自己紹介
みなさん、こんちゃ。YouTubeにてAdobe After Effectsを中心に映像編集のテクニックをシェアしている サンゼです。 コツコツ活動を続けて、なんとチュートリアル動画の総数は120本を超えました!
先日、著書「一気にビギナー卒業!動画でわかるAfter Effects教室」の増刷が決定しました。購入してくださった皆様ありがとうございました。
今回は 「オフライン編集の可能性を広げる!After Effectsプラグイン8選!」 ということでオフラインエディターとして活動しているサンゼがAfter Effectsを使用している理由と、よく使うプラグインについてシェアし ていきます。
「プラグインの種類が豊富すぎて何を使っていいか分からない!」 と思っている方の参考になれば幸いです。
コマーシャル編集に関わるエディターの種類
オフラインエディターという職種に聞き馴染みが無い方の為に、コマーシャル編集に関わるエディターの 種類をご紹介します。
映像編集には大きく分けて、オフライン編集とオンライン編集というパートがあります。オフライン編集が終わったあとの工程が、オンライン編集です。
これは単に様式美として分かれているわけではなく、それぞれの編集ごとに「決めていく内容」が違う のでパート分けされています。
「オフライン編集で決めること」
オフライン編集では映像作品全体の構成を決めることが第一優先です。完成図に向けての設計図を作成するパートと考えていいでしょう。そのため、オフライン編集の段階では最終的なビジュアルまで詰めて完成させる必要はありません。
「オンライン編集で決めること」
オフライン編集で作成した設計図をもとに映像をより美しく最終的なビジュアルへ仕上げていくことを優先します。
編集業界の現状
しかしながら、最近ではPremiere ProとAfter Effectsの連携、FusionやDavinch Resolveなどの新しいツールの台頭によって、ツール同士の境界線が少しずつ無くなってきているように思います。その結果、一人のエディターがオフライン編集と、オンライン編集を兼任する流れも増えてきています。 そして、ツールの垣根がなくなる事により本来のオフライン編集とオンライン編集で「決めること」自体の境界線も無くなりつつあるように思います。
もちろん、クリエイターとして時代のニーズに応えていく必要はありますが、各工程での優先順位を見失ってしまうと作業中に混乱を起こしてしまうことになります。
そうならないためにも、あらためて各工程での優先順位を意識することで柔軟な対応が出来ることに繋がると思います。
▼CM編集のワークフローのPDFはこちら
https://www.sanze-echo.com/post/cmworkflowmap
オフライン編集では様々な検証作業が求められる
オフラインエディターとして映像編集に関わる際は、実写の撮影素材を扱うことが多いです。オフラインエディターという仕事上、撮影素材の組み合わせを出来る限り検証する必要があります。そのため、一見するとNGだと思われているカットを再利用してでも全素材の可能性を引き出すことも視野に入れなければなりません。
つぎに紹介する映像はNetflixの人気ドラマ「マインドハンター」のメイキング映像です。
1分4秒の辺りをご注目ください。ここで行っている作業は別々のテイクを編集上で合成する作業です。 それぞれの役者のOKテイクが別々であっても画面ワイプで組み合わせることで、それぞれの役者のベストテイクを使用した新しいカットを生み出す事が出来るかもしれません。
NGだと思われたテイクにも、沢山の可能性が秘められているということが分かると思います。
もちろん、このような作業は「本来のオフライン編集作業の範疇ではない」という議論も有るかと思います。しかし、撮影現場の限られた時間の中で、必ずしもベストテイクが撮影できるとは限りません。 そのためオフラインエディターは監督や撮影チームの意向を汲み取って様々な検証を行う必要があります。
そして、先程ご紹介したマインドハンターの事例のように簡単なワイプであればPremiere Pro上で解決出来るのですが、それ以上のレベルの検証をする場合はAfter Effectsで対応する場合が多いです。
ではここから、僕が検証作業をするために使用している便利なプラグインを紹介します。
カットの可能性を広げるオススメのプラグイン
1.Mocha AE 無料
製品URL
https://borisfx.com/products/mocha-ae-cc-mocha-for-after-effects/
解説動画 【Mocha Ae基礎講座①】画面ハメコミ合成!仕事で使える!
