はじめに
はじめまして。
Motionist(@motionist_ae)です。
東京で映像と建築とデザインをやっています。
このようなメディアで映像についての記事を書くのは初めてなので、きっとほとんどの方が「誰??」となっているかと思います・・・
が、いつもSNSの投稿を見ていただいている方は本当にありがとうございます。創作のモチベーションになっています。
今回は普段あまり発信していない自分の思考を交えながら、自分が追求している表現や3DCGの面白さを伝えられたら良いなと思っています。
(読んでくださった方に何か一つでもヒントがありますように・・・)
まずは、簡単に自己紹介をさせてください。
Motionist(モーショニスト)はこんな人▼
東京の映像作家/建築家/デザイナー。一級建築士。国内大手設計事務所にて建築及びインテリアの設計デザインに従事。国内、海外での実績・受賞歴・メディア掲載多数。独立後は建築やインテリアのみならず、映像やグラフィックなどデザインの領域を拡大。現在は3DCGにおけるフォトリアルでアンリアルな表現を追求する映像作家としても活動中。
なんだか大層なプロフィールですが、簡単に言ってしまえば建築デザインを専門職としてやってきたデザイナーが独立を機に建築以外の分野にも手を広げてみたというだけのことで、その手を広げた分野が3DCGやモーショングラフィックス等の映像制作でした。
現在、映像作家を自称していますが、仕事の傍らで映像の練習や研究をしているだけの人間なので温かい目で見ていただけると幸いです。(映像の仕事も実は色々やってたりします)
3DCGを始めたきっかけ
自分が3DCGやモーショングラフィックスなどの映像制作を始めたきっかけは色々あるのですが、
- 建築というよりデザイン全般が好き(建築以外にも興味があった)
- 独立後は仕事も時間も全て自由にコントロールできるようになる(なった)
こんな背景があったので、
会社から独立して落ち着いたら、何か新しい分野のクリエイションに挑戦してみたいなと考えていました。
では、新しい分野は何にするのか?
建築の仕事は完全にデザイン思考なので新しく始める分野はアート思考、さらに制作に関わる人数も建築とは対照的な少人数(できれば個人単位)で完結できるジャンルが理想的だと思いながら候補を絞っていきました。
その結果辿り着いたのが、
モーショングラフィックスや3DCGなどの映像制作でした。
将来性しかない分野であり、今後はデジタルネイティブ世代の若いクリエイターが溢れ返るであろう状況下でも、自分のような建築とデザインの専門性をもった人間は割と珍しいのではないかと思い、参入の余地も少し感じていました。
それからは様々な映像作品を見るなどして徐々に関心を高めていくのですが、映像を知れば知るほど海外の映像界のレベルの高さを感じ、それと同時に日本のモーショングラフィックスや3DCGは本当にこれから盛り上がっていくところなんだと感じました。(建築畑の人間が偉そうにすみません・・・)
また、自分が挑戦してみたいと思う映像の系統が海外ではメジャーなのに日本ではマイナーという状況があったり、建築で培ってきた空間デザイン能力とXR等の先端技術に親和性を感じたりしたこともあって、映像を始めてみようという結論に至りました。
これが昨年(2020年)春の出来事です。
2020年3月からAfterEffectsの練習とSNS投稿を同時に開始して、6月からCinema4Dを使った3DCGの練習に移行しました。現在は3DCGを始めてちょうど1年半が経過しました。(2021年12月現在)
3DCGで追求したい表現
3DCGを始めた時から無意識的に漠然とですが、
自分が目指していた表現がありました。
それが、
フォトリアルとアンリアルが融合した表現です。
ものすごくリアルで現実感を漂わせる質感(雰囲気)なのに、そこに在るものは現実には存在しない物(事象)だと脳が認識している。
そんな矛盾や違和感を3DCGで意図して創ることができたら最高に面白いだろうなと考えていました。
フォトリアル×アンリアルの具体例
《フォトリアルでアンリアルな表現》は言葉で説明するよりも、実際の3DCGを見てもらった方がわかりやすいと思うので、まだまだ研究途中の習作ですがいくつか例を紹介します。
◆衝撃で水が氷に瞬間凍結
球の衝撃によって水が一瞬で氷になるという単純な変化ですが、現実的にはあり得ない表現です。(そもそもキューブ状の水が浮遊していること自体があり得ないのですが)
◆ロゴが入ったシャボン玉
こちらもシャボン玉にロゴ(テキスト情報)が入っているという現実的にあり得ない表現です。シャボン玉の質感がリアルであればあるほど、ロゴが入っていることへの違和感が強くなります。
