Nikonって動画機としてどうなの?
Nikonのミラーレス一眼 Z6Ⅱを1ヶ月間使ってみました。
テーマは「Nikonって動画機としてはどうなんだい?使えるのかい?」です。
地方TV業界出身の私、業務用ビデオカメラを扱っていないNikonには縁がなく、これまで触ったことすらありませんでした。短い時間でサイズを変えながらカット数を稼ぐビデオ的な撮影がどこまで出来るか。その1点に集中したレビューです。
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Z6Ⅱをキャッチアップ
2020年11月発売の本機、2度の大型ファームアップを経て発売からわずか半年あまりで潜在能力が大幅に上がっているとのこと。まずはZ6Ⅱのスペックを把握しましょう。
- センサー フルサイズ
- 画素数 2450万画素
- 収録形式 最大3840-2160 60p (60p時のみAPS-Cクロップ)
- 本体重量 705g
- 手振れ補正 センサーシフト5軸補正
- マウント Zマウント
- フレームレート 最大120p(1920-1080)
- HDMI端子 ミニ
- バッテリー 動画撮影約100分可能 ※USB給電での撮影も可能
- スロット ①CFexpress, XQD / ②SDXC
主なスペックはこんな感じです。
更にAtomos NInja VやBlackmagic Designの対応外部収録機を接続すると、
- Blackmagic RAW収録が可能
- Prores RAW収録が可能
- N-Log収録が可能
となります。
外部収録機でのBRAW収録が可能な一方、内部収録は4:2:0 8bitのみ。
価格は2021年9月現在で24万円前後、
同価格帯のミラーレス一眼の中では最も新しい機種です。
写真だけでなく動画にも強い”ハイブリッド機”という位置づけなんだとか。
# レビュアーのスペック
おいおい、あんたいったい誰なんだ?という疑問が湧く前に自己紹介をしておきます。私の主なスペックです。Naoと申します。
・ローカルのテレビ業界で20年 昨年制作会社を退職した元ディレクター。
・少人数での撮影が主。一人で撮ることもとても多かった。
・使用してきた機材はNX-5Rなど業務用ビデオカメラがほとんど。
・シネ系撮影も8年前から着手。TVCM、観光PR、企業VPなど諸々制作。
・Youtubeチャンネル「TPS Films」で映像制作のノウハウを発信中
・沖縄県在住
という感じです。
基本的には「ちゃんと撮れていれば、それでいい」という緩い人間です。
無事に撮影出来て、出演者と視聴者、お客さんが喜んでくれればそれでOK。
カッコよさや美しさよりも分かりやすさを大切にしています。
”動画で使う”ってどゆこと?
私が申し上げる”動画で使う”とは、短時間でアングルと撮影場所を変えながら、カット数を稼ぐためにバンバン撮影することです。
私は主に取材的な撮影を行ってきました。現実に存在する物体や事象、人、イベントなどが主な被写体です。ウカウカしているとイベントなんかはすぐに終わります。お店などの取材では、のんびりやっていると忙しい時間帯になってお客さんが押し寄せ、撮影が続行不能になります。
実社会を舞台にした撮影では、短い時間で沢山撮る必要があります。
取材的に使ってみた 〜沖縄空手のデル先生〜
さぁ本番です!
沖縄空手の先生にアポを取り、インタビューや稽古風景を撮影します。
Z6Ⅱのセットアップはというと、
- NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
- 5インチモニター(desview)
- ガンマイク (COMICA)
- ワイヤレスマイク(RODE)
- 三脚 (Amazonで8,000円くらい)
これだけです。
三脚は水平が維持できない代物です。パンすると傾いていきます(笑
いざ撮影開始!
ご協力頂いた信武館道場のデル・ハンビー先生はスイス出身の武道家。空手道場に住んでいます。
まずは部屋でのインタビューや雑観撮り。
ハンディ―であちこち移動しながらサイズを変えて撮ります。
1ポジションからロング、アップ、ミドルと最低3種類のカットを撮り、
被写体の動きを見ながら次のポジションに移動します。
👍ハンディでも十分いける
基本はフィックス。カメラを動かさずに画角を固定しての撮影です。
ボディ内手振れ補正をON!
手持ちでもビタッ!っと止まります。
このままカメラをパンすると手振れ補正が効いてしまい、
ガクッ!ガクッ!と画面が揺れる様に反応します。
ですのでワークをすると決めた時点で素早く手振れ補正をOFF!
手振れ補正を入れたり切ったり、、、取材ではよくある光景です。
Z6Ⅱの場合、タッチパネルから3タップくらいで
簡単にON/OFFできるので頻繁に切り替えても面倒に感じません。
いい感じです。
👍ヨリが足りない時の必殺技
撮影しながら「もうちょいアップで撮りたい」と思うことがありました。
お借りした24-70mmでは望遠側が物足りない!
もうちょっとヨリたい!
こんな時の必殺技を見つけました。
Z6ⅡはフルサイズとAPS-Cの切り替えが一瞬で出来ます。
この機能を使ってフルサイズからAPS-Cに切り替えて画角をクロップさせ、
レンズの望遠端から更に約1.5倍のズームをかけることができます。
Nikonではフルサイズを「FX」、APS-Cを「DX」と名付けています。
私の場合、レンズの横に2つ設置されたファンクションボタン(Fnボタン)に「FX ⇔DX」の切り替えを仕込んでおきました。
アップが足りない!となったらFnボタンでDXに切り替え。
70mmの画角が105mm相当まで拡大されて、思った通りのアップにできます。切り替えにかかる時間は3秒弱!速っ!
画質は少し落ちるかもしれませんが、画角がビシッと決まれば気にならないものです。
👍音レベルの調整もカンタン!
