2020.02.20 (最終更新日: 2020.03.04)

BMPCC4K、BMPCC6Kで撮影したBlackmagic RAWの素材をDaVinci Resolveで扱うときの3種類の主なワークフロー

BMPCC4K、BMPCC6K(以下、BMPCC)で撮影した素材をカラーグレーディングする場合、いくつかのやり方があります。この記事ではその方法の主要なもの3種類をご紹介します。基本的には3つを順番に使うわけではなく、3種類のうちのどれか1つの方法を選んで使うことになりますが、どれが正しい、どれが間違っているということではありません。自分が使いやすい方法を選んでください。この3つのどれでもない方法であっても大丈夫です。

あと一つ申し上げておくと、これから紹介するのは、カラーグレーディング自体のやり方ではありません。どちらかというとカラーグレーディングを開始するスタート地点を作るためのやり方だととらえてもらえると嬉しいです。

BMPCCで撮影する

本題に入る前に、まずは撮影の話です。

BMPCCには2つの収録コーデックが用意されています。Blackmagic RAWとProResです。

DaVinci Resolveでのカラーグレーディングを考えるなら、間違いなくProResよりもBlackmagic RAWをお勧めします。なぜならProResは10bitであるのに対してBlackmagic RAWは12bitで収録できるし、Blackmagic RAWはRAWなのでホワイトバランスやISOをあとから自由に変更できるからです。

ビットレートは3:1とか12:1とかQ0とかいろいろありますが、まあ自由に選んでください。ざっくりいうと、ビットレートが低くなるにしたがって、解像感が失われていく傾向にあります。ノイズがより出やすくなるといったことはありません。ビットレートで判断するなら、Blackmagic RAW 3:1とProRes 422 HQのビットレートが同じくらいですが、明らかにBlackmagic RAW 3:1の方がクオリティが優れているのでこの2つの比較でProRes 422 HQを選ぶ合理的な理由はあまり見当たりません。ちなみにNetflix社は5:1以上を推奨しています。

BMPCCの収録のタブには、ダイナミックレンジの設定があります。しかしBlackmagic RAWで撮影するかぎり、ここで何を選んでもらってもかまいません。Blackmagic RAWで撮影する場合には、文字どおりRAWのデータ、つまりセンサーで見ているものをそのまま後処理なく記録するからです。撮影時にどのような設定で記録しようと、あとでDaVinci Resolveで好きなダイナミックレンジに変更ができます。換言するなら、普通は撮影時に設定するべきことを、撮影が終わって編集に入った段階で自由に設定することができるわけです。これはまさにRAW撮影の大きな利点と言えます。

A. カメラRAWを使う

撮影したBlackmagic RAWの素材をDaVinci Resolveに取り込んでから、カラーグレーディングを始めるやり方はいくつもありますが、カメラRAWの設定を見るのがいちばんシンプルなやり方だと思います。

クリップ単位のカメラRAW設定

RAWの素材は、カラーページのカメラRAWの項目でディベイヤー方法を決定できます。ここで「デコードに使用」で「クリップ」を選んでみてください。そうすると「カラースペース」や「ガンマ」を自由に設定することができます。

ここで自分のカラーグレーディングしやすい設定を選んでください。

カラースペース(色域)
Blackmagic Design → 最大のカラースペース。
Rec.709 → 一般的なビデオのカラースペース。
Rec.2020 → 現在一般的に想定される中で最大とされているカラースペース。
DCI-P3 → 一般的な映画のカラースペース。

下にDaVinci Resolveの色域スコープの画像を載せておきます。Rec.709を基準にすると、それぞれのカラースペースはこのように定義されています。



大事なのは、カラースペースは広いからいい、大きいからいいというわけではないということです。いくらお金を積んでも、現在のテクノロジーではRec.2020を100%カバーしたモニタを手に入れることはできません。自分がどこの段階からグレーディングをしていきたいのかという点から考えて、もしくは自分のグレーディングのモニタ環境、最終的に作品を見る人が使うであろうモニタのスペックに合わせて、適切なものを選択しましょう。

ガンマ
Blackmagic Design Film → ログ。コントラストも色も薄い映像。自分でカラーホイールを使って色とコントラストをつけていく。
Blackmagic Design Video → ビデオ。色もコントラストもついている。
Blackmagic Design Extended Video → Blackmagic Design FilmとBlackmagic Design Extended Videoの中間。Blackmagic Design Videoよりは、ハイライトが多く残っている。
Blackmagic Design Custom → 右側のガンマコントロールをいじるとこのモードになります。
Rec.2100 Hybrid Log Gamma → HDR HLGのガンマ。
Rec.2100 ST.2084 (PQ) → HDR PQ(=HDR10)のガンマ。
Rec.709 → 一般的なビデオのガンマ。Blackmagic Videoより彩度は薄い。

