マイクロフォーサーズ動画機の集大成 LUMIX GH6 レビュー

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2022.02.22 (最終更新日: 2022.02.22)

ついに待望のPanasonicマイクロフォーサーズカメラのフラッグシップ機、LUMIX GH6が発表されました。LUMIX GHシリーズというと、ミラーレス機で初めてHDの動画撮影が可能となった初代GH1から、ミラーレス動画の世界を先導してきたエポックメイキングなシリーズ。

私は大学時代に財布をひっくり返してGH1を買い、それで作った作品がきっかけで映像業界に入った人間でもあるので、GHシリーズには強い思い入れがあります。その後GH3、GH4も愛用し、アフリカや東南アジアで子供たちを撮ったり、ヨーロッパでシェフを撮ったり、漁船の上で漁を撮影したりと、その小型ボディを活かして、世界各地でガンガン撮影に使ってきました。

▲これまでGH4で撮影した写真たち

ただ、ここ最近はLUMIXシリーズから離れてしまっていて、GH5/GH5S/GH5IIは少し触った程度でしっかりと作品制作には使っていませんでした。そんな少しご無沙汰になってしまっていたGHシリーズが、GH6でどんな進化を遂げているのか?ドキドキしながら発売前に少し使わせていただきましたので、その感想をここでまとめさせていただきます!

マイクロフォーサーズ動画機の集大成となるカメラ

GH6の実機を見て、そのスペックを知り、
まず私の頭に浮かんだ言葉は「狂気」でした。

LUMIXにはマイクロフォーサーズの他にフルサイズのSシリーズもありますが、そのフラッグシップ機であるS1Hの約2倍の性能という画像エンジンを搭載し、LUMIXシリーズで初めてカメラ内部でのProRes422/422HQ収録や、時間制限なしのC4K 60p 4:2:2 10bit収録を可能にするなど、他機種との兼ね合いで機能を制限することなく、「今できることを全部詰め込みました!」という、開発陣のいい意味での目の血走った狂気感が端々から感じられるカメラというのがGH6の最初の印象。LUMIX GHシリーズの集大成と呼ぶにふさわしい大幅な進化機になっていると感じました。

そのヤバさポイントを一つずつ確認していきましょう。

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コストパフォーマンスの異常な高さ

このカメラのすごいところは、想定市場価格263,000円前後という価格で、ほぼほぼ業務用の動画撮影機が手に入るということだと思います。ミラーレスカメラはどうしても「基本的には写真用、でも動画機能も充実しています!」というものが多く、動画もきれいに撮れるカメラは増えましたが、細かい使い勝手や機能が足りないものもあります。一方、動画専用のレンズ交換式カメラは各社50万円を超えたところからスタートとなるものがほとんどです(Blackmagicなどの例外はありますが)。

しかしGH6に関しては、これはもうほぼ動画専用機と言ってもいいのではないかというくらい動画撮影機能に振り切っています。特筆すべき動画関連の機能は以下のような感じです。

  • 4K 60p 10bit 4:2:2時間無制限記録や4K 120p 4:2:0 10bitで収録可能
  • ProRes422/422HQを内部収録でき、収録解像度も5.7KからC4K、アナモフィック用の4:3など多彩
  • シネマ用のVARICAMと同じV-Logを採用
  • Dレンジを拡大するダイナミックレンジブースト機能を搭載
  • モニターはS1Hのものに近いチルトフリーアングル機構を搭載
  • 手ブレ補正が7.5段となり、さらに滑らかな補正に改善
  • 音声は48kHz 24bitで4chまで収録可能
  • ファン搭載で放熱システムも高効率化
  • AFも演算速度の高速化とアルゴリズム改善で精度向上
  • AFのジョイスティックは斜め方向にも対応
  • USB-Cでの給電・充電に対応
  • タイムコード端子の搭載
  • もちろんHDMIはフル端子
  • 前方RECボタンも配置
  • 底部の1/4インチネジ穴に加え、回転防止用の穴が追加
  • セーフエリアを表示するセーフティーゾーンマーカー
  • お馴染みとなった収録時の赤枠表示も勿論搭載
  • USB SSDでの収録もファームウェアアップデートで対応予定
  • HDMIからNinjaV+等へのC4K120pRAW出力もファームウェアアップデートで対応予定