レンズ横に2つあるFnボタン。
もうひとつには「マイク感度」を仕込みました。
音声入力レベルの調整に使うメニューです。
カメラ本体のシューに付けたガンマイクで音声を録る時には、
被写体から少しでも離れると声が小さくなってしまいます。
だからといって入力レベルをオートにすると収録レベルが暴れるので、
後処理が大変です。
より良い画角にするため離れて撮りたい。同時にガンマイクで声も拾いたい。
単独の取材撮影ではよくある状況です。
そんな時にFnボタンに仕込んだ「マイク感度」を起動!
ボタンを押しながらメインコマンドダイヤルを回すと音声入力のレベルが替えられます。
この操作、2秒あれば出来ます!
メニューを開かず、撮影しながら音量を変えることができる!
セッティングの時間がない時や咄嗟に何かを撮る時、音声レベルをいつでも替えられることの恩恵を感じるはずです。
映像の品質は?
いよいよ道場での撮影。
デル先生の稽古と空手の形の実演を撮影しました。
被写体を眼で捉え、ねらいを決めてZ6Ⅱを構えると、
ファインダーを覗いた瞬間「おおおっ!」と唸りました。
頭の中でイメージした映像より、Z6Ⅱが映しているものの方がきれい!
こんなこと初めてでした。
色合い、精細さ、ボケが作る情感。
目で見た時よりも美しいんです。 なんだよこれ!
設定は内部収録で1920-1080 24p、4:2:0の8bitです。
Zレンズのおかげも。
お借りしたNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sの表現力が高いということもあると思います。f/2.8で作るボケは取材ものにはちょうどいい。
コントロールリングの位置も秀逸です。
「絞り」を設定しておけば、奥からフォーカス、ズーム、絞りの順で並びます。業務用ビデオカメラと全く同じ並びにできます。 ありがたい!
慣れるのに時間がいらないカメラ
沢山のボタンや複雑なメニュー構造など、高価なカメラには”初見殺し”の一面があります。
しかしZ6Ⅱの場合、ボタンカスタマイズの自由度が高いため、
必要な機能をボタンに設定してしまえば、初期に覚えるべきことはそれほど多くありません。
今回、撮影中によく使った機能をまとめると、
- 解像度の変更( iメニュー)
- 手振れ補正モードの変更( iメニュー)
- 録音レベル(Fn1)
- FX / DX 切り替え(Fn2)
- ISO(デフォルトのまま)
この5つを覚えるだけで何の不自由もなく撮影できる様になりました。
細かな機能や設定は時間をかけて少しずつ覚えるとして、
最低限の機能と使い方を習得する時間はとても短いと感じます。
いいとこばかりなの? 私の本音
ここまで良いところばかり書いてきました。
ねぇ、残念なところは?イマイチなところもあるんだろ?
って声もあるかと思います。
えーと、、、、
Z6Ⅱについて何か不都合を感じる部分はありませんでした。
どんな道具も買ったままの状態では使いこなせません。
自分らしい使い方を編み出してこそ手足の様に動いてくれるはずです。
多少の不都合は知恵と経験でカバーするぜ!なんて思います。
とはいえ、買う前に知っておいた方が良い事がいくつかあります。
- メーカー公式のXLRアダプターがないです
- 連続収録が29’59”までです。1回止まるので再RECが必要です。
- Zマウントは新しい規格なのでので社外レンズはまだ少ないです。
- RAW収録には外部収録機が必要です
- Log収録にも外部収録機が必要です。
という5点は事前に承知しておいた方が良いです。
結論 Nikonって動画機としてはどうなの?
Z6Ⅱをお借りして明らかにしようとしたこの疑問。
答えはアリです。動画機としてアリ。外部収録機でBRAW収録すれば簡単なVPなど商用映像にも持ち出せると思います。
趣味で映像制作をする方にはとてもお勧めできます。
8bit収録はデータ容量が軽く、保存用ストレージの消費を抑えられるメリットがあります。今回ご紹介した空手の映像で使用したのはわずか28GBです。きれいなのに容量の消費が少なくてびっくりしました。ストレージの燃費が良いのはありがたいです。
業務で映像制作をする方にもお勧めできます。
レンズやフィルター、周辺機器を考えると立ち上げには本体の3倍くらいの予算が必要かなと思います。BRAW対応により用途が広がるため、本体20万円台のカメラ機材としてはコスパも良好。 音声がアナログの3.5mm入力のみで拡張性に乏しいという点は考慮する必要があります。BRAW収録が出来るミラーレスはNikonを含め数社しか作っていません。
最後に(動画もどうぞ)
コロナ禍の影響で、外での撮影もなかなか難しい状況もあると思います。昨年11月に発売になったカメラとしてはタイミングに恵まれていないんだろうなぁ、なんて思ったりもします。しかし、使ってみて思うのは「こいつなら5年は戦える!」ということです。 動画機としてどうか?なんて偉そうなテーマを掲げましたが、1ヶ月使って思うことがあります。
扱いやすくて画質も素晴らしくBRAW収録もできる。
これを動画以外の何に使うのか!
なんて思いますです。
最後にZ6Ⅱで撮影したデル先生のショートムービーを収録したレビュー動画を載せておきます。後半には沖縄で撮影した日常の風景もございます。ぜひご覧下さいませ!
高価なカメラとレンズをお貸し下さったVookさん、Nikonさんに心より感謝致します。
最後までご覧いただきありがとうございました。
皆様よいカメラライフを。
TPS Films Nao
TPS_Films@TPS_Films
映像制作会社で約20年勤務し独立したTV出身の映像ディレクターです。 企画構成から撮影・編集・ナレーションなど 多岐にわたって携わって参りましたので、 そのノウハウをシェアする動画を Youtube「TPS Films」というチャンネルで公開しておりま...
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