◆ガラスに封印されたグリッチ
こちらは本来テレビなどのモニターにノイズとして現れるグリッチが、ソファの上に置かれたガラス中に現れるという違和感を表現しています。
◆現実離れしたモーション
こちらは現実では見かけないような特殊な動きの表現です。シンプルなキューブが突然イソギンチャクのように動き出します。(参考チュートリアル:subframe studio)
フォトリアル×アンリアルに必要な3つの力
具体例でMotionistが追求している表現をなんとなくイメージしていただけたかと思いますが、
この《フォトリアルでアンリアルな表現》を深く追求、実現していくためには大きく3つの力が必要かなと思っています。
①フォトリアルな3DCGを作るスキル
一つ目は、実在する物をフォトリアルにレンダリングできるスキルです。
上: 「リアルな質感の家具やオブジェが非現実なバランスで積み重なった習作」、中:「自然風景の習作」、下:「コントローラーのトポロジーを可視化した習作」
オブジェクトはモデリングもマテリアルも全て自作するのが理想ですが、それはもっと先の段階(3DCG制作に十分慣れてから)でも良いかなと思います。
モデリングやマテリアルの理解だけでも習得にめちゃくちゃ時間がかかるのでそれはそれで練習するとして、ライティング・レンダラーセッティング・コンポジットの練習を先行(または同時並行)してやるのが個人的にはおすすめです。
そういう意味では、ライティングやレンダラーセッティングの練習をする際のオブジェクトはアセットでもプリミティブ(球や立方体、円柱のような単純な形状)でも何でも良いと思います。
シンプルなオブジェクト一つでも、フォトリアルにレンダリングするにはライティングやレンダラーの特性をしっかりと理解する必要があるのでそれだけでもかなり難しいと思います。(フォトリアルにこだわればこだわるほど難解・・・)
②アンリアルなイメージを具現化するスキル
次は自分がイメージしているモノを3DCGで具現化できるスキル。
習作だとこんな感じです▼
上:「花が咲くソファ」、中:「生き物のような動きをするパイプ(参考チュートリアル:Fattu Tutorials)」、下:「不思議な動きのオブジェ(参考チュートリアル:INSYDIUM)」、チュートリアルのアレンジや自分のちょっとしたイメージを形にする練習。
これはイメージしているモノの難易度によりますが、形状・動き・質感など全てに関わってくるのでモデリング、エフェクト、マテリアル(シェーダー)など3DCG全般、網羅的なスキルが必要になってくると思います。
これはもうコツコツと地道に積み重ねていくしかないです。
幅広く基礎を調べて覚えたり、チュートリアルを沢山やったり、実際に自分がイメージしたものを形にする演習をしたりするなど、色々と試行錯誤するしかないと思います。(永遠に終わりは無いかも・・・)
③柔軟な発想力と豊かな創造力
最後は発想力と創造力。
これはもう全てのクリエイティブに通じる力ですが《フォトリアルでアンリアルな表現》にも欠かせません。
というより、
「何をどんな風に作るか?」が全てここにかかっているのでむしろ一番重要です。
先述した2つのスキルは、おそらく数年間3DCGに触れていれば誰でも自然と身に付く技術的なスキルですが、この発想力と創造力は技術的なスキルとはまた別の力で、普段のあらゆる思考の積み重ねによって少しずつ養われていきます。長いスパンがかかるし先天的な部分もあると思います。
自分の場合は長年建築デザインの仕事で設計やデザインの業務以外にも提案業務を沢山やってきて、「もっと良いアイデア(やデザイン)は本当に無いのか…?」を毎日毎日ずっと自問自答していました。そこで培ったものがここで活かせるかもしれないという感覚がありました。
発想力と創造力を磨く方法は人それぞれだと思いますが、ここで持論を語り始めると長くなるのでまた別の機会でお話しできたらと思います。
以上が《フォトリアルでアンリアルな表現》に必要な3つの力です。
この3つ全てが高いレベルで揃った時にかなり面白い作品が作れるんじゃないか・・・とワクワクする想いもありますが、それが一体何年先になるかは全くわかりません。
Cinema4Dを選んだ理由
3DCGのソフトは沢山ありますが、自分が作りたいものを一番作りやすそうなソフトを選ぶで良い気がします。
作りたいものは人それぞれ違うし、調べただけでは自分にどのソフトが合っているのかはわかりにくいので「これかな?」と思ったCGソフトでとりあえず始めてみれば良いと思います。
実際に触ってみて違ったなと思えば他のソフトに変えれば良いし、プロの映像クリエイターの方々は色んなCGソフトを横断的に使っているイメージがあるので、あまり一つのソフトにこだわる必要も無いのかなと思います。
