【Davinci Resolve】カラーコレクション・カラーグレーディングの基本を解説

Sponsored by 株式会社マウスコンピューター
2022.02.11 (最終更新日: 2023.03.20)

みなさん、初めまして。映像ディレクターの深尾銀次(ぎんじ) と申します。現在は、京都を拠点に主に企業のプロモーションやブランディング、ドキュメンタリー映像を制作しています。また、私は普段からDaVinci Resolveを活用し編集作業をしており、映像において色が与える影響の大きさを常々実感しています。

では早速今回の内容についてですが、「DaVinci Resolveのカラーページの役割と基本理解」としまして、ノードの仕組みや順序について、私のワークフローを用いながら進めていきたいと思います。これから編集ソフトの利用を始めようと思っている方やDaVinci Resolveに興味のある方は、ぜひ最後まで読んでいただければ幸いです。

カラーページの役割

映像制作において、カラー編集作業は面白く奥深い世界であり、映像全体のLOOK(世界観や雰囲気)を司どる重要な役割を持つパートです。

カラーコレクション・カラーグレーディングとは

■カラーコレクション(カラコレ)の役割
明るさや色の補正のこと。プライマリーやノーマライズなどと言ったりしますが、実際のニュートラルで自然な色味に整えることを目的としています。例えば空が白飛びしそうな状態なら、ハイライトを少し抑えてあげたり、人肌の色味を適正に整えたりすることが挙げられます。

カラー編集においてカラコレはベースになります。この作業を怠ってしまうと、あとで画作りをしたいときに上手に色を抽出できなかったり、シーンやカットによって色味のトーンがバラバラになってしまいます。


左:カラコレ前 / 右:カラコレ後

■カラーグレーディング(カラグレ)の役割


カラグレ後

カラコレにより補正された映像に対し、さらに作品のテイストやトーン&マナーを表現するために色を全体的または部分的に調整していくことです。例えば空の色をシアンに近づけたり、衣服のカラーを変更するなど、映像表現としていわばアートのような世界であり、これが必ず正解という決まりはありません。

しかし、ワークフローで注意すべき点などはたくさんありますので、そのあたりについてご説明できればと思います。

カラーページの役割について、カラコレとカラグレが理解できたので実践に進みたいところですが、その前に理解しておきたいことがあります。それは、DaVinci Resolve特有の機能である「ノード」についてです。

DaVinci Resolveのノードって?

ノードとは、明るさやコントラスト、彩度などの属性を格納できるコンテナのようなもので、ノード同士を繋げていくことで、属性が追加されていき、最終のLOOKを完成させることができます。また、一つのノードに対して沢山の属性を加えることもできますが、ある程度ノードごとに分けておくことで、後から容易に前の属性の数値を変えたり、削除したりできます。

ノードを使用すると、補正をいくつか行っても、ノード同士を結ぶことで瞬時に設定の反映と出力が出来るので便利です。

またこの記事を読んでくださっている方々の多くは、映像撮影をする際にLogかRAWを使用されるかと思います。これらについても少しだけ触れてカラコレに進みます

RAW(ロー)とLog(ログ)について

RAWとは言葉の通り「生」と言う意味で、カメラのセンサーで受けた情報を基本的にそのまま記録することができます。(厳密には少し圧縮しているものもあります)

有名なところだと、RED CODE RAW / Cinema DNG / Blackmagic RAW / ProRes RAWなどです。

RAWの特徴
センサーで受けたRAWデータを直接処理できるため、撮影後でもホワイトバランスとISOを自由に変更することができたり、グレーディングの自由度も非常に高いです。
しかしながら、データ量が大きくなり、編集時にはある程度のスペックのPCが必要になったり、管理が大変というデメリットがあります(最近はかなり扱いやすくなってきています)。

Logとは主にミラーレスカメラなどで使用されるピクチャープロファイル(ガンマ)のことであり、センサーで受けた情報からカメラ内で重要度の低いデータを間引くことで、広いダイナミックレンジを確保することができる撮影方法です。各社カメラメーカー独自に開発されており、C-log / V-Log / F-Log / L-log / D-Log / S-Logなどがあります。

Logの特徴
RAWデータより情報量は少ないものの、非常に軽く、広い階調を持った映像制作が可能です。しかしながら撮影データは彩度やコントラストが低く、いわゆる「眠たい」映像となりますので、撮影時には変換LUTを当てるなど工夫が必要です。