カラースペースもガンマも、たくさん選択肢がありすぎてわからないという方は、とりあえずRec.709のカラースペース、Blackmagic Design Videoのガンマをお勧めします。これはいい感じに色がついて、明るさのコントラストも標準的で、悪くないです。たしかにカメラでVideoモードで収録した場合と同じ色のつき方になって、白飛びや黒つぶれが発生してしまうかもしれませんが、Blackmagic RAWで撮影しておけば、もし作業中に白飛び、黒つぶれがあったとしても、ちゃんと後からデータを戻してこれるので心強いです。

カラースペースとガンマの項目で選択の基準になるのは、「最終的にどういう絵にしたいか」というよりは、「グレーディングの最初のスタート地点として、どういう絵から始めたいか」という点です。初めに色がついていない方が色をつけやすいという人もいるでしょう。色がついている方がわかりやすいという人もいるでしょう。HDRの素材を作りたいという人もいるでしょう。いずれにしても自分がどういうワークフローで進めていきたいのか、ということを考えて適切な選択肢を選んでください。

カメラRAWのパレットの右側には、ガンマコントロールというものがあります。Blackmagic Design Videoのガンマを選ぶと、ここはグレーアウトしますが、Blackmagic Design Extended Video、Blackmagic Design Filmを選ぶとパラメーターが操作できるようになります。見慣れない項目が多くて難儀するかもしれませんが、じつは名前が違うだけでカラーホイールのセクションと同じような機能が多いです。ひととおり解説してみます。

彩度 → プライマリーホイールのセクションの「彩度」と同じです。
コントラスト → プライマリーホイールのセクションの「コントラスト」と同じです。
ミッドポイント → プライマリーホイールのセクションの「ピボット」に近いです。
ハイライトロールオフ → Logホイールのセクションの「ハイライト」に近いです。
シャドウロールオフ → Logホイールのセクションの「シャドウ」に近いです。
白レベル → プライマリーホイールのセクションの「ゲイン」に近いです。
黒レベル → プライマリーホイールのセクションの「リフト」に近いです。
ビデオの黒レベルを使用 → 黒レベルがわずかに上がります。マニュアルには「ショルダーパッドがクールだった時代の映像機器をまだ使っている人のための機能」 と書いてあります。

RAW素材だからといって、RAWパレットですべての絵作りをしないといけないという法はありません。ガンマコントロールで細かく自分好みの映像にすることはできますが、所詮はボックスとスライダーしかない小さなセクションにすぎません。あまりここで悩みすぎずに、前述のカラースペースとガンマを決めて、そのままカラーホイールのセクションに行ってグレーディングを始めてしまうことをお勧めします。

プロジェクト単位のカメラRAW設定

ここまでカメラRAWの設定は、クリップ単位の話ばかり述べてきました。プロジェクト単位で一括で取り扱えないのか? もちろんできます。プロジェクト設定に、カメラRAWの項目があって、そこに似たような設定が並んでいます。

クリップごとに設定しなくても、「デコードに使用」で「プロジェクト」を選べば、プロジェクト設定の設定内容がそのまま反映されます。

B. LUTを使う

次のやり方として、LUTを使う方法を見ていきましょう。DaVinci ResolveにはBMPCC4K、BMPCC6KのためのLUTがあらかじめ用意されていますが、正直なところ、それらを使うことにあまりメリットはありません。同じ変換は前述のカメラRAW設定でできてしまうからです。だからこのデフォルトLUTのことはこの記事では無視します。

じゃあLUTがどういう局面で必要になってくるのでしょうか? それは自分専用のLUTを作って、それで撮影して、またグレーディングのときにそれを使うというシチュエーションです。

LUTを作る

撮影前にLUTを作っておくケースを想定してみます。その場合には、Blackmagic RAWの素材をグレーディングして、自分が求めている映像が出来上がったら、そのLUTを書き出します。LUTの書き出しについてはこちらの記事をどうぞ。

ちなみに現在の最新バージョンでは65ポイントLUTも書き出せますが、BMPCCに持っていきたい場合には33ポイントLUTを選択しましょう。

BMPCCにLUTを入れる

BMPCCはLUTの読み込みに対応していて、DaVinci Resolveで作った.cubeのLUTを取り込むことができます。SDカードなどに.cube LUTファイルを入れておいて、それをBMPCCに差し込んで、メニュー画面からLUTをロードしましょう。

撮影時にLUTを埋め込む

BMPCCでBlackmagic RAWやProResを撮影する際に、LUTを埋め込むことができます。ProResファイルにLUTを埋め込む設定にすると、LUTが焼き付けられて後から変更することはできませんが、Blackmagic RAWファイルなら、撮影時にLUTを埋め込んでおいて、後から自由にそのLUTをDaVinci Resolveでオンオフできます。これは便利です。

