美しい歌ってみたMVを作り続けるクリエイター、みず希さんにインタビュー!
2021年6月9日(水)から始まる モーショングラフィックスに特化したオンラインイベント「モーションモンスター(MOTION MONSTER)」
に先駆けて、前夜祭と称してボーカロイドやリリックビデオの分野で活躍する注目のクリエイターたちにインタビューを敢行!
今回は数多くの歌ってみた動画を手掛けるみず希さんにインタビュー!幻想的で美しい映像の秘訣や、色遣いへのこだわりをお聞きしました!
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みず希さんプロフィール
みず希
映像クリエイター兼イラストレーター。猫とナマケモノとコアラとパンダが好き。
Portfolio :https://potofu.me/mzki6
Twitter:https://twitter.com/mzk_i6?s=20
Mail:mzk.honaka@gmail.com
作品紹介
映像を始めたきっかけは?
映像始めたきっかけはカゲロウプロジェクトが当時凄い好きで、それのしづさんっていう方の動画を見たのが作り始めたきっかけです。
イラスト・映像:しづ
じん / カゲロウデイズ【OFFICIAL MUSIC VIDEO】
その時は絵メインで趣味で描いてて、映像もどっちもやるみたいな感じで始めました。
私の周りもなんですけど、カゲロウプロジェクトで動画作り始めたっていう人が何人もいて、あれは結構な数のクリエイターを生んだんじゃないかなと。リリックビデオの流行を作っていったジャンルではあると思います。
趣味から仕事に
Don’t Pop meが一番最初に絵も動画も担当したものです。
【IA】Don't pop me【オリジナルPV】
作詞作曲編曲:やまじ
これはAviutlっていうフリーのソフトで作ったもので、チュートリアルが沢山出ているのでいじりやすいんです。なんとなくで作れる。
After Effectsは「こうしたい」っていうのがないと作りづらいんですけど、Aviutlはそんな事なくて、「どれにしようかな」っていう感じで選べる所があるんです。
仕事を貰えるようになった経緯は?
作り始めた頃はたまに依頼を貰って動画作ってっていうのをやってて。ちゃんと仕事を貰えるようになったのは本当にここ数年です。VTuberの影響がたぶんめちゃくちゃ高いです。
ちょうど同じ時期に歌い手さん達の動画を作り始めてて、ちょうどAfter Effectsを覚え始めて映像のモチベとかクオリティとかも徐々に上がってきてて。それを見てくれた他のVTuberさん達がどんどん依頼くれるようになったんです。
依頼を頂いたきっかけになったのがぬゆりさんっていうボカロPの人の曲の動画です。
みず希さん制作:終末じゃない / Flower・心華 - ぬゆり
この楽曲でVTuberのChroNoiRさんに「歌ってみた」を出したいと依頼をもらい、動画編集に携わることになりました。ほとんど本家の絵を差し替えるガラッと雰囲気の違う動画になりました。
みず希さん制作:【初投稿】終末じゃない 歌ってみた【ChroNoiR】
あと、Re:AcTっていう花鋏キョウちゃんや獅子神レオナちゃんなどが所属しているVTuberの会社を友達に紹介してもらって、そこのVTuberの歌ってみたの動画やらない?って言われたのも大きいですね。これがきっかけでVTuberのお仕事からどんどん声が掛かるようになったかな。
Re:AcT:音楽活動をメインにゲーム実況・企画配信などを行うバーチャルタレント事務所。
みず希さん制作:【オリジナル楽曲】Re:A projecT『Since-Re:ly ~シンシアリー~』【Re:AcT】
界隈で仲良くしてる方からお仕事を貰う事もあるし、自分でやらない?と声をかける事もあります。
MVはほとんどおまかせで――【MV】指先。 / しゅーず×そらる×luz【XYZ】
「指先」は作曲者の方が楽曲に関する情報で、イメージやプロットとかも用意してくれました。
指定があったからっていうのと、こういうかっこよくて暗めで色気のあるみたいなものが好きで、凄く作りやすかったです。
イラストメインの打ち合わせはしたんですけど、動画はこういう感じでっていうのはなくて、ほとんどおまかせでした。他の動画でもあんまり指定はされずに、絵と曲を貰ってお願いします、みたいなのが多いです。
それからどういう素材を使おうかなって考えて用意します。背景イラストまで貰うっていうのはなくて、こっちで用意する事がほとんどです。「指先」だと液体とか指定があったのでそういうのを用意したり。
最初に映像全体の流れを考えはするんですけど、その時その時で考えて作っていきます。あと、色んな動画見て参考にしたいのがあったら入れたり。
韓国のクリエイターを参考に
リファレンスでYoutubeもPinterestも見ます。
動画だとだいたいTwitterに流れてきたりとか、好きなクリエイターさんのものを見たりとかもしますね。
私は韓国の映像を作ってる方が凄い好きです。
その中でもmyapiさんがめちゃくちゃ好きで影響を受けてます。好きなクリエイター上げてくれって言われたら しづさんとこの人ですね。
myapi制作:[9人] 「White Love」 - Hey! say! jump! cover💝
私は「そこにいる」みたいな演出が好きなんですよ。自分が撮影している気分というか、自分の推しがそこにいたら嬉しいから。みんなもそうだろうなって思ってやっているんですけど、韓国のクリエイターさんってそれが凄い上手に出来てるんですよ。
どんな素材サイトを使ってる?
