みなさんこんにちは、DaVinci Resolve大好き、Akiraxeこと照山明と申します。自分は学生時代、16ミリフィルムで映画を撮影していて、デジタルで撮影するようになった今でもフィルムの色味を常に追い求めてきました。そんな中で出会ったのがDaVinci Resolveでした。そこで数年前から「DaVinciのスキマ」というチュートリアルをYouTubeにアップし始め、現在68タイトルになっています。
さて、最近はRAWで動画撮影できるカメラが増えてきましたが、中でもBlackmagic Pocket Cinema Camera 4K/6K(以下BMPCC)はビデオグラファーにとって最も導入しやすいシネマカメラかと思います。DaVinci Resolveを開発しているメーカーが作ったカメラだけあって、最も親和性があり設定できる項目が豊富なのも特徴です。
しかしながら、多機能ゆえにRAW動画のポテンシャルを十分に発揮できず、悶々としているビデオグラファーも少なくないかもしれません。そこで今回は、主にBMPCCやDaVinci ResolveでRAW動画を撮影・編集したりカラーグレーディングする上で、RAW動画初心者がつまずきやすい部分を中心に拾っていきたいと思います。なお、一部は自分の主観で書いている部分もあります。ご了承ください。
RAW動画とは?
■RAW≠Logである。
まず、RAW動画でつまずいてしまう原因の一つに、「RAW≒Log」と思ってしまうことがあります。
これはおそらくBMPCC等で撮影する上で、ダイナミックレンジを「Film」で撮影し、カメラのモニター上で再生したり、そのままDaVinci ResolveのSDR(Rec.709)のタイムラインに乗せた際に、淡い映像で再生されるので、「RAWはLogっぽいけど、それよりもっと情報があるんだよね?」的に思ってしまうからかもしれません。
他のミラーレス等で外部収録したRAW動画も、基本的にLogのルックで再生されるので、このようなミスリードが生まれているのかと思います。「RAW≒Log」と思ってしまっている方は、残念ながらRAW動画のメリットを100%理解できていません。
まずは、以下をご覧ください。
通常記録では、カメラのセンサーが捉えた明るさの情報(RGB)を、デモザイク(ディベイヤー)し画像処理を加え、圧縮し各動画形式に記録します。Logもこのプロセスを踏んで記録されます。
一方でRAWは明るさの情報でしかありません。画像処理的なことはなにもされていない状態を記録(※)しています。画像にもLogにもなっていません。RAWの場合、Logはあくまで1つのカラープロファイルにすぎません。
※ BlackmagicRAWは「一部デモザイク」といった画像処理が加わっています。
またLogは「薄味で撮っておく」という表現をすることがありますが、実際は違います。以下の色域(カラースペース)チャートを見てください。
※ここではPanasonic V-Logを例に掲載しています。
出典元:Panasonic S1H Website
おそらくみなさんの現在の環境は、HDR(Rec.2020)で書き出さない限り、多くはSDR(Rec.709)という色域で作業していると思います。
しかしLogの場合はSDRにする前の段階の、カメラがキャプチャーできる限りの広い輝度レンジと色域のまま記録しています。そのままSDRのモニターおよびタイムラインで再生すると、色に関してはRec.709の三角の範囲で再生されることになり、Log素材は通常より広範囲に色が広がっているため、この狭い色域内では結果として色が薄く見えています。(実際に色が薄いわけではありません。)
コントラストが眠く見えるのも、広い輝度(明るさ)のレンジをもったLogガンマカーブを、そのままSDRのモニターやタイムラインで見ているためです。
Logはあくまでポスト前提の1つのカラープロファイルと理解いただければ、これからのRAWの説明がすんなり入ってくると思います。
■「Film」はLogカラープロファイルである
BMPCCを初めて使う方はV-LogとかS-Logとか「Log」という文字がないので戸惑うかもしれませんが、BMPCCでは、Logプロファイルのことを「Film」と表記しています。もともとLogはFilmの特性曲線をもとに開発されたことから「Film」と表現しているのだと思います。
