2021年6月9日(水)から4日間にわたって開催される、モーショングラフィックスに特化したオンラインイベント「モーションモンスター(MOTION MONSTER)」。
その直前企画として、これまでのVookの取材で“憧れのクリエイター”として幾度となく名前が挙がり、2021年の映像作家100人にも選出されたぬヴェントスさんにインタビューを行いました!
今回は、ぬヴェントスさんがディレクション、モーショングラフィックスを手がけたボーカロイドとVTuberのリリックビデオ2作品を中心に、制作プロセスや映像と文字へのこだわりを掘り下げてお話しいただきました。
今後ますます注目が予想されるジャンルの1つであるリリックビデオ。既に携わっている人も、これから作りたいという人も、全クリエイター必見のインタビューです!
ぬヴェントスさんプロフィール
ぬヴェントス
茨城県出身。早稲田大学卒業後、インターネット広告代理店にてWEBマンガ編集業務を担当。入社後に趣味で映像制作を始め、2018年からフリーランスとして映像制作業務を開始。現在、株式会社OTOIROに所属。 MVやPV、ライブの映像演出を中心に、CGやモーショングラフィックスを使った映像制作に従事。
Portfolio :https://nnnuventus.tumblr.com/
Twitter:https://twitter.com/NNNuventus?s=20
Mail:mashimero.desu@gmail.com
プロのビデオグラファーを目指す学校、はじまる。入学生募集中。
PR:Vook School
作品紹介
漫画編集者から映像クリエイターに ~PinterestとSNSを駆使して独学~
――作品の話に入る前に、ぬヴェントスさんのキャリアについてお聞かせください。現在のように映像に関わる前は、漫画編集のお仕事をなさっていたそうですね。
僕がいた会社は当時なかなか人手不足で、編集部はみんな編集と何かしら他の業務を兼務していたんですね。
入社して半年くらい経った頃に連載作家さんを招待してパーティーを開催することになったのですが、デザイナーのリソースがなかったため、パーティーで使う映像を自分が作ることになりました。
それまで映像を作ったこともなく「AfterEffects」っていう名前を知っている程度でしたが、色々調べながら1分30秒ほどの映像を作りました。映像を作った機会としてはその時が最初だったと思います。
適切な言い方ではないのですが、漫画編集は作家さんに”描いてもらう”仕事で、編集として未熟だった自分は時々もどかしさを感じることがありました。その点、動画制作は自分で考えたことを自分がやりたいように表現できるのが楽しくて、最初のパーティーの後も個人的に映像を作っていました。
作ったものを公開するというわけでもなく趣味で黙々と制作していたのですが、それを知っていた友人の紹介で、あるVTuberさんの映像を作らせていただくことになり、その辺りから仕事として映像を始めるようになりました。
ほどなくして漫画編集の仕事を辞め、丸2年フリーランスをして、2020年からはOTOIROに所属しています。
OTOIRO:https://otoiro.co.jp/
――漫画家やクリエイターといったいろんな方々の影響があったかと思うのですが、特にご自身で映像を作りたいと思うきっかけになった作品はありましたか?
スタートは、『東京喰種』の公式MADコンテストで優勝した牛丼さんの作品です。
牛丼制作:【MAD】CRY BITTERLY【東京喰種】 よりスクリーンショットで引用。
牛丼制作:東京喰種:re PV
漫画にかかわる会社だったので、やっぱり漫画の素材を使った映像を作ることが多く、牛丼さんの映像にどうやって近付こうかなという思いで手を動かしていました。文字の見せ方については牛丼さんの影響を強く受けていると思います。
あと、今同じ会社にいるサイトウユウマさんの映像は、自分にとってまさに教科書でしたね。
サイトウユウマ制作:DECO*27×堀江晶太(kemu) - セカイ feat. 初音ミク
サイトウさんの映像は1フレームずつコマ送りで見て勉強していました。中でも、『遊星まっしらけ』と『さよーならみなさん』は特に影響を受けたと思います。
『遊星まっしらけ』はシンプルにルックが好きで、CGを使った空間表現や配色のおもしろさみたいなものに気づいた作品です。
サイトウユウマ制作:ピノキオピー - 遊星まっしらけ feat. 初音ミク / Planet Masshirake
『さよーならみなさん』はCGで作られた小さな空間を舞台にしており、曲の終盤でその空間が立体の展開図のように開くのですが、外には実写の世界が広がっていて、ずっとMVで映されていた舞台はすごく小さな空間だったっていうシーンで映像が終わります。
そういう仕掛けがすごく面白いなと思って。構成にギミックがあるMVが割と好きで、その原点は『さよーならみなさん』にあった気がします。
サイトウユウマ制作:siinamota / 椎名もた - Goodbye Everyone / さよーならみなさん
――周りに教えてもらうというより、ご自身で映像を見て学ばれたのですね。ちなみに、リファレンスはどのようにして集めていきましたか?
