動画編集、カラーコレクション、VFX、モーショングラフィックス、オーディオ編集といった、ポスト・プロダクション作業を1つのソフトウェアに融合したBlackmagic Design社のDaVinci Resolve。2021年に行われたバージョン17へのアップグレードで数々の新機能が追加され、ますますパワーアップしています。
名前は聞いたことがあるけれど使ったことがないという方も、すでにガンガン使っているという方も、やはりソフトとPCの相性は気になるところ。
- どれだけのスペックがあれば、DaVinci Resolveで快適に作業できるのか?
- ソフトをフル活用するために、ハード面で押さえておくべきポイントは?
- WindowsでDaVinci Resolveを使うことのメリットはあるのか?
こうした疑問を一挙に解決するべく、DaVinci Resolveを提供しているBlackmagic Design社(以下BMD)にお話を伺いました。DaVinci ResolveはWindows、Mac、LinuxのいずれのOSにも対応していますが、今回はWindowsにフォーカスし、DaVinci Resolve を使いこなす上でおすすめのPC環境について、詳しく教えていただきました!
また、快適にDaVinci Resolveで動画編集できるパソコンを、厳選したメーカーからスペックのレベルごとに4つ紹介します!
PCスペックはここをチェック!
―早速ですが、DaVinci Resolve 17を使う上で、Windowsの推奨バージョンはありますか?
BMD:基本的にOSは、常にその時点での最新版をサポートしており、2021年9月現在、Windows 10をお使いでしたら問題なくご利用いただけますね。Windows 8や7など、前のバージョンはサポート外となります。ソフトウェアのダウンロードは弊社のサポートページから行えます。
製品シリーズでDaVinci Resolve/Fusionソフトウェアを選択していただき、「最新のダウンロード情報」の項目にソフトウェア・アップデート情報が記載されているので「詳細」部分を押してください。アップデート項目のいちばん下に推奨OSなどの記載があるので、そちらでもご確認いただけます。
―RAM、CPU、GPUの目安があれば、教えてください!
BMD:WindowsのRAMは16GBが1つの目安ですが、Fusion(※)を使う場合には32GBのシステムメモリーを推奨しています。なぜかと言うと、スムーズに再生するためにシステムメモリーにある程度キャッシュを取っていて、キャッシュできる長さはシステムメモリーがあればあるほど伸びるからです。
CPUは、CPUのスピードとコア数が選ぶポイントですね。
GPUに関しては、2GB以上のVRAMがあるものを推奨しています。
※Fusion:DaVinci Resolveのページの1つ。シネマライクなVFXや放送品質のモーショングラフィックスを、すべてDaVinci Resolve内で作成できます。
―RAM、CPU、GPUの役割を教えてください
BMD:
【RAM】
まずシステムメモリー、すなわちRAMは、基本的にアプリ自体を動かすためのものです。ですから16GB推奨とはいえ、8GBのシステムメモリーでもDaVinci Resolveは動きます。
ただ、作業をしている裏でYouTubeやPDF見たりいろんなことをしているとシステムメモリーを使うことになるので、それを考慮して推奨値が設定されています。
Fusion以外のページでは、特に何かのエフェクトをかけたときにシステムメモリーをどんどん消費することはありません。そのため、メモリーをたくさん積んでもDaVinci Resolveを使う上でのメリットが特にないという意味で、優先度はGPU、CPUと比べて低くなります。16GBより余裕を持つとしても、32GBあれば十分です。
【CPU】
CPUは、デコードとエンコードをしています。ファイルについて説明すると、H.264やProResなどのコーデック(ファイルの圧縮の種類)と、MOVやMP4といったコンテナ(圧縮ファイルを格納する箱)があります。すごく大きな紙を小さく折りたたんで箱に入れたもの、例えばカメラなどで「MP4のH.264」にしたものがファイルですね。