映像のカラープロファイルには、必ずカラースペース(色域/Gamut)とガンマがセットになっています。BMPCCで言えば、カラースペースが「BlackmagicDesign」ガンマが「BlackmagicDesign Film」、この2つがFilm(Log)のカラープロファイルの中身になります。特にカラースペースとして表記される「BlackmagicDesign」は、いわゆるV-GamutやS-Gamut等と同じ、とても広いカラースペースで設計されています。
なお、Log以外の通常のSDR撮って出しのカラープロファイルは、一般的にはカラースペースが「Rec.709」ガンマも「Rec.709(2.4)」と表記されます。
■RAWとLogの違い
ここまで理解できれば、RAWはとても簡単です。RAWは、これらのカラープロファイルで記録されず、まだ画像にすらなっていない「明るさだけのデータ」を記録しています。
これをカメラのモニターや編集ソフトのタイムラインで再生する際、画像に構築(デモザイク)し、メタデータに埋め込まれたカラープロファイルを使って再生されます。この処理を「デコード」と言います。RAWは撮影時、一般的にLogのカラープロファイルがメタデータに埋め込まれますので、Logのルックで再生される、という訳です。
つまり以下のように考えれば、極論、RAWは必ずしもLogのプロファイルにしなくてもいい、ということに気づくと思います。
- Log = Logカラープロファイルで画像処理・デコード済みのものを記録
- RAW = 画像処理やデコードしないままメタデータに各カラープロファイルを埋め込んで記録 (※1)
RAWの場合、撮影時メタデータに埋め込まれたカラープロファイルを元に、一旦その色でカメラモニターやDaVinci Resolveのタイムラインに映像がプレビューされます。ですので、例えばBMPCCでダイナミックレンジを「Video」や「Extended Video」にして収録したとしても、それで画像処理されてしまっている訳ではなく、単なるメタ情報なので、後からDaVinci Resolveで「Film(Log)」に変更することも可能です。
何度も言いますが、RAWは明るさの情報でしかありません。Logをはじめとしたカラープロファイルだけでなく、画像処理で固まってしまう露出やWB、ISO、さらには解像度(※2)なども、後からいかようにも変更できる、これがRAWとLogの最大の違いです。
まずは、ここまでをしっかり理解した上で、RAW動画を撮影するためのカメラの設定、DaVinci ResolveでのカメラRAWの設定を見ていきましょう。
※1 BlackmagicRAWは「一部デモザイク」といった画像処理が加わっています。
※2 収録時の解像度以上には変更できません。
BMPCCでRAW動画を撮る
■Blackmagic RAWの設定
BMPCCで収録できる「Blackmagic RAW」は、RAWとは思えない軽さと軽快さで非常に取扱いやすいRAW動画形式です。最近ではPanasonicやSIGMA、Nikon、FUJIFILM等のミラーレスでも外部収録できるようになり、ビデオグラファーにとって最も身近なRAW動画形式と言えます。ただいくつか種類があるので、最初はどれを選んでいいか迷われるかもしれません。
■Blackmagic RAWには大きく分けて2つ
1)固定ビットレート(Constant Bitrate) = 一定のビットレートで収録
* メリット:各メディアを入れた際に収録時間が正確に表示される
* デメリット:あまり絵変わりしない場面でも無駄に容量を消費する
2)固定クオリティ(Constant Quality) = 可変ビットレートの収録形式
* メリット:全体的に容量をおさえつつ高画質をキープ
* デメリット:ビットレートが可変するためメディア収録時間が読めない。
公演やイベント等、収録時間が決まっていて、メディアの空き容量を常に正確に知りたい案件は「固定ビットレート」を、PVやCMなど、特に収録時間は気にせず、メディアの容量が一杯になったら途中でメディアを交換できる案件は「固定クオリティ」を使うのが良いかと思います。
