カッコよくてクールな世界観を持つ矢印さんにインタビュー!
2021年6月9日(水)から始まるモーショングラフィックスに特化したオンラインイベント「モーションモンスター(MOTION MONSTER)」に先駆けて、前夜祭と称してボーカロイドやリリックビデオの分野で活躍する若手クリエイターたちにインタビューを敢行!
前回大好評だったAdvent Challenge2020に引き続き、独特の世界観を持つYazhirushi|矢印さんに再インタビューしました!今回は具体的な楽曲をもとに、MVの制作過程やテクニックについても、より突っ込んだお話を聞いてしまいます♪
前回インタビューの記事はこちら↓
【AEP配布有】 “好きを貫け!” 自信がなくてもモーショングラフィックスを作り続けられる理由|Yazhirushi|矢印
この記事はAdvent Challenge 2020にて「Yazhirushi|矢印」さんにインタビューした記事をまとめたものです。 洗練された映像と世界観が支持される若手映像作家Yazhiru...
6月9日から始まるモーションモンスターについてはこちらから
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矢印さんプロフィール
Yazhirushi|矢印
映像制作者
1999年生まれ。2018年7月に映像を作り始め、現在フリーとして活動中。
2D、3DCGを駆使しMVやLive映像を主に担当し活動している。
代表作としてKradness「Diorama」、ちゃんげろソニック2020オンラインライブにて一部映像担当などがある。
Portfolio : https://yazhirushi.tumblr.com
Contact:yazhirushi@gmail.com
Twitter:https://twitter.com/Yazhirushi
好きな作家さん:reiyaさん、山口駿さん、佐藤隆之さんetc…
作品紹介
ボーカロイド楽曲に興味を持ったきっかけは?
ボカロの曲を聞き始めたのは中2とかなので10年か9年ぐらい前ですね。カゲプロが流行り出した時に後輩に教えてもらって、そこでニコニコを見るようになりました。
その時は曲重視で聞いていたので、どちらかというとMVはあんまり見てはいなかったですね。
ただしづさんが作ったアウターサイエンスとかは今でも参考になる部分が多いので、影響は結構あります。
しづ制作:じん / アウターサイエンス【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
あの時代にモーショングラフィックスとアニメーションを組み合わせた表現方法をしようとしたしづさんっていうのもまた早すぎて、時代を先取りしててすごいなっていうのを今でも感じます。
なので、しづさんの映像には結構影響はされているのかなと。
最初のMVを作るきっかけは?
空中分解をたぶん一番最初にやったんですよね。
その時空中分解を作詞作曲、音楽作ったすりぃさんが1分バージョンでしか上げてなかったんで、1分くらいの短さだったら俺も作れるかもしれんって上げた気がします。
※以下はリメイクバージョンになります
Cubeが空中分解の自主制作映像を作ってて、いや俺ならこう作るなって作り始めました。
最初の方であったりサビの方であったりは俺がこうやりたい、俺ならこうやるでやったんですよ。他の埋め合わせをする所はフラッシュアイデアだった気がします。曲聞いてこれいいんじゃないみたいな。
独学で映像制作をどう学んでいったのか
そもそもPCを扱った事があんまりなかったんですよ。
高校の時も一応情報系の授業は受けてたんですけど、やっぱりタイピングとかエクセルとかそれくらいで。
ソフトを使って何かを作るって事をしてこなかった人間なんで、ソフトに慣れるまでの時間が結構長かったですね。
ソフトの勉強に関しては、頭にあるものを作り出そうとしてチュートリアルを見て、これだっていうのを盛り込んだみたいな。頭にあるからチュートリアルを見て学んでっていう繰り返しだった気がします。
AviUtlからAfterEffectsに変えることの抵抗はなかった
ソフトを変更することへの抵抗は全くなかったんですよ、怖いくらいに何にもなくて。
っていうのもPremiereもめちゃくちゃ使えるしAEもめっちゃ使えるみたいな先輩がいて、最悪この先輩に聞けばいいやっていう。別に分からなかったら電話して聞けばいいやって思って。
それでも分からなければAviUtlを学んだ時みたいにまたチュートリアル見ればいいかって感じだったんで、全然抵抗はなかったですね。
MVのヒアリング&リファレンス探しについて
1番最初はヒアリング&資料探し
