Blenderでお絵描き実験!手書きアニメーターがグリースペンシルに出会って見つけた5つのこと

2021.12.11 (最終更新日: 2022.06.06)

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↑突然ですが私、こういうの作る映像クリエーターです。
この映像は、blenderという3Dソフトの中のグリースペンシルというお絵かき機能を利用して作った作例です。

ということで、今回は3Dソフトなのに2Dお絵かきソフトより面白い絵が描けるBlenderというフリーソフトで「あんな事こんな事出来るよ記事」を書いてみたいと思います。

まずは書いてる人の紹介から

はじめまして、こんにちわ。名前は「りょーちも」と申します。元々デジタルが好きで、2000年代初めにHP(ホームページ)などを作って個人で絵を描いていたイラストレーターです。引きこもりとも言います。

その後、縁があってアニメーションの業界でアニメーターとなり、キャラクターデザインや演出、監督など色々なお仕事をしてきました。2Dのアニメーションから3Dのアニメーションのお仕事に移り、3Dのアニメーションを手掛ける機会もあり、幅広くお仕事してきた人間です。

仕事のアニメ作りはもちろん、最近は個人でも好きに絵を描いたりアニメを作ったりして行こうと思って行動しています。

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2D(絵)と3D(空間)を一緒に考えるようになったワケ

1枚絵のイラストで完成ではない2Dアニメーションの世界で仕事を続けていく中で、ずっと感じていることがありました。

ここにいるこの子を、ずっと描いていたい

カメラの外やストーリーの外、視聴者が見ていない気の抜けた時、この子はどんなことをしてるんだろう。そのoff感が見たくて、その子をドキュメンタリーの様に追いたい。そういう欲求が日に日に増していくのです。

その為に必要な表現は、「上手な画力で、どんなアングルでもしっかり描く」という、安定した技術力でずっと描き続けることが答えでした。描くのは楽しくても、キャラクターが存在し続けるのがこんなに大変なのにはちょっと問題がある気がして、もっと気楽に「そこにその子がいる」を存続させる為にはどうしたらいいのかと考えて3Dのアニメーションのお仕事に移動しました。

結果から言うと大正解。キャラクターは放っておいてもその場所に居続けます。もちろんカメラをクルクル回しても、そこにその子は居続けます。

しかし喜んだのも束の間、今度は別の問題が上がってきます。

3Dアニメーションのスタジオでの問題は「キャラクター作成のコスト」です。2Dアニメーションでは、設定を描けばそれを参考に各アニメーターさんが描き、動画、仕上げの工程を経て色のついたキャラクターが誕生します。

同じことを3Dでやろうと思うと、キャラクターの設定を描いたらそれを元に3Dでモデリングして見た目を作り、動かすために骨を入れて全方向で破綻が無いかをチェックして、そのモデルをアニメーターに動かしてもらいます。

精度は高いけど、コストも高い

あれあれあれれ、これって2Dの時の「安定した技術力でずっと描き続ける」と変わらないのでは、と気が付きました。

要は、気楽に作れる構造が、2Dアニメプロダクションにも3Dアニメプロダクションにも無いんだ、と。

それなら混ぜよう!

それなら「どっちも出来る人になって混ぜてしまおう」「臨機応変に対応して、好きにアニメーション作っちゃおう!」と、なんだか楽しくなってまいりました。ハイクオリティ、ハイカロリーからの脱却。自分のサイズで楽しく作る!

まずは方法を探す!当時話題になっていた技術はこれ。



引用:Paperman and the Future of 2D Animation (YouTube)

3Dのモデルにピタッとくっついて、その場で描いた線が一緒に動くのです。

これですコレ。空間にそのまま絵を描きたいんです

「これをやれるようになりたい」と夢が膨らんでまいりました。

もちろん、以前から3D映像に2Dアニメーションを融合する方法はありました。有名なのは、ディズニーのターザンの枝を進むシーンです。



引用:Tarzan Animation Tests (YouTube)

4:32秒付近からの映像を御覧ください。

3D側でカメラを決めて、その映像を印刷して、その上から紙を重ねて作画を追加します。アニメの仕事で何度もやりました。何度もやりました。

いや、しんどい。後戻りできない。
そういうのを求めてたわけじゃない。
私はとにかく空間に描きたいんだ

そして、Blenderと出会います。

Blender実験開始!

Mayaなど高価な3Dソフトはスタジオに入ってないと使えないという問題から、初めは自宅で使える3Dソフト(FBXを読み込めて書き出せる)が欲しいというシンプルな理由で利用開始しました。

が、使ってすぐにやばい機能を発見!!