そして、この2種類の収録形式の中でも、各圧縮率に応じた種類が用意されています。もちろん数字が小さいほうが圧縮率は低く、高画質なRAWになります。
案件の種類やポスト処理(後処理)に応じて各圧縮率を選べばいいと思いますが、3:1やQ0はBlackmagic RAWといえども、そこそこのビットレート・容量になってくるのと、収録にはCFastカードが必須になってきます。個人的には、画質と運用のバランスを考えると8:1、もしくはQ5あたりが使いやすいと感じています。SDカードでも十分収録できるビットレートです。
なお筆者の場合、固定クオリティのQ5を使うことが多いです。各形式・圧縮率別に画質比較したこともありますが、圧縮率が上がるにつれ細かいディテールが多少失われるのは認められるものの、かなり拡大表示して分かるレベルで、目に見えて画質が悪くなることは経験上ありません。時に12:1でも十分高画質に作品を作ることが出来ると感じています。
■RAW動画の解像度
BMPCCで収録したBlackmagic RAWの場合、フル画角は基本的にセンサーが読み出せる限りのデータがそのまま収録されます。4KやFHDで設定した場合は、カメラ側でセンサーの読み出し範囲を変えるだけの操作になり、結果的にクロップされます。
これはLUMIX S5で外部収録した場合も同じで、Blackmagic RAWがフル画角(5.9K)の際、5888×3312という中途半端な数字になっているのはそのような理由からだと思います。(なお、SIGMA fpやNikon Zシリーズはフル画角でも4Kスタートのようです)
■ダイナミックレンジ=カラープロファイル
BMPCCの「収録」メニューにある「ダイナミックレンジ」は、特段の理由がない限り「Film」にしている方が多いと思います。これが他メーカーのカメラでいうLogカラープロファイルだから、というのは前述しました。しかしこれまで説明してきた通り、RAWにおけるここの設定は「カラープロファイルの1つ」に過ぎません。極論、どれを選んでも大丈夫です。その色味のまま画像処理され記録される訳ではありません。
SDR前提で言えば、最初からある程度仕上がった色味でDaVinci Resolveのタイムラインで再生させたい場合は、「Video」や「Extended Video」を選んで撮影するのも一つの手です。その際ハイライトが飛んだりシャドーが潰れて再生されたなら、編集時にリカバリすればいい話になります(ProResの撮影ではこれが出来ません)。
特に「Extended Video」は、SDRでありながら、ハイライトが綺麗にロールオフされた高品質なルックが最初から得られるのでオススメです。インスタントな現場で撮って出しプロファイルで撮ってしまい、あとは編集時にカメラRAWでリカバリする、というフローには重宝します。
一方で、従来のLog収録のフローと同じくして、撮影時にもシャドーやハイライトにどこまでデータがあるのか(レンジに収まっているか)を完全に把握しながら撮影したいというケースでは、ここを「Film」にしておくのが良いでしょう。その場合は、これまでのLog撮影と同じく、LUTを適用しながら収録するフローになります。
なお、Panasonic製のミラーレスでBlackmagic RAWを外部記録した場合、カラープロファイルは必然的にV-Logになるようです(Rec.709や、HLGなど、他のプロファイルは選べません)。
■RAW収録時のISO設定
BMPCCはデュアルネイティブISOを搭載しているため、ISO1000とISO1250の間でゲイン回路が切り替わります。
ただ下記のグラフを見る限り、ISO100〜1000、ISO1250〜6400に関しては結局ダイナミックレンジの範囲は変わらないため、RAWの場合は、極論どのISOで撮影しても、ポストで(撮影後)任意のISOにすればいいと言えます。
出典元:BlackmagicPocketCinemaCameraマニュアル
そのため、BMPCCで撮影したBlackmagicRAWに関しては後からDaVinci ResolveのカメラRAWでISOが変更できます。ただしISO1000と1250をまたいでの変更はできないので、その点だけ注意してください。
一方、ISO8000以上で撮影する場合があれば、そこで初めてダイナミックレンジが変わってきますので、任意の値に固定して撮影するのが良いでしょう。自分の場合は、明るい場所ではISO400、暗い場所ではISO3200で撮影する事が多いです。
