進化し続けるウェディングムービーの最前線 ~次石悠一さんに聞く「披露宴の感動を拡張させる編集の力」とは~

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2021.07.21 (最終更新日: 2022.08.31)

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プロの映像クリエイターのインタビューをもとに、そのナレッジやノウハウを紹介していく「Cutters Point」。第7回目のゲストは、ビデオグラファーの次石悠一さんです。

「結婚を決めたふたりの想い」を伝える鮮烈で美しい映像を生み出す次石さん。これまでのウェディングムービーにはなかった新たな世界観を提示して高い評価を得ています。SNS時代を迎えた今、ウェディングムービー界に起こっている劇的な変化と進化、そして演出・編集方法など貴重なお話を伺いました。

今回のゲスト:次石悠一さん
ビデオグラファー。高校卒業後、広島の映像専門学校へ入学。そこで映像に関する知識を一から学び、在学時からウェディングの仕事をスタート。あらゆる現場で経験を積んだのち、30歳手前でTomato Red Motionを設立。結婚式の1日を撮影し、その場で即日編集してエンドロールで流す“ダイジェストムービー”を主体としている。
Tomato Red Motion
Instagram

インタビュアー:ダストマン
3年間勤めていた映像プロダクションを退職し田舎へと移住。広島を拠点に、TVやWebのCMをメインにエフェクト・モーショングラフィックス・VFX・コンポジット業務をフリーランスで請け負いながら、After Effectsのチュートリアル動画を主に発信しているYouTubeチャンネル『ダストマンTips』を運営。

記録撮影のブライダル映像から、サプライズを生むエンドロールの誕生

次石:映像の仕事がしたいと思ったのは高校生の頃からです。でも僕が生まれ育った島根県には映像の専門学校がなく、隣の広島県で映像を一から学びました。

卒業してからは広島で会社員としてウェディングの撮影をしていたんですけど、転勤で関東に来たのをきっかけに色んなご縁があって、30歳直前にTomato Red Motionを設立しました。
 
ダストマン:実は僕も昔ウェディングムービーの仕事をしてたんですけど、ウェディングってここ10年とかでものすごく変わりましたよね!

次石:そうですね。僕がスタートした頃はブライダルビデオって呼ばれてて、1日の流れを記録撮影する2時間くらい尺があるようなものでした。そこから「エンドロール」っていう、5分くらいのダイジェストムービーに即日編集して披露宴の最後に上映するっていうものが生まれて。

当時はテープからダビングする形でパソコンに取り込んで、編集後またテープに書き込むっていう作業なんで相当シビアでした。「さっきまでの出来事がもう映像になったの!?」っていうサプライズが売りだったので、かっこよさやエモさはあまり重視されず、どれだけ早く出せるかどうかが正義みたいな風潮はありましたね。

ダストマン:そこからデジタルになって変わりました?

次石:2008年のCanon EOS 5D Mark IIの発売ころから、ウェディング業界にも一眼でムービーを作ることがスタートしたと思います。

STILLMOTIONの登場。日本のウェディング業界に衝撃が走る

次石: そのあと、アメリカのウェディングフィルムメイカーSTILLMOTIONが出てきたんですけど、彼らが作る映像はそれまで僕らが見たことのないようなものばかりでね。結婚式を挙げる2人の“らしさ”が出ていたり、ストーリー性も入っていたりして。音楽もJ-POPではなくオシャレな洋楽だったし。

ダストマン: 次石さんとしても衝撃が大きかったです?

