ライブエンターテイメントの常識をひっくり返す?「Unreal Engine」を用いたバーチャルライブと可能性

2021.12.22 (最終更新日: 2022.06.10)

最近じわじわと浸透してきつつあるバーチャルライブ。
今回はその最前線で制作を担う注目のプロジェクト「Moment Tokyo x REZ& x huez」にUnreal Engineとバーチャルライブの可能性について伺いました。

三社が毎週行っているという「XRプロデューサーズ会議」という最近あった面白XRライブ事案や、開発アイデアなどを話し合う会議の出張版!

どうぞお楽しみください。

プロフィール

REZカゾエ
VJとしてクラブや音楽フェスティバルで活動。現在は「REZ&」を起業し「Moment Tokyo x REZ& x huez」の共同企画で、XRを用いたバーチャルライブの制作・開発プロジェクトを担当。プロジェクトでは主にライブのディレクター、演出を担当、『Kizuna AI Fireworks Concert』や『Kizuna AI Virtual US Tour』、『Spotify presents TOKYO SUPER HITS LIVE 2020』など多数のバーチャルライブに携わっている。
https://twitter.com/nobuaki_kazoe

huezとしくに
渋都市株式会社(シブシティ)の代表取締役と空間演出ユニットhuezの代表でもあるとしくにです。huezは生ライブを中心とした光り物とか照明とかレーザーとか、LEDとか映像とかの光り物の演出チームで、500キャパくらいのライブハウスから武道館まで演出してます。アニメの展示などのテクニカルなどもやっています。最近だと『鬼滅の刃の全集中展』など。
https://shibucity.com/

Moment Tokyo いとう
株式会社Moment Tokyo代表取締役。アーティストのドキュメンタリー、ライブ、音楽フェスなどの実写イベントに携わる。アーティストの『瞬間』を追求するという理念で活動。個人としてはプロデューサー業務、イベント制作進行、撮影ディレクションなど幅広く担当している。バーチャル領域では、『KOBE MELLOW CRUISE』のバーチャルライブのプロデュースや、株式会社イープラスとのバーチャルライブ制作の共同事業をスタートさせた。
http://www.moment-movie.com

バーチャルライブの撮影風景。実際にアーティストがパフォーマンスしていく中でカメラマンやライティング、VJをリアルタイムにプレイしている。

ライブエンタメ業界の常識を覆す?バーチャルライブへの期待

いとう:そもそもバーチャルライブは、最新のCG技術を使い、全く新しい空間演出を実現するライブのことです。明確な定義は決まっていないものの、アーティストの表現における可能性を拡大しています。私としてはライブエンターテイメント業界の常識を引っくり返すものになりうると感じています

2021年2月に『ゆるふわギャング』というアーティストのバーチャルライブを行いました。約1時間弱のバーチャルライブを生配信で行い、同時視聴者数は約1000人。現在はアーカイブは5万人ほどに試聴されているライブへと育っています。

「アーティストの表現の拡張」という話でいうと、このバーチャルライブは「深い森」というテーマで作っていました。「ここはどこ?」と、ある意味バーチャルとリアルを感じさせない、「現実の世界なんじゃないの?」と錯覚を起こすような体験を作ることができました

としくに:コロナ禍になって配信ライブというものが当たり前になり、世の中における市民権を得た気がしています。私的には、Blu-rayのライブ映像のクオリティを少し下げたものと認識しています。編集した映像とは違い、スイッチングのみの生放送ですからね。良かったこともあるのですが、単調な分、見飽きてしまうんです。

そんな中で、一つの流れとして生まれたのが「XRライブ」だと思っています。ゲーム空間の中でライブを行うので、なんだってできるのです。PCやiPhoneの画面の中に、自由な演出を送り届けられるものだと思っています。

クロマキーで撮影した被写体をバーチャル上でライティングやVJを当ててシーンを作る

としくに:ユーザー側も最近はよく「VR Chat」や「Cluster」といった単語を耳にしているかと思います。普段から「Vtuber」を見ていたユーザーからしたら、違和感なく受け入れられるとは思うのですが、まだまだとっつきにくい感覚もあると思います。

「バーチャルライブ」に対するリアクションが単純に「凄い!」だけになってしまっているのも現実で、そういう意味ではまだまだ作り手もユーザーも、互いにXRライブに対する見方が研磨されていくフェーズだと思っています。

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Unreal Engineを使うメリット

カゾエ:UEは「Epic Games」から開発されているゲームエンジンで、『FINAL FANTASY VII REMAKE』やAAAクラスのゲームを開発するのに使われています。現在はノンゲーム分野、映像業界でもUEを使用した映像制作のワークフローに注目が集まっていて、そこで最も注目が集まっている点としてレンダリング時間がないことが挙げられます。

「リアルタイムレンダリング」といって1フレームずつ書き出すのではなく、作ったエフェクトやカメラワークが瞬時に反映されます。それによりトライアンドエラーがとてもやり易いんです。レンダリングにかける時間的なコストが少ないので、試行錯誤しながらクオリティーを高めていくことが瞬時にできます。

いとうUEは誰でもインストールすればすぐに使える点が特に凄いと思います。高クオリティの映像機材が安く買えるようになったことで、映像業界に若い人が沢山入ってきたように、CG領域をやる人が非常に増えるんじゃないかと思いました。