以上のようにあげるとキリがないくらい動画撮影に便利な機能が詰め込まれています。改めてこれが20万円台という値段で手に入るという事実に驚くしかありません。

マイクロフォーサーズという選択

さらにGH6がマイクロフォーサーズマウントのカメラであることも、このコストパフォーマンスの高さをさらに別の次元にまで押し上げてくれます。カメラ本体の値段感も勿論ですが、フルサイズ用と比べるとマイクロフォーサーズレンズは手頃なものも多く、さらにミラーレスの中では歴史が長いマウントである分、レンズのバリエーションもかなり豊かです。COSINAフォクトレンダーのF0.8&F0.95レンズやSIRUIのアナモルフィックレンズなど、ちょっと特殊なルックを生み出すレンズも多く、それらを使えるというのも大きなメリットだなと思っています。

そういった意味では、動画撮影機材を一式揃えると考えた時に、特に業務用途を考えると、同じ予算の中でも、さまざまな状況に対応できる充実した撮影セットを揃えることができるという意味で、GH6というのはかなり魅力的な選択肢になるのかなと感じました。

ちなみにGH6ではマイクロフォーサーズの弱点とも言われていたダイナミックレンジをダイナミックレンジブーストという機能を搭載することで改善もさせています。これは撮影時に同時に2種類の画像を取得し、リアルタイムで合成することで最大13+ストップのダイナミックレンジを確保するというものです。

※ただしV-Log撮影時にこのダイナミックレンジブーストを使うと、ベースISOが2000に変更されます。(通常時のV-Logベース感度はISO250)

私が実際に使ってみて特によかったと感じたポイント、
気になったポイントを以下でご紹介していきます。

安定した手ブレ補正

GH6では新しく超高精度のジャイロセンサーを採用。アルゴリズムをさらに最適化したことで手ブレ補正が7.5段分にまで強化されました。個人的にはこの数字よりも動画撮影時に自然で安定した手ブレ補正が実現できているということに非常に魅力を感じました。

というのも、ボディ内手ブレ補正機構を採用したミラーレスカメラの多くで、広角レンズを使って動画を撮影した際に画面の4隅が不自然に歪むという問題が発生しがちです。特定の機種やメーカーに限らず、多くのボディ内手ブレ補正機構が入っているカメラで見られる現象です。

私は撮影時に広角レンズを手持ちで使うことが多いため、その手ブレ補正の歪みが非常に気になり、最近ではボディ内手ブレ補正つきのカメラを使用することをやめていました。

そのため今回、GH6ではその点はどういう動きをするのか非常に気になっていましたが、使ってみると、広角10mm(フルサイズ換算20mm)で撮影をしてみても、嫌な歪み感はほとんど感じず、「これなら手持ちでガンガン振り回したい!」と思わせてくれる出来になっていました。ものすごく手ブレが効く!というよりも、安定して自然に補正してくれるというイメージです。

マイクロフォーサーズは規格上、フルサイズなどと比べるとボディ内でセンサーを動かす余地が大きいはずなので、そのメリットもありこのような自然な手ブレ補正が実現できているのかなとも思います。また動画用途を強く意識しているGHシリーズだからこそ、動画用の手ブレ補正のチューニングも深いところまで詰めてくれているのかなとも感じました。いずれにせよ、これなら広角レンズも手持ちでガンガン使って撮影したいなと思わせてくれるカメラに仕上がっていました。

動画ユーザーに向けて改善された細かい点

チルトフリーアングルのモニター

私が実は最も嬉しかったのは、GH6にチルトフリーアングルのモニターが搭載されたことでした。ミラーレスのモニターは各社各モデルいろいろな方式を採用していますが、それぞれ一長一短がありました。

主流になりつつあるバリアングルモニター(横に開くもの)は、自撮りなどをしたときに前からでもモニターが見えたり、上下に幅広く動かせるのが良いですが、ストラップをつけたときに干渉しやすかったり、カメラの中心軸からモニターが外れてしまうので使いにくかったり、HDMIやマイク・イヤホンなどを使うと端子にモニターが干渉して可動域が狭くなるなどの問題がありました。

