どうも、撮影監督で映像ディレクターのニコラス・タケヤマです。
仕事柄、色々なカメラ機材を触らせて頂く機会が多く、度々「どのデジタル一眼がオススメですか!?」と言った相談を受けることがあります。実は、写真と映像で求められているスペックが違うんです。
なので一概に写真で高画質、ハイスペックだからといって映像も綺麗に撮れる訳ではありません(まあ、今どきスマホもすごいキレイなんですけど笑)
限られた予算の中で、できるだけキレイな画質で撮りたいものですよね?なので、今回は映像の画質に直接かかわるようなデジタル一眼のスペックの話をしたいです。
映像にもっと真剣に取り組みたい!って方がカメラを選ぶ時にどういった要素をチェックすればいいかの参考になれば幸いです!
実は高画素が正義ではない?映像にとってのバランスの良い画素ピッチ
写真をやっていると高画素であれば高画素である程、鮮明な画という認識な方が多いですが、映像においては高画素は絶対的な正義ではありません。
Full HDや4k UHD等といった決まった規格があるので、それ以上の画素数があっても正直言うと無駄になってしまいます。
例えば4K UHDであれば3840×2160 = 800万画素あれば十分です。
それ以上あっても、ダウンサンプリング(例:6kで撮影した素材を4kにする行為)等を採用していない限り高画素機のメリットを享受できません。
詳しく知りたい方は、こちらの文章を参考にしてみてください。
お次に、映像において致命的なのはノイズです。
基本的に画素数が多ければ多いほど、画素ピッチが低くなるのでノイズに弱くなります。最近のデジタルカメラはデジタル処理能力があがっているので昔程、目くじら立てる程の差はないかもしれませんが、それでも画素ピッチが広い方が映像的には良いに越したことはありません。
そして写真的観点からみても、基本的に高画素機は処理能力が問われるので、連写に不向きであったり、プロセッサにそれだけコストもかかってしまいます。
なので、メーカーさんから映像用のデジタル一眼を選びたい時は、写真をメインでやらない限りは一番画素数が高いモデルというよりは、余裕のある画素ピッチを採用しているモデルを選びましょう。
大抵、メーカーさんも高画素機よりもそちらの方に映像は力を入れていることが多いので、選ぶ際の参考になると良いです。
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グレーディング耐性に影響するビット深度とクロマサブサンプリングの話。
映像用のカメラを選ぶ際にビットレートやコーデックにとらわれがちですが、実は他にも大事なのがビット深度とクロマサブサンプリングです。
例:10bit 4:2:2
上記のような表記のやつですね。10bitがビット深度で、4:2:2がクロマサブサンプリングです。
良く、このカメラは10bitだからグレーディングしやすいって聞くかと思いますが、ビット数って何に関係するんだろう?って疑問に思う方も多いんではないでしょうか?
ものすごく簡素に説明すると、
ビットレートは解像感やデータ容量に影響します。
コーデックは編集時のパソコンへの負荷が変わります。
コーデックによってはフレーム補完や可逆圧縮等も施されている関係上です。
8bit, 10bit等のビット深度は逆に扱える色数です。デジタル画像や映像はRGB各々に何ビット振り割るかでビット深度が変わります。自然界には無限の色のグラデーションが存在するのですが、カメラにそれらすべてを収めることができません。
ビット深度の値は諧調、いわば色のグラデーションを表現するのに非常に大事な要素なのです。
8bitの場合Red, Green, Blueのチャンネルに8ビットずつ振るので2^8= 256 の諧調で記録されます(グレースケールの場合。フルカラーだと256^3=約1678万色)。
10bitの場合だとさらに諧調が細かく2^10= 1024の諧調で記録されます。
8bitのファイルは重いグレーディングには心もとないなという印象です。
肌等の諧調が豊かなもの補正した時に圧倒的に破綻しやすかったり、
正直LOG等の淡いガンマカーブを8bitで扱うのは難しいです。
画像:LOGで10bitと8bitの両方を収録してみた。
画像:10bitの画でコントラストと彩度を重めにあげてみた。ギトギトの画だが概ね色が破綻せずに保っている。
画像:8bitの画で全く同じグレーディングを施してみた。解像度が低いのでわかりにくいかもしれないが、雲等にブロックノイズが出現するのがお分かりできるだろうか。
そして、最後にクロマサブサンプリングです。
クロマサブサンプリングは映像圧縮の一つです。ここで説明するには長すぎるし、難しすぎる概念なので詳しく知りたい方は各々で調べてみて欲しい。
超簡単な説明をすると、4:4:4はRGB方式でフルに出力しているのに対し、4:2:0や4:2:2はYCbCr方式で画像を輝度と青色差と赤色差の差分で色を表現している(ほら、難しいでしょ?)
