2020.06.02 (最終更新日: 2020.06.02)

海外撮影から学ぶ、ジンバルのカメラワーク徹底攻略

はじめに

DJI の3軸ジンバル・カメラスタビライザーシリーズ「RONIN」には、大型のシネマカメラを搭載するRonin 2から、DSLRを搭載することを念頭に考えられたRonin-Sの様な機材があります。規模を問わず様々な現場で使用されることがあり、用途も様々です。

今回は一眼カメラ向けのRonin-Sの基本的な特性について説明した上で、ジンバルの代表的なカメラワークについて解説します。

例えばこの動画はRonin-Sのポテンシャルをフルに使って撮影しています。2日の撮影でほぼ全ショットRonin-Sで撮影していると思いますが、すごいクオリティです。スキーのゲレンデのリフトからの撮影なども上手く使うことで空撮のようなショットも撮影していますね。

演出によって用途が違う機材

Ronin-Sの様なジンバルは、撮影目的に合わせて用いる機材の一種です。
ジンバル以外にも、ドリー、スライダー、そしてステディカム(小型のグライドカムも含む)といった機材があり、それぞれが違った演出意図を内包出来るので、常に目的にあった用途で利用し、効果的なカメラワークで演出意図をクリアにします。

撮影によっては、Roninのようなジンバルも含め、上記全てのツールが使われる可能性もあります。

撮影規模にあったツール

大型のRoninと小型のRonin-Sはそもそもクルーサイズが変わります。大型の撮影では各ショットのセットアップに多くの時間を割いて、クルーの数も多いので、大型のシネマカメラを搭載するタイプのRonin 2を使用します。

リモートでフォーカスや絞りを調整出来るコントローラーを取り付けて、シネマレンズを使用するなどリグが大きくなっていくため、小型のRonin-Sには重量が適さず、両手で持つタイプの大型Ronin 2ジンバルにさらにEasyRigなどのサポートをつけるのが通常になります。

小規模の撮影(個人撮影も含む)では、多くの場合、人手が足りているとは言いづらい状況です。
そのため、大型のRonin 2を使用する際にかかるような運搬とセットアップ時間のロスは基本的に好ましく無いです。時短、効率化を図るためには、Ronin-Sはとても便利です。ウェディング撮影、Vlog撮影、ビデオグラファースタイルで撮影するコマーシャルやミュージックビデオを含む小規模撮影は時間との勝負です。

Ronin-Sを利用することで、各ショットにかける時間をギリギリまで短縮しつつ、バリエーションの多いダイナミックなカメラワークを撮影して、自身の作品に組み込むことが出来ます。そこがまさにRonin-Sの強みです。

特にRonin-Sのようなジンバルの登場は、今まで難しかったカメラワークを飛躍的に簡単にすることが出来るようになり、演出意図をより確実に形にすることが出来るツールとして画期的だと思います。

演出意図と書きましたが、RONIN-Sのような機材は撮影の可能性をうんと広げてくれる反面、演出意図を忘れたとしてもそれなりにカッコよく映るので、撮影したけどうまく編集で使えない場合があるかもしれません。そのために手法がどういった演出効果があるかを同時に理解しながら使うとさらに編集にやりがいを感じると思います。

トラッキングショットのポイント

Ronin-Sはトラッキングショットの撮影するための機材なので、まずベースはしっかり押さえるのが良いと思います。
トラッキングショットとは、カメラを左右や前後に動かしながら、特定の被写体を追いかけるように撮影する方法です。

特にジンバルはカメラが正面に向かって前進したり、後退したりする動きのトラッキングを得意とします。ドリーでは地面に敷いたレールがバレてしまうし、スライダーの様に数フィート先までしか伸びることが出来ない中で、ジンバルは前後の動きに制限がありません。

トラッキングのカメラワーク演出 5種

Ronin-Sには5つの代表的なカメラワークがあります。1つずつ見ていきます。

人物を前後からトラッキング

ジンバルは手持ち撮影なので、レールを敷いたドリーのように完璧にシームレスなトラッキングにはなりません。逆にそこを強みにする撮影のコツは、被写体を追いかける、ということです。

撮影のコツは、被写体の歩幅とスピードにRonin-Sを持つ自分のテンポも合わせながらカメラでトラッキングすることで、微妙に残る手ブレにも被写体の歩くテンポとシンクロすることができます。その結果、視聴者は無意識のうちに被写体の立場で映像を観始めるのです。

人物と一緒に歩きながら手前から撮影したり、後ろから追いかけたりするように撮影する手法は数年前まではステディカムでしか出来ませんでした。しかし、ジンバルの登場以降、様相が一変したのです。