Blenderが備えている、他の3Dソフトに無い特殊な機能「グリースペンシル」。そう、空間の任意の場所に絵が描ける機能です。

おいおいおいおい、それってアレじゃないですか、私の欲しがってたヤツじゃないですか。

となれば、もう、実験開始あるのみですよ。

実験①「空間にお絵かきする」
3Dのステージの3Dの空間に直接お絵かき実験。

↑ペーパーマンのように、3Dモデルをガイドに上から加筆していく方法です。ターザンの方法とは違って描いた後でもカメラ位置を修正出来ますし、何と走る速度やタイミングも後から変更できてしまいます。動画中に出てくる簡易モデルの位置を利用して、3Dカーソルで座標を決めてそこに加筆する方法で描いています。

あっさりとやってみたかったことに辿りつてしまい困惑。じゃあこれが出来るのなら、もっと他にも出来ることがありそう!

実験②「お絵かきから空間を作る」
続いては、2Dの絵から3D空間を作っちゃう実験。

↑グリースペンシルでアニメーションを作る時にお世話になるであろう立体の背景の作り方。何となくパースを気にしながら絵を描き、その絵からパースを吸い出して同じ位置にカメラを配置。ついでにカメラ位置からテクスチャを貼り付けてしまえば、一枚絵から3Dステージが作れちゃう方法。結構実用的です。

この方法なら、レイアウトと呼ばれる絵があれば割と簡単に3Dのステージが作れます。背景の絵の作り方としては、絵をなるべく多くレイヤーで分けておいて、レイヤーで隠れる所まで広めに描くだけで簡易ながら3Dステージを作れるという方法です。他の人が描いた絵から画角やカメラの配置場所なども吸い出せるので、画面を作るのが上手い人の設計をリバースエンジニアリング出来てしまうという特典付きです。

実験③「もはやカオス、現実空間にお絵かきする」
自分で撮ったカーペットの動画を元に絵を作る実験。

↑これはモーショントラッキングの技術で、特撮など実写の映像に3Dの素材をマッチングさせる手法です。よくハリウッドや特撮映像で使われている技術ですが、なんと趣味でハリウッドが出来てしまう時代到来です。

この技の派生系で、モーショントラッキング・トラッキングキャンセラー法(自論)があります。この方法は、モーショントラッキングを掛けた後に、新たに違うカメラ(カメラワーク)を付加する方法です。モーショントラッキング後は動画映像が3D空間と同期しているので、その中に新しいカメラを設置すれば違うカメラワークも作れるという内容です。

実験④「360度の空間にお絵かきする」
こちらは全方位にお絵かきしたものを360度レンダリングしてしまう実験。

↑この動画はぜひ携帯やVRゴーグルで見てほしいのです。自分の立っている向きや角度で、見える場所を変えられる方法。「あなたがカメラマンになる」表現です。グリースペンシルのメリットを活かした方法で、360度アニメーションを可能にします。

3Dの球体オブジェクトを置いて真ん中にカメラを設置。そこから球体の内側メッシュにグリースペンシルで絵を描いて行く方法です。

こんな感じで球体に作画しています。

実験⑤「アクションシーンのお絵かきをする」

↑女の子が壁を走るアニメーション。実験①の拡張版実です。3Dアニメーションのプリプロ段階で行うステージングという設計方法を使った映像試作

まず場所を設計し→その空間内でキャラクターが動くとしたらどう動くかをシュミレーションし→その導線をどこから撮るかを動きに合わせて設計する撮影方法です。これは実写映像のアプローチに近い方法で、この女の子はカメラ(各カット)の都合に関係なく、一貫した軌道を通って運動しています。「カットでの整合性さえ合っていれば、実際がどうだろうが関係ない」という映像にならないための大事な設計になります。

実験をしてみて、空間に絵が描けるということが、こんなに色々な表現に繋がるんだと気づきました。面白い。変な実験は今後もしていく予定です。面白いことを見つけたら、どんどんシェアしていきたいと思います。

グリースペンシルの描き心地について

最後に、大事な大事な描き心地についても少し説明させてもらいます。

PhotoshopやCLIP STUDIO PAINTなどのお絵かきツールとの比較視点でBlenderのグリースペンシルを見ると、少々弱いです。選択範囲ツールが無い、グラデーションしずらい、バケツツールが弱いなど、多々あります。これは、ベクター・ラスターという画像の処理方法から来る仕様の差が原因になっています。

