はじめに
せっかくBlenderで作品を作ったなら、人に見せられるかたちにしたいところ。今回は、ライティング(照明)、カメラ、レンダリングの基本的な考え方と操作を見ていくことで、最終的な絵作りの体勢を整えましょう。
Blender Debut! ステップ5 3Dモデルに色をつけよう!シェーディング・テクスチャ入門
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ライト(照明)を追加しよう!
良い照明はいい絵づくりの第一歩!3DCGでは照明を調整することで自由に陰影を表現することができる、という点も2Dとの大きな違いですね。Blenderでは主にライトオブジェクトを配置して照明の設定をします。「Shift+A」で追加メニューを呼び出し、「ライト」を展開すると4種類のライトを選ぶことができます。(追加後もプロパティパネルで切替可能。)
ライトの影響を確認するためには、「3Dビューのシェーディング」を「レンダープレビュー」にしておく必要があることも気にとめておきましょう。プロパティパネルで、光の色も設定することができます。
ポイント
豆電球のように、全方向に光を放ちます。
サン
ライトの位置ではなく、回転(R)で調整できる角度によって一律の指向性を持ちます。
スポット
スポットライトのような円錐状の指向性を持つライト。
エリア
テレビの画面や窓のように、光る平面のようなライト。
3点照明
ライトの配置については、実写のライティングにもさまざまな技法がありますが、よく知られているのは3点照明という考え方です。
キーライト・・・被写体を照らすメインのライト
バックライト・・・背後から被写体を照らして輪郭を強調するライト
フィルライト・・・キーライトの反対側を照らすためのライト
ただしこれはあくまでも基本で、場合によってはかえって過剰な演出になってしまうこともあるので、表現したいものに沿った、自然なライティングを心がけるのが一番いいでしょう。
ワールドとHDRIでのライティング
自然なライティングを再現する上で最も簡単な方法は、HDRI(360度全方向に回転することができる種類の画像)を活用することです。Poly Haven(旧HDRI HAVEN)というサイトで大量のHDRIがCC0ライセンスでダウンロードできるので、好きな360度画像をダウンロードしてBlenderシーンの背景に設定してみましょう。
ワールドプロパティ>「カラー」の黄色い点をクリックして「環境テクスチャ」を選択し、「開く」からダウンロードした.hdrファイルを開きましょう。「強さ」の数値を調整することで明るさを変えることもできます。
繰り返しになりますが、ライティングは絵の雰囲気作りの大きな要素です。表現したい内容、演出したい場面に合わせた照明を心がけましょう。
カメラオブジェクトを追加しよう
画像(アニメーション)を書き出すときには、カメラと呼ばれるオブジェクトが基準となります。初期画面にはすでにカメラが一つ配置されていますが、「Shift+A」の追加メニューから「カメラ」を選ぶことで新規に追加することもできます。
複数のカメラがある場合、好きなカメラを選択して「Ctrl+0(テンキー)」を押すと、そのカメラがアクティブ(描き出しを行なうカメラ)になります。
カメラの位置や角度は他のオブジェクトと同じように、G(移動)やR(回転)で操作することができます。0(テンキー)でカメラ視点に切り替えて、ウォークモード(Shift+@)に切り替えるとマウスの動きで直感的にカメラを回転でき、「W」「S」で前進・後退ができます。
カメラの設定
カメラのタイプはデフォルトで「透視投影」になっていますが、これを「平行投影」に切り替えるとパースのない、アイソメトリックな画像を書き出すことができます。ここでは「透視投影」の設定を紹介していきます。
焦点距離
物理的なカメラのレンズを変えるように、Blenderではカメラの焦点距離を設定することができます。モデリングのときには自然だったのに、いざ書き出すと望まないパースがついて絵が歪む、という場合にはこの数値(とカメラの距離)を変えてみましょう。
被写界深度を設定してみよう
見せたい被写体に視線を誘導し、画面の奥行きを強調する上で被写界深度の設定もとても有効な手段です。カメラプロパティの「被写界深度」にチェックを入れ、三角のメニューを展開して「絞り」の「F値」の数値を調整することで、カメラからの距離に応じてボカしをかけることができます。
「焦点のオブジェクト」でエンプティを設定しておくと、より直感的に被写界深度を設定できるのでおすすめです。
コンポジットガイドで補助線を出してみよう
構図も絵作りの重要な要素ですね。構図決めを助ける補助機能として、「コンポジットガイド」があります。カメラの「オブジェクトデータプロパティ」から「ビューポート表示」>「コンポジションガイド」と展開していくと、補助線の選択肢がいっぱい出てきます。(複数選択可能)シーンに合った構図づくりに活用しましょう。
レンダリングしてみよう
がんばって作り上げたシーンをレンダリングする時が来ました!カメラの視点から、画像を描き出し、3Dシーンを2Dのファイルに保存します。ここでは静止画のレンダリングについて見ていきましょう。
F12を押すだけ!