トラッキング撮影は大きく分けて2種類の手法があります。1つ目は出来るだけワイドで、あまり人物から離れすぎずトラッキング撮影することです。遠目からトラッキングすると、第三者の視点のように映像が見えてしまい、ストーカーのような演出になってしまうので、演出上存在しない視点を意図せず入れてしまうことになるかもしれないので気をつけて。

上手くトラッキングできれば、人物を前後でトラッキングした時に、移り変わる景色と人物の表情が1ショットに凝縮されることで、1ショットの良さが一気に引き立ちます。

撮影ロケーションをワイドアングルで撮影することで、トラックしている人物が見ているものが、ほぼ同じタイミングで観客にも届けることができて、表情と観客の感情のラグが短くなることで、より共感を得やすい映像になります。

その真逆が2つ目の手法です。ミディアムショット、もしくはさらにクロースアップのようなショットを使って撮影します。そうすることで背景が圧縮され視界が狭まりミステリアスな要素が膨らみます。トラッキングしている被写体がどこを歩いているかのか分からないようにする演出ができ、トラッキングの後に来るサプライズに期待感を煽ることができます。

また野外の昼間撮影の場合は、ND(Neutral Density)フィルターと言うレンズフィルターを使うと、レンズを開放した状態で撮影できるので、背景をさらにぼかすことが出来ます。ボカシ具合もボケすぎてはディテールが無くなりすぎるので、加減をみてやる事をおすすめします。

サイドからのトラッキングショット

またトラッキングショットには、サイドトラッキングショットという手法もあります。ドキュメンタリーなどの1シーンで、歩きながら話す人物(ナレーター)を横(サイド)から撮影することで、周りの風景ではなく、人物の会話により集中しやすいトラッキングショットを撮影することが可能です。また撮影される相手も横から撮影された方が、目の前にカメラを向けながら話すよりも話易い場合が多いので、自然な表情も期待できます。

話していないですが、こういうショットがサイドからのトラッキングショットの例です。

地面スレスレで足をトラッキング撮影

トラッキングショットのバリエーションとして、地面スレスレを這うように撮影する手法もあります。人物を前後からトラックする場合は足を追いかけるように撮影します。

このショットが表現できるものは、トラッキングしている人物のステータスです。靴は人物のステータスをよく表します。工場の作業靴なのか、結構式のハイヒールなのか、もしくはピカピカに磨かれた靴なのかで、瞬時に次にくる出来事を頭の中にイメージさせることが出来ます。これはスポーツなどの現場でも非常に有効で、特にサッカーなどはアクションが足なので、まさにベストなコンビネーションです。

Glidecamのようなステディカムで撮影する場合は、難しいのが地面スレスレでの撮影です。どうしても構造上、上から少し見下ろす様なアングルで撮影するしかなく、逆に体勢も安定しづらく非常に難しいです。そのため、この手のショットはRonin-Sが持つ個性的なショットと言えるかもしれません。

地面からトラックアップ、空からのトラックダウン

上記で説明したトラッキングショットを組み合わせて、足から人物の顔の高さまでカメラをトラックアップするような技も、編集でカットを使わずに一連の流れとして見せる演出の1つです。

例えば、岩肌の裸足の足を追いかけるようにトラックアップしていくと若者が海に飛び込む(00:08)、みたいなショットをVlogで観られた方も多いのでは。

このようにトラッキングのショットを組み合わせて1ショットで複数の意味合いを持たせたりすることができるようになります。
DJI - Dare to Move: Behind the Scenes with Ronin-S(00:25)
DJI - Lost in Malta(00:29)
さらに空からのトラックダウンという手法もあります。上空に建物や夕焼けの空などが見える場合、そちらからトラックダウンすることで、シーンのトランジションに非常に有効なので、試してみると良いですね。

トラッキングショットの編集効果

もう1つ面白い手法は、Ronin-Sで撮影したいくつかのトラッキングショットを編集した時に効果を発揮させる事です。まず、同じ長さのレンズで、同じくらい人物から距離をとります。そして、構図を出来るだけ似せた状態で後ろから背中を追いかけるようなカットを撮ります。その後、ジャンプカットとわかるくらいはっきりと違った背景でいくつか並べると、その効果を明確に得られます。

各ショットに映る人物が同じ場合、移動の時間を一気に短縮したような効果が得られます。人物も違う場合、複数の場所で何か関連性を持った人物が今から何かで繋がるような期待感を感じられるシーンを作ることが出来ます。

この時に各ショットの構図が似ているため、各ショットの背景や人物の容姿の違いがさらに際立って目立つようになり、意図的に人物や風景の違いに対して観客の目を向けさせられます。他にも人物のトラッキングショットは色んな演出方法があるので調べてみると面白いと思います。