カラーコレクションの機能と手順

お待たせしました、ここまで長々と書いてきましたがカラコレに進みたいと思います。今回はPanasonic LUMIX GH5で撮影されたLog素材を用意しました。

カラコレでは、主に輝度、彩度、色相、ホワイトバランス(温度、ティント)、コントラストを調整していきます

まずは最も基本となる「シリアルノード」について。シリアルノードは一つのインプットと一つのアウトプットを持ちます。そのため、一つ前のノードに追加した属性を次のノードに送ることで、属性を追加していきます。カラーコレクションでは基本的にこのシリアルノードで事足りることが多いです。

操作するには、カラーページ右上の画面でノードを組んでいきます(以下の画像を参考にしてください)。デフォルトで一つシリアルノードがありますが、さらに追加するには、ノードセクションで左クリック → ノードを追加 → シリアルノード と選択します。

ノードは赤枠で囲まれていますが、これは現在作業しているノードを意味しており、編集者はいつでも複数のノード間をワンクリックで素早く移動し調整することができます。


1. 輝度(明るさ)の調整

プライマリーホイールのリフト・ガンマ・ゲイン・オフセットのバーの出力値を調整します。

  • リフト・・・暗部(シャドウ)
  • ガンマ・・・中間部(ミッドトーン)
  • ゲイン・・・明部(ハイライト)
  • オフセット・・・全体

この時、写真右下のパレードスコープを参考に、RGBのグラフが上下にクリッピングしないように注意して調整します。パレードスコープとは、RGBそれぞれの輝度成分の分布を表したもの、クリッピングとはいわゆる白飛び、黒潰れのことです。

数値の0と1023は明暗の限界値であり、極力そのラインを超えないほうが望ましいです(色情報がなくなるため)。


左:調整前 / 右:調整後

2. コントラストの調整

プライマリーバーのコントラストまたはカーブを使用して調整します。

今回はカーブを使用して明暗の調整をしました。具体的には、明部と暗部を下げて少し引き締めています(人間の目は彩度よりも明暗の差に敏感なので、後に出てくる彩度よりも先にコントラストを調整する方が作業しやすい、と個人的には感じています)。

※先に彩度を調整してしまうと、後でコントラストをつけた時に少しくどい印象になりがちです。


3. ホワイトバランスの調整

ホワイトバランスは、撮影時に正しく調整することが望ましいです(今回は省略します)。編集時には先ほど使用したベクトルスコープを参考にして、RGBそれぞれのラインが均等に揃うように調整します。

操作としては、プライマリーバーの色温度とティントを調整します。マウスを右クリック、「ピッカーのRGBを表示」を選択し、カーソルを極力白や黒の部分に持っていくと、更に正確なホワイトバランスを調整することができます。

4. 彩度の調整

プライマリーバーの彩度を調整し、適切な彩度に調整します。

5. スキントーン(肌色の調整)

スキントーン(肌の色)調整は必ずしも必須ではありませんが、今回は少し赤みがかっているように感じましたので色を整えていきます。

使用するのは、「クオリファイアー」「パワーウィンドウ」「トラッキング」です。

1. クオリファイアーで肌の色を抽出します

画面上の真ん中下辺りにある、スポイトの様なマークを選択します。

そうすると、マウスポインターがピッカーに変化しますので、そのまま被写体の肌へ持っていき、クリックします。それだけでは変化がわかりづらいので、下の画像の左上丸印をつけている箇所をクリックします。そうすると選択した箇所だけが表示されるようになります。

クリックしたままマウスを選択したいところに移動させていきます。そうすると、大まかに被写体の肌の抽出ができるかと思います(選択しすぎてしまった場合は、control +Zで戻って再度選択をしましょう)。

大まかに選択ができたら、下の画像の色相・彩度・輝度 / マットフィネスを使用して更に詳細に人肌の色を選択していきます。

色相・彩度・輝度のバーで中心点を移動したり、幅やソフトの数値を変更すると、選択されている部分がリアルタイムで反映されます。

マットフィネスでは、選択されている箇所の境界のぼかしや、選択部分 / 非選択部分をさらにくっきりとすることができます。

2. パワーウィンドウを使用して、選択したい範囲にマスクをかけます

このパワーウィンドウの操作は、マスクを作り、範囲を限定することが目的です。今回は背景で取り除けなかった箇所があったので使用しています(必要に応じて使用してください)。

操作方法は、以下の画像の画面からマスクの種類を選択します。今回はより繊細に選択範囲を限定したかったので、カーブというウィンドウを使用しました。このウィンドウは被写体を繊細に切り抜くことが可能です。

