プロの映像クリエイターのインタビューをもとに、そのナレッジやノウハウを紹介していく「Cutters Point」。
今回のゲストは、若干21歳(2021年11月現在)にしてクリエイティブチーム・UNDEFINEDを率い、クリエイティブシーンに技術的な新風を吹き込むことで注目を集めているMIZUNO CABBAGEさん。
今回は、デビュー前から懇意にしているというVaundyのMVについて、バーチャルプロダクションの制作過程と、アーティストとのコミュニケーションについて伺いました。
ゲスト:MIZUNO CABBAGEさん
ディレクター、VFXアーティスト。
中学生ごろから自主制作映画を作りはじめ、撮影から編集まで1人でこなす。その延長でVFXや3DCGを独学で学ぶ。CGを使用した空間演出を得意とし、最近ではVFXを使用したMVやPVの制作に力を入れている。SNSを通じて活躍する若手CGクリエイターが集まって出来たクリエイティブチーム・UNDEFINEDでは主にディレクションを行うチームのリーダー。
インタビュアー:ダストマン
3年間勤めていた映像プロダクションを退職し田舎へと移住。広島を拠点に、TVやWebのCMをメインにエフェクト・モーショングラフィックス・VFX・コンポジット業務をフリーランスで請け負いながら、After Effectsのチュートリアル動画を主に発信しているYouTubeチャンネル『ダストマンTips』を運営。
特撮にはまった幼少期と、戦友に恵まれた成長期
ダストマン:早速ですが本題に入る前に、MIZUNOさんの個人的な話を聞いてみたいと思います。子どもの頃から映像を作っていたということですけど、何かきっかけはありましたか?
MIZUNO CABBAGE(以下、MIZUNO):『サンダーバード』という海外の特撮系の人形劇かな。両親が好きでよく見せてくれていたんです。
画像出典:テレビ番組『サンダーバード』 出典:https://online.stereosound.co.jp/_ct/17484198
映像の中で爆発とかも多くて、今のVFXにつながるような要素がすごく好きになりました。小学校3年生か4年生ぐらいの時に、友達と自主製作映画みたいな形でおもちゃの人形を使って撮影したり、自分で編集したりというのを始めましたね。
ミニカーとかでミニチュアのセットを作って、それを破壊して遊ぶみたいな。
ダストマン:子どもがレゴで遊ぶぐらいの感覚だったんですね。そこからVFXに興味を持って手を動かし出したはいつぐらいから?
MIZUNO:当時小学校5年生か6年生ぐらいの時に旅行で東京に来たら、『巨神兵東京に現る』という庵野監督の特撮博物館がちょうどやっていたんです。
それを見て、すごく感激して。
画像出典:https://stock-flock.hatenadiary.org/entry/20120724/1343141829
「こんなのやってみたい!」と思ったんですけど、爆発とか火薬を使うのはやっぱり危ないし、両親に相談したら、ちょうどCorelのVideo Studioという編集ソフトを両親が触っていて、「これ使ってみたら?」と持ち出されて。そこからCGの技術に触れはじめました。
ダストマン:じゃあ巨神兵が東京を破壊するのを見て、「俺も壊してえ!」と思ったと(笑)。
MIZUNO:そうです(笑)。特に印象深かったのが、特撮とVFXの合わせ技みたいなのをやっていて。ビルを破壊する爆発のエフェクトをクロマキーで撮って、それをジオラマの中に合成しているのをメイキングで見たんです。そこで初めてクロマキー合成というのを知って、やってみたいとすごく感じました。
ダストマン:小5でクロマキー合成を知るんですね(笑)。そこから実際に作り始めたんですか?
MIZUNO:中学に上がってしばらくは、友達と自主制作を撮って自由にエフェクト足したりしてたんですけど、当時はVideo Studioもまだそこまで使えるようなソフトじゃなかったので、中学3年の時にAdobeに乗り換えました。
受験もあったので、そんなにしっかりと触っていたわけではないですけど、チュートリアルを見ながら、AfterEffectsとPhotoshopとPremiere、3つを同時に触り出したという感じですね。
ダストマン:その頃から自主制作を続けてきて、「自分のレベルがどんどん上がってきたぞ!」みたいな実感はありましたか?