DaVinci Resolveで作業するときはファイルをいったんすべて非圧縮という形で展開します。折りたたまれた紙をコンテナから出して、全部広げて元のすごく大きな画像に展開する作業がデコードで、逆に広がった状態の紙をまた折りたたんでコンテナに入れ、任意のファイル形式に圧縮する作業がエンコードです。
コーデックによっては、圧縮が強くて展開するのが大変なこともあります。デコードのパワーが足りないと動画がカクカクする原因になりますが、コア数を増やすとリアルタイムで流れます。
また、書き出しの際にエンコードをしているので、コア数が多いほどレンダリング時間が短くなり、早く書き出すことができます。そういったところでCPUの機能が活きてくるということですね。
―書き出し速度は、CPUに比重が置かれているのですね。
BMD:はい。CPUも大切ですが、GPUも大切で、両方優秀であることが大切です。
【GPU】
GPUは例外はありますが、ほぼすべてのエフェクトを扱っています。編集ページでのエフェクトに加えて、カラーのページでグレーディングをしたり、ノイズ・リダクションをかけたりするのも、GPUでの処理ですね。Fusionも最近はGPUベースのものが増えてきています。Fairlightは音声なのでそれほど負荷が大きいわけではなく、CPUベースのものがまだ多いです。
CPUで非圧縮に広げたものは、GPUのVRAM、つまりオンボードのメモリーに乗ります。VRAMを机だと思ってください。CPUがそこに広げたものをどんどん乗せてくれるんですね。
その上に、フィルムグレインやノイズ・リダクション、さまざまなエフェクトをさらに乗せていき、全部の処理をGPUが行います。VRAMが大きいと早くレンダリングができたり、作業がサクサク進んだりするのは、作業机が広いということです。
机で作業するというと、システムメモリーを使うイメージが強いかと思いますが、DaVinci Resolveは10年以上前からずっと、グラフィック・ボードのVRAMで作業しましょうという設計でできています。
デリバーページで書き出しをするときは、CPUがファイルを広げて机に乗せるところから、GPUが机の上でエフェクトをかける処理、そして再びCPUが非圧縮の状態を小さくしてファイルにするという、最初から最後まで一連の作業が行われています。
なので、CPUの能力を上げると速度は理論的に速くなるはずですが、途中にGPUの処理を挟むので、その処理速度も最終的なレンダリング時間に影響します。
CPUとGPUのどちらかが突出して良くても駄目で、すごく速いレンダリング速度を実現するには、両方が優秀である必要がありますね。Windowsだとタスク・マネージャーのパフォーマンス・ページでCPUやGPUの使用状況をグラフで確認できます。どこが障害になっているのか分かるので、マシンの選定に役立つと思いますよ。
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作業に最適なVRAM選びがカギ VRAMの松竹梅
―GPUとCPUの重要さがよく分かりました!DaVinci Resolveを使う方のニーズはそれぞれだと思うのですが、VRAMの大きさで松竹梅を作るとすると、いちばん小さな梅の机で2~4GBぐらいのイメージでしょうか?
BMD:そうですね。梅と言うと物足りないように聞こえるかもしれませんが、HDですと4GBあればまず十分ですね。YouTubeもHDでの作業が多いようなので、梅のPCで支障はないと思います。
―YouTuberやVlogger、あとHD中心で作業する方に梅のPCは良さそうですね。
BMD:そう思いますね。次に4Kの作業ですと、VRAMが8GBくらいのPCが必要なので、松竹梅で言うと1つ上の竹ランクになります。HDと4Kではサイズが倍なので、それだけ大きな机を使います。たまにDaVinci ResolveでGPUエラーのメッセージが表示されることありますが、作業に対してVRAMが小さくて、机に置くことができない状況になってしまうわけです。
―ノイズ・リダクションをかけたときに、エラーが画面いっぱいに出たことがあるので、なるほどと思いました。
BMD:4Kで編集する限り、8GBあればGPUメモリーのエラーは本来出ないはずですが、ノイズ・リダクションはDaVinci Resolveの中で最もGPUの使用率を上げるものの1つで本当にヘビーなんですね。そこでエラーが出るのはありうるかもしれません。
―素材が4Kの60p、タイムライン解像度はフルHDでノイズ・リダクションをかけるとすると、どれくらいのVRAMのPCがおすすめですか?
