ラノベPVの第一人者! 抹茶さんインタビュー【モーションモンスター2021前夜祭】

2021.06.03 (最終更新日: 2022.07.05)

多くのラノベPVを手がける抹茶さんにインタビュー!

2021年6月9日(水)から始まるモーショングラフィックスに特化したオンラインイベントモーションモンスター(MOTION MONSTER)」に先駆けて、前夜祭と称してボーカロイドやリリックビデオの分野で活躍する若手クリエイターたちにインタビューを敢行!

今回は『探偵はもう、死んでいる。』PVなどライトノベルのPVを多く制作している抹茶さんにインタビュー!
ナレーションが付いたPVやライトノベルのPVについて、たくさんお話しいただきました!

6月9日から始まるモーションモンスターについてはこちらから

モーションモンスター

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抹茶さんプロフィール


抹茶
Motion graphics/3DCG/js/phtyon/Live2D などを駆使する映像クリエイター。ライトノベルPVからMV、ゲームOPやアニメ、コミックスPVまで幅広く手掛ける。
Portfolio : https://matcha003.tumblr.com/
Mail:louis23611@gmail.com
Twitter:https://twitter.com/matcha003?s=20

作品紹介



元々は役者だった?!映像制作を始めたきっかけ

元々大学の頃ってドラマやお芝居好きだったんで役者になりたかったんですよね。それで芸能事務所にオーディション受けて、受かった所で一応1年半ぐらいやってました。でもやっているうちに食ってけないと思ったんです。

そこから結構何もする事がなくて普通に就活したりしてたんですけどテレビを付けた時にアニメがやっていて

モーショングラフィックスがその時期から流行り始めてアニメ文化に結構浸透してきている部分がありました。でも、僕が知っている時代のアニメのオープニングとは全然違うものになってたんです。

それで感銘を受けて、僕も動画を作り始めたのがきっかけでしたね。

映像制作の勉強には環境が大事!

僕の場合、映像制作のことを教えてくれる人が周りにしっかりいたんですよね。凄く環境に恵まれてたと思います。それこそこういうコンテンツで働いているような方々に画面共有やaepもらったりで教えて頂きました。

今年もフリーランスの方がすごく増えましたが、強い人が所属してる映像会社に入るのが一番成長的に効率が良いと思いますね。
映像会社所属は共有してるaepを見れるのも凄い特権だと思います。

仕事に繋がったのはいつから?

元々映像会社に入るならここ以外にないと思って、浪人ぐらいの気持ちで1年は独学に全部詰め込む気でいました。それでツイッターに動画を上げ続けてたらいろいろとお仕事の連絡が来てって感じでしたね。

最初に受けたお仕事が同人さんだったんですけど、東方のミュージックビデオの依頼を受けた時が確か初めてだったと思います。今でも新規のお仕事の話はほとんどTwitterからだったり同じクリエイターのお手伝いをしたりですね。

今はVtuberの文化によって歌ってみた、オリジナルMVの動画が増えてきて映像作者には潤う環境ができてきたと思いますし、一本歌ってみたでも突出したような絵が出せれば輝けると思います。

影響を受けた作品や人って?

人になるんですけど、8180(株式会社ハイパーボール) 社長の山下敏幸さんです。

この方がアニメにモーショングラフィックス、グラフィックデザインという文化を運んだ第一人者の方なんです。


ディレクター/山下敏幸:TVアニメ「グレイプニル」ノンテロップオープニング

8180(株式会社ハイパーボール)https://8180.co.jp/company/

8180はもともと2018年に出来た会社で、設立以前からアニメOPなどで作ってるのを知っててやっぱり凄く感銘を受けました。

他に好きな会社では10GAUGEさん、SIGNIFさん、アニメのop、pv制作やモーショングラフィックス全般をやってるような会社ですね。

10GAUGEhttp://www.10gauge.org/

SIGNIFhttps://signif.jp/

個人ではSilveさん。
僕が映像制作始めたばかりのころに、知人に彼が絶賛する作品をいろいろ見せていただいてて、その中にsilvaさん制作のLACK GIRLのPV映像があって。

正直当時はイージングとか何も知らなかったので何が凄いか分かってなかったんですけど、経験を重ねていくうちにどんどん凄さが分かっていきました。現状究極にsilvaさんがいるイメージです。