MIZUNO:高校1年生の夏ぐらいに、同じクラスに映像を触っているやつと出会ったんです。お互いに競い合うような形で作っていって、気付いたらどんどんレベルが上がってました。YouTubeチャンネルに上げた動画があります。
ダストマン:この『空飛ぶハンドスピナーに乗ってみた』ですね。
【VFX】空飛ぶハンドスピナーに乗ってみたwwww 〈FLYING FIDGET SPINNER〉
MIZUNO:これでElement 3Dを使い始めました。高校の時はプラグイン系はそんなにたくさん持っていなかったので、とりあえずVFXやるならVideo Copilotだけは押さえておいたという感じです。
最初はチープでコメディチックなものばかり作ってたんですが、インターネットに作品を発信していこうみたいな考え方に変わっていきましたね。
ダストマン:UNDEFINED(MIZUNOがリーダーを務めるクリエイティブチーム)のメンバーのiwaburiさんやnagafujiさんとは高校からの付き合いなんですよね?
MIZUNO:そうです。当時YouTubeとかTwitterに自主制作を上げていたのがその2人くらいしかいなかったので、必然的にお互い知り合って。
作業する時もみんなで通話しながら、分からないところがあったら聞いたりして、遊び感覚で作ってましたね。
クリエイティブチーム・UNDEFINEDのアーティストメンバーより
ダストマン:そこからUNDEFINEDというチームを作ったということですが、特にこの2年で大躍進を遂げられたように感じます。
MIZUNO:確かに去年はすごく早かったです。いろんなお仕事をさせてもらって、経験も積めた一方で、自主制作をやらなくなったぶん、スキルの習得速度は遅くなったような気もしています。
特に僕はCGアーティストと監督という”2足のわらじ”を履いているので、どちらかが欠けてもダメだなと思っていて。今年はもっとゆっくり丁寧に作って、自分のディレクター力を上げていこうと思っています。
アーティストに気付かされた、自作のアイデンティティ
泣き地蔵 / Vaundy:MUSIC VIDEO
ダストマン:今回作られた『泣き地蔵』は、Vaundyさんの3本目のミュージックビデオですよね。同い年で、仲も良いとか?
MIZUNO:仲良いですね。初めて依頼されたのが『東京フラッシュ』というMVで、デビューしたての時でした。「デビューしたからMV撮ってよ」という感じで。
こっちも「撮ってやるか」みたいな気分でやっていたのが、気付いたら爆発的に売れていて。「すげえなこいつ!」ってなりました(笑)。
東京フラッシュ / Vaundy :MUSIC VIDEO
MIZUNO:あれはVaundyの「世の中に受けるようなものを作ろう」という考えを盛り込んで作った曲です。
僕自身も映像の研究をしている時で、「この曲だったらこういう映像があるな」というのと、SNSにも広告を打つと聞いていたので、そういう場で心をつかめるような演出をどんどん盛り込んでいったら、しっかりヒットしてくれて。
ダストマン:お互いに刺激を受けたりはしますか?
MIZUNO:Vaundyの場合は、彼自身が映像を撮るし、編集もするし、最近はCGも始めています。「音楽を作る上で映像も必要、映像を作る上で音楽も必要」だと、多面的なものの見方でクリエイティブをしているの、すごいなあと尊敬しますね。
自分も監督になってからは衣装のことやメイクのこと、知らなかった世界のことも取り入れて作らないといけないなと気付かされました。
ダストマン:Vaundyさんも今は大躍進をしていく中で、今回も彼が思うものを作らなきゃというプレッシャーはありましたか?
MIZUNO:それはすごくあります。Vaundy本人は、自分がMVに出てしまうと作品の世界観が崩れて、ただの ”ミュージックビデオ” になってしまうという理由で出演してないんですね。
だから僕にも 「すごく面白いものを作ってくれ」と言うだけで、全然口出ししないんです。「CABBAGEの世界が見たい」という期待値みたいなものを感じますね。
ダストマン:『泣き地蔵』のラストのクレジットの出し方を見て、お互いへのリスペクトを感じました。きっとお2人はすごく良い関係なんだろうなって。そういうことだったんですね。
ダストマン:それで、「CABBAGEの世界を見せてくれよ」という部分には、どういう風に考えていきましたか?
