シネマティックなルックを作る5つのポイント~写真から考える~

bird and insectに聞くルック論

写真や映像の見た目や雰囲気・佇まい全般を指す言葉であるルック。
しばしばシチュエーション別に解説されがちなルックですが、そもそもどのような考え方を元に組み立てられているのでしょうか?
Creative Company「bird and insect」のshuntaroさん・林 裕介さんに、「ルック作り」について体系的に解説していただきました。
Vookのチュートリアル動画にて公開しています。



テーマをどのようにルックに落とし込むか
どのように光・色・構図・ディティールを考えるか

このチュートリアル動画を見ることで、作りたい映像をどのようなルックにすればいいか自分で考えられるようになります
ここからは、チュートリアル動画より「ルックとは何か?」「ルックの要素」についての解説をご紹介します。

そもそもルックとは何か?

前述した説明では抽象的すぎるので、一度写真や映像から離れ「文章」に置き換えて考えみましょう。
書き手によって、伝えたいことは同じでも間の取り方・言葉の選び方・構成方法など、文体は変わってきます。
文章における文体が、写真や映像におけるルックに当てはまります。
文体によって文章の伝わり方が左右されるように、写真や映像の伝わり方はルックによって左右されます

写真から考えるルック

写真は、特にルックが重要視されます。
なぜなら、時間の流れやカットの流れで内容を伝えることができないので、その一枚の画の中で内容を伝え切らなければならないからです。
写真をベースに考えることは、よりよいルックの映像を作るのに役立ちます。

ルックをより理解するために、以下の2枚の写真を見比べてみましょう。

どちらも、コーヒーやポット・カウンターといった小物の要素・内容はほとんど同じです。
しかし、光や色・メインの被写体以外の色・カメラレンズの選択・構図など、ひとつひとつの要素が大きく異なることで全体のルックに差が生まれています。

良いルックは 「良い」と思える雰囲気 を持ち、伝えたい内容をより効果的に明確に伝えられています
前者はアート、美意識などの感受性の領域。後者はサイエンス、つまり論理的で構築的な領域に当たります。
後者の例としては、人は明るい部分に目がいくので、メインの被写体を一番明るくするなどが挙げられます。
この2つの組み合わせによってルックは成り立っています。
このチュートリアルでは、後者のサイエンスの領域を基礎として解説していきます。

ハリウッド映画から考えるルック

映画「Atomic Blonde」のトレーラーを題材に、ルックについて考えてみましょう。
ハリウッド映画は非常にルックにこだわって撮影されており、それによって物語の内容をより効果的に伝えています。まず、トレーラーをご覧ください。

1.構図

1:30~1:36の一連のカットは、主人公のシャーリーズ・セロンが初めて登場する映画冒頭のシーンです。
このシーンは、構図の中心に主題が置かれているのが特徴です。
例えば、最初の氷から上がってくるシーンでは、主人公が初めて登場するシーンなのでシャーリーズ・セロンが主題として中心に置かれています。
次のバスタブに腰掛けているシーンでは、シャーリーズ・セロンを少し横にズラして真ん中に街並みを映すことで、この映画の舞台がロンドンであることを示しています。
主題が中心に置かれる構図は、何が主題かを明確にします。
映画冒頭のシーンなので、あえて力強い構図を続けることで誰が主人公なのか・何が起こるのかを視聴者に説明しています。

被写体の向きや位置関係を決める構図によってルックに意味が生まれます

2.ディティール

冒頭のシーンを見ると、主人公のシャーリーズ・セロンはかなり傷だらけに描かれています。
映画本編に登場する傷や薬、お酒などディティールはシャーリーズ・セロンが戦った、あるいは傷つけられたかを示しています。
これらのカットの中に、シャーリーズ・セロンの筋肉が盛り上がるシーンや荒々しくお酒を飲むシーンなどインサートすることで、傷つけられたのではなく戦ったことが連想されます。
また、この冒頭のシーンより前にスパイが殺されるシーンをインサートすることによって、シャーリーズ・セロンもスパイであることを欄外のディティールから読み取ることができます。

ディティールによって、何が起こっているのかを言葉ではなくビジュアルランゲージで語ることができます

3.光

冒頭のシーンでは全体が青白く、外のライティングから仄かに光が入ってきています。
これによって、シャーリーズ・セロンの傷があまり目立たない画になっています。
この後、写真を燃やすシーンを挟み、化粧台の光を点けることによってシャーリーズ・セロンが順光で照らされるのですが、そこで初めて傷の生々しさが明らかになる設計になっています。
このような劇的な効果を狙っている他にも、暗い光で感傷に浸る主人公を演出し、写真を燃やすことをキッカケに強い主人公に戻ってくるという流れの設計になっていると考えられます。

ライティングは、それ一つを変えることで空気を切り替えたり、誰に・どこにフォーカスしているかをコントロールすることができます

4.色

冒頭のシーン含め、映画全体として青が基軸のカラーとなっています。
この映画では、青をベースに赤や青の反対色である黄色を効果的に使用しています。
全体的にカラーグレーディングはかなりローキーで抑え目、シックでスタイリッシュな画になっているのですが、それに合わせてシャーリーズ・セロンの服もほとんど全編通してモノトーンで統一されています。
しかしながら、1:48のようにシャーリーズ・セロンが赤い服を着ていたり赤いライティングで照らされていたりするシーンも登場します。
これらのシーンでは、スパイである主人公の本心が描かれています。
偽っている時はモノトーン・本心の時は赤で描くことで、騙し合いという複雑なストーリーの中で主人公がどちらのサイドに立っているのか画面から分かるようになっています。

どのような色彩を使うかによって、映像全体の印象は変わります
また、効果的に色を使うことで映像の特徴や内容が明確になります

5.テーマ

以上のように、光・色・ディティール・構図に時間を加えたものが、映像におけるルックの要素と言えます。
これらの要素をまとめるものがテーマです。
テーマは、内容とルックを橋渡しする役割を果たしています。
例えば、今回取り上げた映画「Atomic Blonde」では、「2重3重のスパイが活躍するスタイリッシュな映像」がルックのテーマです。

まとめ

一定数以上の人が良いと思えるルックは必ず存在しています
チュートリアル動画では、本記事に続いて「どのようにしてテーマを決めてルックに落とし込むか」や「どのようにして光・色構図・ディティールを考えるか」について解説しています、ぜひご覧ください!

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