これはBMPCCに限った話で、多くのミラーレスではISOに応じてダイナミックレンジの範囲が変わってきます。外部収録したBlackmagic RAWの多くがISOを後から変更できないのは、このあたりに起因するのではないかと思っています。そのカメラの特性を理解した上で、適切なベース感度で撮影することが望まれます。
■LUT(ルックアップテーブル)の設定
ダイナミックレンジをLogプロファイルの「Film」に設定して撮影する場合は、撮影中一時的にVideoやExtended VideoなどSDRの色で見るためにLUTを適用します。
※LUTの頭文字に「Gen5」とついているのは「第五世代のカラーサイエンス」を示したものです。特にBlackmagic Design製のカメラはカラーサイエンスがアップデートされることが多いので、カメラを最新のファームウェアにアップデートした際は、最新のカラーサイエンスに対応したカラープロファイル、及びLUTを使うとよいでしょう。
LUTであれば、カラープロファイルと違って一時的に適用したり外したりできるので、従来のLogワークフローに慣れている人は、ダイナミックレンジを「Film」にし、任意のLUTを適用し撮影してください。メーカー提供以外の演色LUTで最終的なイメージを掴みながら撮影する、というフローにも有効です。
なお、Blackmagic RAWはLUTもメタデータに埋め込むことができます。埋め込んでおくと、Blackmagic RAW Playerで再生した際、LUTが適用された状態で再生されます。DaVinci ResolveでそのLUTを使ってデコードすることも出来ますが(後述します)、色がクリップしてしまった部分はカメラRAW以外の補正で戻ってこないので注意が必要です。
DaVinci ResolveでカメラRAW設定
■2箇所のカメラRAW設定の違い
撮影の話が一通り終わったところで、今度はDaVnci ResolveでのRAW動画の取り扱いについて見ていきます。これまでの話が理解できていれば、RAW動画編集はもう怖くありません。
DaVinci ResolveにおいてカメラRAW設定は2箇所存在しますが、まずはプロジェクト設定にある「カメラRAW」とカラーページにある「カメラRAW」の役割をしっかり理解することが重要です。
2つの「カメラRAW」
1. プロジェクト設定/カメラRAW=呼び込んだRAW動画全体に対してデコード設定
1. カラーページ/カメラRAW=呼び込んだRAW動画をクリップ単位でデコード設定
先述した通り、デコードとは任意のカラープロファイルやWB、露出、解像度でRAWを可視化する作業でした。普段はここをカメラ側が担っていますが、カメラRAWはこの部分をソフト側で処理します。
RAW動画初心者の多くは、②はよく見ても、①は割とデフォルトのまま、というケースが多いかもしれません。RAWの利便性を活かすには、まず①をしっかり設定・確認した後で②で実際の細かいデコードを操作します。
■プロジェクト設定/カメラRAWの設定
デフォルトだとRAWプロファイルが「ARRI Alexa」になっていると思いますが、今回は「Blackmagic RAW」を選択します。そしてここで重要なのは、その下の「デコード品質」と「デコードに使用」です。
まず 「デコード品質」とは、簡単に言えば「どれくらいの解像度でデコード(可視化)するか」 という部分です。デフォルトでは「フル解像度」になっていますが、たとえばここを「1/4 解像度」にするとタイムラインが劇的に軽くなります。
何度も言いますが、RAW動画は画像処理前のデータなので、解像度もいかようにも操れます。そして、カメラRAWでいつでも「フル解像度」に戻せます。つまりこれを利用すれば、RAW動画はプロキシを作る必要もありません。
次に 「デコードに使用」ですが、ここはいわゆるカラープロファイルやWB、露出などを操作する部分 です。デフォルトだと「カメラメタデータ」になっていますので、撮影時のプロファイルがデコードに利用されます。
