音楽とモーションデザインの関係性 音楽プロデューサー「waiai」インタビュー!

2021.12.21 (最終更新日: 2022.06.27)

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今年は 「音楽とモーションデザインの関係性」 を紐解きます。ユニークなスタイルの音楽をつくり続ける「waiai」さんにインタビュー!音楽プロデューサーの視点で語っていただきます。

waiaiさんと白戸の想いが詰まった、ロングな記事となっています。年末年始にゆっくりとお楽しみください。

waiai
音楽プロデューサー
ユニークなスタイルの音楽を確立し、CMやゲーム音楽など数多く手掛ける音楽プロデューサー。最近は「ぷにぷに電機」や「HALLCA」など、実力派シンガーとのコラボレーションを実現している。

▼Site
http://wai.ai/

▼Twitter
https://twitter.com/_waiai

ギリシャ・ラコニア湾

はじめに

白戸: waiaiさんお久しぶりです!waiaiさんと出会ったのは、私がABEMAに在籍していた2017年頃でしたっけ?

waiai: はい!私が制作した 『SAMPLER DISK #1』 を、番組宣伝映像に使いたいってメールをいただきましたよね。

▼『SAMPLER DISK #1』
https://waiai.bandcamp.com/album/sampler-disk-1

白戸: ですね。そこから数年も経つんですね。時間が経つのは早いなぁ。

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waiaiの制作環境

愛猫「かつお」とのひととき

白戸: 今回の記事は 「音楽とモーションデザインの関係性」 についてまとめますが、まずはwaiaiさんの制作環境からお聞きしてもよいですか?

waiai: はい!毎日絶対使う機材をコンパクトにまとめるのが、私のこだわりです。

スピーカーは、もともと KRK ROKIT 8 G1 を使っていたのですが、最近 PreSonus Eris E5 に買い替えました。自宅をスタジオにしているので、低音の出方よりもコンパクトさを重視しました。

マイクは SHURE SM7B で、ボーカルや楽器、擬音の録音に使っています。楽器はアコースティックギター、エレキギター、ベース、二胡、さらには三味線もありますよ!

白戸: 三味線まで!すごくクールですね!『KEEP MOVING (JaggLe 2021)』 がとても印象的でした。

▼KEEP MOVING (JaggLe 2021)
https://soundcloud.com/waiai/keep-moving

白戸: ちなみに、ソフトウェアは何を使っていますか?

waiai: おもに Ableton Live で音楽制作しています。Liveが好きなのは、新しいアイディアを実現しやすいからです。Max for Live というビジュアルプログラミングツールがあって、作曲家や音楽プロデューサーのためのツールも自作しています。

▼制作したツールの例
・FFT(フーリエ変換)系トランスポーズ
インスピレーションを刺激するため、制作中の音楽を他の調で聞きたいときがあります。そこで、このプラグインを自作してよく使っています!私は絶対音感を持っているので、半音の値も入力できるようにしたのがポイントです。

・LUFSメーター

・楽器ごとの自動トラックカラー変更
楽器のタグによって、自動的にトラックの色を設定するためのスクリプトです。例えば、弦楽四重奏はヴァイオリン2本、ヴィオラ、チェロで構成されますが、 「vl」「vc」「cl」 などのタグを解析して、トラックの色を自動的に変更します。

・クライアントフィードバックのためのノートパッド
など

白戸: 制作に使うツールまでも作ってしまうwaiaiさん、恐ろしいですね(笑)

waiai: ほかには Affinity PhotoDaVinci Resolve を使って、アートワークも制作しています。

自宅兼スタジオ

白戸: これがお部屋でありスタジオですね!確かにコンパクトにまとまっていますね。照明や植物にもこだわりを感じます。

waiai: ミニマルにまとめています。集中力が高まりますよ!あと、日本時間を考えて早寝早起きも心掛けています。

白戸: なんとも素敵なクリエイター像です。私も見習わないといけません...。

音楽制作のきっかけ

大阪にて

ちょっと話が戻るのですが、そもそもなぜ日本に興味を持ったんですか?

