Blenderを使ったモーショングラフィックス

2020.12.13 (最終更新日: 2022.06.06)

Vook 百名選 選出記事

百名選

台北在住の映像作家 @taka_tachibana です。

元々ビデオグラファーをやっていた僕ですが、ここ1~2年でどっぷりBlenderの魅力に取り憑かれ、現在はCG制作にコミット中。

ということで今回は少々変わり種記事として、Blenderではどういった手法でモーショングラフィックスを制作できるのか紹介してみたい。

Blenderを利用している人はまだまだ少ないと思うので、具体的なチュートリアルというよりは「Blenderでもこんなことできるんだぜ!」的にまとめてみた。

今回この記事を通して、「へー、Blenderでもそういうこともできるんだ」ということだけでも知ってもらえれば幸いです。

はじめに

Blenderといえば、オープンソース(つまり無料)で使える3DCGソフトとして近年注目されている。できないことを探す方が大変なくらいで、3Dモデリングからリギング、スカルプト、物理演算、VFX、2Dアニメーション、動画編集まで多種多様な目的で利用できる。

※以前Blenderはどんなソフトなのかを解説する記事を書いたので、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

今話題のBlenderって何?ビデオグラファーが1年間使ってみた感想

Blenderとはオープンソースの総合3DCGソフト。誰でも完全無料で使えるにも関わらず、その機能は本格的。Mayaなどの商用ハイエンドクラスと肩を並べるほどの実力を備えていて、今や大注目のソフ...

僕自身、Blenderは実写合成(VFX)で利用することがほとんどだが、もちろんBlenderでもモーショングラフィックスも制作可能。

位置、回転、スケールなどにキーフレームを打っていって、手作業でモーションをつけていくやり方はBlenderもAfter Effectsもその概念はほぼ変わらない。なので今回はプロシージャルモデリングと呼ばれる、手打ちではなくプログラミング的な手法で制御していく手法をいくつかご紹介する。

いろんな方法があるが、今回は4種類のやり方をご紹介!

  1. Animation Nodes(アドオン)
  2. ANIMAX(アドオン)
  3. Particle(標準機能)
  4. Shader Editor(標準機能)
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Animation Nodes(アドオン)

Blenderの代表格的なアドオン。Animation Nodesとはノードベースで複雑なアニメーションを制御できるアドオンである。Blenderでモーショングラフィックスと言えば、まずはこれは外せないだろう。

作例はこちら。

ダウンロード先:https://animation-nodes.com/

ちなみに無料です。

ご覧になっていただくとわかると思うが、「ちょ... これが無料ソフトの無料アドオン!?」と感じてしまうである。

Animation Nodesは一言でいうなら、Cinema4Dなら「Mograph」、After Effectsで強いていうとエスプレッション制御みたいな機能と言えばわかりやすいかもしれない。

ちなみに今はアドオンとして追加インストールしないといけないが、将来的にはBlender本体に標準搭載される噂がある。そのくらい期待感と知名度のあるアドオンなのだ。

もし3Dモーショングラフィックスに興味があるけど、Cinema4Dなど有料ソフトを買う余裕がない人は、Blender+Animation Nodesという道があることをぜひ知っていただきたい。Blender自体近年さらに性能やUIが大きく向上し注目されているソフトなので、一度やってみても全くもって損はない。(なんといっても無料だし...)

さて、せっかくなので、具体的にどういう操作をしていくのか軽く紹介すると、、、

DaVinci Resolveのように、ノードを繋いでいってエフェクトをかけるようなイメージだ。

参考例として、最も簡単な一例を挙げてみたい。

上記画像の左型のノードリストから使いたい種類のノードを選択する。ノードの種類だけでもかなり多い。今回のノードは、右のCubeオブジェクトにトランスフォーム情報を入力する組み合わせにしている。

そして位置情報に、After Effectsでもお馴染みのwiggleのベクター情報を入力してあげる。そのままだと静止したままで動かないので、Time Infoと呼ばれるフレームごとに信号を出力してあげるノードを連結させる。

すると、After Effectsのエクスプレッションでwiggleを発動させたような3Dアニメーションが描写される。

これに加えて、スケールのZ軸のみに同じくwiggleを掛け合わせるとこんな動きになる。

これは最も簡単な一例なので、実際はもっと複雑にノードを組み上げていくことになるが、このように様々なノードを接続していくことで、多彩なアニメーション描写を行うことが可能になる。

After Effectsのエクスプレッションはザ・プログラミング!という感じがするが、こちらはパラメーターの数値をいじるだけなのでその点は扱いやすいと思う。「wiggle(.5,10)」などのコードを入力する必要はない。

ただし、Animation Nodesを使いこなすようになるには、慣れと気合いは必要になる...。最初はかなり難しく感じると思われる。

プリセットが用意されていてワンクリックで簡単にというより、自分でプログラムを組んでいくような玄人的なイメージ。逆に言うと無料でここまでの制御システムが使えること自体すごいが...。

