映像のルックは、照明の使い方ひとつで大きく印象を変えることができる
照明のことを学んでおけば、作品のストーリーを際立たせる上できっと役に立つでしょう。
この記事では、映像をシネマティックにする13の照明技法を、1つずつ解説していきます。
照明は初級から上級まで、どのレベルの制作者にも非常に重要です。
これを理解していれば、監督は撮影監督とのコミュニケーションがとりやすくなり、脚本家は、シーンの明暗を脚本でより表現できるようになります。
他のクルーはというと、照明が出来上がるのを、ただ待っていることがほとんどでしょう。
ほら、現場をサポートできるように、照明について知りたいと思いませんか?
No Film Schoolは、ビギナーから経験豊富な制作者まで、誰にとっても便利なガイド作りたいと思っています。
各々が表現したいルックやフィーリングを作る上で、役立ててもらいたいからです。
過去の記事では、照明の種類(原文記事)を取り上げたり、セットされたライティングを大解剖(原文記事)したりしました。
今回は、基本的な照明技法の特徴を解説します。
アスペクト比(原文記事)に関係なく、皆さんが作品をよりシネマティックに見せたいときに効果を発揮してくれますよ。
では、早速1つ目から見ていきましょう!
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技法1.自然光
『きみに読む物語』での自然光
出典:IMDB
まず、動かさなくていい照明を見ていきましょう。
むしろ、実際は1時間ごとに勝手に動く光です。
自然光(原文記事)を使ったテクニックは、ロケーションに関係なく、最初からその場にある光を利用します。
事前にロケハンをして、光の様子を確認しておくケースがほとんどだと思います。
撮影を行うのが何時ごろなのかも、考えておく必要があります。
自然光を使うときのポイント
・自然光に手を加えるには、レフ板や照明用フラッグを使う。
・必ずロケハンに行く。
・時間帯を考慮する。
技法2.キーライト
『プリズナーズ』でのキーライト
出典:IMDB
キーライト(原文記事)はシーンの主光源で、最も強く直接的な光です。
一般的に、キーライトは物や俳優の形を照らし出します。
キーライトを使うときのポイント
・カメラの近くには設置しない。立体感のない、のっぺりした光になるのを避けるため。
・被写体の後方に置いて、ドラマティックなムードを演出する。
・三点照明でメインとなるライト。
技法3.ハイキーライト
『マレフィセント』でのハイキーライト
出典:IMDB
ハイキーライト(原文記事)は、映画やテレビ、写真などで、シーンの照明比を下げる照明技法です。
映画が作られ始めたばかりの頃は、強すぎるコントラストを和らげるために用いられましたが、今ではムードや明暗のトーンを調整することが、主な目的になっています。
ハイキーライトを使うときのポイント
・明るい照明によって、全体が白っぽくなる。
・黒や中間の明度は極力減らす。
・楽観的、または希望を感じるようなトーンになる。
・ポップミュージックのMVのライティングで多く見られる。
技法4.ローキーライト
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』でのローキーライト
出典:IMDB
では、ローキーライトはどうでしょうか?
これは、光源にハードライトを使ってシーンを影で包み込む映画的なライティングで、コントラストと黒が好まれます。
ローキーライトを使うときのポイント
・暗いトーン、黒、影。
・はっきりとしたコントラスト。
・フィルム・ノワールやスリラーで用いられ、不吉な前兆を暗示する。
技法5.フィルライト
フィルム・ノアールでのフィルライト
出典:Crime Light
フィルライトは、キーライトが作る影を打ち消す役割があります。
キーライトの反対側に設置し、大抵はキーライトより弱い光を使います。
フィルライトを使うときのポイント
・キーライトによってできる影をなくす。
・フィルライト自体は、影や特徴的な光を作らない。
技法6.バックライト
『シャッター アイランド』でのバックライト(レオナルドの後ろ)
出典:IMDB
バックライトは、俳優や物に後方から当てる光で、照らす対象よりも高い場所に設置します。
物や俳優を、背景から際立たせるためです。
バックライトがあると、形や奥行きがはっきりするので、画の立体感が増します。
バックライトを使うときのポイント
・太陽光はバックライトになる。レフ板を使ったり光を和らげたりして、被写体に当てることも可能。
・設置する角度によっては、キッカーと呼ばれることもある。
2~6を利用して、三点照明を作る!
キーライト、バックライト、フィルライトの3つで、三点照明を作ります。
視覚メディアで用いるライティングのスタンダードと言えます。
照明を3か所に分けて置くことで、直接光が作る影をコントロールしながら、思いどおりに被写体を照らすことができます。
技法7.プラクティカルライト
『アイズ ワイド シャット』でのプラクティカルライト
出典:IMDB
撮影場所にある、ランプやキャンドル、テレビのような光源を使いたかったら?
