ログデータの必要性について

今回の制作ノートは、南アフリカで映像を制作するウィスカスさんのブログ「EDLとCDLを使ったポスプロの流れ」についてです。今回の記事翻訳に好意的に了承を頂くことが出来ました。ありがとうございます。以下の動画は英語ですが、映像の内容が以下の記事を読めば分かるようになっています。

なお要所要所で補足を入れていますので、完全な翻訳では無いことを先にご理解ください。

EDLとCDL

さて、ポスプロの現場で出来るだけクリエイティブに作業するための条件として、RAW撮影 / LOG撮影は徐々に4Kの制作現場にて定着しつつあります。ですが、DaVinci 14の様にポスプロの全てのステップ(ディベイヤー、オフライン、オンライン、音声編集、ミックス、カラコレ、エンコーディング)を1つのソフトだけを使ってする制作現場は少ないかと思います。そのため、複数ソフトウェア間でデータ移動をするために、XML、EDL、CDLなどのログデータが必要になってきます。

EDL(Editors Decision List - エディターズ・ディシジョン・リスト)とは、編集されたタイムライン上のシーケンスを1つアプリケーションから他のアプリケーションに移動することを可能にするファイルフォーマットのことです。EDLは実際の動画ファイルを含まず、シーケンス上のタイムコード順列で、編集された情報だけを記録したテキストファイルです。

EDLをテキストエディターなどで開くと分かりますが、リール名(またはファイル名)、V = ビデオオンリー、C = カット、リール素材のタイムI/O、タイムラインI/O、エフェクトが記録されています。


参照元:Post Perspective

これはNLE(ノンリニア編集 = Premiereなどを使った編集のこと。好きな順番に素材を簡単に入れ替えて編集を試すことが出来る。昔は簡単にそれが出来ませんでした。)が普及してからオフライン編集したものを最終的なオンライン編集にする際に、素材のリール情報が必要だったために手書きで書いていたものをデジタル化したものです。

CDL(Color Decision List)はEDLと似ています。違うのは、シーケンスのそれぞれの素材のIn/Out点の情報では無く、各素材クリップのRGB色補正の情報を記録します。プライマリーと呼ばれる情報を記録して、オフライン編集やグレーディングのベースになります。基本的には撮影の現場でLive(生)でグレーディングされたプライマリーデータをCDLとして記録して、プロキシのトランスコードをする際に使うか、VFXチームにオリジナルのRAW素材を提供する際に、色のレファレンスとしてLUTと一緒に提供することが多いです。

ちなみにCDLの正式名称はASC CDLと言います。ASC(アメリカにある全米撮影監督協会)が、撮影監督の作ったルックがポスプロの制作過程の中で失われない様に業界の基準として作ったものです。ALEXAのカメラは2003年以降、メタデータとして撮影時に直接それぞれのファイルにASC CDLを記録出来る様になっています。

つまり、EDLはシーケンスを再現を、CDLはシーケンスに与えられた色を違うアプリケーションで再現するために使われます。また、CDLの様なアプリケーション間の色データを交換するフォーマットを、Color Transform File Format(カラー・トランスフォーム・ファイル・フォーマット)と呼びます。フォーマットの種類の中で、DaVinci ResolveやPremiereでよく使われるのは…

  • .lut = 1D LUT
  • .3dl = 3D LUT (複雑なカラーバリエーションを記録出来ます)
  • .cdl = ASC CDL (クリップ単位でプライマリーを作成出来る)
  • .cube = Adobeが作ったLUT

とかです。.cubeを含む3DLUTなどは、CDLよりも複雑な色の変換情報を記録しています。またLUTとよばれるものには、修正LUTとスタイルLUTの2タイプがあり、スタイルLUTは色のルックを構築するものですが、修正LUTとは、特定のカメラのRAWやLOGデータを、Rec.709などの業界スタンダードの色域範囲内の色/輝度に修正するために使われます。これはどの撮影現場で、どのようなライティング状況下でもLOGを標準の色彩に直し、カラコレのスタート地点に修正するために使われます。

ポイントは、このEDLとCDLが映像業界のデジタル・インターミディエイト(撮影から納品までのデジタル作業工程全てをまとめた総称)を可能にするために取り入れられた標準規格ということです。

