はじめに
こんにちは!DaVinci Resolve 認定トレーナーの小町です。みなさんDaVinci Resolveでの映像編集、捗っておりますでしょうか?DaVinci Resolveは編集/コンポジット/カラー/音声編集と映像に必要なものが一通りそろっており、みなさんも大いに活用していらっしゃるでしょう。
しかし、その敷居の高さからか多くの人から敬遠されている機能があります。そう、Fusionページです。今回はみなさんのFusionページへの苦手意識を克服すべく、いくつか役立ちそうなことを紹介していきます!
また、後半では実際のコンポジットをAdobe After Effectsと比較しつつ解説します!プロジェクトファイルも配布するので、ぜひお手元で確認しながらご覧ください!
小町の自己紹介
DaVinci Resolve認定トレーナー:小町 直(Omachi Nao)
東京都狛江市出身。大学ではアニメーションを学びつつ、カメラやPCなどデジタル機材への造詣も深める。普段はアニメーション業界でPCやデジタル機材のヘルプデスク業務を行う。2019年にDaVinci Resolve 認定トレーナーとなり、業界に広めるべくレクチャーやトレーニングを随時開催中YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCmRflJiL-k8WomxAEB72goQ)でも不定期でチュートリアル動画を更新中。コマチじゃないよ、オマチだよ。
Fusionとは
Fusionとは、ノードベースのコンポジットアプリケーションです。元々はEyeon Software社製の単体のアプリケーションでしたが、2014年にBlackmagic DesignがEyeon Softwareを買収したことで、DaVinci Resolve 15から同アプリに組み込まれました。VFX合成やテロップアニメーションの制作などを行うことができます。似たようなアプリケーションとしてAfter EffectsやNukeなどが挙げられます。
ノードに苦手意識を持ってる人が多い?
これまで何度もDaVinci Resolve / Fusionの使い方をレクチャーしてきましたが、多くの人から「Fusionだけ理解しきれない……」と言われてきました。僕自身も使い始めた当初は全く使い方が分かりませんでした。その当時の自分が感じていたハードルはなんだったのだろうか?と振り返ると「そもそも[ノード]ってなんなんだろう?レイヤーと何が違うんだろう?」というものでした。
実際、レクチャー中にも「ノードってなんですか?」という質問は多くありました。Fusionと仲良くなるための一番のハードルは「ノードを知らないこと」。つまり「ノードを知って苦手意識を減らせば、Fusionとも仲良くなれる」のではないでしょうか?
ノードとは?
Fusionの土台であるノードという概念を知ることが、ノードへの苦手意識を減らす第一歩です。
ノードとは「点と線で構成された図の『点』」です。英語でNode = 節という意味です。「ノードは点です」とだけ言われてもなんのことやらですよね。もっと身近なところで考えてみましょう。
ネットワーク構成図
みなさんの自宅やオフィスにはインターネットがつながっており、宅内でも末端装置からルーターやWi-Fiアクセスポイント、果てはスマートフォンやPCにまでネットワークが構築されているかと思います。そのネットワーク構成を図で表すと、画像のように「点=各種ネットワーク機器や端末」「線=LANケーブルや無線通信」となり、点と線で構成されているのでノードを使っていると言えます。
映像配信の機材構成図
最近はウェブ配信を行う方や企業が増えていますね。配信に使う機材もこのように「点=機材」「線=各種ケーブル」で構成図を書くことができます。こちらもノードを使っているとも言えます。
