2017年の発売当初からGH5/GH5Sを愛用しています。
僕にとって相棒とも呼べるカメラです。
これ1台で色々なジャンルの撮影をしました。短編映画、MV、ドキュメンタリー、メイキング、インタビュー、ウェディング、WEB CM、マルチカム生配信/収録…etc。万能な動画カメラとして長年お世話になりました。
今回はよりパワーアップしたGH6をお借りして、インラインスケーターとして活躍中の中山慎太郎さん、スケートカメラマンのCrazyColorWorksにも協力いただき、実機テストを行いました。
僕がなぜマイクロフォーサーズ機GHシリーズを使うのか
コンパクトさ
ビデオグラファーは黒子であることが求められます。いかに目立たず、威圧感を与えずに良い画、良い表情を撮影できるか。時にはリグも外部モニターも一脚もジンバルも持っていかない選択も必要です。GH6の良さはそんな最小構成でもクオリティの高い映像が撮れることです。そして、手ブレ補正は驚くほど優秀なので、一脚やジンバルを使わずに、カット数をゴリゴリ稼ぐ必要のある撮影においても最適なカメラだと思います。
トラブルが少なく信頼できる
多くの現場でGHシリーズを使用してきましたが一度も機材トラブルにあったことがありません。精密機器にとって過酷となる環境下でもレックが途中で止まった経験はありません。真夏の炎天下、真冬の雪山、大雨の野外フェスでの撮影、砂埃に塗れた荒野、絶対に取り逃せないイベント撮影…etc。ボディの堅牢性はGH6にも感じられました。
また、人為的ミスを極力減らせるような頼れる機能、これも仕事をする上では本当に重要なポイントです。お気に入りのポイントは3つあります。
まず、RECアクセスです。GH6にはタリーランプがリアとフロントに2個ついており、モニターにもREC中は赤フレームが表示されるようになっています。RECがされているかをハッキリ認識できるようになったのは安心感が違います。RECボタンも2つ(トップとフロント)もついているのでRECしたいと思った瞬間に回すことができます。
2点目は、CF、SDカードの2枚挿でバックアップ記録が可能な点です。撮影メディアは何よりも大事なので撮り直しの聞かない状況では必ず2枚同時記録を使います。しかし、欲を言えばCF/SD、x2のデュアルスロットではなく、CF1枚、SD1枚ずつのスロットだった点が少し残念でした。
3点目は、USB PD給電対応です。従来のGH5を無人カメラや長時間配信で使用する際はバッテリーの代わりにDCカプラーで運用していました。しかしそれでは、コンセントが必要になる上に、電源が抜けて録画が止まらないようにコード類をテープ等で止める以外にはリスクヘッジの方法がありませんでした。それらに対してGH6はUSB給電対応により、バッテリーを使用しながら給電できる点が安心できる機能です。
安い
映像制作は本当に、本当にお金がかかります。GH6のボディ価格は他社製フルサイズカメラと比較して半額程度です。マイクロフォーサーズのレンズもフルサイズのレンズと比べて安価で種類も豊富です。もし映像制作を今から始めるのであれば、GH6は打ってつけのカメラだと思います。フルサイズカメラを買っていれば予算的に手を出せなかったであろう機材、例えば良い三脚、ジンバル、照明機材や録音機材を揃えることで総合的に映像作品のクオリティが格段にアップするはずです。
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実際に撮ってみた画はどうだったか
■使用した撮影フォーマット
4K(C4K) 60p/24p 422 10bit
筆者にとって最も使用頻度が高くなりそうなフォーマット。
同じ4K60p10bitでも800Mbps(CFカードのみ)/600Mbps/200Mbpsとビットレートを選択できるのもポイントです。選択できるフォーマットが増えたのは良いことですが、多すぎて迷ってしまいました。それを見越してか、フォーマットの検索機能(フレームレート、画素数、圧縮形式、VFR)や、動画画質のマイリスト登録機能が備わっているのは良いと思いました。欲を言えば、動画マニュアルモードのプリセットをカメラ上部のダイヤルカスタムC1〜C4にも割り当てられるようにして欲しいです。(現状、5.7Kや4K120pなどの特殊なフォーマットはC1〜C4に振り分けられない仕様)
4K 120p 420 10bit HFR