次石: かなり衝撃的でしたよ。当時YouTubeやFacebookが入ってきた頃だったので、海外の作品も目に入る機会が増えてましたしね。

ちょうどその頃、日本ではCRAZY WEDDINGっていう、それまで当たり前だったホテルやゲストハウスじゃなくて、海とか森とかいろんなロケーションで、フルオーダーメイドの結婚式をプランニングする企業が現れて、僕も独立するタイミングで繋がることができたんですよね。

結婚式そのものに大きな革命が起きそうな予感も感じてました。

感動を拡張させるウェディングムービー。ヒアリングから、いいことも悪いことも構成の大事な要素に。

ダストマン:次石さんの作品拝見してて印象的なのが、一つとして同じようなものがない、ということなんですけど。

次石: 僕たちのこだわりは、ウェディングの壁を超え続けたいってことなんですよね。最近のウェディングムービー、ここまでやるか!みたいな。

そのために、一つ一つの案件に真剣に向き合って、何をしてあげられるかはとことん考えます。良いことも悪いこともヒアリングして、その中で「この人のポイントここだ!」っていうのを見つけて映像の構成を作っていきます。

最近だと、コロナ禍の結婚式のムービーを作ったんですけど、コロナの影響で生活が激変し披露宴は延期、彼女も体調を崩してしまったりという話をヒアリングしたところから、こういう話って今日本の至るところで起きているよなと思って。

それで僕は、「延期になってしまったけど、やって良かった!」と感じてもらえるような映像を作りたいと思いました。コロナ禍だからこそ生まれる壁を、2人で乗り越えていく。

そうした過程にフォーカスして、「コロナ禍のウェディング」という1つのテーマを持たせて本音をたくさん入れながら作ったら、たくさんの人に共感してもらえるのではないかと思ったんですね。

【コロナ禍のウェディング】

僕は、結婚式という人生でもの凄くハッピーでドラマチックな瞬間に立ち会い、そこにあるリアルな感情を題材にして、即興のクリエイティブで感動を倍増させてあげられたりするのがこの仕事の一番の魅力だと感じています。

トレンドの、Insta花嫁

ダストマン: 次石さんの作品を拝見してると、事前にロケ地回って撮られてるものも結構あると思うんですけど?

次石: 最近はSNSの時代なので、Instagramを意識した編集にも力を入れているんですよね。いわゆるInsta花嫁さんですけど、写真や動画をSNSで投稿するのに、どうせならこだわりたい!という方も増えています。

結婚式当日だけだと時間が限られてるし、じゃあ別日でロケして作り込んだものが欲しいっていうのが最近のトレンドなのかなって思っています。

【西表島での撮影:メイキング映像】

インスタ向けに、5分のエンドロールをさらに1分くらいのダイジェストにして差し上げるとかもしています。


ダストマン :短くするときの編集のコツみたいなのってあるんですか?

次石:実は短い方が難しいんですよね。僕の場合は、まず音から決めるんです。例えば5分の曲をまずは1分に編集して。一番最初に音楽的な聴きどころみたいなポイントを持ってきて、ゴール手前くらいで1回ちょっと展開がうまれるようなものって感じです。

ダストマン:なるほど。1分の中でも起承転結を作ってってことですね。

編集は1000ピースのパズルを組み立てていく作業に似ている。

ダストマン:次石さんならではの編集法ってあります?

次石:僕は、素材をまず全部ガサッとタイムラインに並べるんですよ。1個1個の素材のここからここを使おうだとか、in/outを決めてタイムラインに落とすのではなく、1回ドバッと並べてカーソル走らせて繋がりを見ています

こことここ繋ぐとなんとなくこうなるなとか、こう使ったら面白そうだなみたいなのを先になんとなく見て、そこのひらめきで繋いでいくみたいな作業ですね。

ダストマン:そこのひらめきが消えるから1個1個で見ないようにしていると。

次石:そういうことですね。1個1個の独立した素材をグループ化して線で見るというか。最初はカットとカットの組み合わせでこれ面白いなって繋げていって、そのグループ同士がバシバシくっついていくとシーケンスになりますし。

ダストマン1000ピースのジグソーパズルを作る感じですね!ところで次石さんはグレーディングとかはどうしてるんですか?