こうしたものをプラクティカルライトといいます。
大方これらの装飾物は、舞台美術デザイナーや照明部門のクルーが追加します。
シーンの隅や俳優の顔を照らして、雰囲気を良くします。
プラクティカルライトを使うときのポイント
・対象をより明るくするときは、複数のプラクティカルライトを検討する。
・ロケーションごとに、使えるコンセントの数を把握しておく。
・色温度(原文記事)がずれていないかチェックする。
技法8.ハードライト
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』でのハードライト
出典:IMDB
ハードライトは、光源や太陽からの直射光による強い光で、影やくっきりとした輪郭を作ります。
これにより、視聴者の注意を任意の方向、特に俳優のいる場所などに誘導できます。
シルエットやハイライトも、ハードライトで演出することができます。
ハードライトを使うときのポイント
・ディフューザーやフラッグ(原文記事)で抑えることができる。
・カメラに映る対象を目立たせる。
・影の演出に最適。
技法9.ソフトライト
『her/世界でひとつの彼女』でのソフトライト
出典:IMDB
ソフトライトは厄介なもので、光源として厳密な定義はありません。
影をなくし、周囲の光から繊細な明るさ具合を新たに作り出すという撮影監督の美学です。
ソフトライトを使うときのポイント
・フィルライトとして使用できる。
・被写体の表情に若々しさを添える。
・ナチュラルで実際にある光であるかのように見せる。
技法10.バウンスライト
『ハリーポッター』でのバウンスライト
出典:IMDB
白色のボードやカードがあれば、太陽やランプ、または撮影用照明の光を反射させて、間接的に被写体を明るく照らせます。
バウンスライト(間接照明)を使うと、光はより広い空間に均等に拡散します。
きちんとセットアップすると、非常に柔らかい光やフィルライトを作れます。
また、トップ、サイド、時にはバックライトとしても活用できます。
バウンスライトを使うときのポイント
・あらゆるライティングの効果を高める。
・直接光を反射させることによって作る。
・光をダイレクトに当てることなく、被写体を際立たせる。
技法11.サイドライト(キアロスクーロ)
『寝取られ男のラブ♂バカンス』でのサイドライト
出典:IMDB
サイドライトは、名前のとおり画面の横から入ってきて、人や物を目立たせる光です。
弱いフィルライトの役割をして、特にフィルム・ノワール(原文記事)などのジャンルで、ドラマティックな感じやムードを醸し出すためによく用いられます。
しばしば、”キアロスクーロ(原文記事)”ライティングとも呼ばれるこのライティングでは、被写体の輪郭を強調するために、強いコントラストとローキーライトが必要です。
サイドライトがシーン全体に及ぶときは、場合によって、反射させたりハイキー状態に対処したりしなければなりません。
サイドライトを使うときのポイント
・人や物を目立たせる。
・拡散しなければ、濃い影を作ってしまうことがある。
・コントラストを変化させられる。
技法12.モチベーテッドライト
『エクソシスト』でのモチベーテッドライト
出典:IMDB
もし、撮影場所に全く自然光がなかったら?
そんなときは、モチベーテッド(motivated)ライトの出番です。
モチベーテッドライティングは、普通に存在している光源を再現しようとするテクニックで、要するに太陽や月、街灯や車のヘッドライトなどの光を演出することです。
フラッグやレフ板を使えば、こうした光を作り出し、自然に見えるように変化させることもできます。
モチベーテッドライトを使うときのポイント
・自然にある光の要素をまねる。
・道具やセットの装飾を使うことで、変化させられる。
技法13.アンビエントライト
『ロード・トゥ・パーディション』でのアンビエントライト
出典:IMDB
真っ暗な夜中や調整した空間で撮影している場合を除いて、常に太陽やランプのような頭上からの光が何かしら入ってきます。
このように、そこに存在している光をアンビエントライトといいます。
特に屋外や窓の近くで撮影を行う際は、アンビエントライトを把握しておく必要があります。
時間帯によって変化するので、1つのシーンを長時間撮影する場合は、この光のことをよく考えてください。
アンビエントライトを使うときのポイント
・撮影の時間帯を考慮する。
・画に差し込んでくる光を指す。
本記事は、No Film Schoolに投稿された記事を、許可を得て翻訳しています。
オリジナルの記事(英語)は、こちらよりご覧いただけます。
Vook編集部@Vook_editor
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