そうですね。独立して1年ぐらいは映像関係の知り合いが少なかったのもあって、どうすれば成長できるかっていう道筋を一人で模索していました。
チュートリアルとかは、最初の方はあまり見ていませんでしたね。基本的に自分の想像する以上のものはできないと思っていて、自分が考えられるゴールの質を上げるために、評価されている映像作品を探してたくさん見てました。
作るより見る時間のほうが長かったと思います。「この映像はこういうところがすごいな」っていう発見を寄せ集めて、自分の中の基準を作っていったような気がします。
リファレンス集めは、ほぼPinterestかSNSですね。好きな作家さんは何名もいたので、ちょっと申し訳ない気持ちもありながらその方のTwitterのいいね欄を覗いたり、好きな作家さんがTwitterでフォローしてる方を見たりしていました。
『Geminids』のワークフロー ~イラストを引き立たせ、歌詞の意味を伝える~
――ぬヴェントスさんの作品について、お聞きしていきたいと思います。まずMVの『Geminids』ですが、どのようなワークフローで制作されたのでしょうか?
イラストレーターさんがアサイン済みで、プロデューサーにあたるCNR+さんからMVで描いてほしい物語のプロットもいただいていたので、それを映像に起こすことから始めました。
このときは絵コンテらしい絵コンテは作ってなくて、Aメロ、Bメロ、サビのざっくりしたレイアウトだけ描きましたね。そのイメージと、どういう使い方をしたいかっていう用途だけイラストレーターさんに提案をさせていただいて、届いたイラストに合わせて背景と文字を作る流れで進めました。
イラスト系のMVは、いかにイラストを映えさせるかをいちばん重要視しているので、最初のうちはあまりガチガチに固めずに、イラストが届いてから細かいところを詰めていくことが多いです。
――『Geminids』で、特にイラストを引き立たせるために意識したことはありますか?
イラストを水中で見せたくて、イラストレーターさんには歌い手である葛葉さんと叶さんがお互いの方へ手を伸ばしたりするイラストをお願いしたんです。
2人を同時に映したときの向かい合っている姿はシルエットが綺麗だと思っていて、ピンで映すと表情が見えることで何かに向かって手を伸ばしているような情緒的な良さがあると思いました。
そういうかたちで、イラストの配置や背景の情報次第で見え方を変えたい、同じイラストでも場面によって抱く感想が変わるようにしたいというのが最初にありました。
――細かいモーショングラフィックスは完全に後付けですか?
