アニメ業界に夢を持つ人に朗報です。
あの庵野秀明氏率いる株式会社カラーが3DCGアニメ業界の人材不足の解決を目的に設立した「プロジェクトスタジオQ」(以下、スタジオQ)が主催するアニメCGコンテスト「Award:Q/Project Studio Q Anime CG Award 2022」 (以下、Award:Q)が今年、1年の休止期間を経て復活したのです。さらに今回からVookもメディアパートナーとして、本アワードを協賛することが決まりました!
そこで今回、審査員長であり、スタジオQ代表取締役社長の小林浩康さんにコンテストについて色々お話を伺ってきました。
ゲスト:小林浩康さん
日本のアニメ監督、CGI監督、デザイナー、実業家。株式会社カラー取締役。株式会社プロジェクトスタジオQ代表取締役社長。
Award:Qは業界への入り口にもなっている新しい形のコンテスト
Vook:それではさっそくですが、そもそもAward:Qというコンテストはどういう経緯で始まったのでしょうか?
小林:2017年7月に「プロジェクトスタジオQ」という新しいスタジオを福岡に作ったのですが、それは元々僕が所属しているカラーとドワンゴ、麻生塾(麻生専門学校グループ)の3社で起ち上げたんです。
その際に麻生塾の理事長の麻生 健さんが学生を刺激するコンテストを開催してはどうだろうと提案してくれたのが始まりです。
僕らは普段は制作業務をやっていて、そういうコンテストの開催などにはまったく携わったことがないし、スタジオがコンテストを主催するという話もあまり聞きません。
でも、よりプロの目線で、実際に現場で活躍するクリエイターが作品を評価してくれるコンテストというのは面白いかなと思って始めてみることにしました。
Vook:なるほど、そういう経緯だったんですね。
小林:はい。僕らもコンテストをやるといっても最初はピンときていなくて、入賞者が賞金をもらって箔がつくくらいかなと考えていたのですが、やっていくうちに気がついたんです。意外と業界への入り口として機能している部分があるんじゃないかと。
実際コンテスト受賞者をけっこう採用しているという実績もあるんです。
Vook:コンテストに入賞するとすぐにどこかの企業に採用されることもあるんですね。
小林:そうですね。僕たち主催の関連企業だけじゃなくて、他の企業さんからも「あの人良かった」という話を聞きます。
僕らも一応プロの基準で審査していますし、受賞者はほとんど「これぐらいできれば、もう何の問題もなくプロの世界で通用する」という人を選んでいます。
Vook:なるほど、現場目線で審査するということは、即戦力を見極めて審査するということでもあるんですね。
小林:入賞者の子たちと懇親会とかすると、だいたい自分でコツコツ自主制作してきた人が多いんですね。でもこれまで、その人たちが評価される場がなかった。
実際は既にプロのスキルを十分持っているのに、業界に入る入口がなかったんです。それをAward:Qが担っていけてるんじゃないかと。面白い動きですよね。
コンテストということで、採用活動とはまた別の良さがあるなあと思っています。
Vook:埋もれた才能を見出す場にもなっている、と。実際異業種からこの業界に入られた方がいらっしゃるんですか?
小林:はい。前回のモデリング部門 準グランプリを受賞した方が、4月にプロジェクトスタジオQに入社予定です。今回のコンテストのキービジュアルの1つも彼の作品です。以前はまったくちがう業種で働いていた方ですね。
ほかにもコンテスト受賞者のうち複数名の方が、業界への就職が決まっていると思います。スタジオカラーやスタジオQだけでなくて、大手のゲーム会社や制作会社に決まっている方もけっこう沢山いますよ。
Vook:すごいですね!
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コンテスト2部門は、現場のスタッフが実際に作業している内容が課題!
Vook:コンテストには何部門あるんですか?
小林:アニメーション部門と、モデリング部門の2つをを設けています。1つにしてもよかったんですけど、応募者の得意不得意があるし、特に学生さんはまだ未熟な部分もあると思うので、スポットライトがより当たりやすくなるように学生の部と一般の部を分けています。
表現方法ひとつとっても様々な種類があるので、角度を変えたらより輝くことがあるんですよね。
さらにアニメーションとモデリングとでは求められるスキルが全然ちがうので、そこは分けて評価したいですしね。
Vook:先ほど学生さんと仰いましたが、Vookのユーザーには社会人をしつつ制作をコツコツがんばっていたり、フリーランスでお仕事される方が多いです。そういう人も応募は可能なんですか?