BMD:基本的には8GBですね。タイムライン解像度を落とすことで、ある程度、必要なパワーは緩和されるはずです。ざっくり目安を言うと、次のようになります。
BMD:素材が6Kであっても、タイムライン解像度が4Kであれば8GBで大丈夫でしょう。最新のバージョン17.3ではGPUエラーが減っているという報告がありまして、毎回改善しつつありますね。
―VRAMが8GBの竹クラスのPCが必要なのは、お仕事ベースでDaVinci Resolveを使われている方になりますかね。
BMD:そうですね。4Kでノイズ・リダクションをかけたり、カラーグレーディングをしたりしながら作業したいという方は、8GBですね。
ただ、動画編集と言えばクリエーターの方はもちろんですが、いわゆるクリエーター以外でも、社内で作品を作ったりビデオ会議の収録データを編集したりといったことが一般的な作業の1つになりつつあるんですね。
実際に、DaVinci Resolveの無償セミナーで取っているアンケート結果を見ても、今はカラーページに比べてカットページやエディットページのユーザーがずっと多いです。
DaVinci Resolveを初めて使う方やエディットをメインで作業される方は今後も増えてくると思うので、梅クラスのマシンから入って、「やっぱり4Kを編集したいな」とか、「もう少しキャッシュを使わずにサクサク使いたいな」という方は、そこから竹にステップアップしていくといいのかなという気がしますね。
この松竹梅は、あくまで目安としてとらえてもらえればと思います。
―ちなみに、いちばん上の松のPCだと、VRAMは16GBぐらいでしょうか?
BMD:どこを松とするかですが、VRAMの上位はキリがないですね。社内の検証ですと、8Kの場合には16GBだとギリギリなので、24GB、32GBぐらいだとかなり安定して使えるというところです。例えばGeForce RTX 3090は24GBのVRAMを積んでいて、そこに10コア以上ぐらいのCPUを合わせてもらうと、松レベルになると思います。
―このクラスのPCを使うとなると、どういうジャンルの方が該当しそうでしょうか?
BMD:放送局や8Kを扱うプロダクションですかね。松クラスのPCはやはり高価で、実際に使う人はあまり多くないかもしれませんが、GeForce RTX 3090は、松クラスの中ではリーズナブルだと思います。あと素材が12Kの場合も、結局のところは8Kのタイムラインに置いて編集することがほとんどなので、同じように考えていただいて大丈夫です。
DaVinci Resolveのおすすめ松竹梅PC4選
ここで、2021年9月現在、Windowsに特化したオススメのマシンを、松竹梅のランクに分けてご紹介します!PC選びの参考にしてみてください。
梅|YouTubeやHD編集におすすめのBTOパソコン
ハイパフォーマンス、高コスパ!【FRONTIER】FRGKB560/A
同じスペックのBTOのデスクトップパソコンの中でコストパフォーマンスが高いと言われている1台。
▼FRGKB560/Aのスペック
・標準構成価格:¥159,800(税込)
▼おすすめ構成
・CPU:インテル® Core™ i7-11700F プロセッサー
・メモリー(RAM):16GB (8GB x2)
・GPU(VRAM):6GB
・グラフィック・ボード:GeForce GTX™ 1660 Ti
➤製品ページ:https://www.frontier-direct.jp/direct/g/g109639/
竹|4K編集、ノイズ・リダクション入れての編集ならこの2つ
RAW現像や高画質動画編集も快適なクリエーター向けパソコン|【Mouse】DAIV Z7
インテル® Core™ i7-11700 プロセッサーとGeForce RTX™ 3060を搭載しRAW現像や映像編集など幅広く使えるパソコンを探している方におすすめです。
▼DAIV Z7のスペック
・標準構成価格:¥241,780~(税込)
▼おすすめ構成
・CPU:インテル® Core™ i7-11700 プロセッサー
・メモリー(RAM):32GB (16GB×2 / デュアルチャネル)
・GPU(VRAM):12GB
・グラフィック・ボード:GeForce RTX™ 3060
➤製品ページ:https://www.mouse-jp.co.jp/store/g/gdaiv-z7/
高い解像度の画像や映像の素早い処理を実現|【SENSE∞】SENSE-F059-119-WAX
第11世代インテル® Core™ i9-11900プロセッサーとGeForce RTX™ 3080 Tiを搭載した動画編集、CG編集など幅広く活躍するクリエイターパソコンです。
▼SENSE-F059-119-WAXのスペック
・標準構成価格:¥351,978~(税込)
▼おすすめ構成
・CPU:インテル® Core™ i9-11900 プロセッサー
・メモリー(RAM):16GB(8GB×2)
・GPU(VRAM):12GB
・グラフィック・ボード:GeForce RTX™ 3080 Ti
➤製品ページ:https://www.pc-koubou.jp/products/detail.php?product_id=827736
松|8K編集ならワークステーション並みの実力が期待できる
ワークステーションに匹敵するパフォーマンスを持つインテル® Core™ プロセッサー Xシリーズ搭載|【EPSON】Endeavor Pro9100
インテル® Core™ プロセッサーの最上位モデルであるXシリーズを搭載し、最大18コア36スレッドでの驚異的なマルチタスクを実現。CG制作のレンダリングなどの高負荷な処理を必要とする業務において、時間短縮による効率化が行えるモデル。
▼Endeavor Pro9100のスペック
・標準構成価格:306,900円(税込)~
▼おすすめ構成
・CPU:インテル® Core™ i9-10980XE プロセッサー・エクストリーム・エディション
・メモリー(RAM):128GB
・GPU(VRAM):24GB
・グラフィック・ボード:GeForce RTX™ 3090
➤製品ページ:https://shop.epson.jp/pc/desktop/pro9100/
DaVinci Resolve 17をWindowsで使うメリット
―DaVinci Resolveとしては、OSの種類はWindowsを推奨しているのですか?