MIZUNO:まず最初からバーチャルプロダクションという ”技術ありきの企画” だったので、面白い使い方ができるような構成を考えていきました。
でも企画をVaundyに見せた時に、「もうちょっとCABBAGEの世界観が足りないなぁ」と言われて。技術という条件から考えた部分もあって、自分でもそれは感じていたんです。
「もっと振り切って自分を出していいんじゃない?」とVaundyに言われて、ガラッと白紙に戻して考え直しました。
ダストマン:元の案は、どういう部分がMIZUNOさんらしくなかったんでしょうか。
MIZUNO:ルックですね。オフィスや街みたいなビジュアルで、現代社会の生き方に切り込むようなメッセージ性のあるMVにしようと思ったんです。なので、リアルで生っぽい質感にしようとしたんですけど、僕が普段作っている”異世界”のようなCG作品と比べた時に、全然面白くなかったんですよね。
リアルなものを撮れる人もいますけど、僕は得意な方ではないし、自分に合ってないということに気づかされて。そこからガラッと抽象化した世界に持っていきました。
1人ではできないことが実現する、”現場”という集合体
ダストマン:作品を抽象化した世界に持っていこうとした時に、どういうビジュアルを思い浮かべました?
MIZUNO:まず僕の中の課題として、バーチャルプロダクションの企画と紐づけたいというのがあって、どういう表現がバーチャルプロダクションに適しているかを、スタッフ全員で探っていきました。
その中で、電車や駅のホームのような薄暗い空間が馴染むなぁというのが分かったり、実際には撮れないような、カメラが動きながら立体的にグリッチが入るような光の演出を取り入れたいと思いました。
MIZUNO:それらをベースにして自分の世界観に落とし込むために、電車の中にグラフィティを散りばめたり、駅を荒廃したような雰囲気にしたり。ライティングも現実ではあり得ないような赤緑という配色に振ることで、ルック的にダークな世界観を演出しました。
ダストマン:CABBAGEスタイルですね!Vaundyさんに見せた時はどうでしたか?
MIZUNO:「こっちの方が全然いいよね」と(笑)。
実際の現場でも、周りの人が出してくれるアイデアをまとめて、実現化していくことができたので、やっぱり規模が大きいって良いなと思いましたね。
例えばMVの中で、トイレの壁にブラウン管テレビが埋め込まれているんですけど、最初はCGでやろうという話だったんです。
MIZUNO:でも、CGだとどうしても作り物感が出ちゃうので、生々しいリアルな雰囲気に持っていきたいと美術監督にお願いして、すごくかっこいいものを作っていただきました。グラフィティも、グラフィティアーティストの人が持っている世界観で描いてくれて。
1人で作ると、自分の世界だけで収まっちゃうけど、いろんな人と関わりながら現場で撮ると、それぞれの考え方が乗っかってすごく良いなと思いましたね。
ダストマン:これまで自分の能力だけで戦ってきたところから、経験値がある人達と一緒に組んだことによってリミットが外れた作品だったんですね。
MIZUNO:そのとおりです。自分だけでは絶対に超えられない、自分の想像を超えるようなものがアウトプットされていくというのがすごく面白いところです。
MIZUNO:今までCGだから作れていた部分も、実写の場合はいろんな制約が付いてきます。特に今回はバーチャルプロダクションという新しい技術を使ったので、現場のベテランの人達ですらつかめない部分も出てきたり。
でも、自分の表現したいものを犠牲にしたくないという気持ちが強かったので、理想と現実のギャップも感じたんですが、製作陣の皆さんが妥協にならないような代替案やアイデアをたくさん出してくれて。すごく助けられました。
曲と映像、2つが合わさってできる「MVという作品」
ダストマン:『泣き地蔵』のMVって、現代のSNS上の問題みたいなものをビジュアル化したように捉えたんですけど、合っていますか?