小林:はい、もちろんです。そういうフリーランスなど、独立独歩で努力を重ねてきた方が上位に入る場合が多いように思います。応募の時点ですでに目覚ましい実績をもたれた方もけっこういますね。
そういう人はすぐに小規模な作品から参加してもらったりとか、実際に仕事につながることが多いように思います。Award:Qで当初想定していたのとは異なる波及効果が色々あるなあと感じています。
Vook:すぐ仕事としてスタートできる可能性があるって、夢がありますよね。
小林:即戦力になるか、という視点で審査しているということもあって、入賞者の多くはすぐに業務に携われる方が多いです。また、作品の課題も、実際に現場でやっていることと同じなんです。
だからコンテストで上位に入るということは、実際の制作現場で活躍できる資質があるってことになるんです。
Vook:ということは、エヴァのキャラクタをモデリング素材にされているのも、その実際の作業を想定しっていう面もあるんですね。このコンテストの魅力ってやはり、エヴァの設定やアセットを素材として使えるという点もあると思っています。
小林:エヴァの素材を使うことで、打ち込んで、愛を持って作れるっていう利点もあるかもしれないですね。特にモデリングなんかは難度、その複雑さもテクニックを見せるのには適しているお題だと思っています。
Vook:エヴァのキャラクター、特にロボットは構造が複雑ですもんね。
小林:だからこそ、できるできないの判断もしやすいという利点があります。完全に現場のモデラーがやっていることと同じですからね。プロと同じ発注をされて、どれだけできるかというのが判るんですよね。
Vook:先ほどもおっしゃいましたが、庵野さんがいらっしゃるスタジオカラーにも入社できる可能性があるというのは、コンテスト参加者にかなり夢がありますね!
小林さんが考える、これからのアニメーション・CG業界に必要なスキルとは?
Vook:これからのアニメーションやCG業界に必要なスキルってなんだと思いますか?
小林:技術の面で言えば、やっぱり手数を増やすってこと自体が必要ですが、クリエイターに必要なのってモノの見方というか視点の部分がかなり大きいと思っています。
審査するときも「この人は何を見てきてこの作品を作ったのだろう?」と考えながら見ます。その人がそれまで見てきたものの蓄積が作品に現れるんですよね。
作品ってゼロから作ることができなくて、それまでに見てきた様々なものの積み重ねと、その人自身から生まれるオリジナリティの掛け合わせなんですよね。だから、沢山いろんなものに触れてきた人の方が結果的に良い成果を生みやすいと思っています。
そういう意味で、「カラー」と「プロジェクトスタジオQ」では映画鑑賞費を精算できるようになってるんです。映画の半券と感想を出せば映画代を会社が負担するので、たくさん作品を観て勉強しましょうというポリシーなんです。
Vook:制作の手を止めて、いろんな作品を吸収するのもすごく大事ってことですね。Award:Q夢のあるコンテストなのがよくわかりました!
小林:ぜひみなさん応募してください!
過去入賞者:藤井隆直さんにインタビュー
ここからは先ほどお話にもでた、プロジェクトスタジオQに入社される藤井隆直さんにAward:Qに応募された動機をお聞きました!
お名前:藤井 隆直(フジイタカナオ)
Award:Q 2020 モデリング部門(一般の部) 準グランプリ
Award:Qの応募経緯を教えてください
藤井:大学でプレゼン資料を作るために始め、社会人になってからも趣味として独学で続けていたCGを、プロの方に評価してもらえる機会を探していたところ、2018年にAward:Qの存在を知りました。
その時は応募するには至りませんでしたが、受賞された方々の作品に自分の創作意欲を強く刺激され、次の機会があれば必ず応募すると決めていました。
20年度の開催もSNSでいち早く知ることができ、期間いっぱいを使ってでも作品として作りきることを目標に、腕試しのためにと応募しました。
どうしてスタジオQへ入社することになったんですか?
藤井:Award:Q 2020にて評価いただけたことが自信になり、CGを趣味から仕事にするべく大きく舵を切ることにしました。
20年9月からデジタルハリウッド東京本校に通いながら、21年4月のアニメータードラフト会議に応募したところ、スタジオQを含むいくつかの企業様から評価をいただきました。
Award:Qでのご縁はもちろんのこと、Blenderのみで作品を作りきるという業界を先駆けるチャレンジングな点に魅力を感じ、スタジオQを志望することに決めました。
今後応募を検討している人に向けて何かアドバイスはありますか?
藤井:Award:Qではモデルや設定こそ与えられるものの、これといった正解はないと思います。
様々なバックグラウンドを持った人それぞれの個性やこだわりを信じて、とことん追求して、『自分の作りたいもの』を楽しみながら創っていただけたらと思います。
Award:Q/Project Studio Q Anime CG Award 2022概要
募集部門
モデリング部門(学生の部、一般の部)
アニメーション部門(学生の部、一般の部)応募資格
学生の部:大学、短期大学、大学院、各種専門学校、高等学校、中学校に通っている学生、部活・サークル・同好会などで制作されたプロジェクトなども対象
一般の部:上記以外の人(プロ・アマは問わない)※ただし個人での応募に限る募集期間
2022年1月17日(月)~2022年4月17日(日)
応募はこちらから
https://studio-q.co.jp/award/2022/index.html
TEXT & EDIT_古川恵梨 / Eri Furukawa(Vook編集部)
Vook編集部@Vook_editor
「映像クリエイターを無敵にする。」をビジョンとするVookの公式アカウント。映像制作のナレッジやTips、さまざまなクリエイターへのインタビューなどを発信しています。
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