いかがでしょう。なんとなく、さっきよりはノードがなんなのか分かったような気がしてきませんか?みなさんも、身近にノードで表せるものがないか探してみると良いかもしれません。
Fusionではエフェクトやツールがノードという箱に入っていて、その箱と別の箱とを線で繋ぐことで映像効果を作り上げていきます。ノードがどういうものかなんとなく分かったところで、Fusionの実際のノードの見方 / 取り扱い方を見ていきましょう。
ノードの見方 / 取り扱い方
よく使うツールを例に、Fusionのノードの見方 / 取り扱い方を紹介します。
MediaIn / MediaOut
[MediaIn]はメディアプールからFusionにクリップを読み込むためのツール 、[MediaOut]はFusionページ以外へ映像を送るツールです。EDITページからFusionページへ移動した際、タイムラインの動画が[MediaIn]になって[MediaOut]に接続されています。
Fusionのノードは、このように横長の長方形の周囲に小さい三角や四角が付いた形で表されます。黄色い三角はInput(入力)、四角はOutput(出力) で、こちらの画像では[MediaIn]の出力が[MediaOut]に入力されEDITページ他へ送られているということになります。
もう一つの青い三角はEffect Mask(マスク入力) です。マスク系ツールの出力をこちらに繋ぐことで、任意の形に画像をマスキングすることができます。
ノードの接続の仕方は、四角(出力)から三角(入力)へドラッグ&ドロップするだけです。入力が複数あるノードは、接続したい入力の上でドロップします。
ノードの左下には、小さい四角といくつかの丸(環境によって数が違います)が並んでいますが、こちらはどのビューワーに映像が映っているかを示すものです。
Fusionにはビューワーが二つあり、左の丸が白くなっていれば左のビューワー / 右の丸が白くなっていれば右のビューワーにこのノードが映っているということになります。
Merge
[Merge]は英語で[併合する]という意味をもち、Fusionでは2つの画像を合成するために使われます。そのためか[MediaOut]よりも周囲の三角が多いですね。
黄色の三角はBackground(後景)入力で、その名の通り合成時に入力画像が下側に配置されます。緑の三角はForeground(前景)入力です。こちらもその名の通り、合成時に入力画像が上に配置されます。黄色の上に緑が来ると覚えましょう。
青い三角は先ほどの[MediaIn]同様Effect Mask(マスク入力) です。[Merge]では基本的にForegroundの映像だけがマスキングされます。四角はOutput(出力) です。こちらから合成した画像を次のノードへ送ります。
さて、2つのツールを例にノードの周囲にある図形の意味を紹介しましたが、上記のツール以外でも基本的に図形の意味は共通です。黄色の三角が(Background)Input、緑の三角がForeground、青い三角がEffect Mask、四角がOutputです。
注意点としては、黄色の三角:Inputをもつノードは、そこに入力がないとなにも映らないという点です。上手く画像が映らないなと思ったら、キチンと入力されているか確かめましょう。
ではノードがどういう風に繋がっているのか、上記2例以外にも見てみましょう。
Transform
Fusionで画像を変形させたい場合は[Transform]というツールを使用します。注目してもらいたいのは [MediaIn] → [Transform]という繋がりの順番 です。
変形の効果をかけたいのは[MediaIn]ノードですが、実際の操作としては[MediaIn]の出力を[Transform]に入力する必要があります。そして、変形の結果が得られるのは[Transform]の出力となります。この考え方はその他のエフェクトやツールでも同様となりますので、何度も操作して慣れていきましょう!