*クロマサブサンプリング 画像(作成中)
詳しく知りたい方は、こちらの文章を参考にしてください。
デジタル一眼で撮って出しの簡単な映像撮影をする場合であれば、4:2:0でも大丈夫ですが、グレーディングをしたい方は絶対に4:2:2は確保した方がいいです。
私は映像の仕事柄、映像のグレーディングもするのですが(CM等)、実はビットレートより映像素材のグレーディング耐性を左右するのは、ビット深度とクロマサンプリングだったりします。
ビットレートがいくら高くても、そこにそれ相応の色情報が無いとグレーディングしたくても色が破綻してしまって、無理が起きてしまいます。
RAW機能
前述で、ビット深度とクロマサブサプリングの話をしましたが、そこで登場するのがRAW。
写真をやっている方ならRAWも馴染みのあるファイル形式かもしれませんが、若干写真のRAWと扱いが違うので、ここでRAWについても触れたいと思います。
RAWファイルは所謂カメラの生のデータで、
収録した映像データのホワイトバランスやISO値等を編集時に変えてしまうことができてしまいます。
そして色データもカメラが収録できる全てを記録しているので、いわば魔法の形式です。
元々、CinemaDNGというRAW形式が一般的でしたが、あまりにもファイル容量が膨大であった為、VFXヘビーな映画等のビッグプロダクションでもなければ現実的な選択肢ではありませんでした。
そこで色んなメーカーから新しい独自のRAWコーデックが誕生しました。
例えば、Red Code Raw, Prores Raw, Black Magic Raw等です。
これらの独自RAWコーデックはRAWの機能性を持ちつつもファイル容量を比較的抑えた仕様となっています。
Prores Raw で撮れるNikonの Z 6がオススメ!
ここで、筆者一押しのデジタル一眼を紹介したい。
それが、Nikonさん発売している Z 6!
動画ユーザーとしての一番の魅力はAtomos社のNinja Vと組み合わせればProres Rawで収録ができることです。
※RAW出力には別途有償設定サービス申し込み(3万円/税別)が必要です。
詳しくは:https://www.nikon-image.com/support/whatsnew/2019/1217.html
Z 6 ボディ単体ですと8bit記録までしかできないですが、Ninja VにHDMI経由で外出しすればNinja V側のSSDで12bit RAWや10bit N-log収録をすることができます。
一言でいうとNinja Vを使うと Z 6 が化けます。
Z 6 単体だと、どうしてもヘビーなグレーディングができないのですが、Ninja Vと組み合わせればクライアントワークでもガンガン使える機体になります
もちろん撮って出しのドキュメンタリースタイルやコンパクトな機体が必要な場合は単体での運用も可能ですし、それぞれのスタイルの合わせた運用ができるのが Z 6 のいい所です。
RAWがいらないユーザーでも Z 6 のRAW生データをNinja V側でDNxHDやProresといった普通の中間コーデックでも収録できます。
僕自身も普段はより現実的なコーデックであるProresで収録しているのですが、こちらは10bitで十分な諧調とデータ量があります!
他にも嬉しいボディの使い勝手や堅牢性
他にも使い勝手が良いです。
Z 6 の場合、ほとんどの主要な操作が右手で出来るように作られています。電源のON/OFFもISO値、絞り、ホワイトバランスの変更等も全て右片手のみでできてしまいます。
再生プレビューも片手でできたりと、こういうところは意外と便利だったりします。
画像:右手人差し指が来るところにON・OFFスイッチが。ISOと露出もここで変えられる。左手を添えずにワンアクションで電源がつけられるのはありがたい。
画像:レンズ脇に配置されたファンクションボタン。筆者はこれら二つに再生プレビューとホワイトバランスを割り当ててる。これでほぼ、主要の操作が片手でできる。
両手が必要だと、なんだかんだでワンアクション増えてしまいますし、その違いって結構大きいんですよね。
他にもスチルとムービーの切り替えもスイッチ式で切り替える用になっています。
そして、切り替え時にちゃんとスチルとムービーのメニュー設定が孤立してるので、切り替えの度に設定を変える必要がありません。こういった細かい当たり前のことが卒なくできているのがこのボディのいい所です。
そして、ビューファインダー。この価格帯のデジタル一眼の中では圧倒的な見易さと視野角です。有機ELで発色も良く、何と言ってもビューファインダーの画面が大きいです。
ボディの堅牢性も外せないですね。大抵の人はスタジオでの撮影だけが使用用途じゃないはずです。悪天候の中での撮影や山や海等の撮影シーンもあるでしょう。Z 6はマグネシウム合金を使用していてプロも信頼できる堅牢性や、高い防塵・防滴性能があります。
カメラというのは結局、実際にフィールドで使いたいと思うことができるかというのが一つ大きな基準になってくると思います。
どんな現場でも安心して使える。 Z 6 はそんな気持ちにさせてくれます。
ニコラス・タケヤマ @nicholas_saito
上智大学卒。ニュージーランド出身で日本と台湾のハーフ。日英対応の撮影監督・ディレクター。Davinci Resolve 認定トレーナー。WEBCM・MV・映画等、幅広いジャンルを手掛けている。 ワンマンでのビデオグラファースタイルの案件から数十人規模のスタジ...
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