歌詞周りのモーションに手を付けるのはけっこう後半だと思います。曲を頂いた段階で大体の雰囲気は決めていますが、デモの音源と実際の声とでは印象も変わりますし、その音に合うモーションも少し変わってくると思っているので、最終版の音源をいただいてから詰めていくことが多いです。
歌詞にモーションを付ける上で、特に気を遣っているのが可読性です。カッコよかったり可愛かったりするリリックモーションも良いんですけど、僕個人は歌詞の意味が伝わらないともったいないと思うことが多いので、これまで作ったMVの大半は”読める”っていう部分を担保して作ったと思います。
可読性の低いフォントはあまり使いませんし、ちゃんと読める文字の動かし方、置き方、背景を考えながら、文字が読めること、読めなくともニュアンスは伝わることを第一目標にして、そのための補助的にモーションを作っていますね。
動かさなくても読んでくれるなら動かす必要はないとは思ってるのですが、工夫しないと視聴者が興味を失って離脱してしまうので動かしている、という気持ちもあります。WEB漫画編集の経験から、掲載メディアによってはボタン一つですぐ離脱されてしまうっていうリスクについてけっこう慎重に考えているかなと思いますね。
――確かに、歌詞を全部読めますね。デザインをするときは、先ほど仰っていたようにSNSやPinterestでリファレンスを探したのですか?
そうですね。例えば水中表現の参考として、Pinterestで水中のグラフィックデザインをいくつも見ました。泡の形や光の入り方が自分のイメージに近いものを揃えて、共通項を洗い出してそれを反映させるという作り方です。
Pinterestは類似コンテンツを一覧表示できる点がめちゃくちゃ優秀だなと思うので、数をそろえて共通項を抽出する、っていう演繹的な手段を取ることが多い自分はかなり助かっています。
――もう少しセンスに頼った作り方をされるのかと思っていましたが、寧ろ、理論的に緻密に作られている印象を改めて持ちました。
感覚優先で作るところは割と少ないかもしれません。モーションや色など映像の構成要素についても「何故こうするべきか」っていうロジックは都度考えていて、網羅しているわけではないですが大部分は自分の中で言語化できるようにしてます。
その演出が良く機能するかどうかは最後まで分からないので、自分の感覚に自信を持つためにせめて理論だけでも準備しておこうっていう若干後ろ向きの思考です(笑)
そんな感じでいろいろ模索しながら作っているので、同じ作り方をすることもあまりないですね。最初の1,2年くらいは毎回新しいことを1つは取り入れようと思って作っていて、制作と技術検証がよく前後してしまいました。
この半年ぐらいはなかなか挑戦的なことができていないと感じる節もあり、まだしっくり来る作り方が見つからないので、ワークフローもがちがちに固定せず色々試しています。
『Geminids』のテクニカルBTS ~スクリプトで作業効率アップ!~
――続いて、『Geminids』のテクニカル面をいろいろ教えてください。まず、3DCG部分について、何を使用して作っているのでしょうか?
Cinema 4Dです。このときはほぼ初めてだったんですけど、フォトリアルなCGを作ることにしました。
Cinema 4D:https://www.maxon.net/ja/cinema-4d/
街の素材はKitBash3Dなどで購入していますが、スカイツリーだけは権利上の問題がややこしそうだったので、似せた感じにして自分で作りました。
KitBash3D:https://kitbash3d.com/
――なぜC4Dのリアル系のCG入れようと思ったのですか?
冬の街はふんわりした明かりが映える空間だなと思ったので、リアルな雰囲気に寄せることにしました。あと、イラストと実写っぽい背景の合成をやりたかったのも理由の1つですね。
――この作品でよく使っていたプラグインやエフェクトはありますか?