まずは企業の方と打ち合わせをして、こういう企画ですっていう説明をされて、なるほどって色々メモを取って。
そこから例えば日本だったり和っていう企画であれば、図書館に行って日本の文化であったりとか神社とかそういう風に日本らしいものは何なんだろうって、キャラクターがいればそのキャラクターに合うものは何なんだろうなって探してノートや絵コンテの裏にまとめてっていうのをしてから絵コンテを書きますね。
書いた方が覚えるしこっちも勉強になるんで、他の作品でもこれ活かせるんじゃないかなっていう考えです。
ボツになったものとかってまた再利用しないともったいないじゃないですか。ボツになって埋もれたものも回収出来るように書いて見てっていうので一応頭に入れようかなと。
リファレンスの仕入れ先は?
ArtStationっていうのとあとVimeoを見て、ちょっとこの表現したいなっていうのがあったら入れたりとか、合いそうだなって思ったりとか。
ArtStation: https://www.artstation.com/channels/concept_art?sort_by=trending
ArtStationは海外の方々が結構主にやってて、1枚絵を見れます。
YouTubeもそうですし、全体的に見てこれ入れたいなって思うものがあったら入れて。
でも基本的には曲聞いてから思い浮かんで、思い浮かんでない所はArtStationであったりとかPinterestであったりYouTubeだったり、何か他の媒体から見て、これ入れたいなぁとか自分も勉強しつつ制作していきたいっていうのがあります。
新しい技術を1作品1作品ずつ入れていったりとかして、これ使った事ないからこの表現してみようとかっていうのでまだ思い付いてない部分を補完してたりしますね。
モチーフやコンセプトはどうやって決めている?
基本的には自分が好き勝手やっていいよって言われた場合は好き勝手やるんですけど。
企業さんから受けているものであれば、企業さんの方のマネージャーの方にこれはどういうものでどういう色合いが良くてみたいな細かい所を決めて、時系列と言うか本当にちょっとでも物語があったりとか、ちょっと最初の方に伏線が張られてたりとかそういう事を意識はしてます。
最近の作品では去年の12月の後半の方に出したvoIdっていうのがあるんですけど、これは勝手にやっていいよって言われたんで勝手にやったんです。
全体的な僕の考えとしては暗くて、結局サビの方で「少女が落ちる」っていう表現があるんですけど、自殺をしちゃうっていうめちゃブルーな話なんです。
曲作ってるメドミアさん、イラストレーターのsakiさんとどういう話を作りたいっていう話をした時に、じゃあちょっとブルーなものを作ろうと決めたので、その時にはじゃ結構暗い話だよねとなって。
それなら全体的に色合いは青で統一したりであったりとか、少女の顔が結構暗かったりとか、出てくるもの自体に意味付けというか。
色んな死因っていっぱいあるよね、じゃその死因の中で電車が出てきたりとかナイフが出てきたりとか、それこそ落ちるであるとか色んなものを意味付けとして入れたりとか、Aメロの方はもう死んじゃう前とか死んじゃう後とかで、Bメロの方は過去の話をちょっとしたりとか、結構細かい所まで作りましたね。
でも意味を持たせていない演出も結構ありますよ。結局電車だけだと面白くないよね、じゃこういうやつを入れたいよねって入れたりとか。
あと椅子とかも結構かっこいいんですよ。
僕が見た感じなんですけど、椅子を勝手に人に例えたら面白いよねと思ってます。
それなら全体的に色合いは青で統一したりであったりとか、少女の顔が結構暗かったりとか、出てくるもの自体に意味付けというか。
椅子がお気に入りのモチーフ
椅子はなんか分かんないけどかっこいいんですよね。
椅子好きなんです。椅子が立ってれば立ってたりとか、角度が違かったら乱れてるよねとか、横に倒されたら横に倒れてるよねとか分かりやすいんですよ。なので使いやすくて使っております。
別のモチーフを探さなければとなる時もあるんですが、でもホントに何でも良くてその時は。
合うものであればいいなっていうので、例えば球体があったとして、球体をガラスにしてしまえばそれはガラスじゃないですか。それを輪っかで繋いだりとか、ここに線が入ってたりとかして斜めだったりすればちょっとモチーフになるじゃないですか。
そういうので活用したりとか、でも決め方は適当です。
その意味合いがあるんだとするんだったら考えてそういうものにしてるんですけど、説明が出来ればいいんで、これ何でもいいんだよなっていう場合は本当に何でもいいんで、そこはCinema 4Dコネコネしたものを付けてます。
MVの構成でこだわっているところは?