3. 被写体の肌の色がかなり綺麗に選択されたので、肝心のカラーを変更していきます

今回はプライマリーバーのオフセットを使用しました。操作方法としては、オフセットバーのカラーホイールの中心点を選択し、少しだけイエロー方向に移動させました。


左:変更前 / 右:変更後

4. 最後にパワーウィンドウにトラッキングをかけます

映像には動きがあるので、パワーウィンドウでマスクをかけた部分を追従させるためにトラッキングしていきます。操作方法としては以下の画像の丸印を選択します。その後、赤い縦線のバー(タイム軸)を右端または左端に持っていきます。

そして、印をつけた再生マークをクリックすると自動で追従を開始します。これでカラーコレクションは完了です。

カラーグレーディングの機能と手順

ではここからカラグレに進みたいと思います。まず、カラグレをするにあたって、以下のノードについて理解しておく必要があります。

パラレルノード
一つのインプットから複数アウトプットすることができ、アウトプットされた個々のノードでは別々の作業を行い、最後にはパラレルミキサーでブレンドされるようになっています。

レイヤノード
パラレルノードと形は似ていますが、複数のアウトプットからミキサーに繋がれるときに、均等にブレンドされるのではなく上のノードを下のノードが上書きするようになっている点が異なります。また、ミキサーでは乗算やオーバーレイなどさまざまなブレンド方法を選択することができるのもこのノードの特徴です。

アウトサイドノード
手前のノードでパワーウィンドウを用いて選択した範囲が反転されたノード。私がよく使用する方法としては、全体的にぼやっとしている映像で被写体を際立たせたいときに、一つ手前のノードで被写体を大きくパワーウィンドウで囲い、その後にアウトサイドノードで反転させ、主役以外の明るさを少し抑えたりします。

ではここから実際のフッテージを見ていきましょう。


まずはシンプルでもここまでできる(LUT使用)

LUTとは?

Look up table の略で、彩度と輝度情報に変換した表データです。LUTを使用することで、一定の法則に則って、輝度および色情報を変化させることができるため、全てのクリップの色合いを同じ法則に則って変換することができます。

インスタグラムなどのカラーフィルターとは少し原理が違いますが、理解としては近いです。

LUTの種類

LUTは主に2種類あります。

1. Rec.709変換LUT 
LogにはS-LogやC-logなど各社それぞれの仕様があるとご説明しましたが、それぞれのLogファイルに対して各社はRec.709用の変換LUTを作っています。

Rec.709は色域の話となるため今回は割愛しますが、簡単に言うと、普段私たちが見ているTVなどの放送業界でスタンダードな色情報の範囲のことです。

そのため、こちらの変換LUTを使用するとLogデータを一瞬でコントラストや彩度が豊かな映像に変換してくれます。用途としては主にカラーコレクションを前提としていますので、Logデータに対して直接このLUTを使用します。

2. クリエイティブLUT
こちらは主にカラーコレクションが完了した映像に対して使用することで、簡単に映画のようなLOOKや世界観を作ることができるものです(カラーコレクションも兼ねているクリエイティブLUTもありますが、ここでは割愛します)。

では、ここからLUTの使用方法についてお話しします。今回はカラコレが完了した先ほどのクリップに、クリエイティブLUTをあててみます。

まず、カラコレが完了したら、新たにシリアルノードを生成します。そこにLUTファイルの中から好きなLUTを適用します。マウスポインターをLUTファイルの上に重ねると、タイムライン上の映像にも反映されるのでわかりやすいです。

次に、このままではLUTの入力値が強いので低くします。これで完成です。

注意点
クリエイティブLUTは極力後ろのノードで使用すること。現在幅広く使用されているLUTは3DLUTの33×33×33という形式ですが、これはRGBそれぞれが33階調の情報を持っています。
例えば10bitの映像ではRGBそれぞれが1024階調ありますから、変換される際には不足したLUT情報を近接するポイントから補完することで補っています。そのため、データ量は軽くなりますが、これらは完璧な変換ではありません。
LUT変換される前にはRGBに対しての属性(明るさ、彩度、コントラストなど)を完了させておくことが望ましいです。

LUTについて、簡単にまとめられた記事がありましたので参考に。
https://www.nacinc.jp/faq/dcc0006/

ではLUTを使用した場合のワークフローについて解説していきます。

ノードツリーはこんな感じです。至ってシンプルではありませんか?