イントロ部分の泡は、Stardustで丸をたくさん出して、それを歪ませて作ってます。『Geminids』に関しては、使っている有料プラグインは少ない気がしますね。カラコレも、標準搭載のLumetriカラーでやっています。
Stardust:https://aescripts.com/stardust/
普段の話をすると、汎用性があっていろんなモーションブラーを作れるCartoon Moblurを常用しています。
Cartoon Moblur:https://aescripts.com/cartoon-moblur/
特定の演出に特化したプラグインより汎用性が高い作業効率アップのスクリプトのほうを多用しているんです。文字や図形などを分解するとレイヤー数が増えることが多いので、レイヤー管理のスクリプトが特に多いですね。
いちばん使うのはObsessive layersで、レイヤーの長さをキーフレームやマーカーに合わせてワンクリックで変えられて便利です。
Obsessive layers:https://aescripts.com/obsessive-layers/
他には、レイヤー名をボタン1つで変えてくれるOCD Renamersや、便利な機能がオールインワンになってるBluBluBar、あと個人的にすごく役立ってるSort Itなどですかね。
OCD Renamers:https://flashbackj.com/product/ocd-renamer
BluBluBar:https://www.blublustudios.com/blublubar
Sort It:https://www.eyedesyn.com/product/sort-it-for-after-effects/
Sort Itに関して、例えば「た」という文字をパーツごとにバラバラにすると、1文字で最低4つのレイヤーに分かれますよね。そうなると「た」だけを呼び出したくても、そのレイヤーを選択するのが面倒じゃないですか。
でも、Sort Itを使えば、その「た」を登録して、「た」を呼び出すボタンで「た」だけを表示させられるんですよ。これは本当に助かります。
ちなみに、スクリプト情報は朝倉すぐるさんがよくツイートされていて、僕は朝倉さんのことをいちばん信頼できる情報ソースのように思っています。
『ヴァンパイア』のワークフローと演出 ~意図的に不自然さを表現する~
――ぬヴェントスさんがOTOIROで制作されたMV『ヴァンパイア feat. 初音ミク』のお話もぜひ伺いたいのですが、OTOIROではどのように制作を進めているのでしょうか?
『ヴァンパイア』では、アートディレクターという形で社内のデザイナーがクレジットされているのですが、その人が全体の方向性やキーになる部分を決めて、細かいモーションや各カットのレイアウトなどを僕が考えて作りました。
例えば、「まだ絶対いけるよ」と歌うところで、手前に出す歌詞は「まだ♡♡いけるよ」にして、後ろに「絶対」と書くレイアウトとかはそのデザイナーが考えてくれました。
カタカナとひらがなで左右に歌詞を出している部分とかは僕なので、ヴァンパイアに関しては完全に分業したわけではなく、様々なアイデアを取り入れながらやりました。
――『ヴァンパイア』を拝見して、そもそも文字だけのMVにしたいという依頼だったのかなと思ったのですが、リリックビデオとして、特に気をつけた意図的な演出はありますか?
このMVは、背景1色でイラストだけがあるシンプルな画面構成で、文字にあまり質量を感じさせないように意識しました。
例えば文字をバウンドさせると、重さや軟らかい質感があるように見えると思います。モーションによって文字に質量が感じられること自体は悪いことではないし、寧ろ普段はそういう効果を狙って作っています。
ただ、このときは文字に必要以上の情報を持たせたくなかったので、動きは全部キーフレームで制御してイージングはリニアしか使いませんでしたね。少し不自然さのある方が、初音ミクらしさを出せるかなと思ったのもあります。
実は「甘くなる不安の果実」と歌うところで、最初はエクスプレッションを使って滑らかに文字を揺らしたんです。
でも、ここだけ滑らかで自然な動きなのは逆に違和感があって、
半ば僕の意地もあったかもしれませんが、揺れもキーフレームで作りました(笑)
――プロフェッショナリズムを感じます!やはり、音と文字をとても大事にされているんですね。『ヴァンパイア』にしても、同じくぬヴェントスさんがOTOIROで制作された『依存香炉』にしても、文字が特に印象的ですが、リリックビデオのどのようなところに魅力を感じて制作なさっているのですか?
