この講座について
これまでスチールだけを撮ってきた方や、映像制作初心者でさらに技術を高めていこうと言う方が、これから需要が高まるムービーに参入できる知識を身につけることを目的とした全5回のオンライン講座です。
Vol.1:「写真と映像制作の違いを知ろう」
Vol.2:「映像制作の機材を知ろう」
Vol.3:「映像の撮影と撮り方を知ろう」
Vol.4:「映像の編集方法を知ろう」
Vol.5:「映像の色づくりを知ろう」
Vol.3は、「映像の撮影と撮り方を知ろう」についての解説です。
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講師紹介
スチールとムービー、双方をビジネスとして扱われているbird and insectの林裕介氏が、写真と映像の違いや機材、編集方法についてご紹介します。
林 裕介 氏
bird and insect COO/Evangelist。カメラ設計者からフォトグラファー/シネマトグラファーになり、bird and insectを立ち上げ。Image Branding Partnerとして写真・映像を通した企業のブランディングを手がける。スキルを体系化して作品に落とし込んだり、「なんか良い」などの抽象的な概念を言語化するのが仕事。Youtubeチャンネルは開始半年で登録者7500人。
【映像制作スタートアップガイド】Vol.3 「映像の撮影と撮り方を知ろう」
カメラの設定
ムービーを撮る際に気をつけなくてはいけない設定は、シャッタースピードとピクチャープロファイル(ガンマとも言ったりします)です。
シャッタースピードは1/(fps×2)が基本です。24fpsで撮影する場合には1/48に近い1/50が基準になります。
蛍光灯などの交流電源に繋がった光を撮影する際には、フリッカー(ちらつき)が出ることがあります。
この周波数が関東圏では50Hz、関西圏では60Hzと異なっているため、関東では1/50,関西では1/60を、シャッタースピードのベースにしています。基本的にはこのシャッタースピードに固定して、NDフィルターで光の量を調節して撮影していきます。
また、一眼ムービーはそのままの設定で撮ると割と濃い色になることが多く、ダイナミックレンジも狭くなります。そこで、敢えて薄く撮って後から調整でコントラストと彩度を上げる方向に調整するのが一般的な方法です。
最も簡単なのは、ピクチャープロファイルでフラット系のものを選ぶことです。
他にも、logという極端にダイナミックレンジを拡張した形や、Rawで撮影する場合もあります。
最終的な画像の綺麗さは PPスタンダード < PP フラット系 < log < Raw になりますが、ミスが起
こりやすいのはlogで、最も簡単でミスが起こりにくいのがRawです。
今の主流はRawになりつつある、と言えます。
スチールとムービーの撮り方の共通点と違い
スチールとムービーの撮影には共通点が多くあります。
ムービーも一枚の画像として観た場合にはスチールです。
なので、スチールで培った画作りのスキルはそのまま活かせます。
逆に言うとスチールとムービーの違いは、ムービーの場合には「被写体は動かずカメラだけ動いている」のか「カメラは動かず被写体だけ動いている」のか「被写体もカメラも動いている」のかをしっかりと把握して撮る必要があるということです。
被写体の動きとカメラの動き
被写体は動かずカメラだけ動いている
→ブツ撮りの場合に多い撮影手法です。カメラが動かないと静止画になってしまうので、被写体が全く動かない場合にはカメラを動かす必要があります。
この場合どんな動きが必要かと考えると、被写体が動いていないため激しいカメラの動きは合わないことが多く、必然的に滑らかなスライドなどの動きになります。
カメラは動かず被写体だけ動いている
→映像の基本とも言える撮り方です。最近はカメラをたくさん動かす映像が流行っていますが、カメラは固定(フィックス)で被写体を動かすという撮り方は、基本にして究極とも言えるようなところがあり、まず始めに練習したい撮り方です。
被写体もカメラも動いている
→最もよくあるのがこのパターンかもしれません。この場合、カメラをどう動かすかの選択肢が広いので人によって個性が出やすく、また実力も出やすくなります。より理解するには、カメラの動きを細分化して考える必要があります。
カメラの動き(カメラムーブ)について
カメラの動かし方にはいくつかのタイプがあります。
基本的には下記の動きの組み合わせで成り立っています。
●パン:左右に首を振る動き
●チルト:上下に首を振る動き
●ズームイン/アウト:レンズの焦点距離を変化させて被写体に寄ったり引いたりする動き
●トラック:スライダーなどでカメラを滑らすように動かしたり、被写体を追従するような動
き
●ドリーイン/アウト:カメラの位置で被写体に寄ったり引いたりする動き
