砂漠での撮影

2016年の6月頃、カリフォルニアのソルトン湖からそれほど離れていない場所で自主製作の短編映画を撮影しました。残念ながらWeb公開はしていませんが、砂漠での撮影について今後のためになるであろう知識を共有しておきます。ちなみに僕は、プロデューサー/編集/VFX監修として参加したプロジェクト。

今回は、「撮影準備で徹底しておかなければならないこと」について書きました。

太陽が照りつける大地は40度超え

写真(下)は撮影現場から見えるソルトン湖です。手前に走る貨物列車はサンディエゴとロサンゼルスを通っていて、それ以外は何も無い荒野の大地です。撮影を敢行した6月のこの地域の温度は華氏110度、摂氏43度ほどでした。本当に暑かったです。


写真提供:ニック・ラスムセン / ソルトン湖近辺の撮影ロケーション

ロサンゼルスからは車でおよそ3時間

今回の撮影は砂漠だけでは無く、廃墟など他にも設定上必要なロケーションがありました。そのためにこの場所を選んだのですが、移動距離もあり撮影は3日間に分けて行われたためトータルで3泊4日のロケとなりました。近くのスーパーまで車で20-30分、病院に至っては45分かかります。不測の事態に対応出来るような場所がほとんど無いために、出来る限り準備不足の無いよう考え無いといけません。


参照元:Google Maps

写真提供:ニック・ラスムセン / 映画のワンシーン スチル

必需品

まず撮影を行う際に一番大切なことはクルーとキャストの健康状態。熱射病や脱水状態にならないように、常に目を配ることです。そのため撮影準備はかなり気を使いました。その中でもカテゴリーを「水」「帽子」「傘&日焼け止め」「テント&クーラーボックス」に分けて説明します。

1人あたりペットボトル20本/dayの水を飲む

まず水です。30分に500mlのペットボトル1本分の水を飲みます。1時間で2本。撮影時間中8時間は炎天下なので最低でも1人あたり16-20本の水が必要です。夕方から夜にかけては直射日光が当たらないので、ずいぶんと水分を奪われることは減りましたが、日中は気づかないうちに体内の水分を失っています。

撮影に関わっていた役者の1人が研修医だったために、彼の働く部署から緊急手当ての医療品をレンタルしておきました。その中でも役にたつのは、電解質の含まれるサプリメント。電解質は水分を体内に留める効力があるそうで、脱水を予防することが出来ます。電解質はナトリウムやカリウムなどの成分に含まれていて、ポカリなどのスポーツ飲料に含まれますが、今回の撮影ではスポーツ飲料水は禁止しました。汗は体の中の塩分を排出しますが、スポーツ飲料水は糖分ばかりで塩分は含みません。なのでナトリウムも取れず、電解質は少なくなります。そのためにも普通に電解質のサプリメントを溶かした水を飲みます。


写真提供:ニック・ラスムセン / クルーにもキャストにも水を常備させました。

糖分は人工糖分では無く、果物から摂取

糖分がゆっくり体に吸収される方が良いからです。急激な糖分の変化は、消化するために大量のエネルギーを使うために集中力が低下します。砂漠での撮影中に集中力が低下すると、色々な危険が待っています。そういう理由もあって、ジュースもスポーツ飲料も禁止です。とにかく水、水、水。

オススメの果物は、バナナ、スイカ、リンゴです。

コーヒーも日中は禁止

アメリカの撮影の場合だけかも知れませんが、みんな完全にコーヒー中毒です。朝起きてコーヒー、昼ご飯を食べてコーヒー、撮影の休憩にコーヒー。どんだけカフェイン好きなんだっていうくらいコーヒーを飲みます。そのためにクルーやキャストからコーヒーのリクエストが頻繁にあります。

でも撮影が砂漠の場合はコーヒーも禁止です。カフェインは利尿成分が高いのでトイレが近くなります。なので脱水作用があります。コーヒーは日が暮れてからだけ、みんなに配りました。

帽子、しかもハット

日射症防止の対策は”帽子”です。クルー・キャストにも自分の帽子の持参を徹底しました。製作側も予備で5,6個準備をしておきました。帽子はハットのようにツバ付きのもので無いと、あまり太陽光を遮断してくれないので、出来る限りハットをオススメします。