レンダリングの操作それ自体はきわめてシンプル!F12キーを押すか、「レンダー」メニューから「画像をレンダリング」を選択します。すると「Blenderレンダー」という別のウィンドウに、描き出した画像が表示されます。(※時間がかかることがあります。)画像が表示されたら、「Alt+S」を押すか、メニューの「画像」>「保存」を選択して、パソコン上のお好みの場所にファイルを保存しましょう。
さて、ここまでは簡単ですが、イメージ通りに書き出すためには数多くの設定項目が存在します。まずは重要なポイントだけを抑えましょう!
出力プロパティ
まずは「出力プロパティ」で描き出し結果の設定をしましょう。「寸法」(3.0~では「フォーマット」)の「解像度」で画像の幅(X)と高さ(Y)、「出力」でファイルの保存場所とファイルフォーマット(拡張子)を設定することができます。
背景が透明な画像を描き出したい場合には、以下の3つの設定をしましょう。
①ファイルフォーマットをアルファ(透過)つきのものにする
(例:PNG、TIFF)
②カラーを「RGBA」にする
③レンダープロパティで「フィルム」>「透過」をオンにする
2つのレンダラー
プロパティパネルのレンダープロパティで「レンダーエンジン」を展開すると、「Eevee」「Workbench」「Cycles」という3つの選択肢が現れます。実際のレンダリングには「Eevee」または「Cycles」の2つのレンダラーを使うことが多くなります。簡単にその違いを比較してみましょう!
さらに、この2つのレンダラーによって設定できる項目が異なり、一部のマテリアル(特に、反射するものや透明感のあるもの)は見た目が大きく変わってきます。ここでは、EeveeとCyclesそれぞれの設定を見ていきましょう。
Eeveeの設定
①アンビエントオクルージョン(AO)
面と面が接している部分の影に関する設定です。これをオンにすると、面の間に間接的な影が出てリアリティがグッと上がります。
②ブルーム
これをオンにすると、光が当たっている部分を中心にふわっと柔らかい発光効果を与えることができます。一気に雰囲気が出ますが、つい過剰にならないよう、冷静に詳細設定で調整しましょう。
③スクリーンスペース反射
「反射」とあるように、これをオンにすることで金属や水面のように反射するマテリアルの、オブジェクト同士の反射を設定することができます。「幅」の範囲を設定することで、どこまでの範囲で反射するかを決めることができます。
Cyclesの設定
①デバイス
CyclesはGPUを使ってレンダリングを速くすることができます。逆に、この設定が「CPU」になっていると、性能の良いGPUも効果がありません。高性能なGPUがある場合にはデバイスを「GPU」に設定し、プリファレンス>「システム」>「Cyclesレンダーデバイス」もGPUの方にチェックを入れましょう。
②サンプル数
この数字が大きければ大きいほどレンダリング結果はきれいになりますが、同時に処理の負担も大きく、時間がかかります。
③デノイズ(レンダー)
ノイズを除去するための設定です。シーンによっては、サンプル数が低くてもこれをオンにしておくことで、素早くきれいな結果を描き出すことができます。
Blender 3.0~では柔軟にサンプル数が調整されるようになりました。基本的には2.9同様、最大サンプル数が大きいほど精度は高くなり処理が重くなります。
カラーマネジメント
Blenderの初期設定では、フォトリアルな調整ができるように色がぼんやり淡く変換されるようになっています。反面、思い通りの色を出す上でこれが邪魔になることも。不要な場合には、「ビュー変換」を「Filmic」から「標準」に変更しておきましょう。
まとめ・次のステップ
今回は照明・カメラ・レンダリングと、なかなか地味で直感的に捉えづらい設定を立て続けに解説しました。しかし一度慣れてしまえば、作品の魅力をより引き出すための強力な武器になります。何度でも検索したり、この記事に戻って読み返したりして気長に馴染んでいきましょう。
さあ、次はいよいよ作品に命を吹き込むパート!アニメーションに関する説明を、和牛先生にお願いします!
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はじめに どうも和牛先生です。北海道の専門学校で非常勤講師をしつつ、技術書を書いたり、売ったりしています。YouTubeもちょっぴり。今回はBlenderでのアニメーション作りを体験してもらおう...
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星子 旋風脚@senpookyaku
米国生まれのアニメーション監督・モーションデザイナー。Merry Men Inc.代表。『Dr.プッツンコのたのしいCGラボ』やテレビアニメ『SNSポリス』など。BlenderやAEをはじめとした各種ツールを武器に、楽しくアニメーションを作ります。
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