waiai: 高校生の頃からMIDIで作曲を始めて、日本のゲーム音楽の影響を受けました。 そのときはゲーム音楽家になることが夢で、インディーゲーム『The Stanley Parable』の共同作曲家として参加しました。『The Stanley Parable』は、さまざまな賞を獲得し、BAFTA Games の作曲賞にノミネートもされました。ちなみに、 好きなゲーム機は「PCエンジン」「セガサターン」「ドリームキャスト」「プレイステーション 1」 です。

▼The Stanley Parable
https://store.steampowered.com/app/221910/The_Stanley_Parable/?l=japanese

waiai: 大学を卒業したあとは、インターネットに2つの曲をアップしました。それが 『irasshaimase』と『sayonara』 です。私の曲を象徴するジャンルが存在しなかったので「glitch pop」と自ら名付けました。 それ以降、日本の方から応援のメッセージが届くようになり、本当に嬉しかったです!ただ当時は日本語が全くできなかったため、翻訳サイトを使わざるを得ず、いま思うと相当怪しい日本語で返信していました(笑)

▼irasshaimase x sayonara (EP)
https://waiai.bandcamp.com/album/irasshaimase-x-sayonara-ep

waiai: 自分の考えを日本語で上手く伝えるために独学を始めて、いまに至ります。尊敬するアーティストさんや会社さんと日本語でやりとりできますし、日本のCMに携わることができて、すごく嬉しいです!

白戸: おお!そのようなきっかけで日本に興味を持っていただいたんですね!私も嬉しいです!日本のアーティストで尊敬している方はいらっしゃいますか?

waiai: はい!作曲家として成長していくなかで、浜渦正志さん仲野順也さん松枝賀子さんのスタイルに憧れていました。海外ですと Teddy Riley さんJam & Lewis さん の影響も受けています。

白戸: waiaiさんが、ふだんどんな音楽を聞いているのかも気になります。

waiai: いろんなジャンルを聞きますよ!運動するときは90年代のピアノハウス、ニュージャックスウィング、ビートダウン系のハードコアやアシッドジャズなど、グルーヴィーな音楽を聞きます。

運転したり料理をするときは、70年代のAOR、80年代のR&B、ジャズフュージョンなど落ち着いた音楽。音楽制作の合間のリラックスタイムは、インストゥルメンタルの Lo-fi Hip Hop、ブラジル系ジャズですね。

白戸: すごく幅広いですね!それらのリズムやメロディーがwaiaiさんのインスピレーションを刺激しているんですね!

音楽とモーションデザインの関係性

制作中の画面

白戸: waiaiさんとは何度も仕事をさせてもらっていますが、画のイメージから、どうやって音やメロディーを生み出すのでしょうか?

waiai: 仕事の種類によりますが、プロジェクトの企画など、いわゆるプリプロダクションの段階から参加させてもらえるのが好きです。アニマティックやカラーパターン、ムードボード、絵コンテなどから想像力を膨らませています。私は「共感覚」を持っていて、音と色をリンクさせることができるんです。

白戸: なるほど!音に色が見えるんですね!?

waiai: はい!逆に、色を見て音も浮かんできます。すこし説明が難しいのですが、頭の中には 「五度圏」 に基づくカラーマップがあります。

五度圏(circle of fifths)とは?
12の長調と12の短調を、完全5度の間隔で一覧にした表のこと。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E5%BA%A6%E5%9C%8F

waiai: 人によってカラーマップは異なると思うのですが、私の場合はこのような色を想像します。

A (イ) = オレンジ色
B (ロ) = 赤色
C (ハ) = 黄色
D (二) = 青色
E (ホ) = ティール(青緑)色

白戸: なるほど興味深いです。

waiai: さらに、映像の構成要素からも音を感じます。例えば、 2Dイラストとセリフ体のフォントが組み合わさっているとき は「説明図」「インフォグラフィックス」の雰囲気を感じて、クールな色の音楽。 一方で、アイソメトリックなデザインとサンセリフ体の組み合わせ は「モダンデザイン」の印象があり、 情熱的な色の音楽 をつくりたくなります。