参照:ARRI Alexa XT Plus

XMLやAAFの登場

EDLと併せてよく見かけるのはXMLとAAF(Advanced Authoring Format)の二つだと思います。このどちらもPremiereやDaVinci Resolveで書き出すことが出来ます。解りやすく考える方法は実際に使ってみてEDLと比べること。以下の写真はPremiereや他のNLEアプリケーションからEDL、XML、AAFを使ってタイムラインを書き出した際に、DaVinci Resolve 14でどれほど互換性があるかをまとめたものです。

参照:blackmagic DaVinci Resolve 14 英語マニュアル

つまりアプリケーション間で交換出来るメタデータが多いのはEDLでは無く、XMLやAAFということになります。これはファイルのフォーマットの作られた背景の違いにも起因しています。僕もややこしいことは分からないですが、XMLやAAFはコンピュータ言語を使った記録方式です。

AAFは映像のポスプロのワークフローを改善することを主な目的としてデザインされたフォーマットです。AAFはタイムラインを0と1のbinary(バイナリー)情報にエンコードします。そのためにアプリケーションに取り込む際にデコードされます。XMLはbinaryでは無く、Unicode(ユニコード)というエンコーディング方式を使っています。XMLはもともとポスプロ作業の効率化のために作られたフォーマットでは無かったのですが、最新のXMLはかなりのメタデータを正確に記録することが出来る様です。

FCPを使っていたので、XMLが一番使いなれていますが、AAFも良さそうです。FCP XのXMLは使ったことが無いので分かりませんが、良さげです。ちなみにMotion Worksさんのサイトでもとでも参考になるわかり易い記事があるので参考までにどうぞ!オフライン編集とオンライン編集の違い(外部リンク)

さて、ポスプロに必要なソフトウェア間をつなげるファイルフォーマットが分かったところで、ここからは本格的なポスプロの流れを説明します。

ポスプロ ステップ (1):DIT

ポスプロは撮影現場から始まります。ポスプロの始まりはDIT(Digital Imaging Technicianまたはディーアイティーと呼びます)と呼ばれる現場スタッフから始まります。DITの仕事はかなり専門的で一概には言えませんが、現場でのデータの管理、トランスコード、EDLやCDLの作成、現場モニタリング用のLUTの出力(ライブグレーディングも含む)、現場で作成されたシーンごとのルックを3DLUTで保存、オーディオデータの管理などがあります。

現場のDITステーション / 参照:John Goodner DIT

カメラで撮影された素材(RAWまたはLOG)をフィルムカメラの様にリールにして下記の写真に使います。

参照:Wicus Lab Blog

まずは撮済みデータの吸い出し(= オフロード)です。以下、写真に登場するカメラはAlexaですが、これはREDやBlackmagic Cinema Camera, Canon Cシリーズでも一緒です。DITは、まずハードドライブへとメディアを移行し、バックアップをとります。

参照:Wicus Lab Blog

その後、デイリーやPROXY(プロキシ)を作成するために、オフロードした素材をトランスコード(変換)します。その際にオフライン編集するためにLUTをあてた状態で変換することもあります。これは撮影監督や監督が現場で作ったルックを意識しながら、オフライン作業を進めるためです。

 参照:Wicus Lab Blog

そしてプロキシ素材とオーディオがシンクされたデータの入ったオフラインデータが、オフラインエディターの元へ届けられます。このステップがポスプロの始まりになります。

ただ、クルーがいないワンマン撮影や少人数での製作の場合は、DITのいない現場になるため、監督やエディターが撮影後に自らトランスコード作業などをします。また現場でDITがいない場合は、ライブグレーディングが出来ないため、現場で撮影されたRAW/LOG撮影のデータを、DaVinci Resolveなどを使って簡単な色補正用のLUTをあててからトランスコードします。そして音声は別収録かカメラに同時収録されるかの二つの選択肢があり、別収録する場合は、オフラインのために映像と音声をシンクさせる作業もあります。つまり、ポスプロの最初の作業をするDITがいない現場は、監督などがすごく頑張っているということです。僕も一人で2カメを回しながら、別収録でインタビューの音声を収録する作業をしたことがあります。出来ますが、かなり大変でした。

今回のノートのポイント

  • EDLとCDLをはじめとするメタデータの記録フォーマットファイル(XML, AAF, CUBE, LUT, 3DLUTなど)が、デジタル上でのポスプロを可能にしてくれている。
  • 現場で作られたルックとメディアを管理するのは、DITと呼ばれるスタッフの仕事。
  • DITの作ったオフライン素材、CDL、LUTが、ポスプロのベースになる。

次回も引き続いて、ポスプロの流れの続きを書こうと思います。

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