Silve制作:【own phrases】LACKGIRL BIRTH IN THE DARK PV

凄いモーションが気持ちいいプロモーションなんですけど、大きなトランジションを使わないんですよね。

技術の高い視線誘導でシームレスに映像をトランジション出来ているっていうのが凄く気持ちよくて、ここに決まってほしいモーショングラフィックスが全部100点で決まるような感覚があります

二人目はトールミツハシさん。
映像制作者から誰からも認められてる印象があります。
モーションデザイナーでありながらグラフィックデザインも多く手掛けていてムービー全体の絵も3Dより2Dの割合が高いんですよね。


トールミツハシ制作:イロドリミドリ 舞ヶ原高校軽音部 『Agitation!』MV

僕も映像全体のデザインをしっかり学び始めたのはミツハシさんのムービーを見てからでした。

このイロドリミドリのMVが初めてみた作品なんですけど一つ一つの技術が凄く高くて「こんな動かし方あるんだ」みたいな技法が色々発見できてすごく感銘を受けました。

「『探偵はもう、死んでいる。』15万部突破記念PV」の裏話

どうやって制作してる?ラノベPVのワークフローについて

このPV制作は原作も読んでいましたので、お仕事できて嬉しかったですし、このPVを見て依頼を頼んでくれる人がいっぱいいるんで、僕が大きな第一歩を踏めた作品ではあると思いますね。

タイトルから流れは基本的に編集さんが最初に考えてくれているのがほとんどです。ディレクターのクレジットが入るくらいに働いてくださってますし、編集という立場もあって僕らのように結構遅くまで働いているので時間の都合が合いやすいですね。

ワークフローはだいたい最初に絵コンテやVコンで全体の形で見せます。Vコンは演出が分かりやすいように他の制作した動画のシーンをカット編集してるような形だったり簡単にシーンカットを入れてコメントを上から乗せる感じです。

対象のVコンを上げてからだいたい3回ぐらい提出で納品だった気がします。

※Vコン:ビデオコンテの略。絵コンテを動画化したもの。

表現でこだわっているところは?

冒頭でとげとげしてるものは心臓の他臓器って意味を込めて作りました


MF文庫J『探偵はもう、死んでいる。』15万部突破記念PV 00:05

デザインでも何か作るとき「何でこうした」って聞かれたときにしっかり返答できるような作りは制作中意識してると思います。
後は作品にUnrealEngine4などを扱う人も増えてきてフォトリアルで勝負しずらい気持ちがあって、最近はアンリアルな作風が多い気がしますね。

このトゲトゲしてるものはCinema4DX-particlesで制作してるのですが、あまり実践的に使ってる人を見かけなかったんです。


X-particleshttps://insydium.ltd/products/x-particles/

SIGNIFさんが2019年のFate/Grand OrderのアニメのOP映像でX-particlesメインで制作してるのを見て僕も多用するようになりました。

参考:SIGNIF代表の荒牧さんの対談記事

最後のイラストが動く部分とかは全部Photoshopで描き足して切り分けてって感じでスクリプトで動かしていく感じです。


MF文庫J『探偵はもう、死んでいる。』15万部突破記念PV 00:34

冒頭と最後の沢山のシェイプを被せたタイポモーションは視線をわざと混乱させてなんかすごいことしてる感を出してる意図があって。
沢山の情報量を与えると混乱してしまします。けどそれが正しく収束すれば逆に快感に感じるものなんですよね。

エクスプレッションで効率化!

細かい技術の話でいえば、エクスプレッションを多用します。

冒頭のタイトルロゴのモーションや、


MF文庫J『探偵はもう、死んでいる。』15万部突破記念PV 00:00

後半のタイポグラフィに沢山のシェイプで被せるモーションだったり、


MF文庫J『探偵はもう、死んでいる。』15万部突破記念PV 00:39

沢山の物理量を扱うシーンではランダムに時差をつけながら正しく静止できるよう制御したり、関数を使いながらモーションのイージングも制御してるような感じです。

一つ初心者の方でも扱えそうな凡庸性のある文一つ置いておきます。

var a = effect("radious")("スライダー");
var b = effect("arg")("角度");
var c = Math.sin(aMath.PI/180)b;
var d = Math.cos(aMath.PI/180)b*-1;
value+[c,d]

radiousに角度を入れてargに移動距離を入れることで方向と移動距離を制御できるようになります。

この作品でよく使ったプラグインは?