今ではもう変わってしまった考えなんですけど、サビってAサビBサビってあったとしてラスサビってたぶんあるじゃないですか。
この3つの中で一番盛り上がる乗ってラスサビだなってずっと思ってたんで、ラスサビを一番盛り上げたいから一番盛り盛りにしようって思ってて、じゃあこの2つは正直あまり盛り上げなくてもいいかなと思ってたんですよ。盛り上げるには盛り上げるんですけどラスサビほどじゃないなって。
でも結局ユーザーが見るのって一番最初のサビだなって。
っていうのを最近気付きまして、今は3つとも結構ラスサビと同等の華やかさを持たせて制作をしています。
他にも、Cメロは一旦盛り下がるので色合いを淡くしたり、ちょっとオレンジ黄色とか優しい色を使ったりとかみたいな事を意識はしてました。
色合いで言えば、比較的コントラストを意識してますね。
結構色合いをはっきりさせるようにはさせていて、どぎついまではいかないんですけど結構明るいというか、目に来るなっていうギリギリを攻めてます。
プリセットやプラグインの活用方法って?
プリセットを使用して効率化
voIdだと、は色合いを考えていたというよりもスピード感を意識はしていて、そのくらいかな。
サビで縦に入っているノイズはフラクタルノイズにグレインの描画っていうものを掛けて黒色を抜いてます。
voId 00:47より
正直な話、これは自分が作ったプリセットを保存してそれを再利用してるんです。1回作って2回目同じ演出を使った時に、これはもう3回4回使うなっていうので、2回目使った時にはもうプリセットに入れようっていう風にプリセット保存してます。
他のプリセットではトーンカーブであったりコントラスト、輝度であったりとかそこら辺はバチっといくようにもう揃えてあるやつを入れています。物によるんですけど比較的トーンカーブとかって本当にちょっとだけでも変わるんで、微調整ぐらいのカーブとか。
全部入っているファイルをプリコンポしたものにトーンカーブを入れるっていう感じで使ってます。
StardustとParticularの使い分け
Stardustを使っていて、TrapcodeのParticularをここ1ヶ月ぐらいで使い始めました。
Stardust:https://aescripts.com/stardust/?ref=homepage_banner
TrapcodeのParticular:https://www.maxon.net/ja/red-giant-complete/trapcode-suite/particular/
正直Stardustは一つの作品しか使ってなくて。
その空間にランダムに埃が舞ってるっていうイメージを付けたい時はStardustを使うんですけど、落ちている情景であったり、上から下に真っ直ぐ円や四角の各オブジェクトが進むのであればParticularかな。
これは僕主観の考えなんであんまり広めない方が絶対いいです。笑
やっぱりStardustもStardustの良さがあって、ParticularにもParticularの良さがあって。正直Particularが一つあればなんでも出来るし、Stardustが1つあったらParticularに匹敵するほどの力があると思います。
Cinema4Dはどのように使ってる?