写真提供:ニック・ラスムセン

また、水に浸して首巻きを使うと体温が上昇するのを防ぐことが出来るので、熱中病になることを防ぐことが出来ます。


写真提供:ニック・ラスムセン / 撮影中は全員が帽子をかぶっていました。

傘はいろんな時に役に立ちます。帽子だけだと顔しか影にならないので、日陰で休みたいけどベースキャンプまで遠かったり、近くに日陰が無い場合は傘を使って休みます。


写真提供:ニック・ラスムセン / 日陰で休むキャスト(左)傘があれば元気なキャスト(右)

また砂漠では太陽の照り返しが眩しくてモニター画面が見ることが出来ない場合があります。モニターを複数人で見る場合は、傘を使ってモニターの前に影を作ったりして、撮影している素材が正しい露出で収録されているかの確認をするためにも使います。


写真提供:ニック・ラスムセン / リハーサル中の監督と主演役者のため、傘で日陰を作ってサポートする撮影クルー

テント&クーラーボックス&氷

テントは出来る限り大きくて、屋根が半透明で無いものを選ぶ

今回の撮影はスタッフが総勢22名。撮影が始まると照明や出番待ちの役者のために日陰を作って待機出来るベースキャンプを作る必要があります。大きな予算の撮影では無いので、出来る限り快適でいられるように工夫をする必然性がありました。まず最初に購入したのは、11フィート四方の天井が高いテントです。このテントの中にケータリングを常備して、待機出来るようにキャンプ用の折りたたみ椅子をいくつも準備しておきます。このサイズのテントになると、少なくても5-6人は常に座っていられるような状態をキープ出来ます。

次にテントを選ぶコツとしては、屋根を作る布素材。これが出来る限り光を通さないものを選びます。黒は光の反射率が少なく、熱として吸収されるために服装としては砂漠で最適とは言えませんが、白い屋根のテントは光を通してしまって眩しいし暑いので余り日陰としての効果を期待することが出来ません。理想は茶色や、シースルータイプでは無い中間色の分厚い素材の屋根。このタイプは日陰をしっかり作ってくれるので安心です。


写真提供:ニック・ラスムセン / テントの下がしっかりと影になっているのが分かる写真

大小のクーラーボックス

テントの下で常設するものは、椅子とクーラーボックスです。大きなクーラーボックスと、1人でも持ち運び出来るポータブルのクーラーボックス両方を準備します。大きいタイプはとにかく氷を大量に入れて水を冷やしておくためです。ポータブル用は撮影現場の近くに置いて、いつでもすぐに水が飲めるようにしておくためです。撮影中は研修医のクルーが常に水を全てのクーラーボックスに入っているかを確認して、常に全員分の水が確保出来るようにしてもらいました。

その他

他にも、砂漠での撮影で必須なアイテムはまだまだあります。これらは何故必要かは大体予測出来ると思うので、リストにだけして終わりにしたいと思います。

  • 日没以降の行動用にヘッドランプ(携帯の明かりは片手が塞がるので、理想的ではありません)
  • バッテリー、ヘアメイク用のジェネレーター(発電機) ガソリンで動く2000Wくらいのもので大丈夫。これは夜のベースキャンプの作業光の電源も供給出来るのでほぼ必須。HMIや2000W以上の照明らを使用する場合は6500Wの大型発電機を準備する。最近は1200WくらいのLEDパネルがあるので、結構それを使うことが多い。
  • トランシーバー = 砂漠は電波が届かない場合が多いので、広範囲での撮影や移動を伴う撮影の場合は必須。出来る限り遠距離まで通信出来るものが良い。
  • ポータブルトイレ = 今回の撮影ではポータブルトイレをレンタル。男性は大体どこでもトイレに行けるが、女性スタッフも普通は現場にいるので、その他の衛生面を考えても1台は欲しい。
  • 日焼け止め = 言わずもがな。ちなみに撮影でタンクトップで来たクルーは初日でノックアウト。その後は宿泊施設か車の中で休んでいました。
  • しっかりとした靴 = サンダルはアウトです。

他にも必要なものは撮影の種類によって変わってきますが、砂漠での撮影に必要なものを一通り書き連ねてみました。参考になればと思います。

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