大橋史さんの『文學少女』というMVに猛烈に憧れて、文字を動かすのが好きでずっと続けていますね。
大橋史制作:BURNOUT SYNDROMES 『文學少女』ミュージックビデオ
意味を伝える役割をこなしつつ、図形としてのビジュアル的な良さっていう”文字”の魅力をめちゃくちゃ引き出していると思ったのが『文學少女』でした。
先ほど歌詞を読んでもらいたいという話をしましたが、僕自身、日本語の文章がすごく好きなんです。『文學少女』は僕が映像始めた初期に見たMVの1つですが、ずっと自分の中の理想として掲げている映像ですね。
初めての人が楽しめるVTuber MV作り ~ずっと見ていられる動きと視線誘導~
――リリックビデオの中でも、ボーカロイドやVTuberのMVだからこそ意識していることがあれば聞かせてください。
ファンの人が何を求めているのかと、あとMVをどのように視聴しているかを、結構気にしながら作っていますね。
VTuberさんのファンにはかなり深く考察する人もいるので、別に正しい解釈をしてほしいわけでもないんですけど、解釈次第で歌っている本人が損をすることだけは避けたいと思っています。
ただ、比重としては初めて見てくれる人をより意識しています。変に誤解されたくはないのですが、一般的にまだVTuberは少し遠巻きに見られているような風潮はあると思うんですね。
最近、VTuberではないゲーム実況者の方とVtuberの方がコラボしたとき、「このVTuberが人気な理由が分かる」「VTuber避けてたけど認識が変わった」ってコメントをいくつか見ました。そういう風に見方が変わるのはとてもうれしい一方でやっぱりそういう方はまだいるので、そういう認識を変える一助になれたらなとは思っています。
VTuberさんのMV作るときは、”VTuber的”ではない文脈も取り入れていった方がいいと僕は思っていて、VTuberさん特有のノリを知らなくても楽しめる要素を入れて作っています。特に初めて見る人向けに、映像として飽きさせないというところを集中的に考えていてますね。
――ジャンルに凝り固まらずに制作なさっているのですね。飽きさせない工夫は、どのようなところに作っていますか?
なんとなく見てたら終わってた、というMVが理想なので、目を動かす範囲を広げ過ぎないようにしています。疲れるので。
緩急がバリバリついていて引きが強い動きに対して、なんとなくずっと見ていられる動きというのは、波や振り子ようにある程度規則的でゆったりとしている動きかなと思うんです。だから、注目させたいポイントだけ絞ったら、あとは余計な動きを入れないようにしています。
人間が心理的に見る場所って極端に言うと”動くもの”かキャラや文字みたいな”理解できるもの”なので、そういうシーンを繋いで繋いで、あとから自分で見たときに気が散る部分を手直ししますね。
例えばこのカットは、なんとなくモーションをずっとふんわり眺められるカットかなと思っています。
――引きのロングシーンは結構飽きやすいかなと思いますが、こちらのカットはモーションがあるおかげで、ずっと見ていられますね。
僕個人の漫画好きな感覚が働いてるかなと思います。
前職が漫画編集の仕事だったとお話ししましたが、漫画の内容に関する編集作業として、視線誘導についてのアドバイスがありました。
例えば、このコマに飛びたいのにセリフがここにあると違うコマに進んでしまうからここに吹き出しを置いてこういう動線で読んでもらえるようにしようとか、読むときの”タメ”だったり情報の量や順番のコントロールだったり、そういうことをアドバイスさせていただいていました。
僕がやっている視線誘導は漫画のルールに基づいていますし、情報の伝え方などめちゃくちゃ漫画脳で映像を構成している気がします。
ぬヴェントスさんのこれからのチャレンジ
――映像作家100人に選ばれるという目標を達成されましたね。気になっている人も多いと思うので、ぜひぬヴェントスさんがこれからやってみたいことを教えてください。
一人前になりたいですね。まだ自分の中で本当に納得のいく映像ができていないので、自信を持つに至る技術が欲しいです。
でも、VSingerのsomuniaさんのMVを掲載していただけたことは、すごく嬉しく思っています。やっぱりVTuberさんがいなければ今の自分もないので、VTuber・VSingerの文化に対して還元したいですね。
ぬヴェントスさん制作:backword - somunia
――具体的に挑戦してみたいジャンルはありますか?
今まで映像の素材は3DのモデルやフォントなどのCG素材しか使ってこなかったので、実写要素を入れてみたいですね。
川の映像があって、そこからアニメっぽい魚が飛び出すとか、実写の映像も素材として使えると幅が広がりそうなので、ちょっとチャレンジしたいと思っています。
あと、デザインもできるようになりたいですし、長期的には文字を自分で作りたいです。フォントは動かすために作られたものではないので、リリックビデオとして動かすと不便を感じることが多いんです。だから、動かすための文字を作れるようになりたいと思います。
――クオリティがまた大幅に上がりそうですね!その上で、今目標にしている作家さんはいますか?