DaVinci ResolveでLUTをオンオフする

Blackmagic RAWで撮影された素材なら、カメラRAWのセクションに、「LUTを適用」という項目が出てきます。ここにチェックを入れると、撮影時に使用していたLUTが反映されます。もし気に入ればLUTを当てたまま、もし気に入らなければLUTを外してグレーディングを始めましょう。

最後にLUTについて注意点を。LUTは、多くの場合、あるカラースペースの映像を別のカラースペースの映像に変換するために使われます。だからLUTを使うときには出発点がどこにあるかを理解することが大切です。どこからどこへ変換するためのものなのかを意識することが大事です。たとえばBlackmagic Design Filmのカラースペースの素材をグレーディングして作ったLUTを、Blackmagic Design Videoのカラースペースの素材に適用したら、いい結果は得られません。LUTを当てる際にはカメラRAWのカラースペースとガンマを、最初にLUTを作ったときと同じものに設定する必要があります。LUTを使うときにはそれが想定している出発点のカラースペースが何かを意識するようにしましょう。

C. RCMを使う

以前、DaVinci Resolveのカラーマネージメント(Resolve Color Management = RCM)について記事を書きました。RCMを使えば、プロジェクト一括で色空間を管理できるので楽ですよ、という内容です。

ここからは、より実践に即して、BMPCCの素材をRCMで管理する方法を紹介します。カメラRAWを使う方法に比べてちょっとわかりにくいかもしれませんが、使えるようになれば作業の効率化、映像品質の向上が望めるお話です。

Resolve Color Management(RCM)の設定

プロジェクト設定に行って、カラーサイエンスをDaVinci YRGB Color Managedと設定します。

ここで重要なのは、タイムラインカラースペースと出力カラースペースです。選択肢は様々ありますが、一般的なビデオ映像とされているのがRec.709 Gamma 2.4です。ここでは両方ともRec.709 Gamma 2.4を選んでみましょう。

入力カラースペースについては、Blackmagic RAWを使用されているかぎりは何を選んでも関係ありません。DaVinci ResolveはRAWクリップは自動認識して、RCMを使用する場合には、一気にタイムラインカラースペースに変換してくれます。だから入力カラースペースの選択は、RAWクリップの変換内容に一切影響を及ぼさないのです。ここはあまり知られていないポイントで、誤解をされることも多いので、強調しておきます。

これでおしまいです。変換の流れをおさらいしておくと、

Blackmagic RAW素材

タイムラインカラースペースに変換

DaVinci Resolve内のカラーグレーディング処理

出力カラースペースに変換

となります。DaVinci Resolveのプレビュー画面で見ているのは、この出力カラースペースに変換したあとの映像です。今回のようにタイムラインカラースペースと出力カラースペースでRec.709 Gamma 2.4を選択すれば、上の流れの「出力カラースペースに変換」という箇所は一切変換が生じないことになります。

RCMを使うメリット

・クリッピングしない
LUTを使ってクリッピングした場合、次のノードでそのクリッピングしたデータを戻すことはできませんが、RCMならDaVinci Resolveの32bitフローティングポイントの利点を最大限に活用できます。たとえある地点でホワイトやブラックがクリップしたとしても、別の地点でデータを戻してくることができます。予期しない白飛びや黒つぶれを防げます。

こういう風にハイライトでクリップしていても、

ゲインのマスターホイールを使えばデータが戻ってきます。

・プロジェクト単位で扱える
これも大きいポイントです。プロジェクト単位で一括してカラースペースをマネージメントできます。同一のタイムラインの中に、Blackmagic RAW以外の素材があったとしても、入力カラースペースを正しく設定すれば適切な処理が施されて、タイムライン上で様々なカラースペースの素材を違和感なく扱えます。

RCMを使うときの注意点

・カメラRAWパレットの一部機能が使えない
カメラRAW設定のセクションには、ガンマコントロールというパラメーターがありますが、RCMを使っているときにはここが一切使えなくなります。これはある意味では道理にかなっています。というのは、RCMを使うということはRCMにRAWファイルの扱いを一任するということであり、もうカメラRAWの設定が出る幕はほとんどなくなってしまうからです。使えなくなるのはガンマコントロールだけではありません。通常、「デコードに使用」というところを「クリップ」にするとカラースペースやガンマがクリップごとに選択できるようになるのですが、RCMを使うとここもグレーアウトします。これはRCMがRAW変換の親分になるためであり、決して異常ではないのでご安心を。

スタート地点に立ったら

上のA、B、Cのどれかで変換が望ましい形で完了したら、ここからカラーグレーディングの始まりです。カラーページでノードを組み立てて、自分の求めている色を作業が始まります。この記事が参考になるかもしれません。

41クリップする
クリップしておくと
あとからいつでも
見返したりできます。