2021.12.05 (最終更新日: 2021.12.23)

シネマカメラで撮る映像のカラーグレーディング 〜質の高いルックを作るには〜

初めましてアドベントカレンダーの11日目を担当させていただきます。
bird and insect の 久保山と申します。
エディター・カラリストとして活動しております。

一部ですが上に添付している画像が普段僕がカラーさせてもらってる映像になります。

今回はシネマカメラで撮影した素材でのカラーグレーディングの話をしていこうと思います。
まず、なぜシネマカメラを使うのかについてお話しさせてください。

カラーグレーディング観点で考えた時、なぜシネマカメラなのか?

・動画の事だけを考えられて作られたシネマカメラ
・動画も撮れるように作られたスチールカメラ
動画の事だけを考えたら当然シネマカメラの方が良い事の方が多いです。
色域(bit数)・明暗差の広さ(stop数)、その他様々な点で調整する余白が与えられるので、映像の世界観を作り込んでいく上で深みを出しやすいです。
※(カメラは適材適所なので、全ての動画において当てはまるとは言えません)

特に大きな違いは「カラーサイエンス」「画素ピッチ」「デュアルISO」「新興カメラメーカーならではの設計思想」あたりでしょうか。

カラーサイエンス:スチールカメラとムービーカメラでは元々の目指す色合いに違いがあり、ここがムービーカメラの「シネマチックな」感じにつながっています。

画素ピッチ:1画素あたりの大きさのことで、大きいほど画質が良くなります。ムービーカメラはスチールカメラに比べると画素数が少なくて済むことが多く(例えば4Kは800万画素程度)、同じセンサーサイズのとき1画素を大きく作ることができます。BMPCC4Kなどがマイクロフォーサーズなのに画質が良いのはこのためですね。

デュアルISO:ムービーカメラはISOの基準値をふたつ持っていることが多く、例えばBMPCC4KはISO400と3200が基準で、ISO1250で回路が切り替わってノイズが少なくなります。スチールでの「ISOが大きいほどノイズがある」はムービーカメラだと当てはまらず、デュアルISOと画素ピッチの大きさのおかげで意外と暗い場所でも対応できるのがムービーカメラです。BMPCCの夜の画っていいよねって思うのはこのおかげかもしれないです。

新興カメラメーカーならではの設計思想:スチールカメラって新しいメーカー全然出てこないですよね?ムービーはREDやBlackmagic、DJIなど若いメーカーが育ってきています。ムービーカメラは作るのが難しいシャッターなどの機械部品がないので、新しいメーカーが台頭しやすいそうです。ちょうど電気自動車がエンジンを作らなくて済むためテスラなどの新興メーカーが出てきているのと同じイメージですね。

その他、詳しくはアドベントカレンダー6日目にビデオグラファーのだいげんさんの記事にて分かりやすくまとまっていたので、併せてご覧になってはいかがでしょう。

ミラーレスカメラとシネマカメラって何が違うの!?

こんにちは、だいげんです。 普段はYouTubeで初級から中級のビデオグラファーに向けた情報を発信しています。 https://www.youtube.com/c/TVDAIGEN 初めに 今回...

何点かシネマカメラの特徴をご説明させていただきましたが、一言でシネマカメラを使う理由を聞かれたら
シネマカメラは自分たちの理想・非日常が作り出しやすい
と回答させていただきます。それにつきる思います。

この辺はアドベントカレンダー初日の Ryo Ichikawa さんの記事にも書かれておりました。

最低でもREDという説。

正直、機材ってそこまで大事じゃないです。 今からREDを買った理由を書くのに、冒頭に変なこと言ってすみません。だけれど、映像を撮る時に機材ってそこまで大事じゃないです。特にカメラは。 何を企画し...

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グレーディングにおける方向性の定め方・考え方

映像の種類を2つに分けたとします。
・映像作品(映画など)
・広告映像
この2つでは基本的にどんな色・質感にするのかというゴールが明確に違うと思っています。

広告では商品が一番よく見えるにはどうするか?という所からの逆算であったり、サービスのコンセプト・印象、企業イメージ、時には企業カラーを反映する事などが大切です。

一方で作品では伝えたいメッセージ・感情を色で増幅させていく、という考え方が大切なのかなと思います。

例えば、ご飯の広告を制作する時にご飯にブルー味が強く出てると美味しく見えないし、極端な話ですが作品で人が泣いている時に暖かくて鮮やかなトーンだと嬉し泣きに見えるけど、寒色でモノトーンぽいと悲し泣きに見える‥などといった事がたくさんあります。
そういった色に関する考え方や引き出しを、映像の目的に結びつけていくことがカラーの重要なポイントと言えると思います。