Ellipse / Rectangle
画像の一部分だけ映したい場合に、そのノードのEffect Maskに[Ellipse(円)]や[Rectangle(四角)]といったマスクツールを接続します。なお、マスクツールはノード一つにつき一つの図形しか描けないため、複数のマスクを使用したい場合には画像のようにマスクツールを連結する必要があります。
これでFusionのノードもなんとなく理解できたでしょうか?よりノードと仲良くなるには実際に操作していくことが一番ですので、上記を踏まえた上でエフェクトをかけたり合成する練習をしてみてください。
Fusionページのインターフェース
Fusionコンポジションの作成
Fusionページで作業をする前に、コンポジションを作成する必要があります。
すでにタイムラインに並んでいるクリップにFusionでエフェクトを加えたい場合は、クリップの上に再生ヘッドがある状態で画面下部のFusion ボタンをクリックします。
空のコンポジションを作成したい場合は、[Effects]パネル > [ツールボックス] > [エフェクト] > [Fuisonコンポジション] をタイムラインにドラッグ&ドロップします。その後コンポジションの上に再生ヘッドがある状態で、画面下部のFusionボタンをクリックしてFusionページに移動することでFusionの操作ができるようになります。
なお、以上のコンポジション作成方法ではフレームレートはタイムラインのフレームレートに依存します。
それではFusionのインターフェースを見ていきます。
①ビューワー
任意のノードを映します。映したいノードをビューワーにドラッグ&ドロップするか、キーボードの1 / 2 でビューワー左 / 右 に映すことができます。
②タイムルーラー(再生系)
ビューワーのすぐ下にはタイムルーラーと再生関係のボタンがあります。タイムルーラー上では黄色い線が先頭 / 終了フレーム、赤い線が現在表示しているフレームを表しています。再生関連ボタン左には先頭 / 終了フレーム番号、右には現在のフレーム番号が表示されています。
③ツールバー
再生関連ボタンの下にはよく使うツールのショートカットボタンが配置されています。
④ノードエディター
こちらでノードの接続や編集を行います。
⑤インスペクタ
選択したノードのプロパティを編集するパネルです。エフェクトの強弱や、マージの合成方法の選択などツールの編集は基本的にこちらで行います。
デフォルトでは隠れているパネルも、上部のボタンから表示させることができます。
メディアプール
メディアプールは他のページ同様、プロジェクトに読み込まれた素材をFusionに持ち込むことができます。こちらから読み込んだ素材は、[MediaIn]としてノードエディターに表示されます。
Effects
Fusionで扱える全てのツールがこちらにまとまっています。ショートカットにないツールは、こちらから探して呼び出します。
クリップ
こちらのパネルから、同じタイムラインにある他のクリップに移動することができます。
スプライン
Fusionではキーフレームアニメーションを作成することができますが、スプラインパネルではアニメーションに緩急を付与することができます。After Effectsには[グラフエディター]という似た機能がありますね。
キーフレーム
こちらではタイムライン形式でキーフレームの位置を調整することができます。一見するとレイヤーとして重なっているように見えますが、実際の合成結果とはまったく関係がない並び順です。
Select Tool
上記のパネルとはまた性質が違うものですが、キーボードショートカット[Shift + スペース]でツール呼び出しのための[Select Tool]というパネルを表示することができます。下部の検索ウィンドウにツールの名前や略称を入力すると、一致するツールが選択され、[add]ボタンでノードエディターに追加することができます。
名前を覚えているツールに関しては、Effectsパネルよりも速く呼び出せるので、積極的に活用していきましょう。
After Effectsのコンポジットと比較
ここまでで簡単にFuisonの使い方を説明してきました。ここからは、実際のコンポジットをどういう風に行うのかを紹介していきます。また、Fusionに比べて多くの人が使ったことがあるであろう、レイヤーベースのAfter Effects(以下AE)でのコンポジットと比較しつつ見ていきましょう。「AEで行っている操作をFusionではどうするのか?」がわかると、苦手意識も減るはずです。
今回はこちらの「ハンバーガーが材料ごとに分裂して元に戻る」というアニメーションを例に、僕が行ったコンポジットを紹介していきます。
また、実際にコンポジットしたDaVinci Resolveのプロジェクトファイルも配布するので、ぜひダウンロードして手元でもノード構成を見ながら本記事を読み進めてみてください。
👉ファイルDLは こちら をクリックしてください。
ハンバーガーはレイヤー構造
ハンバーガー、美味しいですよね。そしてわかりやすくレイヤー構造をしていますよね。こちらのイラストは材料ごとにファイルを分けて作成しているため、コンポジットをする際は材料それぞれを素材として読み込み、重ねる必要があります。
レイヤーベースのAEでは手順を想像しやすいですが、ノードベースのFusionではどのような手順を踏めばよいのでしょうか? まずはAEでコンポジットしてみます。
AEはレイヤーベースのため、タイムラインに順番に並べるだけで勝手にコンポジットしてくれます。直感的ですね。ではFusionではどうなるでしょうか?