基本的なお絵かきツールは「ラスター画像処理」で、ピクセル単位で描きます。メリットは、描き重ねが得意で厚塗りや絵画、写真の様なものを繊細に扱えること。デメリットは、解像度に依存することや、後からの修正や変更で元には戻れない変化をおこしてしまうこと。解像度を下げてから解像度を上げると絵が滲んだり、描いた絵にブラシを追記すると色が混じり分離出来なくなるなどです。

BlenderやIllustrator、Animeteなどパスを使った描画方法は「ベクター画像処理」と言います。ベクターは、頂点ポイントを繋いで色を配置する方法で絵を描きます。これはストローク毎に情報が画像に残る方法で、画面にある色や絵は全て線と面という情報で表現されます。

メリットは、解像度に依存しないこと、後からいくら修正しても画像が劣化しないこと。そして3D空間にマッチングして、モデリングと同様に空間を利用したお絵かきが出来ることです。デメリットは、描き重ねると処理が重くなること、写真加工的な色が多いのが苦手なこと。色同士が混じり合う様な表現などが苦手とされています。

これが一般的な表現の差を生む違いなのですが、そんな中Blenderが他のベクターソフトと異質ですごい所は「ベクター方式なのにラスター的な絵が描ける」という所です。

本来ベクター系ドローイングのソフトが苦手なのは、筆圧によって濃い・薄いを描きわけることです。この処理が出来るベクターソフトはかなり少ない。擬似的にストロークの開始から終わりの間で徐々に透明になるなどの処理を付けて模倣したりは出来ますが、ラスター系のソフトの様に違和感無く描けるようにするのはやや難しいようです。

この壁を超えてベクター・ラスターどちらの要素にも対応していこうとしているのがBlenderグリースペンシルです。

ここからは、そんなグリースペンシルを使ってのお絵かきの例を紹介したいと思います。


↑グリースペンシルで描いた陰影混ざった絵です。これは、ブラシのストロークにテクスチャーを使ってノイズを出して描いています。


↑厚塗りの代わりに、塗りの面を多数重ねてカットアウト的な厚塗りにしてみた絵です。色のグラデーションは、グリースペンシルをボカして加算やオーバーレイで処理したものです。

3Dモデルも利用してモデルにテクスチャーを貼ってしまえば、テクスチャはラスター絵として、グリースペンシルはベクター絵として、好きに混ぜる事も出来ます。


↑鉛筆風の線でアニメーションが描ける+アニメーションを支援する機能が多数入っているので、他のアニメーション制作ソフト同様に簡単にアニメーションが作れます。その上、実はアニメーションの業界で問題になっている今後の4K対応作画にも問題なくシフト出来てしまうというメリットまであります。



↑レイヤー毎に動かせるので、1枚絵でも動きのある絵にすることもできます。絵を描いてから後付で素材を配置したり動かしたりと、デコレーションすることも簡単にできます。


↑3Dモデルの輪郭線もグリースペンシルで自動で出せるので、3Dモデルでのアニメーションに合わせてグリースペンシルでお絵かきを足していくことも簡単にできます。(モデルの輪郭に沿って輪郭線を描くのは、実はちょっと大変なのです。写経的ストレス)

とにかく、表現方法に対して大雑把で窓口が広いのがBlennderの特徴です。私はいずれBlenderはインフラと化すと思っています。(jpg、gif、psd、の様なメジャーなファイルということ)無料であることもすごいのですが、皆で開発し続けているソフトという、何だかアットホームなソフトなのが大好きです。

こんな色んな垣根をブレンドしていく、まさにBlender。

ぜひ、興味をもった方は触ってみて欲しいです。見た目はやや複雑ですが、作りたいものを明確に持っているととても使いやすいです。

苦手気分にならない為に、単に触って描くというのを繰り返すのも良いかと思います。線画だけで描いてみたり、ちょっとアニメーション作ってみたり。

今回はグリースペンシルの可能性について紹介させて頂きました。
それぞれの詳細なやり方というよりも、自分ならこういう目的で使いたい!と思う参考になればと思っています。

未だにblenderは進化の真っ最中、グリースペンシルもバージョンと共にどんどん進化しています。今出来ないことはいずれ出来てしまうかもしれません。進化が楽しみなソフトです。

やや偏りのある記事を、最後まで読んでくれてありがとうございました。感謝しています。


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りょーちも@

アニメーションのお仕事をしているのです。 アニメーター、演出、監督など。 最近はモデリング、3Dアバターなども作ってVRで遊んでいるひょんな人です。 主にツイッターにて情報を出しています。 https://twitter.com/ryo_timo

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