このさまざまな問題を解決してくれるのがこのチルトフリーアングルモニターです。カメラの中心軸から外れずに上側にも開く。そしてそこからバリアングルのように横側にも開くことができ、端子類の干渉を防ぐようになっています。似た構造のものがS1Hで既に採用されていましたが、とても好評だったようで、個人的にもこれがベストなモニターの開閉方式なんじゃないかと思っていました。それとほぼ同じ構造が今回GH6にも満を持して搭載されています。

底部に回転防止用の穴が追加

底部のネジ位置がGH5はちょっと後ろ寄りでしたが、それがほぼ中心になり、さらにその前に回転防止用の穴が追加されました。動画三脚にそのままのせたい人にも、ケージをつけたい人にも嬉しい改善となっています。
さらにバッテリーもグリップの中に収まるような入り方になり、三脚につけたままでもバッテリーの交換がしやすくなっています。またバッテリーのドアにはケーブルを通す丸型の穴とフタも付いており、バッテリードアを閉じたままカプラーで電源供給もできるようになっています。

4ch音声収録にも対応

GH6は音声の24bit収録ができるようになり、さらに4chの音声収録にも対応しました。これはGH5などと同じようにDMW-XLR1を接続したときに、XLRの2chに加えて、本体の3.5mmマイク端子からの入力(もしくはカメラ内蔵マイク)も2ch同時に収録できるというものです。ワンマンの取材撮影などでワイヤレスラベリアを2つに使い、さらに環境音も収録しておきたい!というような場面に非常に便利になりました。もちろんこのときイヤホンでどの音をモニターするのかも細かく設定できます。
また、本体上部にマイクとiのアイコンが描かれたボタンが配置され、それを押すと以下のように音声周りの情報が一覧で表示されるようになっています。
以上のようにスペックに表れにくい、細かい使い勝手の部分が細かく改善していると感じました。さすが動画ミラーレスを先導してきたGHシリーズ!という印象です。

撮影してみての感想

今回、GH6とLEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm / F1.7 ASPHのズームレンズを使って短い作品をひとつ撮ってみました。

V-Log 4K 24p 4:2:2 10bitで撮影し、ところどころで120pで撮った素材も使用しています。編集でフィルムグレインを足したり、グレーディングを強めにしているので、撮って出しの画の参考にはならないと思いますが、全編手持ちで撮影しているので、手ブレ補正の利き方などの参考としてご覧ください。

私はここ数年、BMPCC4K/6Kを使った撮影が多かったので、信頼できる手ブレ補正がある便利さをひしひしと実感。また120pも映像の中でリズムのアクセントをつけるのに有用で、それらが一台で出来るGH6の汎用性を感じます。

特にBMPCC4Kユーザーにとっては、写真も撮れず手ぶれ補正やAFもないのでBMPCC4Kだけだと振り回して撮影したい作品などに対応できず、もう一台ミラーレスをもつ人も多いと思います。このGH6はマイクロフォーサーズのレンズをBMPCC4Kと共有しつつ、BMPCC4Kにない「ボディ内手ブレ補正」「4K 120p」「写真撮影」「オートフォーカス」といった機能を補完してくれるカメラであり、2台持ちする相性はとてもよいなと感じました。

近年の最新ミラーレスカメラはフルサイズのものが多く、被写界深度の浅さを活かした画づくりをした作品も多くなっていますが、それとはまた少し違った方向性で作品作りをしていきたい!仕事でガンガン回せるカメラが欲しいという人には、いまGH6でマイクロフォーサーズを使いこなしていくというのも面白いかなと思ったりしています。

ぜひ一度触ってみて、その操作感、機能を試してみてください!


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伊納 達也@tatsuyaino

伊納達也 ノンフィクション映像作家 コミュニティをテーマとしたドキュメンタリーフィルムの制作や、企業のCSV/CSRなどの持続可能な取り組みに関する映像制作を行う。 (経歴) 東映シーエム株式会社で制作進行として勤務後、2014年から株式会社u...

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