[Merge]ツールがたくさん並んでいます。一番下のバンズが最も後景に来るように一つずつマージ(合成)しています。2つの画像をマージするのに1つの[Merge]ツールが必要、言い換えると、1つの[Merge]ツールでは2つの画像のマージしかできません。そのため、今回は6つの画像をマージするのに5つの[Merge]ツールを用意しました。
この時点でノードがたくさんあって混乱してきましたね。カオスになりがちなノードエディターは、ルールを守って整理整頓してあげると混乱しないので、僕が決めているルールやTipsをここで紹介します!
ノードの整理術
■左から右へ、上から下へ
ノードエディターは基本的に自由です。どんな組み方をしようとも、誰にも咎められません。とはいえ、無秩序に並べても困るのは未来の自分。そこで最低限のルールとして、素材の繋がりの流れを左から右へ / 上から下へとすることをオススメします。
タイムラインは左から右へ流れていきますし、トラックは上から下へ順に表示されるので、同じ流れでノードも配置することで直感的に把握できるようになります。
今回のハンバーガーコンポジットでは、下のバンズを一番左におき、パティ→玉ねぎ→トマト→レタス→上のバンズという順に左から配置しています。また、Foregroundにくるものを上に配置することで、上から下へというルールも守っています。このように繋ぐ方向を定めておくことで、どこになにがどういう組み順であるのかが把握しやすくなります。
■ノードに名前をつける
コンポジットを行う際、同じツールを何回も使う場面が多々あります。このハンバーガーの場合でも画像を読み込んだ時点で6つも[Media In]があり、ビューワーに映すまでどれがどれだか分かりません。ノードの名前は自由に変更ができるので、分かりやすい名前に積極的に変えましょう。
名前を変えたいノードを選択し、[F2]キーを押すと[Rename Tool]というウィンドウが表示されるので、分かりやすい名前を入れて[OK]を押して確定します。[MediaIn]の場合はその画像が何かわかるもの、エフェクトなどは[用途+エフェクト名]にすると分かりやすいでしょう。
■要素ごとに分けて配置する
こちらはクロマキー合成の記事で紹介したFusionのノード構成です。要素ごとにまとめて置いてあるので、後から見ても何をしたのかがわかりやすくなっています。
また、[Underlay]というツールを使うことで見た目でわかりやすくグルーピングすることもできます。[Underlay]は配置後に四辺をドラッグしてサイズ調整することができます。[Underlay]の名前も、そのグループがなにか分かりやすいものにするとなお良いです。
■ノードをグリッドに沿って配置する
ノードエディターは、デフォルトではノードをどこにもスナップさせずに配置する状態となっています。ノードエディターの背景にはグリッドが薄らと表示されているので、せっかくならこのグリッドにスナップさせて、整理しやすい状態にしたいですね。
ノードエディターの空いている部分を右クリックし、コンテクストメニュー > Arrange Tools > to Grid にチェックを入れることで、開いているコンポジションでグリッドに沿ったノードの配置がされるようになります。
なお、この設定をこの先も適用したい場合は、Fusion Settingsから同様の設定を行う必要があります。
メニューバー > Fusion > Fusion Settingsをクリックすると、Fusionの設定ウィンドウが表示されます。Flow > Options > Arrange to Grid にチェックを入れて[Save]をクリックします。これで次回の起動からグリッドに沿ったノードの配置がされるようになりました。
■Pipe Router
ノード同士を接続する線が他のノードに被っていると非常に見にくいですし、混乱を生んでしまいます。そこで、[Pipe Router]というツールを使用して線を迂回させましょう。
作り方はとても簡単です。ノード同士を繋ぐ線の上で[Alt]キーを押しながらドラッグし、お好きな場所でドロップします。作成した[Pipe Router]はドラッグ&ドロップで好きな場所に移動させることができるので、他のノードに線が被らないような場所に移動させましょう。
以上の整理術を意識してコンポジットを行うことで、「ノードが多くて混乱する」ことは減るかと思います。ぜひ実践してみてください!
