後まで最大許容レベルギリギリまで音量を上げて、番組全体がずっとうるさいということが起こり得ました。そうすると視聴者はどうするか? テレビの音量を(つまみで、リモコンで)下げます。するとまた問題が起こります。同じ番組はそれでいいのですが、次の番組を見るときに、その番組の全体の音声レベルが低すぎて、音が聞こえにくいということになるのです。ルールで決められているのは最大音量だけなので、そのバーの下の音声レベルのバランスは番組ごとに勝手に決めることになります。これは普通のテレビ番組でも起こり得ますが、とくにCMだとそれが顕著です。CMは製品をアピールしたいので、音量を全体的に上げがちです。そうするとCMの音量とテレビ番組の音量が違いすぎて、CMに入るたびにテレビのボリュームを変えないといけなくなります。

そこでできたのがラウドネスという規格です。ラウドネスは番組全体の平均音量を定めて、この基準値を大きく外れないことを番組やCMに要求します。そうすることで最大音量だけではなく平均音量もコントロールできるようになりました。これが10年前くらいの話です。その結果、番組やCMが最大音量と平均音量をちゃんと守っていれば、いつどのテレビ番組を見ても、必ず適正な音量が保たれるというより理想的な状態がおとずれました。

ここで注意して欲しいのは、ラウドネスはあくまで番組全体の平均音量であって、番組の間ずっと同じような音量にしないといけないということではないということです。番組には音が大きいところ、小さいところ、無音のところ、と様々なパートがあるはずですが、このすべての平均が基準値に近ければいいのです。だから10秒間、無音に近い箇所があったら、10秒間、平均よりもかなり音が大きい箇所があっても不思議ではありません。大事なのは全体の音量バランスであって、特定の箇所の音量ではないのです。

基準は?

一般的に日本やアメリカではラウドネスの基準は -24LUFS とされ、ヨーロッパでは-23LUFSとされています。LUFSは、Loudness Unit Full Scaleの略です。こう書くとまた難しく感じられますが、いつも使っているdB(デシベル)と似たようなものだと考えていただいて構いません(正確に言うと、ラウドネスは聴覚上の特性を考慮に入れているので単純なデシベルメーターとは違いますが、まあそのあたりはややこしくなるので今回はカットします。興味のある方はGoogleで調べてみてください)。

DaVinci Resolveでこのラウドネスの基準値を変えるには、プロジェクト設定に行きます。初期値は-23LUFSとなっていますので、変更が必要な場合にはここで変更してください。

最近ではYouTubeもラウドネスと無縁ではありません。YouTubeの標準ラウドネスは -13LUFS だそうです(だそうです、というのは、YouTubeが公式に謳っているわけではないからです)。

それぞれのメーターや値の意味は?

ラウドネスのセクションには2本のメーターがあります。いずれも測定範囲は-18〜+9です。通常のデシベルメーターは-50〜0dBですが、これらのラウドネスメーターは、基準値からどれくらい外れているかを表示するので、簡単に言えば0に近ければ近いほど自分が設定した基準値に近いということを意味しています。

左 →「M(Momentaryの意味)」と書いてあるメーターは、プレイヘッドの位置の瞬間的なラウドネスユニットを示します。
右 → 右はラウドネスユニットメーターで、再生範囲内の合計ラウドネス値を示します。このメーター上部の数値は、その再生範囲内の最大ラウドネスユニット値を表示します。

Fairlightページのラウドネスメーターには、ショート、ショート最大、Range、ロングという4種類の計測値が表示されています。

ショート → 過去30秒の平均レベル
ショート最大 → 過去30秒の最大レベル
Range → ダイナミックレンジ(大きい音と小さい音の音量の幅)
ロング(Integrated) → 基準値との差異

ここで見るべきはロングの値です。これは全体を通じて基準値からどれくらい音が大きいか、音が小さいかを示しています。

どう測定すればいい?

通常、ラウドネスの測定はプログラムの最初から最後までを対象とします。こんな感じで測定してみましょう。

  1. プレイヘッドを最初のフレームに持ってくる。
  2. ラウドネスのセクションの右上の3つの点をクリックして、「再生/停止とリンクして測定」にチェックが入っていることを確認。これで自動的に再生開始と同時に過去の数値がリセットされ、クリアな状態で測定を開始できます。
  3. ラウドネスメーターの下のボタンが「開始」もしくは「再開」になっている場合には、それをクリックします。ボタンが「停止」になっているのが正しい状態です。
  4. あとは再生を開始しましょう。最後のフレームまで行ったらそこで再生を停止して、測定結果を確認します。

測定したあとはどうすれば?

一般的にはラウドネスは基準から±0.5〜±1.0くらいに収まればいいとされています。だからたとえばロングの値が+3.0と表示されたとすると、あとで調整が必要になります。しかし調整といってもそんなに難しい話ではありません。+3.0という数値は、全体のラウドネスが基準に比べて3LUFS大きい、つまり平均音声レベルが3dB大きいことを示しています。この場合には、マスターフェーダーで全体の音量を3dB分落としましょう。これだけです。もちろん他にももっとやり方はありますが、このようにマスターフェーダーを動かす方法がいちばん話が早いはずです。

測定の方法を変えるには?

ラウドネスには様々な測定方法があります。測定方法を変えるには、ラウドネスセクションの右上の3つの点のアイコンからどうぞ。

BS.1770-1 → ラウドネスの古いワールドスタンダード。🌍
BS.1770-4 → ラウドネスの新しいワールドスタンダード。🌍
ATSC A/85 → アメリカ方式。🇺🇸
EBU R128 → ヨーロッパ方式。🇪🇺🇬🇧
OP-59 → ニュージーランド、オーストラリア方式。🇳🇿🇦🇺
TR-B32 → 日本方式。🇯🇵
AGCOM 219 → イタリア方式。🇮🇹

ラウドネスの推移を確認するには?

DaVinci Resolve 16にはラウドネスの推移を確認するためのグラフツールも備わっています。

このグラフを出す方法がややこしいので説明しておきます。

  1. オートメーションボタンを押します。

  2. インデックスのタブを開いて、メインバスの項目の左側の瞳のマークをクリックします。

  3. これでタイムラインのいちばん下にメインバスのグラフが出てきます。Loudness Historyの項目をチェックすると、Integrated(ロング)、Momentary(瞬間のラウドネス値)、Short Term(ショート)の3種類の数値が選択できます。

一発で簡単に調整できないの?

できます。というか、これを最初に説明しておけばよかったですね。ラウドネスの細かい原理や機能の使い方がわからなくても、簡単に全体のオーディオバランスを適正にする方法があります。

  1. クリップを全選択します。右クリックで、「オーディオレベルをノーマライズ」を選択します。

  2. ノーマライズの設定項目で、適切なものを選択します。

ノーマライズモード→ 測定方法を選択します。
ターゲットレベル → dBTP(デシベルトゥルーピーク)を決められます。全体の中で最大の音量レベルを決めます。
ターゲットラウドネス → ラウドネス、つまり全体の音量の基準を決めます。前述のとおり、日本の一般的な基準は-24LKFS、YouTubeなら-13LKFSです。
レベル設定 → 「相対」をお勧めします。複数のクリップがある場合に、すべてのクリップを一つのものとして処理する(相対)か、それぞれのクリップを一つずつ処理する(個別)かを決められます。

このノーマライズでは完璧に基準値に合わせることはできないですが、十分正確にピークとラウドネスを調整してくれます。

最初こういう状態だったものが、

ノーマライズをかけるとこうなりました。

28クリップする
クリップしておくと
あとからいつでも
見返したりできます。