MIZUNO:そうですね。SNSで起きている物事や、SNSに限らず、人の不幸を娯楽・コンテンツとして流し見てしまうという問題点に焦点を当てました。Vaundyからは、「楽曲の歌詞の意味とは合わせる必要はない。MVはMVとして作って良い」 と言われていたので、そのテーマに絞り込んで作りました。
ダストマン:MVって歌詞や意図を踏まえて作っているのが多い中で、歌詞を無視してという発注もなかなか難しいですよね(笑)。
MIZUNO:本当に。そんなこと言ってくるのVaundyぐらいですよ(笑)。
とはいえ、もちろん僕自身が曲を聞いて、歌詞から感じたことを主軸に作ってはいます。
ダストマン:アーティストから曲というバトンを渡されて、聞いてどう受け取ったかで作ってくれというのは、新しいMVの作り方なのかもしれないですね。
MIZUNO:そうですね。Vaundyも僕自身も、映像を含めてMVという作品が完成すると考えているので、お互いの領域で上手くコラボレーションして、面白い方向性で作ることができるなと思います。
ダストマン:もう一つ、僕が見ていた中で一番ビジュアル的なインパクトを感じたのが、特殊メイクでした。
MIZUNO:あれはずっと一緒にやりたいなと思っていた、快歩さんという特殊メイクアーティストの方にお願いしました。世界観がすごく魅力的な方だったので、お任せしますと、「地蔵」を表現していただきました。
ダストマン:この、サラリーマンの感じを崩さず、仮面でもないという感じがめちゃくちゃかっこいいですよね。あえて特殊メイクでやるというのがすごく新しいし、面白い。表情もそのまま感じられるし、すごいなと思いました。
MIZUNO:僕の中でもそこは大きいです。最初に僕が「お地蔵さん」というアイデアを投げた時は、全体を覆うフルフェイスのようなものを想像してしまってたんです。
それを快歩さんが 「いや、これは人間がだんだん地蔵に侵食されて変わっていくような雰囲気にした方が良い」と、骨格を活かして口元だけを残す方法を提案してくださって。それが作品全体の中でキーアイテムになりましたね。
バーチャルプロダクションによって見えた映像の可能性
ダストマン:今回初めてバーチャルプロダクションを使って技術の検証をされたということですが、使ってよかったなと思うところはありますか?
MIZUNO:駅で人をパシャパシャとカメラで囲んで取り込むシーンです。カメラが引いたり寄ったりしながら、回転台で回るんですね。それって、実際の現場で撮ろうと思うと、円状にレールを引いてカメラを回さないといけない。
でもカメラの寄り引きはできないから固定になりますよね。それがバーチャルプロダクションを使うと、スクリーンがあって、回転台の上で人を回しながら、スクリーン上のCGも同時に回転させるという方法で作ることができました。
カメラ自体は固定なんですけど、背景と人物が回っているという状態を作ることによって、カメラを前後に引けるという、複雑なカメラワークが実現できました。
これは今まであまりなかったことだと思うので、自分の中でもお気に入りのカットです。
ダストマン:金網のところのトランジションは、さすがに狙っていますよね?
MIZUNO:金網は狙っています。人物の軸がずれずに立っている中で、背景だけが変わる演出って、バーチャルプロダクションが持つ特性を活かせるなと。実際なら、背景セットをぐるんと回転させるという、すごく大がかりなことをCG上でやっているので、魅力的ですよね。
ダストマン:引きのシーン、例えば監視カメラから覗かれている、上からのショットだったりはCGの合成で作ったんですか?
MIZUNO:そうです。真っ暗な空間でテレビが並んでいるカットは完全にセットで撮ってるし、引きのショットで監視カメラが並んでいるところは僕がフルCGで、VFXで作っています。難しいところは全部CGにして、もっと世界観を拡張させようという考え方です。
ダストマン:その辺もデジタルネイティブならぬ、CGネイティブのMIZUNOさんだからこそできる、逆の発想ですよね。普通は「ここCGだと大変だからな」と思っちゃう(笑)。
でも後半の落ちていくカットは、曲全体の中の抜け要素としてかなり重要だなと感じました。全体がキツキツにならないようにとか、意識されましたか?
MIZUNO:そうです、そうです。今はSNS上でのコンテンツの流動がすごく速いなと思っていて、それを踏まえたテンポ感で前半は構成しました。速いし、情報量の密度も高くて、疲れるようなMVになっているんですね。
曲的にも最後の最後でバンっと盛り上がって、開放感のある終わり方になってるから、Vaundyからも 「最後はポジティブな表現にして欲しい」ということだけ言われていました。
それを取り入れる形で、最後に開放感のあるゆったりしたテンポ感、ラスサビはめちゃくちゃ落とし込んで、テンポよく流していくという構成にしています。
CGを ”美術セット” として捉える作り方
ダストマン:バーチャルプロダクションといえば、やっぱり浮遊するシーン!僕の中でも作ってみたいシーンです!テスト段階から「これはいける」みたいな検証を繰り返していたんですか?
MIZUNO:そうですね。初期の構成段階ではルームランナーを使って人を歩かせながら背景も動かしたり、同軸移動させるようなテストもしました。
僕の中の課題として、「今まで海外でも使われてこなかったバーチャルプロダクションの使い方をしよう」 というのがあったので、そういう点で色々試していきました。
ダストマン:そんなMIZUNOさんが今回バーチャルプロダクションを使った中で、可能性を感じた部分はありますか?