キーフレームアニメーション
続いて、ハンバーガーが材料ごとに分かれるキーフレームアニメーションについてもAEと比較しながら見ていきましょう!
AEでは画像を変形させる際には、基本的に画像そのもののプロパティを操作します。キーフレームも、レイヤーが表示されているタイムライン上で操作します。
キーフレームに緩急をつけたい場合は、タイムタインをグラフエディターに切り替えて操作します。
Fusionでは、画像=[MediaIn]に変形に関するプロパティがありません。そのため画像のノードに[Transform]という変形用ツールを後続させ、インスペクタから各プロパティを操作します。
キーフレームは、インスペクタパネルの各プロパティ右にある菱形をクリックすることで作成できます。ビューワー下のタイムラインパネルで任意のフレームに移動して、適宜キーフレームを作成していきましょう。
なお、一度キーフレームを作成したプロパティは別のフレームで数値を変更すると自動でキーフレームが作成されるので、サクサクキーフレームを打つことができます。
キーフレームを作成した後は、スプラインエディターから緩急をつけます。スプラインエディター上でドラッグして任意のキーフレームを選択し、[F]キーを押してイーズインアウトをつけます。その後[T]キーを押してイーズの適用率を数値をみる枠に表示させ、枠を左右にドラッグして任意の適用率に変更します。この数値は高いほど緩急が強くなります。今回は[50]としました。
作成したキーフレームの位置を変更したい場合は、キーフレームエディターで操作します。キーフレームエディターを表示し、ノード名左の矢尻をクリックして格納されているキーフレームを展開します。白い縦線がキーフレームです。
キーフレームエディターの空いている部分から、選択したいキーフレームを囲うようにドラッグして、キーフレームを複数選択します。選択したキーフレームは黄色に変化します。選択したキーフレーム上にマウスを載せ、左右にドラッグして任意のフレームにキーフレームを移動します。
シェイプアニメーション
このようなシェイプの作成、アニメーションづけの方法も見ていきましょう!
AEではシェイプレイヤーを作成し、[パスのトリミング]を追加してキーフレームを打つことで、パス上に線が出現するアニメーションをつけることができます。
Fusionでは[マスクツール] / [シェイプツール]と2つの方法でシェイプを作成できますが、今回はマスクツールを使用しました。[Background]ツールを作成して使用したい色に変更し、[Matte Control]に入力後、[Polygon]ツールをGarbageMatteに入力、マットを反転しています。マスクを[Background]に直接接続しなかった理由は「この後同様のシェイプを複数作り、それぞれ独立性を持たせたかったため」です。
線のシェイプは、[Polygon]ノードを選択してビューワー上でクリックして描いていきます。この時、ビューワーには参照したい画像を映しておくと描きやすいです。
線が出てくるアニメーションは、[Polygon]のインスペクタの[Length]を[0] → [1]にするキーフレームを打つことで作成できます。
プリコンポジション
AEにはプリコンポジション(コンポジションの中にコンポジションを作り、入れ子構造にする)という手法がありますが、Fusionではどうでしょうか?AEでは画像のようなアウトラインを作成する際にプリコンポジションを活用することがあるので、こちらの作成方法も比較して見ていきます。
今回は「ハンバーガーという食べ物全体のアウトライン」を描きたいため、まずAEでは材料ごとにバラバラのレイヤーを、プリコンポジションで一つにまとめる必要があります。
プリコンポジションを複製し、下のコンポジションに[マットチョーク]で輪郭を太らせ、[塗りつぶし]エフェクトを適用しました。