この作品ってわけじゃないですがSapphireエフェクトはよく使いますね。標準エフェクトを細かくいじれる機能disrort系のエフェクトが強力です。


Sapphirehttps://borisfx.com/products/sapphire/?collection=sapphire&product=sapphire

お値段が25万円ほどと高いので後回しに、、最初はparticularOpticalFlaresなどの購入お勧めします。


Trapcode Particular:https://www.maxon.net/ja/red-giant-complete/trapcode-suite/particular/


OpticalFlares:https://www.videocopilot.net/products/opticalflares/

3DCGとAfterEffectsを使い分けていく――「竹達彩奈が謡う『探偵はもう、死んでいる。』の物語」

この映像はナレーションがついてるんですが、ナレーションを渡される時期は結構バラバラです。

僕が動画作り終わった後にナレーションが来る事もあるし、最初からナレーションのデータがあることもあります。今回の場合はナレーションが後でした。

この映像はCinema4D率が凄く高いムービーです。
冒頭などもCinema4Dですし、粒子が途切れたようなトランジションをしてるのもCinema4DのX-particlesで作ってます。


竹達彩奈が謡う『探偵はもう、死んでいる。』の物語 00:09

AfterEffectsだと3Dの空間が掴みづらくて、カメラワークが苦手なので、一部Cinema4Dでやってます。

AEC4Dというプラグインがあるんですけど、それでオブジェクトの位置情報だったりカメラなどをキーフレームが打たれた状態で持ってこれるので、併用したりしてますね。


AEC4Dhttps://aescripts.com/aec4d/

強いイージングがクオリティを左右する――「CV.鈴木みのりで贈る『義妹生活』第二巻PV」

『探偵はもう、死んでいる。』とテイストはだいぶ違いますね。

ギャルゲーのオープニングっぽさはどこから?

僕が参考にしてる方がギャルゲのオープニングを作ってたのもあります。モーションの緩急が速いってなってくると、ほとんどの人が連想するのはギャルゲーのオープニングなんですよね。

強いイージングがクオリティを左右する」はあくまで主観的な考えですが、緩急に力があると初心者っぽさが一気に払われる印象があるんですよね。

自分もモーショングラフィックスの中ではイージングの速度を一番気にしていて、知見交換もあって研究していった結果エクスプレッション制御になった感じです。

こうなってくるとイージングの速度だけでクレジットのない動画でも誰が作ったか大体判別できてくるようになります。

ただ、イージングだったりモーショングラフィックスというのが理解できるのがほとんど作り手のイメージがあって、綺麗なシーンや、3DCGで制作したカットの方がクライアントさんに喜ばれることは多い印象です。

なので最近はそういったシーン作りに力を入れることが多いですね。

これから作ってみたい作品は?

それで言うと本当にアニメ作りたいんですよね。

普段のキャラクターのイラストを使ってアニメーションさせるってなってくると、今の限界はLive2Dだったりパペットピンで髪の毛を揺らしたり目をちょっと動かしたりとか。


Live2Dhttps://www.live2d.com/about/

パペットピン:AfterEffectsの標準エフェクト。画像にピンを刺し、動かすことができる機能。

作画を描ける人と一緒に作品作りしてみたいです。キャラクターが360度動く事によってカメラの可動域も凄く変わってくるんですよね。だからもうちょっと激しい画を作れると思ってて

アニメでやっているようなモーショングラフィックスだったりVFXの技術を、ライトノベルだったりコミックスのプロモーション映像にも落としてやってみたいのが一つですね。

後は基本的に3DCGやデザインも現状全部一人でやってる状況なので少しずつチーム制作できるような体制にしていけたらいいなと思います。

新しいクリエイターを生み出す作品を作りたい

僕らのような2Dのキャラクターイラストを使った作品を作ってる人には週刊少年ジャンプの漫画pvみて映像始めましたって人が多いんです。

実際僕も人は違うけど一つの作品に感銘受けて作り始めましたし、オタクになってしまいました。ある意味人の人生変えてるわけなので凄い事だと思うんです。そういった部分でも今の仕事に魅力を感じています。

「探偵はもう、死んでいる。」のPV映像のモーショングラフィックスも、Twitterで真似してくれる人もたまに見かけたりして、僕も凄く嬉しかったし、誰かの作品作りのきっかけなれるような作品を生み出せて行けたら本望ですね。

Next Interview!

次回は美しい歌ってみたMVを多数手がける、みず希さんにお話を伺います♪

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