これまでもVookで多数のカラーに関する記事を発信してこられたRen TakeuchiさんとVookが連携した連載がスタート!
MVの特に色に着目した分析記事を定期的にお届けします。カラーリファレンス、カラーグレーディング力向上、色理解に繋がる連載を目指します!
MV映像超色分解とは?
最新MV、人気MVの中から特に色の視点で際立った作品をRen Takeuchiさんがピックアップ。
MV内でなぜその色が使われるのか、どのような感情を表現しているのか、細かく解説していただきます。
大好きなMVを違った視点で理解するもよし、今後のカラーグレーディングの参考にするもよし、カラーリファレンスとして使えるように毎回お届けいたします。
- ビデオグラファー / 映像ディレクターRen Takeuchi
1997年京都生まれ。高校卒業後にビデオグラファーとして活動し、2019年にフリーランスの映像ディレクターとして独立。TVCM、WebPV、PV、企業VP、MVなど様々な制作を手掛ける。現在はチームで活動をし、主にカラーグレーディングを得意とし、企画・ディレクション・撮影・編集をワンストップで行う。 https://www.instagram.com/grove_glas/?hl=ja
- Edit:古川恵梨 / Eri Furukawa(Vook編集部)
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Vol.1:宇多田ヒカル『BADモード』
MV解説
記念すべき第一回目は宇多田ヒカルのアルバム『BADモード』の中のリード曲『BADモード』のミュージックビデオを解説していきたいと思います。
全体的なカラーは「RED」が強くインパクトが強い印象ですね。
歌詞にまず注目してみました!
いつも優しくていい子な君が調子悪そうにしているなんていったいどうしてだ、神様そりゃないぜ
引用元: Hikaru Utada『BADモード』 歌詞 © Sony/ATV Music Publishing LLC
かなりインパクトが強い歌詞から始まりますね。
誰かの事を想い自身の気持ちを表現している歌詞のようですね。
更に英語の歌詞部分も注目すると、
Here’s a diazepam(また抗不安薬に頼るのね)
We can each take half of(私達は悲しみを半分に出来るけど)
Or we can roll one up(1人で抱え込んで薬物に頼ることも出来る)
However the night flows(それでも夜は明けてく)
引用元: Hikaru Utada『BADモード』 歌詞 © Sony/ATV Music Publishing LLC
相手の方をすごく思っているように受け取れます。
自分だけで解決しないで私にも頼ってほしい、という気持ちが見えてきますね。
まず楽曲の伝えたいメッセージを理解した上で、
どのようなカラーが使用されているのか分解して深くみていきましょう。
カラーパレット
印象的なシーンのカラーパレットを生成してみました!
※後述に生成したカラーパレットのカラー詳細はお伝えします。
基本的に使用されているカラーは暖色系で同一色(ドミナント)をベースに構成されているのが分かります。
ただ、寒色系が差し込まれているのも少し気になりますね!
ミュージックビデオなどでは、各シーンで伝えたいメッセージが変わるので使用するカラーも異なります。
今回はハイライト部分は「RED」統一されている気もします。
色相環でいうとこのグループの配色がメインで使用されており、
インパクトを前面に打ち出した感じもします。
メッセージ性の表現を比重を置いた演出ですね。素晴らしいです。
それでは、配色組み合わせをみていきましょう!
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配色解説
トライアド配色
▲画像出典:宇多田ヒカル『BADモード』 : https://youtu.be/VJGCeAWIfEA
0:50あたりのシーンをピックアップ。
「RED」「GREEN」「ORANGE」の3色で構成されており、
「トライアド」という配色の組み合わせが使用されていますね!
「トライアド」とは色相環を正三角形の形で色を囲った際に当てはまるカラーのこと。
安定した色の組み合わせが保たれる配色タイプのカラーバランスです。
ダイアードよりも馴染みやすく、3色のカラーをバランスよく主張させたい時に使用します。
このシーンではアーティスト本人の心境などをルックとして演出している気がしました。
心情を表現に光の三原色のうち2色を使用
▲画像出典:宇多田ヒカル『BADモード』 : https://youtu.be/VJGCeAWIfEA
次は1:04あたりのシーン。
使用されているカラーは「RED」「BLUE」の2色です。
この2色は補色でもなんでもありませんが、
光の三原色である内の2色「RED」「BLUE」が使用されています。
単独でも視覚に印象を与えますが、両者を組み合わせることでより一層強い視覚効果を生みますね。
では、何故この2色だったのかを考えてみます。
背景に「RED」が入ってます。
色々な捉え方ができるカラーでもありますが、歌詞などを見ると、この場合の「RED」は「愛情」「勇気」だと捉えられます。
宇多田ヒカルさんには「BLUE」が当てられてますが、この場合は 「冷静」「悲しさ」だとも捉えられます。
「相手に対してたくさんしてあげたいけど冷静でいないと」という心情をカラーで表現しているのかもしれません。
強いメッセージ性をドミナントカラーと衣装カラーで表現
▲画像出典:宇多田ヒカル『BADモード』 : https://youtu.be/VJGCeAWIfEA
最後は2:16あたりのシーンをピックアップ。
1枚の額で家に飾りたくなるほど綺麗なカットですね。
このシーンは同一色で統一されており、「ドミナントカラー」が使用されています。
ハイライトは「RED」で統一ですね。やはり伝えたい強いメッセージを前面に出されていますね。
ここで一番気になったのは宇多田ヒカルさんの衣装が「Black」でメイクもトーンがかなり暗い印象なことです。
「Black」カラーの場合「不安」「恐怖」「孤立」と意味をたくさん持ちますが、相手にしてあげたい気持ちとは別に、宇多田ヒカルさん本人も、「不安」「恐怖」といった葛藤をしていると表現している気がしました。
さっきまでとは全く違った一面でメッセージ性がかなり強い印象です。
最後に
最後まで読んでいただきありがとうございました。
カラーでも様々な演出の手法があり、ルックの概念を皆さんと一緒に
色分解していきましょう。
それでは、また次のMV超色分解で!
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MV超色分解 Vol.2はこちら
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