DaVinci Resolveで作業をする際、全部のクリップを一つひとつ調整していませんか? もちろんそのようにしてもいいのですが、クリップが何十個、何百個ある場合には、その作業では時間がかかってしまいます。この記事では、カラーグレーディングにおいて時短に役立つテクニックをいくつか紹介します。
ちなみに先日、「DaVinci Resolve 17 春休み特別オンライン無償トレーニング 〜はじめてのカラーグレーディング〜」というイベントが開催されました。現在、1ヶ月の期間限定でそのアーカイブを配信しています。カラーページについてとことんまで勉強したい方はこちらをご覧ください。
コピペ
あまり知られていないようなのですが、カラーページでも普通のコピペが使えます。やり方は簡単です。クリップサムネイルをCommand (Ctrl) + Cでコピーして、べつのクリップ(複数でもかまいません)にCommand (Ctrl) + Vでペーストするだけです。
この例では、5番のクリップのグレード(カラー調整の内容)を1番と7番のクリップにコピーペーストしました。
このコピペはコンテクスト依存です。ノード単位でのコピペもできます。最初コピーをするとき、どのノードが選ばれているかチェックしておいてください。
ペーストする際、クリップを選んでペーストすると、ノード構造がそのままコピペされます。
一方、クリップを選んだあと、ノードを選んでペーストすると、ノード単体がペーストされます。
リモートバージョン
たとえば以下の画像のように、同じ元素材がタイムラインの中で複数回使用されてい場合があります。その場合、リモートバージョンという機能を使用すれば、元素材が同じであれば、同じグレードが適用されます。
デフォルトではローカルバージョンという、クリップごとに異なるグレードが適用される設定になっています。リモートバージョンに設定する方法は、クリップを選択して右クリックして、「リモートバージョン」の下の「Version 1」の「ロード」を押します。素材一つを選択して設定変更してもいいですが、リモートバージョンを使うときには、基本的にタイムライン上のすべてのクリップを全選択して設定変更した方がわかりやすいと思います。全選択はCommand (Ctrl) + Aです。
そうするとこのようにピンク色の矢印のマークが表示されます。これがリモートバージョンでリンクが成立している印です。DaVinci Resolveは自動的に素材が同じかどうかを判別して、リンクをつけるかつけないかを判断しています。
この状態でカラー調整をすると、どちらにも同じグレードが適用されました。
一方、タイムラインで一回しか使われていないクリップを選択した場合には、ピンク色の矢印のマークは表示されません。ほかにリンクするクリップがないからです。
ちなみにATEM Mini Pro ISO、ATEM Mini Extreme ISOで収録されたプロジェクトファイルでは、自動的にリモートバージョンが適用されています。
クリップを個別に調整したい場合には、右クリックで「ローカルバージョン」の下の「バージョン1」の「ロード」を押します。
クリップサムネイルの下の箇所をダブルクリックすると、表示名が変わります。クリップ名→バージョン名→コーデック名という順番です。バージョン名の表示にすると、このようにバージョンの名前が確認できます。
(R)というのがリモートバージョンを示しています。空欄がローカルバージョンの1(デフォルト状態)です。ローカルバージョンやリモートバージョンの2番以降を使うと、その名前が表示されます。
グループ
元素材が違っても、手動でリンクをつけることができます。これがグループという機能です。たとえば上と同じタイムラインで考えてみましょう。先ほどリモートバージョンを使って、同じ元素材のクリップに同時にカラー調整を加えました。
しかしよく見ると、1番のクリップも、5番と7番と同じような見た目のクリップです。撮影中に撮影開始・停止を何度か繰り返して、クリップを分けたのでしょう、元素材のクリップ名が異なっているため、リモートバージョンで1番と5番、7番をリンクすることはできません。しかしグループを使えば、手動でリンクをつけることができます。Command (Ctrl) を押しながら、グループに入れたいクリップを選択し、右クリックで「新規グループに追加」を選択します。
そうすると緑色のペーパークリップのマークが表示されます。これでグループでクリップがリンクづけられているのがわかります。
グループの場合、これだけでは準備は足りません。ノードセクションの右上の「クリップ」をクリックして、「グループ」の項目を選択します。選択肢としては「グループ プリクリップ」と「グループ ポストクリップ」の2種類があります。
これはクリップごとの調整の前にグレードを加えるか、それともその後にグレードを加えるかの違いです。たとえばクリップごとにルックの違いがあって、それを調整してからグループでの調整をしたい場合には、「クリップ」単位で調整した後に、「グループ ポストクリップ」で調整を加えます。もしくは「クリップ」単位での調整の前にグループで調整したい場合には「グループ プリクリップ」を選択します。「グループ プリクリップ」か「グループ ポストクリップ」のいずれかを選択して調整すると、このようにグループに入っているすべてのクリップにグレードが適用されます。
グループに新しくクリップを加えたり、グループからクリップを外したりするには、クリップサムネイルを右クリックしてその項目を選択します。グループは何個でも作れますし、同じグループにクリップは何個でも入れられます。
共有ノード
共有ノードとは、同じノードをべつべつのクリップで使うための機能です。通常、ノードはクリップ単位で使用します。だからべつべつのクリップで同じグレーディングを適用したい場合には、前述のコピペなどの方法を使用するわけですが、この共有ノードを使うと複数のクリップでのノードの共有が簡単になります。
共有ノードを使うには、ノードを右クリックして「共有ノードとして保存」を選びます。
そうするとノードが通常の状態ではなく、共有ノードの状態になります。ノードの上にShared Nodeという名前がついて、水色の左右矢印が表示されます。これが共有ノードの表示です。
この共有ノードをべつのクリップで使いたい場合には、ノードを右クリックし、「ノードを追加」からShared Nodeという項目を選びます。そうすると共有ノードを追加できます。