個人的に最も楽しみにしていたHFRの10bit撮影。
音声付きでスローモーションの撮影ができるのでドキュメンタリー系の現場でも積極的に挑戦できるようになりそうだと思いました。作品に緩急を生み出せるB-Roll的なカットがGH6ユーザーの作品で多く見られそうです。
5.7K 420 10bit
正直5.7Kをそのまま使うことはまだ先になりそうですが、編集でのクロップやデジタルズーム前提のカットで効力を発揮しそうだと思いました。(例えばコンサート・ライブ収録の引きカメなど。)
今回は魚眼レンズのカットで使用しました。かなり大胆にクロップしても画が荒れにくいのは魅力的でした。1カット目は等倍、2カット目は250%、3カット目は400%までスケールしています。
※誤ってアナモフィックモードを選択したため、4:3の画角になっています。
V-log / V-Gamut + ダイナミックレンジブースト
GH5の10bit V-logに比べるとLUTを載せた時、カラーグレーディングをした際の色のりが明らかに美しくなったと感じました。また、ダイナミックレンジブーストを使うことで相乗効果を発揮し、他のシネマカメラとも絵合わせしやすくなったそうです。最大13+Stopまでのダイナミックレンジとのことなので数値的にはBMPCC4K以上です。確かに撮り画もBMPCC4Kに近いように感じました。10bit 800Mbpsで撮っておけばグレーディングで相当追い込んでも破綻しにくいのではないでしょうか。
その他、GH5からGH6へ。良かった点
液晶モニターがチルトフリーアングルになった
GH5のバリアングルモニターは、HDMI端子やUSB-Cケーブル、ヘッドホン端子にモニターが干渉してしまいバリアングルの魅力が半減してしまいました。ストラップをつけた際も、干渉してバリアングルがズレてしまう点も撮影上ストレスに感じていました。
しかし、GH6は絶対に干渉しません。フリップ式とバリアングル式を選べる機構になっており、どんなアングルでも対応可能で、痒いところに手が届いたデザインとなっています。
オートフォーカスの性能が強化された
筆者自身は、動画撮影でAFを使うことは少ないのですがGH6のAFは積極的に使用したいと思えるほど性能が向上していました。お気に入りは「フルエリア(人物認識)AF」で、画角の中の広い範囲でAFをカバーしつつ、人物を認識してフォーカスを合わせてくれるというものです。実際にジンバルでスケーターを追っかけて撮影を行ったところ、被写体のスピードが速いにも関わらずかなり良い精度でフォーカスを追ってくれていることがわかります。
総括
正直ここ数年は、MVやCM等の主にルックを追求したい作品はBMPCC4をメインに使い、イベント収録、メイキング、生配信といった、撮れ高を多く稼ぎたい内容や臨機応変さが求められる現場ではGH5/GH5Sという風に使い分けていました。
しかし、GH6になって、撮り画のクオリティがしっかりと進化し、勿論信頼性、使いやすさも抜群で、本当の意味でどんな映像作品にも挑戦できるカメラだと感じました。マイクロフォーサーズのコンパクト性には、そのままカメラが自分の五感の延長に感じられる自由さがあります。これからも最高の相棒として、GH6でどんな映像にもチャレンジしていきたいと強く感じました。
●協力
スケーター:中山慎太郎(www.instagram.com/shintaro_nakayahman/)
スケートカメラ:CrazyColorWorks (www.instagram.com/crazycolorworks/)
●筆者プロフィール
Ryoma Matsumoto
映像ディレクター / ビデオグラファー / the McFaddin VJ
京都在住。MVや企業PV、観光、伝統芸能等、多くのジャンルの映像を制作。その傍ら、バンドthe McFaddinのVJ・アートディレクションを担当。様々なカルチャー、アート、テクノロジーをミックスさせた映像作りを目指している。一緒に作品作りができる仲間を増やしたいです。
https://ryoomamatsumoto.myportfolio.com
https://www.instagram.com/ryomaryomamatsumotomatsumoto/
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