サブスクでEnvato ElementsやAdobeStockとかに登録しています。
Envato Elementsでは日本語は全然使えないから、わざわざ1回検索してからそれをコピペして検索したりとかしています。
Envato Elements:https://elements.envato.com/
AdobeStock:https://stock.adobe.com/jp/
あとフリーのサイトとかイラストACとか写真ACとか。
イラストAC:https://www.ac-illust.com/
「指先」の背景の液体とかも、動画素材の色を変えたり調節したりして使っています。
サビの細かいプリズムも素材ですね。これはプリズムの動画の素材を割とそのまま使っちゃってるかも。
よく使ったプラグインは?
この3DCGはElement3D用のmetropolitanっていうVideo Copilotの3Dのパックです。今までビルとかを使う動画を作る事がなかったので、これきっかけで買いました。
metropolitan:https://www.videocopilot.net/products/3d/metropolitan/
あとFLOWっていうプラグインも凄く大事で、一番最初に買ってずっと絶対使ってます。あれがないとダメって感じです。
色に対するこだわり
動画って加工が全てなんじゃないかなと思ってて、カラコレが凄い好きです。
私一番最初にカラコレするんですよ。絵を置いて、どういう動画にしようかなと思って加工して、とりあえず全体の雰囲気をそこで決めて、あとはそれぞれ別で加工掛けたりとかって感じで最初に色味を決めちゃいます。結局色だと思うからそこに力を入れています。
ポップな可愛い動画を作る時は最初に5色くらいのカラーパレットを決めますね。
カラーパレットは作ったりもするし既存のサイトを見たりしながらこの組み合わせいいなって思ったりとかするし、キャラクターのイラストの絵とかにもよるからそれによって変えたりとか。最終的に自分でカラーパレットを作ります。
実在感とリスペクトを大事にして――光るなら/翔花咲明那サラ刀也とこ(cover)【#にじさんじアオハル部】
光るならで意識していることは、そこにいる感じ、実在感が欲しいから、背景と馴染ませることです。
アニメ撮影のテクニックに近いみたいなんですが、私はそんなに知らなくてもう独学で作っています。ようやく最近馴染むようになってきたって感じがします。馴染ませるのって難しいんですよね。
キャラクターを馴染ませるテクニックとは?
「光るなら」は桜のシーンとかは別で桜の落ち影のテクスチャをCLIP STUDIOで作って、そのテクスチャを持ってきてキャラクターに掛けたりしてます。
CLIP STUDIO:イラスト・マンガ制作ソフト。
Cメロの窓辺のシーンとかはTrapcodeShineを使ってます。
Trapcode Shine:https://www.maxon.net/ja/red-giant-complete/trapcode-suite/shine/
調整が難しいんですよね。色々加工するってなると、ライトリークとかもそうなんですけど、光が追加されていくので明るい映像に掛けてもあまり分かりづらい事が多くて。Shineも明るい映像に掛けると凄い明るく発光しちゃうから難しいです。
イメージがそういう青春みたいなキラキラが強くて、やっぱりShineとか使うと馴染むんですよね。だから薄くとかでも掛けたりするし、違和感のない程度にいい感じに掛け過ぎないようにこれはやってるかな。
目が光るときも目だけマスク切ったりして、瞳だけのレイヤーとかを別で作ってやってます。
髪揺れだけは別のプラグインのAutoSwayっていうものを使ってて、それ以外はパペットツールです。
AutoSway:https://aescripts.com/autosway/
風に揺れてる感じのはプラグインを使っていて、手とか足とか身体がちょっと揺れてるとかはパペットピンツールで作ってますね。
結構正しいのかなこれって思いながら常に作ってます。もっと簡単な方法があるんじゃないかなとか。
カラコレでも実在感を出す
この動画も一番最初にカラコレを全部しました。曲とかに凄い雰囲気を寄せるようにしてます。
夕焼けのシーンとかも最初に絵を並べて、トーンカーブですごい調節しました。
あとグローも文字にも掛けてるし、ちょっとアニメっぽくしたくて全体にも掛けてます。明るい所だけ本当に薄く掛けてるかも。
本家へのリスペクトを忘れない
歌ってみただから本家へのリスペクトも絶対忘れちゃいけないと思ってます。この曲は元々アニメの主題歌なので、結構元のアニメのオープニングを真似してる部分があって、冒頭の入りとかもだいぶ似せてますね。ウユニ湖みたいな背景とかも本家のオープニング見てなるべく寄せたいなと。
あとはピアノや五線譜を出したりとか。
飛んでいる楽譜も、本家の漫画かアニメのどっちかでキャラクターが弾いてるクラシック楽曲と全く同じ楽譜だったりします。ちゃんと枚数分あるんですよ。