特殊なカメラワーク 4種

ジブアームクレーンショット

ここから先はトラッキングではなく、小型なRonin-Sの大きさやアプリを利用した特殊な撮影スタイルを紹介します。

シネマカメラ向きの大型なステディカムと違って小型なので、狭い空間でも使用することができます。またアクセサリーをうまく利用することで、ステディカムを持ったままでは人が通り抜けられないような場所で、手ブレをミニマムにして通り抜けることが出来たりもします。例えばジンバルのグリップ部分の下に1脚を取り付けるという方法も面白いですよね。

この長くなったアームを使って、ジブクレー ンショットというタイプのショットを撮影することが出来ます。Jib Armと呼ばれるタイプのクレーンショットは、建物の2階から1階に降りてくるように、非常にスムーズでカメラのオペレーターを感じさせない撮影手法の1つです。
いくつかの例をこちらの動画からも見ることが出来ます

通り抜け

他にも1脚を使った長いアームを利用することで、Ronin-Sを狭い空間を通り抜けるように撮影することで、他のツールでは撮影出来ないような映像を撮影することが出来ます。

この映像は非常にユニークでカッコ良いです。人が通れない隙間にRONIN-Sを通してみるとクールな映像が撮影可能になります。この時の撮影のコツは、Ronin-Sを使って狭い空間を通り抜けた先に、撮影したい被写体を持ってくることです。

狭い空間を通り抜けるのは映像をユニークにする方法ですが、あくまでも演出の一環であり、撮影したい被写体がちゃんと映像に写っているように工夫しましょう。

新しい撮影手法の開拓(スピン)

スピンはRonin-Sの機能の中でもっともユニークでかつ、斬新な映像を作ることが出来ます。特にファッション、ミュージックビデオ、ダンス映像など、あえて非日常感のあるビジュアルで独特な世界観を演出したい時にも効果的です。やり方はこちらの動画を見ると分かります

これも2つのロケーションでスピンを撮影し、編集で繋ぐと面白いトランジションを作ることが出来ます。

ハイスピードを使った撮影

最後にジンバルで撮影する時に、ハイスピード撮影(動画の指定フレームレートよりも多くのフレームレートで撮影して、スローモーション撮影すること)をするのは組み合わせとしてかなり良いです。冒頭で説明した通り、ジンバルを用いた撮影素材は十分にスムーズですが、ドリー撮影ほどではないです。そこで、ハイスピード撮影をすることで、手ブレ感をミニマムにまで削っていくことができるのです。

撮影のコツは、動画の中でも特にドラマチックに仕上げたいシーンで活用することです。さらに言うと、最初から最後までハイスピード撮影ですると、せっかくのハイスピード撮影で出せる魅力が和らいでしまいます。緩急のある映像にするようにノーマルのスピードとハイスピードをうまく組み合わせて撮影してみましょう!

サークルショット

Vlogなどでも頻繁に撮影に使われていますが、複数の演出意図を持った撮影テクニックです。この方法で撮影した時の一番のメリットは被写体と背景のハッキリとした区別ができることです。

こちらの動画で見ても分かる通り、撮影したいMaltaの街中にある歴史を感じさせる石像装飾に被写体をロックして、その周りを旋回(サークル)するように撮影することで、背景のみが大きく変化していきます。

結果的に、石像は背景から浮かび上がり一層立体的に見える且つ、ハッキリと撮影している目的を明瞭にしてくれます。この撮影方法はかなりダイナミックですが、少しコツが必要です。なぜならば、撮影する時にカメラがオペレータよりも先行して旋回すると、被写体を画面の同じところにキープしてしまうために、モニターすることが難しくなります。カメラの動きと同じスピードで自分の体も遅れずついていくことが重要です。

サークルショットを用いた撮影では、早く動かすだけでなく、ゆっくりと動かすことも効果的です。別の言い方をすると同じ時間で旋回する角度によって映像のもつ印象がかなり変わります。あまり早すぎると前後のカットとのつながりを上手に意識しないとカットで繋いだ時にうまく馴染まない可能性があり、編集する映像の目的が何かを意識しつつ撮影しましょう!ここでも撮影意図が重要ですね。

まとめ

多様なカメラワークを実現出来るRonin-Sですが、演出意図を忘れずに撮影(HowとWhyを一緒に考える)することが、Ronin-Sのカメラワークを使いこなすコツになるということですね!

text by Hiroki Kamada

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    コメント

    • MASA

      MASAmorii011

      20.04.13
      ジンバルの扱い方がいまいち分からなかったので、この記事でひたすら勉強させていただきます....
      ありがとうございます🥰