ここを「プロジェクト」に変更する事で、あらためて任意のプロファイルやWB、露出で、呼び込んだ全部のRAWクリップを一気にデコードし直すことが可能です。仮に撮影時に「Video」や「Extended Video」で撮影したとしても、ここで一気に「Film (Log)」のプロファイルに変更できます。
各種設定
* カラーサイエンス:基本的にカメラメタデータで良いと思いますが、過去の作品と合わせる場合は、その時点でのカラーサイエンスを選びます。
* ホワイトバランス:デフォルトでは撮影時設定になっていますが、ここで一気に任意のWBに変更することができます。
* カラースペース/ガンマ:前述した通りですが、任意のカラープロファイルを選択できます。Logの場合はBlackmagicDesign/ BlackmagicDesign Filmになります。
* ハイライトリカバリー:特にLog以外にデコードする場合はチェックを入れておくと良いと思いますが、思わぬ結果になった場合はチェックを外します。
* 色の圧縮:Log以外のRec.709など狭い色域にデコードする際は、チェックを入れることで色の飽和を防ぐのに役立ちます。
* LUTを適用:撮影時にLUTを埋め込んである場合は、LUTを適用しデコードするかどうかチェックします(エンベデッドを選択)。
※一番下の「カメラメタデータを使用」で、「露出」のチェックを外すと(デフォルトでチェックは外れている?)任意の露出でデコードできますが、個人的にここは触らず、カラーページのカメラRAWで、クリップ単位に露出操作するのが良いと思います。ETTR(オーバーエクスポーズ)撮影を行なっている場合は、一度に全部のクリップを1段下げたいなど用途はあるかもしれません。
これらの設定は、のちのカラーページにあるカメラRAWでもクリップ単位で設定できますが、プロジェクト設定で一度設定しておけば、呼び込んだすべてのクリップに対して統一したデコード処理が行われます。
自分がよく行うフローを紹介すると、撮影時はLog(Film)で撮影しておき、編集時になって、③の部分でRec.709/Blackmagic Design Extended Videoに設定してしまうことがあります。
ある程度色が仕上がった形でクリップがタイムラインに並ぶので、編集時にいちいちLUTを当てなくて済むのと、そのままカラーグレーディングに入ったとしてもスタート地点がインスタントになります。もちろん元がRAWですから、ハイライト/シャドウがクリップしたとしても、プライマリーでいかようにも戻せます。
なお、カラープロファイルとLUTは同じではありません。カラープロファイルはRAWをデコードする際に直接作用するものに対し、LUTは一度デコードされたイメージに対し当てるカラーフィルターのようなものです。RGB各ポイント(17/33/65)で結ばれた大雑把な変換フィルターで、LUTで切り捨てられたハイライトやシャドーは戻ってきません。
どちらもグレードする上でスタートに役立つものですが、RAWの場合はデコード操作こそ、映像の「うまみ」を一番引き出せる部分だと思います。
最後に、「Blackmagic RAW デフォルト」を選んだ場合は必然的にLogプロファイルでデコードされますので、撮影時にすでにLogプロファイル(Film)で収録している場合は、「カメラメタデータ」と「Blackmagic RAW デフォルト」は基本的に結果が同じになります。
ただし 「Blackmagic RAW デフォルト」のカラーサイエンスはDaVinci Resolveのバージョンに依存 しますので、カメラの収録時点でのカラーサイエンスの違いにより結果が変わることがあります(Gen4で撮影したものをGen5でデコードするなど)。ややこしいので、撮影した通りでデコードするのでよければ「カメラメタデータ」のままで良いと思います。
■カラーページ/カメラRAWの設定
プロジェクト設定のカメラRAWで全体のRAWデコード設定をした後は、通常の動画ファイルと同じようにエディットページで編集し、カラーページに進みます。カラーページでカラーコレクションを行う際、まずクリップ単位でカメラRAWの設定を確認します。
デフォルトでは、「デコード品質」と「デコードに使用」が「プロジェクト」になっていると思います。ここを「クリップ」にすると、クリップ単位で再びRAWのデコード変更ができます。