先ほどお名前を挙げた大橋史さん、それから代田栄介さんと山口駿さんですかね。
代田栄介制作:[ Frasco ] Viewtiful - Music Video -
山口俊制作:shun yamaguchi reel 2021
代田さんのMVは、「見る」よりも「体験する」という表現がしっくりくる映像で、見終わったあとに不思議な感覚が体に残るんですよ。
曲とそれをビジュアル化した映像っていう組み合わせの「良い曲、良い映像だったな」以上の、「良い時間過ごしたな」っていう体験を生み出せるMVにめちゃくちゃ憧れます。
――作品の枠を超えて衝撃を与えてくれるものを、ぬヴェントスさんは目指していらっしゃるように感じました。
そうですね。あと、Hurray!のぽぷりかさんも大好きで、作り手としての姿勢も尊敬しています。
Diretor /ぽぷりか:ヨルシカ - 雨とカプチーノ(Official Video)
ぽぷりかさんは毎回読み切り作品を作っているかのように、キャラクター、物語、そして丁寧な感情描写があり、気持ちいい音ハメと構成で「良い体験」を生み出していて本当にすごいなと思っています。
どんなジャンル、どんな尺だろうと「物語を読んだ」感覚が残ります。僕自身、キャラクターを使った映像作りにも興味はあるのですが、まだ基礎的な力が足りないと感じています。
技術として磨きたいのは文字の動かし方の部分なので、あとはどういう映像を作りたいか次第で手法を変えつつ、それに応じたスキルを磨いていきたいですね。
――これから更に面白いものが出てくるかもしれないということですね。すごく楽しみです!MV以外の映像ジャンルはどうでしょうか?
これまでに商品PRのCMを作らせていただいたことは何度かあるのですが、今後はブランディングにかかわるCMに携わってみたいです。
商品PRの映像もさまざまなアプローチはあると思うのですが、極論で言えばゴールはその商品を買ってもらうことだと思っています。それはそれで大変難しく面白い仕事なのですが、目標設定から一緒に考えるような機会があったらおもしろそうだなと思いますね。
MVではいつも、「見終わったあとどういう感想を持ってほしいのか」をまず考えるので、CMでもそういう考え方で作ってみたいなと思います。
――最後に、この記事の読者の方へ、メッセージをお願いします。
恐らく、この記事を読んでくださるのは比較的に若い方たちなのかなと思うのですが、僕から1つアドバイスができるとすれば、「好きなものをアップデートしていってください」ということです。
『ばらかもん』という漫画の中に僕のすごく好きなシーンがあるんですよ。
「ばらかもん|ガンガンONLINE」よりスクリーンショットで引用。
主人公のお父さんが有名な書道家で、あるとき仕事の依頼で字を書いたものの、納得がいかなくて書き直したいと考えるんですね。
でもその仕事の担当者に「これでいきましょう。十分良いじゃないですか」と言われて、お父さんは「この字が良いと見えるなら、君の天井はそこだ」と言い放つんです。
自分が好きだと思うものをアップデートしてかないと、自分の限界もそこになってしまうので、どんどん好きなものの幅を広げてほしいなと思います。
もう1つ漫画絡みですが、『ハイキュー!!』の中で僕が映像の仕事訓にしている言葉があります。
「ハイキュー.com」よりスクリーンショットで引用。
主人公のいるチームが日本で2位のチームと戦うんですけど、そのチームは日本2位なのにマインドがめちゃくちゃ挑戦者で、「日本一にもなってない俺たちが、昨日を守って明日何になる」というスタンスなんです。
そのチームの監督が「一つでもいいから、今日、何か挑戦しろ」と言っていて、もう僕としては「過去の作品を守って何になる!」というマインドですよ。手の慣れで作ることのないよう、考えてチャレンジすることをずっと続けていくと思います。
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