楽譜の素材をテクスチャで作って、それを動画で一つずつ書き出して、13枚ぐらい別で書き出してそれをパーティクルに指定して。全然見えないけど、よく見たらちゃんと弾ける楽譜なんです。
背景に対するこだわり
「光るなら」の背景はpixivでフリーで配布している方のを借りてきました。
pixiv:イラスト・漫画・小説の投稿や閲覧が楽しめる「イラストコミュニケーションサービス」。個人がpixiv経由でフリー素材を配布している場合もある。
結構有名な素材なので、他の動画でも割と見かけます。最初はわざわざ別で背景イラストを買っていたんですが、買って合わせたら色や雰囲気が合わなくて、結局フリーのイラストを使いました。
裏方だからこそ雰囲気を大事にしたい――「Hollow Sleep / Flower」
この動画はそもそも ぬゆりさん と凄く仲がいいというのもあって、曲の雰囲気とかを気軽に聞くことができたのが大きいですね。
今回はぬゆりさんが楽曲の雰囲気に合わせて写真やイメージなどを資料に貼って絵を発注されていたので、その資料を共有してもらいました。資料もらってからは結構もう好きに作っちゃったのかな。
キャラクターはもちろんですけど、机などの小物はイラストで貰ってて、額縁や背景、花の素材などは私が用意しました。
Hollow Sleep / Flower 00:28
一番最後のシーンはここだけプラグインのTrapcodeShine使ってますね。
Hollow Sleep / Flower 03:25
演出でいうと、あんまり激しい曲っていうイメージではないから、カメラはそこまで動かさずに文字だけスタイリッシュなイメージだったかな。でもテクスチャとかノイズとかそういうちょっと粗いイメージはあって。
サビに入る前のカメラがくるくる回る所なんですけど、そこだけがこれやりたいって思ってて入れたんです。
ほかの動画から参考にした演出はありますか?
りゅうせーさんのACCAMER「stay night」Music Videoの動画なんですけど、本当に冒頭7秒とかの回転してちょっとコマ送りっぽい演出を見てHollow Sleepのサビ前の所にいれました。あっ凄いこれって思って。
りゅうせー制作:ACCAMER「stay night」Music Video
Hollow Sleep / Flower 00:57
今後やってみたいことは?
Blenderでモデリングとかやりたいけどやっぱり難しいんですよね。モデリングしてもそれを上手く動画に組み込めるかっていう不安もあります。それこそ作らなくても売ってるもので今の所どうにか出来ちゃってるというのもあります。
Blender :https://www.blender.org/
でも、背景とか全部3Dでいい感じに動かせたら凄い楽かもって思うのでやってみたいですね。どうしても3Dって別で動画で書き出して合成する、コンポジットするってイメージがあるからやりたい事が難しい。
目標にしているクリエイターなどはいますか?
目標にしている方はインタビューでもお話してきましたが、myapiさんとしづさんですね。
また目標とはちょっと違うんですけどサイトウユウマさんの作品みたいな比率でイラストとCGを合わせた映像を作りたいなって思っています。
ガッツリ3Dで作るっていうのも凄く憧れではあるんですけど、ぬゆりさんのディカディズムっていう曲も確かサイトウユウマさんが映像を作ってて、イメージとしてはこれくらいのCGとイラストの比率で作ってみたいです。
サイトウユウマ制作:ディカディズム / Flower・心華 - ぬゆり
あとデザインもやってみたいですね、グラフィックデザイン。動画のタイトルとか作ってる時に楽しいなって思って。本格的にやってみたい願望はあります。
ちょっと前に友達の動画のYouTube用のサムネを作らせて貰った時があって、それが凄い楽しくて、そういうのをちゃんとillustratorとかPhotoshopで出来たらなって思ってます。今までは無理矢理After Effectsで作って渡したりしてたので。笑
あとUnityとかもやりたいです。
Unity:https://unity.com/ja
1回だけUnityの売ってるアセット(注:Unity内で使用するオブジェクトを指す)を使いたくてやった事があるんですけどもう覚えてないですね。日本の学校の3Dの素材がなくて、一番その雰囲気に合ってたのがUnityのアセットの教室だったんです。動画として使うものじゃないから書き出しとかも結構大変だった気がする。
クリエイターを目指す人に一言お願いします
自分が教えてあげられる事なんかそんなにないのですが、周りには加工が一番。加工で雰囲気が一気に良くなるからから、カラコレを大事にっていつも言っています。カラコレとイージングでカッコよさ出るからって。私は映像作るうえでその2つを大事にしています。
Next Interview!
次回はリリックビデオや実写まで幅広く手掛ける、まきのせなさんにお話を伺います!
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