MIZUNO:それでいうと、僕が今までCGをやる上で感じていた、一番大きなことがあります。よく映画とかで、「全部実写です」みたいな売り文句があるじゃないですか。
それを聞いて、「なんでCGじゃダメなんだろう」「CGの良さもあるのにな」というのを課題として感じてたんです。
そうしているうちに実写の現場もどんどん経験するようになって、美術セットってすごく良いなと思ったんですね。”そこにある空気感” って、やっぱり見ている人にも伝わるんだなあと、撮っていて感じました。
そうした時に、「CGはどうやってそれを表現すれば良いか」ってすごく悩んでいたんですけど、バーチャルプロダクションはその2つが両立できるということに、この案件で気付いたんです。
ダストマン:なるほど。リアルとバーチャルが上手くミックスされたと。
MIZUNO:そうなんですよ。バーチャルプロダクションのCGって、CGじゃなくて美術セットとしての使い方なんですよね。CG上で作った無限の世界を、セットとしてその現場に置くという考え方です。
MIZUNO:撮っている側も演じている側も空気感が伝わるし、最終的に出てきた絵もその現場でしかできなかったり、同時性みたいなものも共有できる。そこを突き詰めていったら、生の空気感みたいなものも、CGで表現できるようになるんじゃないかなと、期待しています。
自分自身のスキルアップは、挑戦できるフィールドを引き上げる
ダストマン:今回は別のCGチームでバーチャルプロダクションをされたということですけど、MIZUNOさん個人としても作りたいと感じますか?
MIZUNO:ハードルは高いですが、Unreal Enigineは今後需要が高まるだろうと思うので、勉強をしなくちゃいけないなと感じました。
”CGができる監督” としてやっているというのもあるけど、今僕がすごいなと思う人達よりすごくならないと、絶対ついてきてくれないと思うんです。
だから、自分が一番知っている上でディレクションするという状態にしておきたいし、そのための努力は惜しみません。
ダストマン:冒頭で、自主制作があまりできないというお話がありましたが、今後の目標はありますか?
MIZUNO:自分自身の中でもクリエイティブに対する迷いはあるし、僕がリーダーを務めるUNDEFINED全体としても、今はメンバーそれぞれの方向性で動いています。
UNDEFINEDが掲げる、「未定義な作品づくり」というコンセプトをはたして今できているかと考えると、実現できていない気がします。
去年のマウスコンピューター「DAIV」のプロモーションムービーではオリジナル作品に近い形で作らせていただいたんですけど、全然足りないなというのが実感です。
【DAIV × UNDEFINED】オリジナルプロモーションムービー「DIVE」|マウスコンピューター
MIZUNO:まだまだスキルアップをして、それをクライアントワークで実績として積み重ねていきたいという思いがあります。
ただ、商業的なクリエイティブにはしたくないので、アートとして作れるように、Vaundyのような良い形でタッグが組めるアーティストと一緒に作品を作っていきたいなと思っています。
ダストマン:今回のVaundyのコラボの作品は、1つの理想形みたいな感じですか?
MIZUNO:本当にそうです。自分が挑戦することを受け入れてくれる、一緒に作品づくりをしてくれる方とやるのが、お互いにとって良いものができるなと、すごく感じました。
いつかまたUNDEFINEDで大きなものを作る時に備えて、地道に努力していきたいと思います。
ダストマン:個人でも頑張りつつ、やはり最終的にはUNDEFINED一丸で良い作品を作るというのが来年の目標という感じでしょうか。
MIZUNO:そうですね。UNDEFINEDはその名のとおり ”未定義” というのがコンセプトなので、それぞれが離れたりくっついたり、新しい人が入ったり抜けたりで良いと思っています。良いものを作ろう、新しいものを作ろう、という目標に忠実であれば、それで良いかなと自由に捉えていますね。
ダストマン:MIZUNOさんやUNDEFINEDの躍進を見ていて、何を考えて活動されているか気になります。映像制作に携わる人達に、参考になることがあれば教えてください。
MIZUNO:うーん。でもやっぱり一番大事なのは好奇心なのかなと思います。例えばメンバーのnagafujirikuを見ていると、「これがしたい」「あれ作りたい」みたいなのがどんどん沸いてくる人間で、好奇心の塊みたいなやつなんですよね。
だからクリエイティブにおいて成長するのって、単純に好奇心がある人間だなとすごく感じています。好奇心を持つためにいろんなものを摂取したり、いろんな考え方に触れてみたりというのが大事かなという気がします。
ルックの共有ツールとして、VコンもフルCGで作成するMIZUNOさんのPCスペックとは
ダストマン:MIZUNOさんはCGをやりながらディレクションもやるということですけど、PCはどんなスペックのものを使ってますか?