Mocha AeはAfter Effectsに最初からバンドルされている非常に優秀なトラッキング&マスクツールです。実写映像を扱う方にはもってこいのツールです。エフェクト&プリセットパネルの「Mocha AE」から呼び出すことが出来ます。
細かな機能紹介は割愛しますが、特徴はトラッキングをしながらマスク作成することが出来る点です。基本的にAeでマスク作成するときは、タイムライン上でマスクデータとトラッキングデータの2種類を親子付けして組み合わせて使用するためタイムラインパネルが散らかりがちです。
しかし、Mocha AEはこれらの作業を同時に行うことができ、かつ1レイヤーの中で複数のパーツを切り分けることができるのでレイヤーも散らかりにくいです。
また、トラッキングの精度が高い点も特徴的です。これはAe標準の点で追尾するポイントトラッキングではなく、 面で追尾するプラナートラッキングという技術を採用しているためです。トラッキング自体の精度が高いため、手作業での修正時間も抑えることが出来るので作業時間の短縮にも繋がります。
余談ですが、無料のMocha AEと有償版のMocha Proの違いについて説明します。Mocha Proはレンズの歪みを修正する補正機能がついていたり、Autodesk FlameやBlackmagic Fusionなどの外部コンポジットソフトへトラッキングデータを受け渡しできるエクスポート機能が強化されている点が大きな違いです。
ベースとなるトラッキングのシステムは共通なので、Aeだけでコンポジットをする場合はMocha AEで十分だと思います。
2.VFX Spot Clone Tracker MAXONのRed Giant Completeに付属
製品URL
https://flashbackj.com/product/vfx-spot-clone-tracker
サンゼの解説動画
バレ消しに最適!REDGIANT SPOT CLONE TRACKER
映像の特定の部分を簡単にコピペすることが出来るプラグインです。撮影ミスの簡易的なバレ消しや、タレントのホクロ消しなどの肌修正も出来るのでNGテイクの復活に役立ちます。
さらに、トラッキング機能がエフェクトに内蔵されています。
なので、コピペする箇所が動いていても内蔵トラッキングを使用してスマートに作業出来ます。コピペしたテクスチャの色味もいい感じに中間色に調整してくれるので、After Effectsでサクッとバレ消しをするときにかなり活躍します。
VFX Spot Clone TrackerのTIPS
実はSpot Clone Tracker内の「Spot Center」に標準トラックで作成したポジションデータをコピペすることが出来ます。こうすることでエフェクト内のトラッキングよりも早く正確にコピペの範囲指定をすることが 出来ます。
エフェクト内蔵のトラッキングは若干処理が遅いので、尺の長いクリップや複数箇所のバレ消しがある場合はこの方法を試してみてください。
3.Beauty Box Video 5.0 肌修正プラグイン 28,600円
解説動画
製品URL
https://flashbackj.com/product/beauty-box-video
スポイトで肌の色味を拾うことで簡単に肌修正することが出来るプラグインです。 初稿のチェックやWEBCMであればこのプラグインで簡易的に修正するだけでも十分なパターンも多いです。
オフライン試写後にタレント事務所へ映像をチェックに回す際、肌修正をしないで提出するよりも 簡易的でも肌修正をして提出したほうが編集に対してのリアクションが良いです。
それによってタレント事務所が肌を気にして「もっとキレイに写っている別テイクありませんか?」と、演出意図と違う部分でテイク差し替えの議論になってしまうことを防ぐ効果もあります。
さらに、Premiere Pro上でも使用出来るプラグインなのも有り難いところです。 例えば、クライアント試写のタイミングで肌について指摘があればPremiere 上でスピーディーに修正し、 その場で修正確認を取り、懸念点を潰すことが出来ます。これで議論を先送りにせず、オンラインエディターの負担を減らすことにも繋がります。
あとに控えるパートの負担を減らすことで、本来の作業に注力してもらうことが出来ます。その結果、作品の仕上がりも良くなることにも繋がります。
注意点としては単にBeauty Boxをかけただけでは肌の質感が均一になりすぎて、いかにも肌補正した仕上がりになってしまいます。 そういった場合は先程ご紹介したMocha AEと組み合わせて部分的にエフェクトを調整していくことで1ランク上の質感に調整することが出来ます。
作業速度を向上させるプラグイン
1.KBar 2 5,720円
作業効率化エクステンション
製品リンク