個人的には、「デコード品質」は「プロジェクト設定」のままでOK です。タイムラインの処理が重い際、プロジェクト設定のカメラRAWで一括してデコード品質を下げ、最終書き出しの際にフルに戻せばいいと思います(なお、デコード品質を下げていても、デリバーページの詳細項目で「最高品質にディベイヤー」のチェックを入れる事で、フル解像度で書き出されます)。
「デコードに使用」は、プライマリーカラーコレクションに入る前に使うことが多いです。「プロジェクト」から「クリップ」に変更して、今度はクリップ単位で、もう少し細かいデコード操作をします。
プロファイルにもよりますが、特にBMPCCで撮影したBlackmagic RAWは、ISO/色温度/ティント(G/M補正)/露出、各種ガンマの細かな変更が可能です。他メーカーのミラーレス機で外部収録したBlackmagic RAWの場合、変更できる部分が限定されている場合もありますが、概ねWBと露出は変更できるので、RAWデコードの時点できちんと補正しておくと、のちのコレクション作業で良好な結果が得られます。
「デコードに使用」を「クリップ」にすると、かなり細かい部分までデコード処理できるようになる。
簡単な例として、以下の比較画像をご覧ください。元素材は撮影時に極端に色温度を低く撮ってしまった素材になります。
真ん中はカメラRAWで色温度を変更したもの、右はプライマリーカラーコレクションの色温度で変更したものになります。
カメラRAWでの変更はデコード操作での補正になり、ケルビン単位で適正な色に補正できます。一方、プライマリーカラーコレクションで補正したものは、デコード済みの映像を補正しているので、補正も相対値ですし、あまり大きな補正値だと色が転んでしまいます。
なお、Rec.709等のSDRのタイムラインで、Logのプロファイルでデコードしている場合は、そのままだと淡く補正しづらいので、一時的にメーカー提供の色域変換LUT(※)を当ててカメラRAWを操作するのが良いと思います(BMPCCの場合、自分はExtended VideoのLUTを使うことが多いです)。
RAW動画を楽しむ
さて、ざっとRAW動画のポイントを自分なりに解説してきましたが、最後にRAW動画の面白さ、楽しさを独自目線で書いて締めくくりたいと思います。
RAWは明るさの情報でしかない、そしてRAWはカラープロファイルを適用し画像処理される前の生の状態です。ですので、例えばBMPCCで撮影したRAWを、極論S-LogやV-Logにデコードしてしまっても成り立ってしまいます。
もっとも、各社プロファイルはそのカメラのセンサーやカラーサイエンスに最適化されたものなので、かならずしも良好な結果になるとは限りませんが、BMPCCで撮影したBlackmagic RAWをV-Logにデコードし、Panasonicから無償配布されている、VARICAM LUT LIBRARYのLUTを当てて作品を仕上げてみる、なんていうのも面白いかもしれません。
先日、こんなRAW動画遊びをYouTubeで公開しました。
LUMIX S5で外部記録したBlackmagic RAWを、最終的にF-Logにしてしまい、ETERNAブリーチバイパスのLUTを当てて仕上げてみた、という内容です。残念ながら、F-LogガンマがDaVinci ResolveのカメラRAWに登録されていなかったため、一旦リニアガンマにして、OpenFXのカラースペース変換を使ってF-Logにした、というかなりマニアックな内容になりますが、よかったら参考にしてみてください。
LUMIX S5 + Blackmagic Design Video Assit 12GでBlackmagic RAWを収録
いかがでしたでしょうか?RAW動画は一旦理解してしまえば難しくなく、むしろRAWはとても単純かつ便利な動画フォーマットだと思いませんか?
具体的なカメラRAWの使い方については、自分がYouTubeにアップしている「DaVinciのスキマ」というチュートリアルでもいくつか紹介しています(目次のCOLORページ系/カラーグレーディング系をチェック)。よかったらこちらもご参考ください。そして、単純だが故に奥深いRAW動画の世界を存分に楽しんでいただければと思います。
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