迷ったらとりあえず人気のBlenderで始めてみるのも全然アリだと思います。日本語情報が多い上に無料なので。今後もユーザーはどんどん増えていくと思います。
ではなぜ自分がBlenderではなくCinema4Dを使っているかというと、自分が好きな海外作家さんの多くがCinema4Dユーザーだったという理由が大きいです。
あとはYouTubeでチュートリアルをざっと調べてみたところ、やってみたいと思うチュートリアルの多くがCinema4Dだったということもあります。(機能や特徴、操作性などもリサーチしましたが、複数のソフトを実際に触っての比較検証ができているわけではないのでここでは割愛させてください・・・)
ちなみに3DCGを始めた頃からずっと気になっているCGソフトは「Houdini」です。とても難解という噂なので、いつか挑戦してしっかり挫折したいと思います(?)。
Cinema4Dの独学方法
自分の周りに建築家やデザイナーは沢山いますが、映像クリエイターは全然いなかったので、完全に独学でCinema4Dの練習をスタートしました。
具体的な練習方法はYouTubeの海外チュートリアルです。
見つけたものから手当たり次第にやるというわけではなく、自分が目指す表現のヒントになりそうなものをなんとなく厳選して、約1年半で400~500本実践しました。
有料のコンテンツもたまに実践していますが、Cinema4Dの基本操作はほぼYouTubeで無料の海外チュートリアルで習得しました。海外の方のチュートリアルなのでもちろん解説は日本語ではないです。
解説が外国語だとついつい作業をトレースするだけで一杯一杯になりますが、そこをぐっと堪えて単なるトレースではなく、
『なんで今の操作でこんな結果に?』
『あの項目とこの項目の違いは何?』
『どうして今回は〇〇を使わないんだろう?』
『解説と自分の結果が微妙に違うのはなぜ?』
『ここをいじってみるとどうなる?』
みたいに、たくさん研究&思考をすればするほど理解が深まるのでより成長できると思います。
仕事が終わった後に、独学で、英語で、よくわからない3DCGのチュートリアルを実践し続けるって冷静に考えたらものすごく大変そうなんですが、やり始めると楽しさの方が勝るので未だに続けられています。
Cinema4Dのおすすめチュートリアル
個人的におすすめのチュートリアルを紹介します。
シンプルな球がモチーフのチュートリアルなので、モデリングのハードルが低く、アニメーションCGの基本的な作り方が学べます。
このアニメーションCGは4種類あって、全て同じチュートリアラーさんから学べるので、Cinema4Dビギナーにはピッタリだと思います。(英語解説ですが画面を見ながら真似するだけでも意外と理解できます)
形と動きが完成したら、チュートリアルとは違うマテリアルに変えて遊んでみるのも楽しいです。
自分はこんな感じで遊んでました▼
これから3DCGを始める方へ
今回は自分が目指している表現についてお話しさせていただきましたが、これはMotionistの場合です。
3DCGでやりたいことや好きな表現は人によって全く違います。
大事なのは、そのやりたいことや好きな表現がどのくらいハッキリしているかだと思います。(そしてそれが特定の誰かの影響や真似事ではなく、自分の中から生み出された本当の欲求であることも重要)
ゴールのビジョンがハッキリしていればいるほど寄り道することなくどんどん突き進めるし、本当に好きなことであれば練習量も自然に増えて成長が加速します。
逆にやりたいことや好きな表現が曖昧だと、凄い作品を見る度にあれも良いな~これも良いな~とフラフラしてしまいます。
フラフラして回り道をすること自体は知識の幅が増えるので決して悪いわけではないのですが、その分成長がわかりにくいのでどうしても周りの成長速度に焦ってしまったり、自分には向いてないんじゃないか…?結局自分は何がしたいんだ…?みたいな状況に陥ってしまうパターンが多い気がします。
そういう意味で、
これから3DCGを始めようと思った方は、
- 3DCGをなぜ始めようと思ったか
- 3DCGで何が作りたいか
- 3DCGでどんな仕事をしてみたいか
を最初に少し考えておくだけで、
今後の成長に良い影響がある気がします。
既に3DCGに触れている方でも、自分が3DCGでやりたいことや好きな表現について改めて考えてみると、何か発見があったり、もっと3DCGが楽しくなるかもしれません。
この記事が何か一つでも
ヒントになっていたら嬉しいです。
最後までありがとうございました!
Motionist
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