MIZUNO:現状のスペックでいうと、RAMが64GBでCPUがi9の9900K。GPUがRTXの3090だったと思います。自作です。
ダストマン:CPUだけ少し前の世代で、グラフィックボードが最新なんですかね。
MIZUNO:そうですね。レンダリング周りがちょっとしんどいなというのがあって買い替えました。僕、絵を描くのがすごく苦手なので、今まで画コンテをすごい雑に作ってしまっていたんです(笑)。
ある時、「CGで作った方が早いぞ」と気付いて、フルCGでVコンを作るようにしたら、スタッフさん達から「めちゃくちゃ分かりやすいね」と言ってもらえて。
色も動きもついてるし、イメージ共有の効率が良いんですよね。
ダストマン:今回の『泣き地蔵』も、VコンをCGで作られてましたもんね。ライティングのCGとかもそれでいけますし。
MIZUNO:そうなんです。特にバーチャルプロダクションのように背景のCGと人物を合わせないといけない時は、ライティングをVコン上で完成させておかないと、ぐちゃぐちゃになるので。コンセプトアートとかスタイルフレームのようなルックにVコンを合わせたような、そういう使い方をしています。
ダストマン:全部Cinema 4Dで作るんですか。
MIZUNO:基本的にはそうです。
ダストマン:『泣き地蔵』のメイキングにも出てましたけど、あのデッサン人形みたいなやつ、監督さんからCGのVコンで見せられたことはないかもしれないです(笑)。
ダストマン:ノートパソコンは使っていないですか?
MIZUNO:ノートパソコンは今Surfaceです。あまり外で作業はしないんですけど、現場でオフラインとかが増えてきたので、最近Macに乗り換えようかなと検討中です。
ダストマン:なるほど。現場が増えてきているということですね。
今回の『泣き地蔵』もそうですけど、今後もVaundyさんとMIZUNOさん、お2人で一緒に作っていく作品、楽しみにしています。
MIZUNO CABBAGEさんのPCスペックはこちら
Windows 10 Home
グラフィックス:GeForce RTX 3090
CPU:インテル® Core™ i9-9900K
メモリ:RAM 64GB【MIZUNO CABBAGEさんのようなクリエイティブをする人におススメのPCはこちら】
CuttersPoint最新記事一覧
アニメーション作家になるまでの道のり!独自の作風を失わない秘策とは
プロの映像クリエイターのインタビューをもとに、そのナレッジやノウハウを紹介していく「Cutters Point」。 今回のゲストは、Eve『お気に召すまま』、ずっと真夜中でいいのに。『秒針を噛む...
Blender歴わずか1年でプロクリエイターに! ハイクオリティフォトリアル作品のメイキングとおすすめチュートリアル|3DCGアーティスト Kazuya
プロの映像クリエイターのインタビューをもとに、そのナレッジやノウハウを紹介していく「Cutters Point」。今回のゲストは、CGアーティストのKazuyaさんです。 長引くコロナ禍の中、偶...
アニメ作家から学ぶ、CGアニメの作り方。心から納得できる美しい作品を
プロの映像クリエイターのインタビューをもとに、そのナレッジやノウハウを紹介していく「Cutters Point」。 今回のゲストは、音楽ユニット「ずっと真夜中でいいのに。」 の「正しくなれない」...
話題のマルチクリエイターが教える、映像制作術!CGは「超リアル」でなくていい
プロの映像クリエイターのインタビューをもとに、そのナレッジやノウハウを紹介していく「Cutters Point」。 今回のゲストは、3Dキャラクターモデリング・アニメーション、CG映像制作、フィ...
音MADでWebCM制作!モスバーガーのCMはこうして生まれた!
プロの映像クリエイターのインタビューをもとに、そのナレッジやノウハウを紹介していく「Cutters Point」。 今回のゲストは、ドット絵や音MAD動画を武器に活躍する映像クリエイターの山下諒...
【Premiere Pro】トランジションは伝えたいことを補うための手法!
プロの映像クリエイターのインタビューをもとに、そのナレッジやノウハウを紹介していく「Cutters Point」。 今回のゲストは、「動画で未来を創る」というミッションを掲げ映像制作を行うととも...
コメントする