Fusionではすべての材料がマージされたハンバーガー=プリコンプされた状態のため、プリコンポジションする必要がありません。まずは[Background]を作成し、マージされたハンバーガーの出力をMaskEffectに接続して、ハンバーガーのシルエットを作ります。
注: 今回はマージ後に位置調整のための[Transform]ノードを差し込んでいます。
次に[Erode / Dilate]というツールを作成し、[Background]の出力を入力します。[Erode / Dilate]は画像を膨張 / 縮小させるツールです。
[Erode / Dilate]のインスペクターにある[Amount]の数値をあげることで、ハンバーガーのシルエットが膨張します。
最後に膨張させたハンバーガーのシルエットを、ハンバーガーの下にマージするとアウトラインになります。
Fusionではこのように出力を複数生やす / 生やしたのちにエフェクト処理をしたものを合流させるといった操作が可能なため、AEのプリコンポジションのような入れ子構造が発生しません。
合成モード / トラックマット
AEでは上のレイヤーが下のレイヤーにどのような影響を及ぼすか、合成モードで設定します。また、トラックマットという機能で他のレイヤーを参照したマスク処理を行うことができます。
[WE LOVE BURGERS]というテキストにだけテクスチャを載せたい場合は、複製したテキストレイヤーをテクスチャの上に配置し、トラックマットを[アルファマット]にします。また、モードを[通常]から変えることで合成結果を変化させることもできます。
Fusionでは[Merge]ツールで同様の作業ができます。まずはテキストをBackgroundに、テクスチャをForegroundに入力します。
[Merge]のインスペクターにある[Apply Mode]が合成モードにあたり、[乗算]したい場合は[Multiply]を選びます。
[アルファマット]と同様の結果を得るためには、テキストを[Merge]のEffectMaskに入力します。このようにBackgroundとEffectMaskに二股で入力することで、BackgroundのアルファをForegroundにも適用させることができます。
コンポジションの途中からクリップを表示する
このアニメーションでは[WE LOVE BURGERS]というテキストが途中から現れます。
AEはタイムライン上でレイヤーを操作するため、単純にレイヤーの頭を任意の位置に移動するだけで、コンポジションの途中から表示することができます。
Fusionでも、インスペクタからクリップの使用開始時間を指定することで同様のことができますが、タイムライン上で操作しているわけではないのでとても分かりにくいのでオススメできません。[Text+]の場合は、インスペクタの[Shading] > [Properties] > [Color]のRGBAそれぞれに[0]から任意の数値のキーフレームを打ち、透明状態から表示させています。
[Merge]ツールでも同じことができます。インスペクターの[Blend]という数値がForegroundの不透明度となっているので、[0] → [1]のキーフレームを打てば透明状態から表示させることができます。今回のハンバーガーのBackgroundにくるものは、透明の[Background]ツールを差し込みForegroundにマージしてキーフレームを打ちます。
コンポジションのサイズ
AEではコンポジションを作成する際にサイズ(解像度)とフレームレートを指定しますが、Fusionはどうでしょうか?フレームレートは前述の通り、基本的にEDITページのタイムライン設定に準拠します。ではコンポジションのサイズはどうなっているのでしょうか?