プロジェクトファイルをプリセットとして公開している人からダウンロードすることも可能。

もしBlenderにおいて気軽にモーショングラフィックスを試してみたいなら、有料にはなるが次で紹介するANIMAXというアドオンがオススメだ。

ANIMAX(アドオン)

ANIMAXというアドオンを使うと簡単に様々なモーションをつけることが可能。有料といっても、たったの$25!(執筆時点)

購入先:https://blendermarket.com/products/animax---procedural-animation-system-

15種類のプリセットが最初から用意されていて

プリセットだけではなく、細かく自由な調整も効くし、カスタム設定も可能。

1クリックで、このようなモーションを簡単つけることができる。

複数のオブジェクトを一度に制御することもできるし、最初から破壊系の設定があるので、例えば分解されたものが1つに収束するようなアニメーションも簡単に作ることができる。

サムネイルのGIF動画もこのANIMAXを使って制作した。破壊設定を適用して、ポチッとプリセットを1クリック。若干微調整のみ施しただけでモーション自体は数分で完成する。

Blenderには破壊系のアドオンは他にもいくつもあるが、通常は破壊したあとの動きは別途つけなければならないことが多い。でもANIMAXは破壊からアニメーション制御まで1つのアドオンで完結。そこが気軽で魅力的である。

また、Particleのようにあるオブジェクトから放出する設定も可能。

イージングのカーブの調整含め、意外と細かいところまで制御できる。

ANIMAXは値段は$25と割安だが、Blenderのアドオンは割安な値段設定なものが多い。After Effectsと同様、便利なアドオンがたくさん存在する。Blenderもアドオンでその真価が垣間見えるといっても過言ではない。

アドオンの購入はBlenderMarketが種類も豊富でオススメ。アドオン以外にもアセットなどなんでも揃ってます。興味のある方はぜひいろいろチェックしてみて欲しい。

Blenderはソフト自体無料だし、アドオンなどもかなり安めなので、Blenderで制作というのはお財布にかなり優しい環境が構築可能。これぞBlenderワールド...素晴らしい...。

このANIMAX、日本語情報はほぼないが、このチュートリアルがわかりやすいで添付しておくので気になる人はチェックしてみてください。

Particle(標準搭載)

さて、これまではアドオンの紹介だったが、実はBlenderには嬉しいことに最初から高性能なパーティクルシステムが搭載されている。

Trapcode Particularがなくても、全然これでもいけるじゃんとよく思っている(というかむしろBlenderのパーティクルの方が使いやすい)。無料でこれが使えるのはやっぱりすごい。

これはモーショングラフィックスというよりはVFXの参考例で恐縮だが、こういった制御も標準機能のParticleでそもそもできる。

ここではParticleの詳しい使い方の解説は省くが、Blenderはそもそも3Dソフトなので、この画像のように「ここに風を起こします」「ここに渦を発生します」と直接3D空間上にフィールドの力を設置できるのがめちゃくちゃ良い。直感的に制作していける。

標準搭載だけでも、フォースフィールド(自然の力)の種類もたくさん用意されて、あらゆる表現が可能。

なので、Trapcode買えねぇ...って人がいたら、Particleを使う目的だけでBlenderを使うというのも全然アリ!

Shader Editor(標準搭載)

最後はオマケ程度の紹介にはなるが、Shader Editorというマテリアルを生成していくための機能を応用する方法。Animation Nodesと同じくノード式で、数式の組み合わせで面白い模様を描くこともできる。

でも本来はこういったマテリアルをつくっていく機能。

その機能を応用して、平面のオブジェクトに数式の組み合わせで描写される模様を投影。それをカメラで撮影して、2Dグラフィックスとして見せている形だ。

これ自体の仕組みを解説するには、丸々もう1記事必要になりそうなので、また後日機会を見て解説記事を書いてみたい。

Blenderは3Dのソフトと思われがちだが、このように2Dの表現も可能。上記はちょっと応用的な方法だったが、標準で2Dアニメーション用の機能が搭載されている。


おわりに

ということで、Blenderでできるモーショングラフィックスの紹介でした!僕自身VFXメインなのでちょっとそっち寄りの紹介にはなってしまったが、After Effectsでは物足りなくなったらBlenderで3Dなモーショングラフィックスをやってみるのも良いかもしれません。

Blenderは誰でも無料で使えるソフトなので、ビデオグラファーの方でもぜひ一度トライしてみてください。思わぬ新世界が待ってるかも...?しれません。

Blenderのダウンロードはこちら

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taka_tachibana

Taka Tachibana@taka_tachibana

台北在住。CAPSULE Inc. / CHINZEI Inc. 所属。福岡で10年間のフリーランスを経て、台湾ではMVやweb広告などの映像制作に従事。その傍ら3DCG・VFXを駆使した作品づくりに取り組む。ASEAN-ROK Film Leaders In...

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