BMD:特定のOSをベースで開発しているということはありません。過去10年ぐらいを見ても、実はWindowsとMacでどちらのほうが使いやすいかには、結構変遷があるんですね。ちなみに、これまでに行ってきたセミナーでのアンケートでは、WindowsとMacのユーザーが半々ぐらいという印象です。
―Windows PCでDaVinci Resolve を使うメリットは、どういうところにありますか?
BMD:Windowsだと手に入れやすい価格で8GBや12GBのVRAMのマシンを作ってもらうことができて、作業も楽にできると思いますね。
―Windowsだと増設していくスタイルがスタンダードと言えそうですね。
BMD:はい。無限に選択肢があるので、そこもWindowsのメリットですね。アクティビティー・モニターでGPUが頭打ちしていたり、GPUメモリーエラーが出たりするのであれば、マザーボードとの兼ね合いを見つつ、適したGPUに差し替えてもらうことである程度うまくいくと思います。
まとめ DaVinci Resolve ユーザーがWindows PCを選ぶときのポイント
―最後に、DaVinci Resolveを使っている人やこれから使ってみたい人が、PCを選ぶにあたって押さえておくべきポイントはありますか?
BMD:用途にもよりますね。DaVinci Resolveは今や1つの巨大なソフトウェアで、FusionもあればFairlightもあり、カラーもあればエディットもあり、すべてが統合されているので、万人の方におすすめのPCを紹介するのは難しいというのが正直なところです。逆に言うと、DaVinci Resolveに合わせて値の張るキッティング・マシンを用意していない代わりに、各ユーザーの自由が利く部分は多いですね。
一部繰り返しになりますが、WindowsのPCでDaVinci Resolveを使う場合に、共通して言えることと避けたほうがいいことがいくつかあります。
【GPU】
・GPUはNVIDIAがおすすめ。
→NVIDIAのプラットフォームCUDAにDaVinci Resolveが最適化されている。
・NVIDIAの中ではGeForceのコスパが高い。
→あくまでVRAMが重要。ハイエンド向けのQuadroより、GeForceの新しいモデルのほうが良いスペックで作業できる。
・GPUドライバーは最新版にする。
→頻繫にアップデートが行われているので、ウェブサイトを要チェック。
【CPU】
・CPUのスピードは3GHz以上推奨。
・インテルのCPUでは、インテル® Core™ i7/i9 プロセッサーのコスパが高く優秀。
→迷ったらインテル® Core™ プロセッサーのコア数を重視したモデルのほうがおすすめ。
【RAM】
・メモリーは16GB以上。
→16GB、もしくは余裕を見ても32GB程度あれば十分だが、
映像編集以外にも作業をするならそれ以上があると安心。
【ストレージ】
・ストレージはHDDよりSSDを使う。
→内蔵でも外付けでもSSDがおすすめ。
―本日はDaVinci Resolve 17におすすめのWindows PCについて、たくさん教えてくださりありがとうございました!
BMD:ありがとうございました。DaVinci Resolveのような大きなソフトをすべて理解することは難しいので、こうして情報共有することが大切だと思っています。例えば、DaVinci Resolveを数カ月使って、ある程度いろんなことができるようになって専用のマシンを買おうというときに、今日のお話を参考にしてもらえると嬉しいです。
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Vook編集部@Vook_editor
「映像クリエイターを無敵にする。」をビジョンとするVookの公式アカウント。映像制作のナレッジやTips、さまざまなクリエイターへのインタビューなどを発信しています。
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