それと同時に、プロとアマの違いがどんどんなくなってくるなと思います。プロとアマの垣根がなくなりつつある今、本当にできるだけ勉強して粘り強く制作に向き合っている人、あとはセンスがある人が、知識がまだまだ浅くても、この技術を使ってのし上がっていけるのではないかと思います。

としくに:僕がUEでやってなるほどと思ったのは、照明の反射、光ものに対してオブジェクトがすごい綺麗に反応することですね。過去の「Unity」を使ったライブでは、真っ赤な照明をオブジェクトに当てたのですが、赤くなってるというよりはそれ自体が赤いから赤く見えてる感覚でした。

ですが、UEではまるでそこに物体があるように見える感じを演出できたので、影と光が出るところのリアリティは格段に進化したと思います。

空間として美しく作れるようになったのは、UEの大きなメリットです。空間全体をデザインするという意味では、すごく適したものではないでしょうか。ただその反面、しっかりとしたアートディレクションをしないと、ただのCGを並べたものになります。

(左)バーチャル照明コントロール用のTouchDesignerのシステム。(右)UEで作られたバーチャル空間

UEで実現する現実とバーチャル空間のハイブリットな演出

カゾエ:UEは「Physically Based Rendering」(以下PBR)っていう物理ベースのレンダリングを採用しているので、光の質感やオブジェクトの質感が現実と同じようにシミュレーションができるのが特徴です。

その点においてもヘッドマウントディスプレイで入った世界でも現実と同じように空間演出を用いたバーチャルライブができるようになるのは時間の問題なのではと思っています。

ただ、目指すところはハイブリッドなんですけどね。よく「現実の延長みたいな世界を目指す」という話を聞くのですが、基本的には自分達はハイブリッドを目指しています。現実のミラーではなく、共にデジタル空間ならではの表現を突き詰めていけると思ってます。

としくに:そうなんですよ。現実世界の追っかけを続けても意味がない。リアルフェスとは全然違う体験を作るつもりでやらないといけないんですよね。

もちろん、UEやUnityを使って「限りなく現実に近づける」のも良いかと思います。だけど、それとは別にこのゲーム空間だからこそできるもの、UEだからできることを突き詰めていく方が、僕的には演出だと思っています

(右カメラ)実際に被写体を撮っているSONY FX9。(左カメラマン) FX9が撮った映像を元にバーチャル上のカメラワークをコントロールするバーチャルカメラマンのMMT延松さん

いとう:バーチャルライブにおいて収益をあげるためのアイデアを一つシェアさせてください。それが、大規模公演のシミュレーションとしてのバーチャルライブです。

例を出すと、カナダの『MomentFactory』という会社が、UE公式から公開しているプロジェクトの中で、現実の照明機材で使われているDMXで操作する照明システムと、バーチャル照明システムの連動を実現しています。

これが実現できるとどういうことになるかというと、完全に疑似の美術と疑似のライトをCG空間に全部配置してライティングを完全にシミュレーションすることができます。

仮に日本のプロダクションが東京ドーム公演を組むとしたら、仕込みとゲネプロのために東京ドームを1週間借りなければいけません。けれども、このUEのDMX連動が発達していくことで、1週間借りなければいけない東京ドームが、短期間でいいかもしれないという世界観になってくるはずです。

もちろんバーチャル上の仕込みというところに、値段とコストが発生するのですが、物理的に人をそこで動かし、場所を借りるというコストと工数とを比較した時に、前者の方が圧倒的に高パフォーマンスを作れるはずです。

さらに「LDH」や、海外における「BLACK PINK」「BTS」は、ファンクラブ向けにこのリハーサル動画を公開して売っています。

これをバーチャルライブとして売っていくことも考えられます、そういったところでお金を回収していく流れも出てくる。あとは何度も擬似的にライブの演出で本番練習できることによりクオリティが上がることは明白で、非常に可能性を感じてます。

最後にこれからUEやバーチャルライブ制作を始める人たちへ

カゾエ:これからCGやバーチャルライブ制作を学んでいきたいクリエイターや新しい業界を目指す人に伝えたいのは、高いソフトや機材を買わないと学べないということはないということです。

「UE」や「Blender」にしてもインストールさえすれば無料で使用することができます。勉強方法もUEなら「Epic Games」のオンラインラーニングやVookの記事、Youtubeのチュートリアルなど多数用意されています。

制作方法を学びたくて業界に就職したりもするのも大切ですが、ソフトをインストールしてチュートリアルを探すところからは誰にでもできます

まずは年齢関係なくこの記事を読んでくれてる方が中学生でも高校生でも、ツールを触っていく中でいい表現が見つかれば、さまざまな場所で活躍できるようになります。今、何か始めたいなと思う人はとにかくソフトをインストールして触ってみてほしいです。

まずはとにかく始めて、踏み込めば楽しい世界が待っています。XRもバーチャルライブもこれからますます盛り上がっていきます。どうせなら中に入って楽しんでみては如何でしょうか。

「Epic Games」のオンラインラーニング
https://www.unrealengine.com/ja/onlinelearning-courses



音楽にノリノリでライブ撮影する姿


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https://vook.vc/p/advent/2021

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