車内の動画広告からアプリプロモーション、インナーブランディングまで手がけるJapanTaxiのインハウス動画制作――ハイレベルな動画制作〜運用を実現させる体制とは|New Wave

2020.02.27 (最終更新日: 2022.08.09)

最近急激に伸びているインハウス動画の取り組みについて紹介するシリーズ企画『New Wave』。今回は、JapanTaxi株式会社を取り上げます。
同社が提供する「JapanTaxi」アプリは、日本のタクシー配車アプリのパイオニアとして2011年にリリース。日本全国約7万台のタクシー車両をネットワークし、900万ダウンロードを誇る日本最大のタクシー配車アプリとして成長中です。(※2019年12月発表 プレスリリースより)
このように事業を急速に拡大させているJapanTaxiにおいて、広告制作部隊が2018年にインハウス化。さまざまな動画制作を内製するようになりました。――ではなぜ、JapanTaxiはコストを投じて社内に制作部隊を立ち上げたのでしょうか。そして、どのようなツールを駆使し、動画制作を進めているのでしょうか。動画制作全般を担う清水氏とマーケティング担当・吉田氏に詳しく話を伺いました。

「効果の良い動画」を制作するため、インハウス化に舵を切る

――まずは、JapanTaxiさんの事業内容について教えてください。

吉田 海斗(以下、吉田):JapanTaxiは、No1タクシー配車アプリ「JapanTaxi」の開発・運営を中心に、タクシー車内の決済機とデジタルサイネージを兼ね備える「JapanTaxiタブレット」など、様々な事業を展開しています。「JapanTaxi」アプリは、現在900万ダウンロードを超え、今後もさらなる成長を見据えています。私が所属するマーケティング部では、動画制作を担当する清水と連携し、より多くの方にアプリを利用してもらうための施策に注力しています。

――配車UX開発部Designグループに所属する清水さんの具体的な業務についてお聞かせください。

清水 庸介(以下、清水):私は、「JapanTaxi」アプリのみならず当社に関わるほとんどの動画制作に携わっています。Webサイト上やSNSなどで流れる動画広告はもちろん、「JapanTaxi」アプリ内のアイコンの挙動や、社内表彰式・セミナー用の動画に至るまで本当にさまざまです。

また、タクシー後部座席に設置されている「JapanTaxi タブレット」で動画広告が流れていると思いますが、そうした動画制作の一部にも関わっています。ディレクション業務を担当する場合もありますし、エディターとして自分の手を動かす場合もあります。とにかく、何でもやっている状態ですね(笑)。


JapanTaxi株式会社
配車UX開発部 Designグループ エディター/ビデオグラファー
清水 庸介 氏

――動画制作は、全て社内で行っているのですか?

吉田:以前は広告代理店に制作を依頼していましたが、2018年秋からインハウス化したことによって、社内でほとんど制作するようになりました。

――そうなんですね。では、インハウス化した背景をお聞かせください。

吉田:理由は大きく三点あります。まず一つ目が、タクシーという特殊な業界における知見を、広告制作者が理解する時間を短縮するため。次に、広告の効果測定データを社内に蓄積しながら、スピーディーにPDCAをまわして次に仕掛ける広告を作りたいという理由が挙げられます。そして最後の三つ目は、これまで広告代理店に依頼していたものをインハウス化することによって、コストを抑制するためです。

――なるほど。効果検証についてですが、どのようなKPIを設定しているのでしょうか。

吉田:KPIについては、アプリのユーザーが実際にタクシーをご利用していただくところに設定しています。


JapanTaxi株式会社
マーケティング部 マーケティンググループ
オンラインマーケティングチーム リーダー
吉田 海斗 氏

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スピード感を持って、動画制作に関わる

――これまでアウトソースしていた動画制作をインハウス化するには、相応のスキル・ノウハウを有した人的リソースも必要になります。ハードルが高くありませんでしたか?

吉田:そうですね。動画制作すべてを任せられる人材がいなかったので、清水を採用するまでが大変でしたね。ですので、彼に入社もらってからは、できることは何でもやってもらっています(笑)。

清水:前職は動画の制作会社のエディターで、モーショングラフィックスなど色々と経験していました。実は身近にタクシー業界で働いている人がいて、昔から「タクシー業界に身を投じてみたい」と思っていたんです。タクシーというレガシーな業界にとって、動画のポテンシャルは非常に大きいと考えていましたから。ちなみに、当社に入ったその日のうちに動画広告を1本制作しましたね(笑)。

――入社初日にですか!?

清水:はい(笑)。入社した当日に、静止画の制作チームに課題感をヒアリングしながら1本目の動画広告を作って、配信しながらPDCAを回していきました。現在は、動画広告だけで月に20本ほど制作しています。マーケターと一緒に制作会議をした上で、次の動画制作に入るのが通常のパターンになっています。

動画の尺は10秒以内がほとんどです。凄いのが、昼に完成した動画を渡したら、その日の夕方には配信されているというスピード感。これはインハウスならではの強みですよね。

吉田:広告代理店に動画制作を依頼していた時は、制作会議は月1回で、その場で効果測定などを話し合っていました。そこで、「これは効果が良かったから流用して新しい動画を作ろう」と決まっても、動画が完成するまでに1週間から10日ほどの日数を要します。それからフィードバックして、修正などに対応してもらっていました。今と比べものにならないほど時間がかかっていましたね。