1. Glowを追加

グローはDaVinci Resolveの右上のエフェクトライブラリから検索し、追加したノードにドラッグ&ドロップをすることで追加できます。効果としては、ハイライト部分の光を拡散させることができ、非常に独特な世界観を演出できます。

また、人の肌に対してはふわっとした仕上がりになるので、女性の映像のカラーグレーディングなどでよく使用されます。

設定ページから明るさのしきい値、拡散と縦横の比率を調整し、理想のLOOKとなるように調整してみてください。

2. LUTを追加

LUTの適用方法については、前述の通りです。

3. ノイズリダクションでノイズ処理をして完成

最後にノイズリダクションを使用し、ノイズを除去します。

ノイズリダクションの説明はここでは割愛しますが、操作方法としては、まず時間的ノイズリダクションで試してみて、それでもまだノイズが消えきらなかったら、次に空間的ノイズリダクションを使ってみましょう。たいていは時間的ノイズリダクションだけできれいにノイズが除去できるはずです。

さらに追い込むならこうできる!

海外の柔軟剤メーカーのCMにありそうなLOOKを表現してみました。

手順
1. カラコレ後、レイヤノードを使用して全体、肌、唇というように振り分け

レイヤノードは下にぶら下がっているノードが上のノードを上書きするので、まず全体のLOOKを調整し、その後肌や唇を調整します。

2. レイヤノードの調整後、調整用のシリアルノードを追加

目的としては、全体のトーンを馴染ませることで、プライマリーホイールのリフト部分を少し持ち上げ、より一体感をつけました。

3. Glow (グロー)を追加

4. パワーウィンドウのグラデーションを使用し、ライティングを強調
カラコレの際、人の肌にパワーウィンドウを使用しましたが、今回はグラデーションツールを使用します。効果としては、適用したい箇所にグラデーション的に適用したい効果をかけることができます。

被写体の後方の窓をメインの光源とし、被写体前方のほうがやや明るい印象があったので、プライマリーホイールのガンマを下げ、より自然なLOOKにするために後方と明暗をつけてみました。

※これはあくまで私の所感ですので、実際の作品ではトーン&マナーや訴求に準ずる必要があります。

5. シャープネスを追加

次にこのカット全体に少しだけシャープネスをかけました。シャープネスには輪郭をはっきりとさせる効果があります。以下の画像の左側のバーを下げていくとシャープが強くなり、上にあげていくとブラーがかかり逆に輪郭がぼやけていきます(かけすぎには注意しましょう)。

6. ノイズリダクションでノイズを低減

カラグレは以上になります。ここまでお付き合い下さりありがとうございました。

終わりに

いかがでしたでしょうか。特にカラグレは私もまだまだ勉強中ですので、こうすればもっと効率が良いなどのご意見もあるかと思います。また、今回はより実践的に、私のワークフローで進めていきました。

内容については深く言及できていない箇所もありますがご了承ください。またVOOKの記事には、DaVinci Resolveについてだけでなく、様々な方々が有益な情報をたくさん書いてくださっているので、そちらも是非参考にしていただければ、より理解が深まると思います。

それでは、この度はありがとうございました!

この記事を読んだ方におすすめのPCはこちら

DAIV Z7

Cutters Point お悩み解決TIPSシリーズ<DaVinci Resolve>

【DaVinci Resolve】自分だけのカラーグレーディング(LUT)の作り方!

自己紹介 皆さん、こんにちは。映像ディレクターをしています、Ren Takeuchiです!広告映像、ライブ配信、ミュージックビデオなど幅広く映像制作をしており、DaVinci Resolve公認...


DaVinci Resolveでクロマキー合成する2つの方法【認定トレーナーが解説!】

こんにちは!DaVinci Resolve 認定トレーナーの小町です。最近は多くの方が動画撮影/編集を行っているのを見かけ、映像の裾野が広がっているなぁと感じています。特にコロナ禍においては様々...


RAWは難しくない!? RAW動画撮影のポイントやDaVinci ResolveのカメラRAWを徹底解説

みなさんこんにちは、DaVinci Resolve大好き、Akiraxeこと照山明と申します。自分は学生時代、16ミリフィルムで映画を撮影していて、デジタルで撮影するようになった今でもフィルムの...


【DaVinci Resolve】挫折しやすいFusionページの使い方を徹底解説!

はじめに こんにちは!DaVinci Resolve 認定トレーナーの小町です。みなさんDaVinci Resolveでの映像編集、捗っておりますでしょうか?DaVinci Resolveは編集...

コメントする

  • まだコメントはありません
記事特集一覧をみる