アトリエブラウンの遠藤と申します。フォトグラメトリで無料3D素材を作っています。
以前は建築CGのフリーランスを長年やっておりました。副業で人物切り抜き素材を販売していくうちに、3D人物のニーズが出てきました。それをフォトグラメトリで作るらしいと知ったのが2016年です。それから情報を集め始め、試行錯誤し、4年後ようやく商品化へ成功したわけです。現在は人物だけではなく色々なものを3D化させています。
今回は映像分野でも3Dモデルを使っていただきたいと思い、紹介させていただきます。
フォトグラメトリとは
アングルを変えて撮った写真数十枚から3D化する手法です。
人物のような少しでも動いてしまう被写体は、100台前後のカメラで同時撮影します。彫刻や食べ物のように動かないものは、自分で動いて多アングルから撮影、または回転台に乗せて撮影することができます。街中や風景をフォトグラメトリしている場合はドローンを使う場合が多いと思います。
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寿司3Dの作り方
お寿司を回転台に乗せて一台のカメラで撮ります。360度回転させ、段階的に高さを変えて、合計100枚撮影しました。
RealityCaptureというソフトを使い3D化させます。手順は「写真のアライメント」→「メッシュ作成」→「テクスチャ」の順番に計算させます。全部で15分くらいです。
3D化しても、欠けやボロボロな部分がありますので、スカルプトソフトのZBrushで形を整えます。そしてリトポロジーし、UV展開をします。
Cinema4Dで仕上げる
位置やサイズを設定し、Cinema4Dの3DペイントとPhotoshopを連携させてテクスチャの修正を行います。
テクスチャはPhotoshopファイルを読み込みます。Cinema4Dのレイアウトを3D Paintに変更してブラシでペイントします。Photoshopのレイヤーが反映されているので、3Dで確認しなから、行ったり来たりの作業をします。
大まかな部分は先にPhotoshopで修正してしまいますが、どうしても2Dでは修正しづらい部分は3Dでのペイントが有効です。
色の調整やテクスチャがない部分(寿司の裏など)を修正して出来上がりです。
美味しそうな3DCGになるように気をつけたこと
* テクスチャの色味が不味そうだったらPhotoshopで調整する
* ラフネスマップを作って、照りやツヤを出してメリハリ効かせる
* 脇役素材を配置し、美味しそうになる構図を探す
フォトグラメトリを成功させるポイント
最初につまずくのは、写真をたくさん撮ったのに、一部がアライメント(写真を認識して配置)されないということです。原因は他の写真と重なり合う部分が少なかったり、ピントが合っていなかった等、原因はいろいろあります。そのコツがわかると、面白くなってきます。しかし私たちの場合、そこからまたいくつかの山を越える必要がありました。
フォトグラメトリ3Dモデル作成には3つの山があります。
1. 被写界深度が深いきれいな写真を撮る
1. リトポロジーとUV展開をする
1. テクスチャの修正をする
この三つを越えると使いやすい3Dモデルになります。(自分だけで楽しむのなら一つ目だけでOK)
コケ玉に始まり、パン、寿司、秋テーマとフリー3Dモデルを作ってきましたが、寿司3Dは非常に反響が大きかったです。それはみんなの大好きな「お寿司」ということでインパクトがあったということでしょう。その後の秋テーマは結構頑張ったのですが、それほどダウンロード数がありません。可愛らしいイメージであったためか、ニーズがそれほどでもなく、ピンとこなかったかな?と分析しています。
フリー3Dモデルの使用例
3Dモデルは様々な分野で利用が可能です。ゲーム、VR、AR、映像、建築、広告、イラストなどアイデア次第では面白い使い方ができそうです。使っていただいた例をいくつか紹介します。
Unityで使うことができます。寿司のエフェクトをいくつか紹介していますが、サイバーイメージな青い光が這う寿司は、なかなかインパクトあります。
物理演算を使うとさらにリアルな映像が出来上がります。寿司に弾力の数値を設定をすると、衝撃に対して、それらしい動きになります。
https://t.co/MX35aZ88JR pic.twitter.com/7jIVxgjFgV
— 水マヨ (@mizzmayo) September 28, 2021
次にCinema4Dで制作するクリエイターさんによるモーショングラフィックスの紹介です。秋テーマの3Dモデルを使ってライティングアニメーションを表現しています。
#Redshift の練習 pic.twitter.com/e5rhcsyNTi
— KAKU (@kakumisaki) November 24, 2021
3DCG素材配布の可能性とその広がり
ゼロから作るモデリング方法が今までの主流でしたが、フォトグラメトリの役割として、従来のやり方が苦手なものに特化したら良いと思います。例えば、新品の工業製品はフォトグラメトリで作るより、従来のモデリングの方がきれいにできます。逆に、食べ物、ネイチャー系、ごちゃごちゃしたものはフォトグラメトリの方が得意です。
これからの取り組みとして、まだまだ無料の3Dモデルを増やしていく予定です。そうすることによって、チーム全体のスキルアップにもつながり、フォトグラメトリ素材の認知度が上がると思います。これからは季節のテーマを少しずつ出していこうと考えております。何より、使っていただいた作品を見たときのうれしさは格別だと、スタッフ一同感じております。
最近ではフォト3Dスキャンのアプリも次々登場し、当たり前のように全てのものが3D化できる時代に突入しています。映像分野では実写ではなくフォトグラメトリして3Dモデルを使う手もあるのだ、と考えるだけで作品の幅が広がることでしょう。
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アトリエブラウン@brown
3Dクリエイターチームの代表。 フォトグラメトリによる3Dモデル素材を作っています。写真を複数枚撮って、それをソフトで計算させる、3Dスキャンのようなものです。 寿司の無料3Dモデルは人気です。🍣 3Dモデルが映像分野でも使われたらうれしいです。 ま...
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