・パン/チルト
パンとチルトは非常にメジャーな動きですが、被写体に動きが少ない場合には少し古い印象を与えてしまう場合があります。
特に、広角で建物をチルトして見せる動きなどは古さを感じさせます。
逆に、被写体の動きを追従するように少しだけチルトする、などは非常に有用な動きだと思います。
・ズームイン/アウト
ズームイン・アウトは最近の作品ではほとんど見かけることがなく、古い印象を与えます。
戦隊モノの登場シーンで急激なズームインなどが使われているイメージは(30代以上の人であれば)すぐ浮かぶのではないでしょうか。
最近では、敢えてレトロ感を出したい場合に使われることが多い動きです。
・トラック:スライダー
トラックは非常に使いやすい動きです。最近では持ち運びしやすいサイズのスライダーがメジャーになっているため、個人や趣味の動画でもトラックの動きはよく見かけます。
とても使い勝手が良いのですが、その副作用として「気づくと全部トラック(スライド)になっている」というパターンに陥りがちなのは気をつけましょう。
・ドリーイン/アウト
ドリーイン・ドリーアウトはトラックに比べるとやや難易度の高い動きです。
望遠レンズだと全く画が変わらないので、必然的に距離の変化が大きく出やすい広角レンズが使われます。
物の間を進んで行くような、前景と背景に距離がある場合に効果を発揮しやすいため、よく使われます。
ドリーアウトしながらズームすることで、いわゆる「めまいショット」を作るなど、カメラムーブは複数の動きの組み合わせで使われることもあります。
撮影の際のコツ
ムービーを撮影する際に気をつけたほうがいいポイントです。(逆に言うとみんなこれができなかった。。という失敗を経験しているとも言えます)
・寄り/引きのバリエーションをたくさん撮る
ムービーは編集を考えて撮る必要があります。その際に一番よく感じるのが「もっと寄ったカ
ットがほしい」です。スチールよりもムービーの方が意識して寄りを撮る必要があると
感じています。
寄りのカットはムービーにダイナミックさを出してくれます。いつもより一歩寄ってみる、を
意識するといいかもしれません。
・インサートをたくさん撮る
インサートの解釈は多岐に渡りますが、私の解釈は「メインの被写体の周りにある、被写体の特性をより浮かび上がらせるもの」です。
例えばこの作品は首掛けの財布がメイン被写体ですが、このプロダクトを取り巻く「生活」がインサートしてたくさん使われています。
「私は優しい人間です」というよりも「私は子供が好きで保育士の仕事をしています」と言った方が、優しい感じがするのと同じで、財布だけ撮るよりもその「周りにあるもの」を挿入した方がよりプロダクトの特性が浮かび上がるのではないでしょうか。
インサートは不足しがちなのでたくさん撮りましょう。
・十分な尺(クリップの長さ)を確保する
イメージ系のムービーではそれぞれのカットが1〜3秒程度で切り替わることが多いですが、だからといって3秒しか素材を撮影しないと後で困ります。
大体3秒くらい使う場合は、10秒以上は録画しておくことが大事です。特に撮影中は時間間隔が圧縮されるので、「10秒は回したな」と感じても5秒くらいしか経っていないこともあるので気をつけましょう。
・照明にこだわる
ライティングはとっても大事です。ライティング編はものすごい分量になるので今回のシリーズには含まれませんが、写真や映像は光を写すものなので画面内にどういう光があり、被写体にどう当たっているかということが非常に重要です。
最近はグレーディングにばかりこだわる風潮がありますが、ライティングあってのグレーディングです。
迷ったらライトに最優先でこだわる、を意識すると良いかもしれません。
・音声にもこだわる
音声はスチールにはない要素であり、地味に思われがちですがこれもとても重要です。
内蔵マイクではなく外付けのマイク、さらに音声専用のレコーダーで録ると映像が全く違うクオリティになります。
また、実際に鳴っている音ではなく、後からより効果的な音に載せ替えることもとても効果的です。
まとめ
以上、動画を撮影する際に知っておくべきことについて解説してみました。このくらい分かっていればビギナーとは言われないはずです。。!
是非たくさん動画を撮って、どんな場合に自分がどう感じるか、という感覚を蓄積し
ていきましょう!(僕もがんばります!)
Vol.4では「映像の編集方法を知ろう」という事で、編集についてご紹介します。
【映像制作スタートアップガイド】Vol.4 映像の編集方法を知ろう
Vol.1:「写真と映像制作の違いを知ろう」 Vol.2:「映像制作の機材を知ろう」 Vol.3:「映像の撮影と撮り方を知ろう」 Vol.4:「映像の編集方法を知ろう」 Vol.5:「映像の色づ...
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