次石:僕はPremiere 上でもうやっちゃいますね。広告の場合は編集はPremiereで色はDaVinciもってきますけど。

妄想の脚本作りがドラマを起こす

ダストマン:次石さんの作品って結構作り込んでるし、撮って出しの時間内に作れるのかなって思っちゃうんですけど。

次石:それが、結構いつも余裕で終わってるんですよね(笑)。撮りながら編集しちゃってるので。

結婚式って良くも悪くも進行は大体予想がつくので、ベースとしてはこう撮ろうっていうのが確約できてはいるんですけど、僕の場合は全体の半分以上はアレンジなんで、そこをどう撮ろうかというところは妄想でやらせてもらってます(笑)。

例えば、テーマが「花嫁と花嫁の父」みたいなのだったとしたら、妄想の段階で、メイク室で楽しそうな花嫁さん、1人控室で寂しそうに窓の外を見る父とかって勝手に設定するんですよ。感情のコントラストをつけるわけですね。

ダストマン:なるほど。この妄想の脚本作りかなり大事なんですね!

次石: そういうことです。普通に撮った素材を組み替えてドラマを起こす、ということです。

例えばよくあるのが、新郎新婦が着替えてるシーンから、ゲストが控室からチャペルに移動してるシーンに変わって、でもそこに新婦のメイクシーンを入れると、いかにもまだメイクしてる最中で、「おいおい、間に合うのか!?」ってちょっとドキドキしたりするじゃないですか。

編集は時間軸を操ることが一番大事かなという風に思っているので、それをなるべく妄想段階でやってます。

ダストマン:どうやって作ってるのかやっと分かりました!ちなみに普段撮って出しを作る時ってどんなPC使われてるんですか?

第一線で活躍するウェディングムービークリエイターのPC環境

次石:普段はMacBook Proですね。30万くらいで買える範囲で一番いいスペックのを選びました。

ダストマン:現場の撮って出しはそれで耐えうるレベルでやってるということですね。

次石:そうですね。あとはSandiscのSSD エクストリームプロ使ってます。

次石さんのPCスペック
Macbook Pro 2017
プロセッサ:2.9 GHz, クアッドコア Intel Core i7
メモリ:16 GB 2133 MHz
グラフィックス:Intel HD Graphics 630 1536 MB

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ウェディングの経験を生かした新たな挑戦

次石: これからは、というかこれからも、ウェディングカメラマンとしてだけじゃなく、一映像クリエイターとして頑張っていこうと考えています。発想や勉強の仕方もそうですけど、ウェディングにこだわり過ぎず、例えばCinema4Dをウェディングで使ってみてもいいじゃないですか。

ダストマン: 確かにCGをウェディングに導入した人まだいないから、そこに入ると新しい革新が起きそうですね!

次石: ほんの少し丸やダイヤモンド、布とかが景色に入ることによってちょっと違う感じが作れるんじゃないかなって。

雨みたいな光の粒が逆再生で上がっていくところに新婦さん、とか、そういうやり過ぎないくらいのCGが入るってところから始めてみたら面白いかなと思いますね。

でもそうすると今度は音楽ももっと抽象的なかっこいい音楽とか電子音が合うんじゃないかとも思うし、ドレスももっとアーティスティックなのでもかっこいいなとか、また違ったジャンルのものが出来てくるかもしれないですよね。

ダストマン: テクノウェディングみたいな(笑)。確かに映像のアイディア先行でウェディングを設計していくっていうのもアリですね!


次石:自分のクリエイティブの引き出しをたくさん持つような感覚なので、毎日が「レベル上げ」 なんですよ、RPGみたいな感じで。

いろんな現場に行ってレベル上げして、いきなり敵が出てくるのでそれに対処する中で、自分の「成長してる感」がすごく感じられて楽しいですよ。ウェディング映像の業界も実はすごく面白いので、新しい挑戦を繰り返しながら、面白さが伝わるといいなと思います。

ダストマン: そうですね!今回は面白いお話いっぱいありがとうございました!

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