https://flashbackj.com/product/kbar
製品紹介動画
エフェクトやエクスプレッションの他、様々なコマンドをボタン化が出来るツールです。よく使うトーンカーブ、エクスプレッション、キーフレームの入れ替えコマンドなどを登録しています。
デフォルトでアイコンが用意されていますが、png画像を用意すればオリジナルのボタンが作成できたりとユーザー次第でいろいろな拡張が出来るのが面白いツールです。
Kbarの使用イメージ
サンゼの設定内容
コマンドIDはこちらを参考にしてください。
http://ae-users.com/jp/tips/operation/2009/12/commandid/
2.Move Anchor Point 4,710円
アンカーポイント移動系ツール
https://flashbackj.com/product/move-anchor-point-4
アンカーポイントを1クリックで移動させることが出来るツールです。無料のアンカーポイント移動ツールなども有るのですが、これがUI的にもシンプルで愛用しています。
After Effectsの標準機能として付けておいてほしいくらい欠かせないツールです。
3.Nisai Bara moji 無料
文字バラシツール
https://nisai.booth.pm/items/3471493
テキストを文字単位でバラしてくれます。テキストモーションの作成をするときに重宝します。文字バラシ系のスクリプトは色々存在するのですが日本語文字をバラすとレイアウトが崩れやすかったり、文字の打ち替えをしてもテキストのレイヤー名が更新されない物が多いです。しかし、このスクリプトはそういった問題が起きにくいので管理も簡単になります。
無料版として紹介しましたが、同じ機能で500円の支援版もありますので、無料版で試したあと気に入った方はぜひ支援版を購入してみても良いかと思います。
4.Dojo Screenshot 6.99ドル
スクショ撮影ツール
https://creativedojo.net/store/dojo-screenshot-script/
コンポジションからスクリーンショットをワンクリックで作成できます。アルファチャンネル付きのPNGで書き出せるのでAfter Effectsでデザインしたテロップであったり、仮コンプの画像をPremiere Proに読み込む際に重宝します。
Video Copilot FXConsoleでも同じことが出来るのですが、シンプルなUIが好きなのでこちらを使用しています。
5.PluralEyes 4 39,600円
音声と映像の自動同期ツール
解説動画
[ https://vimeo.com/154822944:embed]
製品URL
https://flashbackj.com/product/pluraleyes
撮影素材と同時録音素材を音声波形をもとに圧倒的に早く同期することが出来るツールです。 コマーシャルの編集の際は最後のMAで差し替えることもありますが、柔軟な対応をするためにオフライン編集の準備段階で同期をしておくと便利です。
作業UIをミニマルにしたい理由
こちらはサンゼのAfter Effectsの作業画面です。なるべくUIがミニマルに収まるように心がけています。その理由は、限られた機材環境で作業することが多いためです。
冒頭でもお話したとおり、オフラインエディターは全体の構成や微妙な間合いを探っていく作業がメインになります。そのため現場に出向いて編集作業することが中心になります。
そうなると毎回潤沢な機材を持ち込めるとは限りません。なので、その点を考慮するとラップトップPCの 画面1枚で完結するシンプルなUIにしたほうが使い勝手がよくなります。
▼オフラインエディターのリュックの中身
オフラインエディターのリュックの中身
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まとめ
今回はオフラインエディターという視点から、ストーリーテリングの可能性を広げるためのAfter Effects のプラグインを紹介させていただきました。 実際の皆さんの作業と照らし合わせながら取り入れていただければ幸いです。
忘れないでいただきたいのが、ツールの境界線が無くなってきたり、ツールの種類が変わっても作業工程での「決めること」がブレてしまってはいけません。
作業の可能性を広げる為にツールを使うという視点を大切にしていただけたらと思います。 前回のカッターズポイントの記事はPremiere Proを中心に編集を素早くするための優先順位についてシェアしております。ここがブレていると編集作業の時間短縮が難しくなるので、一緒に整理していきましょう。
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