この名前は変更可能です。ノードを右クリックして、「ノードラベル」の項目から変更が可能です。この変更された名前は、ほかのクリップで使用している共有ノードにも、これから新しく作る共有ノードにも、どちらにも共有されます。
この共有ノードは同じプロジェクト内であれば、すべてのタイムラインで参照できます。
ギャラリースチル
DaVinci Resolveのカラーページの左上にあるギャラリースチルは、複数のクリップでグレードを共有するためにうってつけのセクションです。ギャラリーセクションにグレードを保存するには、ビューワーで右クリックをして「スチルを保存」を押します。
そうするとギャラリーセクションにスチルが保存されます。
「スチル」というのは、単純に日本語にすると「静止画」という意味です。だからこれは一義的には静止画を保存したということになります。しかしDaVinci Resolveにおいてはスチルというのは単なる静止画以上の意味を持っています。このスチルには静止画だけではなくグレードが記録されているからです。このスチルは、グレード(グレーディングの内容)を保存したものだと考えるとわかりやすいと思います。「スチルを保存」を押した瞬間に、その時点でのグレードがギャラリーセクションに保存されます。だから簡単に他のクリップにグレードを適用できるのです。
たとえばべつのクリップに移動して、そこで今のグレードをそのまま適用したいと思ったとします。その場合には、ギャラリースチルを右クリックして、「グレードを適用」を押します。
そうすると先ほど保存した際のグレードがそのまま適用されます。ノードの構造もそのままです。
ノードツリー全体ではなく、特定のノードのみを適用したい場合には、スチルを右クリックして「ノードグラフを表示」を選択します。
そうするとノードグラフの画面が出てきます。ここから特定のノードをドラッグ&ドロップして、画面右上のノードに移せば、その特定のノードの中身をコピペすることができます。
このギャラリースチルも、共有ノードと同じように、同じプロジェクト内であれば、すべてのタイムラインで参照できます。もしほかのプロジェクトでスチルを使用したい場合には、PowerGradeを使います。ギャラリーセクションの左側のPowerGradeのタブは、すべてのプロジェクトから参照できます。だからPowerGradeのフォルダにスチルを移動すれば、そのスチルはどのプロジェクトからも参照できるようになります。
上のスチルをPowerGrade 1のタブに入れたら、新規プロジェクトでもこのスチルが見えるようになりました。
カラーマネジメント
LogやRAWの素材が混在している場合には、カラーマネジメントを使うのが時短への近道です。カラーマネジメントというのは、さまざまなカラースペースやガンマの素材を一度に効果的に扱うための標準的なメソッドです。
カラーマネジメントを使うには、プロジェクト設定を開いて、カラーマネジメントのタブを開きます。「カラーサイエンス」の項目はデフォルトではDaVinci YRGBと表示されています。これはカラーマネジメントを使用しない設定です。カラーマネジメントを使用するには、DaVinci YRGB Color Managedを選択します。これは別名Resolve Color Management(RCM)とも呼ばれます。
たとえばHDR動画などをとくに考えず、いわゆる「普通の」映像を作る場合には、Color processing modeをSDR、「出力カラースペース」をSDR Rec.709に設定します。Automatic color managementという項目のチェックを外すとさらに細かくパラメーターを設定できますが、初心者の方はとりあえずチェックを入れたままでいいと思います。
これで設定は完了です。問題はさまざまなカラースペースの素材が混在しているときです。たとえばこのタイムラインでは、Rec.709、Rec.2100 ST.2084、sRGB、そしてBlackmagic RAWのクリップが混在しています。
RAWファイルについては、DaVinci Resolve側が自動的にそれが何のRAWファイルであるかを検出して、適切な変換を実施してくれるので、マニュアルでの設定は必要ありません。
RAWファイルではなくても、素材自体にメタデータとしてカラースペースが情報として載っている場合には、自動的にRCMが正しく変換してくれます。しかし素材にそういうメタデータが入っていないことも多いです。そういう場合には、マニュアルでの入力カラースペースの変更が必要になります。サムネイルタイムラインのクリップを右クリックして、「入力カラースペース」から素材の正しいカラースペースを指定します。たとえば素材がsRGBのグラフィックであれば、ここでsRGBをご選択ください。
この入力カラースペースは、メディアプールで一覧できます。メディアプールをリスト表示にして、上の「クリップ名」などの項目を右クリックして、「入力カラースペース」の項目にチェックを入れます。
そうすると入力カラースペースを一度に確認できるようになります。
入力カラースペースは、サムネイルタイムラインだけではなくメディアプールでも変更ができます。一括で変更したい場合には、複数選択から右クリックで変更してみてください。
正しく変換ができれば、カラーグレーディングを始める前のニュートラルな状態が作りやすくなります。ノーマライズが完了した段階から作業を開始することができます。
RCM前
RCM後
AIに頼る
DaVinci Resolveは優れたAI(DaVinci Neural Engine)を搭載していて、カラーページでも活躍する場面があります。ここではふたつご紹介します。
自動カラーコレクション
とりあえず色や明るさを適正にしたい場合には、オートカラーを使いましょう。AIが自動的に色を作ってくれます。プライマリーセクションの「A」ボタンを押すだけです。
オートカラー適用前
オートカラー適用後
自動ショットマッチ
タイムラインの中の複数クリップの色合いや明るさを合わせたい場合には、ショットマッチを使いましょう。AIが自動的に色を合わせてくれます。色を変えたいクリップを選択(複数選択可)して、基準としたいクリップを右クリックして「このクリップにショットマッチ」を押すだけです。
ショットマッチ適用前
ショットマッチ適用後
サイの色彩の差異が最小になりました。
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