voIdで説明しましょう。
voIdの最初の3秒くらいから14秒くらいまでの女の子が立ってて後ろに電車が流れてるシーンあるじゃないですか。
あれって立体なので、絶対にAEだけじゃ出来ないんですよね。
voId 00:03~より
Cinema4Dを選んだのも、友達が使ってたからっていうそれだけです。
AfterEffectsの時と一緒でバッグに強い奴が付いてるから最悪分からなかったら聞けばいいし。
あと一番大事だなって思ってるのがCinema4Dの外部プラグインでRedshiftっていうのがあるんですけど。
Redshift:https://www.redshift3d.com/product
Redshift、Octane、Coronaとか色んな外部レンダラーがあって、その外部レンダラーじゃないと出せない味ってあるんです。そこにも惹かれたっていうのがあります。
今後作ってみたいものは?
これマシンのスペックによってしまうんですけど、ほぼCinema 4Dで完結するものを作りたくて。
本当にAfterEffectsっていう名前はAfterEffectsっていうものとして使いたくて、後付けするソフトとってAEを使いたくて、色付けやルックの作り方であったりとか。なのでちょっとずつキャラアニメーションとかを勉強してこれから出される作品で入れてたりとか、キャラクターを動かせるようになれればなぁと。走ってたり飛んだりとか。
作家さんで言えば、たぶん前のインタビューでも答えてしまったんですけど、UNDEFINEDの世界観っていうのは強すぎるなって思います。
UNDEFINED制作:Gorilla Attack - 隔世 gorilla (Official Music Video)
あれはやっぱり6人5人ぐらいが携わっているからすごいんですけど、そりゃそうなんですけど、あれを一人で作れたらやっぱりいいなっていうのは前からずっと思ってるので、あれぐらいの世界観が作れたらいいよねって思っちゃいます。
あと、サイトウユウマさんという方がいて。
サイトウユウマ制作:ディカディズム / Flower・心華 - ぬゆり
UNDEFINEDみたいな世界観っていうものは最終的な目標としてて、一番直近というか手伸ばしの目標としてサイトウユウマさんのPVを意識してて、ああいうCGなんだけど…みたいなあのルックというか。
映像初心者に伝えたいこと
初心者の方で自信がない方っていると思うんですけど、僕なりの自信の付け方っていうものがあって、真似する事なんですよ。
っていうのも他の人が作った作品を見てすげえって思ってそれを俺も真似してみようって。
これ本当に昔の話なんで今やったらお前コピーだろとか言われるんで出来ないんですけど、自信ない時は作品見て真似して、俺も作れるじゃんっていう自信を持つっていう付け方をしてたので、そこら辺を実践的にやってみるのもアリなんじゃないかなって思います。
あと注意書きとしてちょっと言葉を足すんですけど、真似するのはいいんですけど本当に丸パクリしてその作品を自分が作りましたっていうよりは、本当に自主制作でちょこっと入れるとか、本当に2,3フレームとか1秒ぐらいちょっと入れるとか、自分の仕事としてやるとしてこれは自分の作品だよっていう風に公開はしない方がいいですね。
僕今ちょっと友達の絵をトレースして、ちょっとずつ絵の勉強をし始めたんですけど、トレースしたものが3枚ぐらいあって、でもそれは一切Twitterに上げてないんです。
友達同士でディスコードでこれを模写したんだけどどう?みたいな感じで、この時のペン圧は結構軽い方がいいよとかそういうアドバイスをもらってやってるんです。なのでトレースしたとしても外部に出すんじゃなくて、内側の人間だけでワイワイ楽しんで力を付けるっていうのもアリだと思います。
Next Interview!
次回は楽しいフラットデザインとモーションが魅力のツカダサオさん!
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