良い素材

綺麗な映像にするには‥良い色にするには‥かなり大きく括ると
・撮影素材に良い光が入っている
・色調整する人の目が肥えている
この2点があれば絶対綺麗にはなります。
その上で良い素材は何か?と考えると良い光が入っている素材となります。
色というものは光がないと存在すらできません。
カラーについて勉強するのも良いですが、良い素材とは何かを知るためには、並行してライティングなどの光について勉強する事も必須です。

目を肥やすには・・・(この記事の中で一番大事)

質の高い料理人の舌が肥えているように、質の高いルックを作るには目が肥えてないといけません。

その点では、映像業界というのは非常に優しい世界だと思っています。

例えば三ツ星シェフを目指す若者が舌を肥やそうと思ったら、三ツ星料理を食べてなぜ美味しいのかを知らないといけませんよね。
ですが、まずその機会を生むのにめちゃくちゃ苦労すると思います。
自腹でお店に行って高いお金を払って食べるのか、はたまた三ツ星レストランになんとか所属して、皿洗いしながら、余ったソースをペロッと舐めて分析するのか、、、(料理の世界のイメージが間違っていたらすみません)

その点、映像業界は
映画を作りたい若者は、月額2000円程度払えば、世界トップクラスの映画を見放題です。
それに限らず、勉強する術に溢れています。

なので僕なりの目の肥やし方の例をお伝えさせて下さい。

本を読む

絵を見る技術
これは一押しです。絵画は目を肥やすのに非常に面白い世界です。

DaVinciの本(1)
DaVinciの本(2)
ワークフローなどはもちろんですが、各クリエイターの考え方などを特に読んで欲しいです。

Pinterestを活用する 



良いと思う写真や映像を1日100個コレクションして、ジャンル分けしたりして、自分の好みの傾向や、作品ごとの特徴などを分析したりしていました。素振り的な感覚でやると自分の目の解像度が上がっていくのが実感できます。
これくらいインプットし続ければリファレンスの引き出しも増えますね。

SNSで好きなクリエイター・カラリストをフォローする

日常的にSNSを開く人は特にオススメです。
変わり種だと絵画・名画のアカウントをフォローするのが個人的オススメです。
下記に僕が勉強のためにフォローしてる方々をごく一部なんですが添付しておきます。
クリエイターは大体クリエイターと繋がっているので芋ずる式にフォローすれば、あっという間に勉強アカウントの完成です。

https://twitter.com/sidmantri_?s=21
https://www.instagram.com/p/CPTaHDCNhCn/?utm_medium=copy_link
https://instagram.com/colourvfx?utm_medium=copy_link
https://instagram.com/bennyconkey?utm_medium=copy_link
https://instagram.com/ay9850019?utm_medium=copy_link
https://instagram.com/masahiro_ishiyama_color?utm_medium=copy_link
https://twitter.com/masuyamaosamu?s=21
https://twitter.com/vwmeadows?s=21

歴史・文化を勉強する

写真・動画・もっと遡ると絵画などの歴史・文化を学ぶことが結構重要なんじゃないかと思います。
明確に何故そうするべきか、説明が難しいのですが、僕の尊敬する人たちは総じてその辺の深い知識を持ってる印象なので僕もなるべく学ぼうと日々本を読んだり、昔の映画を見たりなどしています。
抽象的で申し訳ないんですが、その知識が巡り巡ってアウトプットに”深み”が出ると思います。

カラーグレーディングの例

ここからはBMPCC6Kで撮影した映像のカラーグレーディングの中身をお伝えします。
REDやARRIで撮影した素材などを扱うこともありますが、それぞれ特徴はあれど根本的な基本は変わりません。
編集ソフトはDaVinci Resolveです。

カラーグレーディング How to / 使用機材 : ブラックマジック6K

ke shi ki 5th Anniversary Movie
レザーブランド ke shi ki の映像作品

今作でのカラーではリファレンスがあって、ハマスホイという室内画を中心に描く画家の雰囲気を踏襲しており、ke shi kiのブランドの雰囲気にマッチする様に最終的に落とし込みました。
リファレンスがある時は、カラーページの左上にあるギャラリーに取り込めば、スコープや波形を見て分析したりなど比較しながら調整できたりするので、便利です。

今回はこちらのカットのグレーディングを中心にお話しします。

基本的にはカラーで行う事は
・コントラストをつける
・色を統一する
・彩度を決める
ここまでで全体のカットの統一を行う(色補正)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・ハイライトとシャドウに色を乗せる・抜く
・色相のバランスを作る(ルックを作る)
・スキントーンを整える
・適宜、部分調整したり光を足したり抑えたりする
・最終調整
と、なります。
全てがこの通りというわけではないですが、ベースはこれで世界観は作れるはずです。