実は、Fusionのコンポジションそのものにはサイズの設定はありません。しかし、ビューワーを見てみると右上に映っているノードのサイズが書かれており、サイズという概念を持っています。
少々分かりにくいのですが、Fusionでは最下層のノードのサイズ=コンポジションのサイズとなっています。今回のハンバーガーのコンポジットでは、一番下にある背景画像が25601440となっているので、コンポジションのサイズも25601440となっています。
指定のサイズで作業がしたいという場合は、[Background]を作成し、インスペクターの[Image]タブの[Width / Height]でサイズを指定のものに設定して最下層にマージします。[Auto Resolution]にチェックが入っているとサイズを変更できないので、必ずチェックを外しましょう。
ハンバーガーのノード構成の紹介
最後に今回のハンバーガーコンポジットのノード構成をざっと紹介していきます。上の画像だと「ノードが多い......」と思ってしまうかもしれませんが、役割ごとに見ていくと案外そうでもありません。
左から見ていきます。まず各具材をマージして一つのハンバーガーにしています。具材と[Merge]の間にある[Displace]と[Transform]は、材料ごとにかけた歪みエフェクトとアニメーションです。AEではレイヤーに直接エフェクトを適用したり、それ自体のプロパティにキーフレームアニメーションをつけましたね。
次に[Transform]で一つになったハンバーガーのレイアウト調整とカメラワークアニメーションをつけています。また、この先で各エフェクトのために分岐をさせています。
分岐先では、フラットな絵に立体感をつけるためにハイライトとシャドウ、ハンバーガーに載せるテクスチャ、ハンバーガーのアウトラインをそれぞれ作成してから合流させています。
その後具材のキャプションをマージ、ハンバーガーと背景の間にもテキストを挿入し、最後に色収差やビネット効果をつけて、[Resize]でフルHDにリサイズして[MediaOut]に接続しています。
このように、一見複雑に感じてしまう多量のノードも、役割ごとに分けると「AEでプリコンポジションしてまとめる」ことと同じであるといえます。レイヤー構造だと思っていたハンバーガーも、ノードでコンポジットすることができるのです。
ハンバーガーという食べ物は見た目ではレイヤー構造ですが、複数の食材を一つの食べ物としてマージしていると考えると、ノードで捉えることも可能なのです!そう、ハンバーガーはレイヤーでありながらノードでもあるのです!偉大なりハンバーガー。
👉是非ファイルをDLして挑戦してみてください。DLには こちら をクリック!
まとめ
いかがでしたか?少しはノードへの苦手意識が克服されたでしょうか?
正直なところ、本記事を読んだだけでは完全にノードを理解することは難しいと思っています。実際に使ってみることで、感覚的に理解する部分も多いからです。ぜひ本記事を読んでからFusionのチュートリアルやセミナーにチャレンジしてみてください。以前はチンプンカンプンだったFusionのことが、今なら理解できるようになっているかもしれません。
またVookプレミアム会員の方は昨年開催したFusion初心者ウェビナーのアーカイブで基本的な操作やノードの考え方などから学べますので、ぜひご覧ください。
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本記事が皆さんとFusionの親密度を上げる助けとなれば幸いです。それでは皆さま良いFusionライフをお送りください!小町でした!
おまけ:Fusionの勉強について
「Fusionの勉強をどうやって行いましたか?」という質問を頻繁にいただくので、僕が行った中でコスパの良い方法をご紹介します!
公式トレーニングブック
DaVinci Resolveの公式Webページには、PDF教材とトレーニングに必要な素材ファイルが無料でダウンロードできるトレーニングページがあります。基本的には使い方からキーイングやモーショングラフィックス、果ては3D合成と、とても密度が高いものとなっています。
最新版はPDFの日本語化が進んでいませんが、日本語化の済んでいる15版でも充分理解に役立つので、英語が苦手な人は15版のトレーニングにぜひ挑戦してみてください。
Blackmagic Design JapanのYouTube
BMD JapanのスタッフがDaVinci ResolveやATEM Miniの使い方を紹介しているYouTubeチャンネルです。上記の公式トレーニングブックを元に、日本のスタッフが日本語で解説をしてくれています。PDF教材だけでは分からない場合は、こちらを見ながら取り組むと理解が進むでしょう!
作りたいものを作る
ある程度Fusionの使い方を理解したら、「こういうのを作りたい」→「こんなノード構成で作れるかもしれない」→「やってみる」の順に作りたいものを作ってみてください。作る前に作り方を考えることがミソです。上手くいかなかった場合はノード構成を再度考えることでノードへの理解が深まりますし、上手くいった場合は理解が合っていたことになります。
また、作り方を考えてから作ることで無駄な失敗も減りやすいです。闇雲に作るのではなく、考えながら作ることが大切ということですね。僕は考えすぎてお風呂に入っている時にノードのことを考えている時期がありました。
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