白戸: なるほど!私がお願いさせていただいた 「Designship 2019」のオープニング映像の音楽は、前半はクールに始まり、後半はイベントの開幕を祝うかのような高揚感が素敵でした。

▼Designship 2019 Opening
https://vimeo.com/ondemand/designship2019

waiai: いままでさまざまな素晴らしいプロジェクトに参加してきたのですが、その中でも強く思い出に残っている作品のひとつです。「街」というテーマだったのですが、映像と音がリンクして一体感のある素晴らしい作品になったと思います。

白戸: まだ撮影も完了してないビデオコンテの状態で相談させてもらった記憶があります。短い納期や尺の調整など、いろいろとご迷惑をお掛けしました...。

そういえば、そのさらに1年前の 「Designship 2018 Opening」 のときは、私がRiserとして入れていた「天使の声」の効果音が、音楽と不協和音を起こしたことを指摘してもらいましたよね。MA(Audio Suite)のときに半音上げて処理しました。

Riserとは?
徐々に上昇していく音で、盛り上がるような効果を演出すること。

それ以降のお仕事でも、「ここに効果音を入れたいけど、音楽とのバランスはどうだろう?」「ブレイクを入れるので、音も印象を強くしたい」「クライマックスまでの展開をもう少し伸ばしたい」などありましたよね。

音をモーションに合わせてもらったり、逆にモーションを音に合わせたり。双方向のコミュニケーションのおかげで映像のクオリティーをグッと上げられた ことがとても嬉しかったです!

「Frame.io」 もコラボレーションワークフローにおいて欠かせないツールのひとつだと思います。

▼AbemaTVの便利な使い方

海外と日本の違い

白戸: 話は変わりますが、海外と日本の違いについて感じることはありますか?

waiai: はい、欧米と日本の広告の違いはかなり大きいと思います。私の感覚ですが、欧米の広告はグレーディングがクールで大人っぽい雰囲気、音楽は壮大なオーケストラなイメージです。壮大な理念やブランドイメージを伝える、「シネマティックな印象」 とも言えるでしょうか?一方で日本は、ターゲット層を明確にして親しみやすい作品が多い印象があります。キャラクターもよく出てきますよね。

白戸: なるほどたしかに。Vimeoで作品を見ていて、そのように感じることがあります。

waiai: あと、欧米は法的手続が大変で、オンラインのやりとりでフリーランサーとしてコラボレーションすることが困難な場合もあります。法的手続が複雑すぎて、プロジェクト開始前にキャンセルされてしまったものもありました。一方で、予算は日本よりも高い傾向があります。

白戸: 契約周りがしっかりしているのは、欧米ならではという印象がありますね。欧米と日本では規模感が違うのかもしれませんが、予算は上がってほしいですね。

これからについて

白戸: 日本の皆さんにお伝えしたいことがあればぜひ。

waiai: 私はいまはまだ日本在住ではないため、どうしてもリモートコラボレーションになります。そんな中で、いままでたくさんの素敵なプロジェクトに参加させていただき本当に嬉しいです。コロナ禍が落ち着いたら、日本に拠点を移すことを検討しています。 チャンネルIDやジングル、ゲーム音楽など、さまざまな音楽をつくっていきたい です。

waiai: さいごに、私の音楽を聴いてくださる皆さん、本当にありがとうございます!これからも、もっと頑張って、良い音楽をお届けします!

白戸: waiaiさん、ありがとうございました!

(編集後記)
日本のゲーム音楽の影響を受けたwaiai氏。彼の日本を愛する思いは強く、飼っている猫の名前は女の子にも関わらず「かつお」だそう。音楽に留まらず制作ツールの自作や料理に至るまで、マルチな才能を発揮するwaiai氏。今後も彼の活躍から目が離せない。

愛猫かつお


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estwire@estwire

Motion Designer / Editor 大手制作会社にて、テレビCM・WebCM制作等を経験。2016年よりABEMA、2019年より6秒企画に参加。モーションデザイナーをはじめ、エディター、コンポジターを務める。映像系イベントにも多数登壇、記事も...

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