――インハウスだと、その辺りの問題も解消されたと。

清水:スピード感は本当に違います。音の編集も私自身がやっていて、ラウドネスが規程を超えていると、Facebook広告にアップしようとしてもエラーが出るんです。しかし、Adobe Auditionで整音すれば、全く問題ありません。最初は外部のミキサーに頼むつもりでいましたが、取り越し苦労でしたね。動画素材もAdobe Stockで購入できるので、制作のことに関してはAdobe製品に助けてもらいつつ、スピーディーに制作しています。

――効果が良かった動画広告にはどんなものがありますか。制作のエピソードなどあれば教えてください。

清水:前職がCM系の動画制作会社だったのですが、当社でCMを作ることになった時に、「これは一人ではできないな」と前職の会社に相談したんです。すると、二つ返事で制作依頼を受けてくれて。その時に作ったCMが、とても効果が良かったです。2019年の春から流していますが、効果が落ちないんです。

先日流したCMも前職の会社と協力して制作したのですが、納品まで3週間ほどしかありませんでした。前回依頼した時に、「もっと制作時間を確保してほしい」とお願いされていたのですが、そんなスケジュール感での依頼になってしまって。

案の定、「エディターが捕まらないから編集できない」と言われてしまいました。そこで、「編集は自分でやる」と決めて制作をお願いしたんです。そのため、編集室に私が入って、自分で編集作業をするという変な構図で動画制作が進行していましたね(笑)。

吉田:2つの動画の効果が良かった理由は、タクシーに乗っている方とのコミュニケーションを第一に考えて制作できたことですね。実際にタクシーに乗った時に起こりそうな「あるある動画」は、ユーザーとの親和性があったのでしょう。

――動画制作を外部に依頼する時は、どんな場合なのですか?

清水:制作の規模が大きい時ですね。あとは、演出が重要だとか、キャッチコピーが必要な場合も外部に依頼しています。

気がつくと、できることは何でもやっていた

――社内用の動画も制作しているんですよね?

清水:最近は社内からの依頼の方が多くなっています。社内表彰のイベントなどでは、会場設営からやっていますね(笑)。地方にある営業事務所にオンラインで繋いで、その模様を配信しています。月に一回は全社会議があるのですが、そこで流す動画も作っています。

――なるほど。インナーブランディング動画が作れるのも、インハウスならではですね。

吉田:こういった取り組みは、インハウス化するまではできていませんでした。私たちが入社した時よりも、社員数も倍に増えましたので、会社のことを動画で説明できるライブラリも充実してきています。

清水:他にも、「JapanTaxiタブレット」の設置や決済方法などのマニュアル動画も作っているのですが、そういった動画を「自分で撮って編集したい」という営業もいるんです。そこで、Adobe Premiere Rushをオススメしています。これなら、タブレットやスマホから編集できますし、動画のテンプレートも探せばたくさんありますから。

――基幹クリエイティブソフトはAdobe Creative Cloudを使用していると伺いました。

清水:そうですね。ずっとAdobe製品を使用していて、Premiere ProとAfter Effectsで動画編集などの作業をしています。Adobe CSの頃から使っていて、今はAdobe CC(2020)を使っていますね。新しいバージョンだと、今まであったちょっとしたバグなども修正されていて、とても助かっています。

先ほどもお話ししたようにAdobe Auditionで音のレベルやラウドネスをいじったりもしています。社内に静止画の制作チームもあるので、効果が良かった静止画をIllustratorやPhotoshopなどを使いつつ、人物がいたら切り抜いて、背景を3Dにして奥行をつけて文字を載せ、動画化する作業もしています。静止画で効果が良いものは、動画にしても効果があるのでインハウスだとチーム間の連係がシームレスにできるんですよ。

――今後、実現させたいことはありますか?

清水:これから制作体制の拡充も目指していきたいです。そういった中で、データを共有する方法も考えていかなければなりません。今は動画と静止画の制作のやり取りだけなので、ファイルの受け渡しくらいしかありませんが、動画クリエイターやディレクターが増えたら、プロジェクトファイルで共有する方法も検討していきたいですね。

――インハウスにおいて、制作のモチベーションを保つために大切なことがあればぜひお聞かせください。

清水:やはり、勤めている会社のプロダクトや業界が好きじゃないと続きません。会社の掲げるミッションや業界のために自分の持つ動画というスキルで何ができるか、と考えて実践することです。
動画広告だけでなく、アプリのアニメーションやインナー向けやマニュアル動画、配信など何でもやっているのもそのためです。何でも屋のように見られますが、それで良いと思っています。そういった”動画だけじゃないこと”に、やりがいを感じられたらいいと考えています。

JapanTaxiの映像制作に使用する主なソフトウェア
・基幹クリエイティブソフト:Adobe Creative Cloud(2020)
・映像 編集ソフト:Adobe Premiere Pro、Adobe After Effects
・グラフィックデザインソフト:Adobe Illustrator、Adobe Photoshop、Cinema 4D
・素材収集: Adobe Stock
・フォント:Adobe Fonts
・MA(整音 編集): Adobe Audition

<Vook編集部より>
今回は、JapanTaxi株式会社の動画クリエイターとマーケターにインタビューさせていただきました。効果検証をもとに、より良い動画を制作していくためにはスピード感が必要となります。それらを実現させるために制作部隊をインハウス化してノウハウを蓄積しつつ、目指すべき道を見据えて突き進む。動画のポテンシャルを信じ、できることは何でもやるという情熱をひしひしと感じました。

※アドビ製品を使った動画内製化の詳細はこちらをご覧ください。

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