・まずはモノクロにする


まず最初にコントラストの調整を行なっていくのですが、僕はいつもモノクロにしても美しい状態にしたいので、コントラスト調整の前に彩度を切ってモノクロの状態にしています。

・コントラストをつける




この最初の工程が最も重要だと個人的には思っています。
コントラスト感を納得いくトーンにできれば、あとがかなり楽です。
僕の場合は、ノードを二つ作って二回に分けて調整することが多いです。
まず、コントラストをざっくり付けた後に、細かく付けてます。
1回でも全然良いです。
基本トーンカーブはS字の綺麗な線にするのが良いと思うんですが、シャドウの特定部分を少し浮かせて凸凹な感じにしたら良い感じになったのでこの形になってます。

・モノクロにしたノードをオフにするとこんな感じ

・色の方向を統一
ここで全体のカットの色を統一していきます
最終的な方向性が決まっていて全体が統一さえしてれば、ホワイトバランスを完璧に整える必要はそこまでないとは個人的に思います。


・彩度調整
彩度調整の仕方は適宜、彩度タブでもいいですし、低彩度部分を大きく持ち上げるカラーブーストタブでもいいし、RGBバーを均等にあげてもいいです。

・ハイライトの微調整
微妙にハイライトの要らぬ緑みがあった気がしたので調整
振り返るとわざわざここでやらずに次のノードでやればよかったと思います。こうやって振り返ることはあまりないので、たまには良いかもしれませんね。

・カラーワーパーで色相調整
この機能は直感的に色相・彩度感を調整できるので重宝しております。
時にはもっと細かくポイントを作って、調整してほぼこれで完結する時もあります。

・特定の部分を調整(スキントーンなど)
クオリファイアとウィンドウで特定部分を切り抜く。



・シャドウ部分の調整(暗部をぱきっとパキッとさせました)


クオリファイアで暗部を選択

暗部に少しシャープをかける、ハマスホイの繊細なパキッと感が出したかった。

コントラストと色調整も少しだけ

・手前側のエリアを調整
画に立体感と雰囲気を出すために、手前側に影を作る。
カラー工程でライティングを行なって際立たせることはよくあります。

Before

After

ウィンドウで切り抜いて

影のトーンを作る

・最後に微調整
最後に振り返って少し明るいかなーと思ったので、ハイライトから中間にかけて少し締めました

・バレ消し
照明の電源が世界観に邪魔だったので全部消します。
OpenFXのパッチリプレイサーを使いました。移植をして手軽に消せます。

Before

After




・グループノードもしくはタイムラインノードで全体に共通の調整をかける

・OpenFXのシャープエッジを使いエッジに微かにシャープをかける

・フィルム感を足すためにハイライトのコントラスト強くする


・OpenFXフィルムグレインを入れる
粒子感は細かく調整できるので、フィルムについての知識が増えると尚のこと楽しいです。

完成

各カットを調整していき全体のトーンの統一

LUTは使うのか

もちろんLUTを使うこともあります。
最終イメージにバチっとハマるLUTがあるなら流通しているLUTを使えばいいし、自分で好きなLUTを作って使うのもいいと思います。
ただ、一概には言えませんがLUTは割と大味なものも多かったり、LUTだけで完璧に理想にハマるか?と言われればそうでない事が多いので、結局反映した上で個別に調整することになります。
ナチュラルに使うのであればLUTを反映したノードのノードキーのキー出力を抑えることで反映度を弱めた上で、個別に調整していき上手い具合にコントロールしたりするのがオススメです。

参照元
「 scenery 」brand movie

RAW状態

LUT反映(FUJIFILM)

反映度を半分にする


LUTが半分反映された状態

このくらいの状態から個別に調整していくイメージです。
LUTである程度、作られた状態から、より自分の理想に持っていく。
もちろんLUTを100%反映した状態が理想なのであれば、それはそれでいいと思います!

理想を描く

長々としたこの記事をここまで読んでくださり、ありがとうございます。
僕もまだペーペーなのですが、一文字だけでも参考になる部分があったらいいなと思います。
色々と書きましたが、グレーディングにおいては「理想を描ける」事が1番大事だと思ってます。
その理想がどれだけ高いか、どれだけ最適なものに近いか、それ次第です。
そして、理想を実現していく上でシネマカメラというものが大きな助けになります。

現時点でシネマカメラがない、という方はミラーレスのスチール機で撮影した素材のグレーディングを以前SNSで投稿した事があるので時間あれば見てみてください!

それでは皆さんもっと良い理想を描けるように、頑張っていきましょう!
ありがとうございました。

bird and insect
エディター / カラリスト
久保山 郷

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