はじめに
こんにちは、株式会社マウンテンスタジオでモーショングラフィックス制作をしている福永真央と申します。お仕事では主にCinema4DとAfter Effectsを使用して、企業様のPVなど様々な動画をつくっています。
いろんなところでお話を聞きますが、Cinema4Dがモーショングラフィックスに活用しやすいという面もあり、2D的なものからフォトリアルなCGまでCinema4Dを使用しています。
自分がもともと現実の造形物を作っていた人間だからというのもあり、今回は CGで表現をするにあたり、3DCGツールを使う人間だからこそCGツール以外に積極的に目を向けてほしい…! というお話をしたいと思います。
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人工的な気持ちよさ、自然の気持ちよさ
例外もあるかとは思いますが、自分がCGで制作するときに特に考えているのは 「人工的である部分」と「自然的である部分」のバランス です。
「人工的」とは、かたちであれば正円やパースのない平行投影などの、無機的であったり揺らぎのない整い方をしており、自然には生まれないもの。
「自然的」とはそのまま、自然の法則や環境によって現実で起こるべくして起こっている現象や状態、という分け方で考えています。両方をバランスよく取り入れることが重要だと思っています。
「人工的な気持ちのよさ」は3DCGツールの得意とするところで、「自然にある気持ちのよさ」は基本的に自分で作ることになります。(ダイナミクスのようにツールに任せる部分も大いにありますが…)
自然の気持ちよさ、特に物理的な部分では、普段見慣れすぎていて意識しないと再現できないような要素が多いです。ツール上のカメラの設定も実際のカメラの仕様の理解が必要であるように、造形、動き、空間すべてにおいて、現実での理解があるからこそ魅力的なものづくりができます。
かたちや空間に説得力を持たせるために、実際に手を動かすことも役に立つと思います。造形物を作り、スタジオや台、地面が必要であれば用意し、光源を設置するというステップは、現実でもCG制作でも同じことです。
CGで制作する場合、造形は人工的な気持ちよさをいかしやすく、自然界ではありえない整い方を与えることができます。そこにマテリアル、ライティング、モーションなどで自然の気持ちよさを与えられます。
人工的な造形と光のバランス、動きで生まれる自然さ
作例
ライティングでは、一番光が当たっている面や反射光が強く出ている面、環境光によってメインの光源と色が違っている面があったりします。上から何か物体を落としたとき、最初に設置する点や素材によっていろいろな挙動をすると思います。
あたり前な点ではありますが、こういった動きや光を意思をもってバランスを整えることで、CGとしての魅力的な表現ができると思います。
分割と動きの自然さ
作例
制作者と視聴する方がどれだけ違う畑の人間でも、自然現象は共通する認識や情報を持っているはずです。複雑な要素や非現実的なコンセプトでも、見ている人は自然的な気持ちよさを感じる部分から、制作物とのつながりを感じてくれます。
CGの得意とする人工的な気持ちよさをどういった部分でいかすか、自然の気持ちよさをどこに利用するか、といった分け方で考えながら制作することは大切だと考えています。
ツールに「使われない」ために
かっこいい映像を見ることもさることながら、日常の中で自分の好きなかたち、好きな大きさ・色、好きな光の強さ・当たり方など、要素に分けて自分の「好き」を理解してあげることはとても大切にしています。要素にわけて組み立てる訓練にもなりますし、ビジョンもより明確にしやすくなります。
センスは世の中の作品を見ていくことで鍛え、そこにリアルの肉付けと自分の個性をかけやすくなると思います。そして作りたいものがあり、それに適した手段としてツールを使うという意識があると良いと思います。
もちろんCinema4Dをはじめ、ツールはこれからもできることが増え、できることから表現を探すことも面白いと思います。
しかし、過度にツールに頼りすぎるとそのツールの特色に染まった作品ばかりになってしまうので、ツール外のインプットも増やし、それの実現のためにどうツールを活用するかという制作意識を持つことで、作品の幅も広がります。
私はものの魅せ方として造形作品を見ることも多いですが、建築物を見に行くことも、デザインと共に空間の使い方や環境の情報を得られるのでおすすめです。
造形作品はかたちが意図的であり、さらに魅力的になるように環境を設定してあるので、見せ方の面でも、自分がどんな形やコンセプトなどが好きなのかとても勉強になります。建築物の場合は、空間の粗密や、光と影の明度の組み合わせの好みを考えたりできます。
CGで「ストーリー」を考える
自分はもともと、大学から大学院とガラス工芸を学んできた人間でした。昔から絵を描くことも好きでしたが、立体物の「空間を支配する感覚」に憧れがあり、最終的にはガラス素材の立体造形物を作っていました。
ガラスは光を通すため作品を見せるライティングも非常に重要で、ガラスの表面のテクスチャを調整することで、内部に繊細な光表現を作ることができます。
ガラスでつくっていた作品たち
ガラスの造形に対して光が与える影響が非常に大きいため、ものづくりの際に自分が手を加える「人工的」な行為と、主に「光」という自然の要素を分けて考えるようになりました。
3DCGや映像をやりたい!と思ったのは、一度現実の制限のない表現方法に触れてみたいという気持ちからでした。やり始めて特に感じたのは、自分で自然を作り出さなければならない難しさ。ガラス造形ではあえて自分の手で無機的な表現を行っていたので、CGでは逆の体験になることがとても面白く感じています。
ガラスは素材自体が独特で、常に魅力的な素材なので、「どうして表現素材はガラスでなければならないのか」という問いが常にありました。
だからこそ、CGを制作する際も、自分はストーリーを大切にしています。CGであるからこその面白さや、どんな空間が舞台なのか、どうしてこの物体はここにあるのか等…
モチーフやサイズ、配置、色見、ライティング設定など、自分の中で筋を通すことで、リアル感を伴う表現になると思います。
CG内でのガラス 作例
布の非現実感の演出と光 作例
自分が「ガラス」という素材にこだわって制作をしていたからこそ、「どうしてその要素で、その質感でなければならないのか」という「なぜ」 は常に意識しています。この部分をおざなりにすると、ツールが強すぎる分、最終的なデザインの部分で説得力に欠けてしまうことも多いと感じています。
自分自身はCG制作歴も勉強もまだまだですが、「CGだから」という面白さのある表現を目指していきたいです!
おわりに
CGツールは現時点でもできることが多いうえにさらに増えていくので、とても楽しいですが、それゆえに自分がどういった表現をしたいのか、CGで何をやりたいのか等の軸をしっかりさせる必要があります。そのためにもぜひ、ツール外に意識を向けて、皆さんの「好き」な表現を楽しんでほしいなと思います。
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mountain studio@
企業様のPVをはじめ3DCG、2D問わずデザイン動画全般を制作しています。 制作ツール:adobeAfterEffects / Cinema4D / 3dsMAX
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