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第1回~第5回までついてきていただけた方、色や光のイメージを掴んでいただけたでしょうか!?第6回以降は、映像表現に応用できる話をしていければと思います(やっと実践的な内容です、お待たせシマシタ。。)
こちらの記事では、配色について基礎的なところから解説していきます。
美しい配色って、?
ハリウッド映画のようなルックが作れて美しいティールアンドオレンジは、映像の中のシャドウ側の色を青緑に振り、ハイライト側をオレンジ色に振ったグレーディング手法です。
これは、配色のルールでいうとダイアード(補色) という原理をもとに考えられています。
実は、人が 「美しい!」と感じる配色にはパターンがあり、その裏には色彩学的なロジックがあります。
「配色」とは
配色とは、2色以上の色を組み合わせて配置、構成することをいいます。クリエイティブ表現の中で、どんな色や配色にするかは、受け手の感情やイメージに大きく影響をもたらします。
ほかにも、配色を学ぶことは、カラーグレーディングはもちろん、たとえば部屋のセットを考える時の家具や壁の色のバランス、衣装のバランスを考える際にも非常に役に立ちます。
こんなにある配色の種類
配色は、色相と、第4回で解説したトーンの概念(彩度と輝度/明度の組み合わせ)で作っていきます。
配色の一覧
ドミナントカラー配色
全体の色相:同一 〜 類似
トーン:自由
ドミナント:支配的な、優勢な、という意味の通り、ほぼ同じ色相で配色全体を統一します。
実例
サントリートリスハイボール「ウイスキー側の人」編からスクリーンショットで引用
ドミナントトーン配色
全体の色相:自由
トーン:同一 〜 類似
ほぼ同じトーンで揃えた配色です。トーンが揃っていれば、いろんな色相が混じっていても合う、ということ、、! べビー用品などは目に優しめなペールトーンで揃えられていることが多いですね。
実例
寿がきや 5食入本店の味CM商品情報 「おうちで食べても」篇よりスクリーンショットで引用
トーンイントーン配色
全体の色相:自由
トーン:同一 〜 類似
トーン合わせな配色です。ビビッドな服で統一したり、部屋の家具をナチュラルなトーンで揃えたり、のような配色です。ドミナントトーン配色とほぼ同じ考え方です。
実例
西松屋 それいい値『調乳・離乳用品』よりスクリーンショットで引用
トーンオントーン配色
全体の色相:同一 〜 類似
トーン:類似 〜 対照・明度差大
色相を合わせて、明度の差を大きくとります。
実例
ベンザブロック「クイズ巻き戻し」編よりスクリーンショットで引用
カマイユ配色
全体の色相:同一・隣接
トーン:同一・類似
トーンも色相も限りなく近づけた、ほとんど一色に見えるような、穏やかな配色です。
実例
大幸薬品CMギャラリーより引用
ナチュラル配色
自然界の景色って、そもそも綺麗だよね。を分解した話。
自然界ではハイライト側がイエロー寄りに見え、シャドウ側がブルー寄りに見えるという法則があります。これに従って配色します。太陽のもとで照らされた物体の特徴でもあります。
実例
アサヒ飲料「『十六茶』そんな私でいいじゃない テント編」よりスクリーンショットで引用
コンプレックス配色
ナチュラル配色とは反対にした配色です。あえて逆に振ることで、複雑感や不調和感、不自然な人工感が出ます。
実例
大泉洋、篠原涼子出演、NURO 光 世界最速おそるべしシリーズ「モンスター登場篇」「ノーストレス篇」「速度実感篇」「コスパ篇」よりスクリーンショットで引用
ダイアード(補色)
冒頭に、ティールアンドオレンジの例で解説しました。
色相環の直径にあたる色同士、つまり反対側の色との組み合わせで作られた配色です。
企業ロゴの配色でも多く使用されていたりと、目立つ配色でもあります。
実例
メルカリ20年TVCM_「メゾンメルカリ・管理人登場」篇-30秒【メルカリ公式】よりスクリーンショットで引用
スプリットコンプリメンタリー/トライアド/テトラード/ペンタード/ヘクサード
色相環をもとに、二等辺三角形、正三角形、四角形などの形で色を取る手法です。色相環上で一定の距離を保ち色を取った配色は、美しく調和します。
実例
UQモバイル 「不思議な隣人」編よりスクリーンショットで引用
配色には、原理がある
配色・色彩調和の歴史の中で、さまざまな説や原理が唱えられました。それらがまとまっているのがジャッドの色彩調和論です。
秩序の原理
例:トライアド、テトラードなど
上で解説してきたように、トライアドが色相環の中から等間隔に色相を選んだ配色であるように、秩序ある一定の規則の中で色を選んで配色すると調和する、という原理です。
なじみの原理
例:ナチュラル配色など
自然界に見られる色のように、人が見慣れた馴染みのある配色は調和する。
類似性の原理
例:ドミナントカラー、ドミナントトーンなど
組み合わせた色どうしに、共通性、類似性のある配色は調和する。
明瞭性の原理
例:ビコロール、トリコロールなど
組み合わせた色どうしの関係があいまいでなく、明瞭な差のある配色は調和する。
まとめ
今回取り上げた配色以外にも配色はまだまだあります。そして、この配色ルールから外すことや、組み合わせることでも色は作られていきます。
最近だと
このように、おしゃれで美しい配色サンプルを紹介してもらえるサイトも多く、とても参考になります。
色と演出は本当に奥が深すぎですね。僕はこの配色の勉強をしてから、街の中の配色について気になりまくって落ち着きません 笑
次回、第7回はさらに踏み込んで、色と感情・色彩心理について勉強していきますー!
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Yuhei Iida@yuhei
映像ディレクター/プランナー 長野県小布施町出身・立命館大学映像学部卒 博報堂グループのデジタルコミュニケーションカンパニー・株式会社スパイスボックス所属 主にノンフィクションベースの映像制作や、デジタルコミュニケーションプランニングをしています。 V...
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